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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「失敗学のすすめ」 2000

失敗学のすすめ (講談社文庫)

★★★★☆

 

 なるべく知られたくない、出来ることなら隠したいと思ってしまうような出来事「失敗」について考察する。

 

 「津波の心配があるからここより海側に家を建てるな」という石碑が建てられているにもかかわらず、海側に建てられている家の写真や、日本の原発で起きた事故の紹介とか、あの震災後の今読むとなかなか心に来るものがある。震災の前に書かれていたこの本にはまるで予言のように津波の件とか原発の件が書かれていて、これ読んでみんなちゃんと動いてれば、もっと違った今があったんじゃないかと、悔やまれるような気持ちに襲われる。今、福島原発の事故調査にかかわっている著者は、何を思っているんだろう。

 

 失敗学に取り組む著者の失敗のカテゴライズの中で、多数の犠牲者が出た事故に対して「よい失敗」と言い切っているのは、著者の信念が感じられる。人がたくさん死んでるのだから不謹慎な印象を受けそうだが、それによって人々が進化を遂げたのだからと冷静に判断している。

 

 失敗というのはそれを引き起こした人間の立場を危うくするから、隠したくなるのは理解出来るが、その原因や過程がわからないと再発を防ぎにくいのも事実だ。そこで紹介されたのがアメリカの司法取引の話。誰もが自分を庇って真実を話そうとしないと、その真相がわからない。それならば真相究明に協力した者を救済するシステムを作ろうとして出来たのが司法取引制度。今まで司法取引というのは、犯した罪の償いをしなくてよくなるなんて、ひどい制度だなんて思っていたが、そういう見方をするとなかなか良く出来たシステムなんだなと思える。確かに政治がらみや経済がらみの裁判は「私はやっていない」だの、「覚えていない」の言葉が繰り返されるだけで、結局、裁判所の判断で「有罪」になって、実際の真相はあいまいなことが多い。

 

 最近でもオリンパスの件とか、原発の件もそうだし、日本社会にはなんでそんな事が、と思えるような出来事が多い。きっと、それらを試行錯誤しながら作り上げた世代が抜けて、彼らが作ったマニュアルに従うだけの世代へと切り替わっていっているからだろう。深刻な事態を引き起こしそうな時でもマニュアルにないから、とかどう対処していいか分からないからと、見て見ぬふりしてしまう。やばいのは分かっていても自分の時に明るみにならなければいいという考え。これからもっと増えていくのかもしれない。日本を支えてきた大企業の不調ぶりを見てみても、なんだか不安になる。

 

 きっと一旦初心に戻る必要があるんだろうな。

 

著者 畑村洋太郎

 

失敗学のすすめ (講談社文庫)

失敗学のすすめ (講談社文庫)

 

 

 

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