「OPUS 〜ALL TIME BEST 1975-2012〜」　2012

★★★★☆

　山下達郎はその存在はもちろん知っていたし、「クリスマス・イブ」を始めいくつかの曲は記憶に残っているし、実力者であることも理解していた。だけど今までＣＤを買うということはなかった。たぶん完成度の高い純粋なポップソングはなんか自分には合わないなと思っていたんだと思う。面白みがないというか。音楽にどこか初期衝動的な粗さやメッセージ性を求めているところがある。

　だけどこの夏、別に新曲でもないのに「僕らの夏の夢」をラジオやら街角で聞く機会がなぜか多かった。映画「サマーウォーズ」の主題歌で細田監督の新作も公開されてある意味旬だったからなのか、夏の定番曲となりつつあるからなのかわからないけど何度か聴いているうちにだんだん心に沁みてきた。「零戦が－」の歌詞が印象的だ。ちなみに「サマーウォーズ」を見たときにこの曲を聴いてるはずだけど全然印象に残っていなかった。

　という個人的にいいタイミングで出たこのアルバム。初めて彼のCDを買ってみた。なかなかいい。何度でも聞けるというか。この何度でも聞けるというのがポップスの強みだなと思う。勿論出来が良くなければいけないわけだが。しかしこの全編にわたるクォリテイーの高さはなんなのって改めて彼の凄さを知った。やっぱり音楽業界に何年もいられる人は本物だけなんだなと思い知らされる。個人的には後半の最近の曲達が好きだ。

　関係ないけど発売直前あたりにテレビでプロモーションを結構やっていて、インタビューとかされたりしていたけど頑なに顔を出さないのが可笑しかった。「めざましテレビ」か何かで本人登場！とか煽っといて放送されたのはインタビューの録音とその時撮った写真のみで構成されていたのは笑った。テレビの意味ない、ラジオかよ、と。朝からいい気分にさせてもらった。こんなことが許されるのも大物だからこそ。とここでも彼の凄さがわかる。