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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「火花」 2015

火花 (文春文庫)

★★★★☆

 

 駆け出しの漫才師の男が、営業先で出会った先輩芸人に弟子入りする。

 

 書き出しから気合の入った文章。やっぱり芥川賞はちゃんとした賞なんだなって安心した。初小説とは思えないクオリティの高さ。

 

 先輩にどこか自分と似ていると感じてシンパシーを感じていたのに、よくよく見ると自分とは全然違うことに気づいて落ち込んだり、凄い才能に憧憬の眼差しを向けながらも、世間とうまく折り合いをつけて、その才能を十分に発揮しようとしない事に苛立ちを感じたり、主人公の心の葛藤がうまく描かれている。

 

 それにしても芸人である主人公は、面白いことは言っているのに全然本人が笑っている様子がなく、逆によく泣いているのが面白い。そして、同世代の芸人たちがテレビで活躍するのを見ても、ネットで批判されても、嫉妬や反発を見せず、常に冷静で謙虚なのも興味深い。

 

p42

流行の言葉を簡単に使いこなす器用な人間を僕は恐れていた。

 

 謙虚というよりも、他の人のように普通のことが普通に出来ない自分に後ろめたさを感じているのかもしれない。

 

 漫才師の話だがほとんど相方とのやり取りや、漫才のシーンはなく、先輩芸人とのやり取りを中心に描かれていく。そうした中で後半突然現れた漫才シーンで胸が熱くなってしまった。先輩の、売れずに消えていった芸人たちを含めたすべての芸人に対する想いも良かった。

 

 ハッピーエンドではないけど、希望の光はまだ灯っていることを示すラストは心地よい読後感。キッズ・リターン的な。

 

著者 又吉直樹

 

火花 (文春文庫)

火花 (文春文庫)

 

火花 (小説) - Wikipedia

 

 

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