★★★☆☆
内容
原始時代、人類は各大陸で同じような狩猟採集生活を送っていたはずなのに、やがて一方の大陸が一方の大陸を征服できるほどにまで差がついたのはなぜなのか、なぜその逆ではなかったのか、検証する。
感想
評判の良い本だということは知っていたが、味気ないタイトルと上下巻あるボリュームに、つまらなかったら辛いなと手を出せないでいた。だけど、同じ著者の「若い読者のための第三のチンパンジー」を読んだら面白かったので、ようやく安心して手を出せた。
で結論を言えば、いきなりこっちを読んだほうが良かったかもしれない。勿論面白かったのだが「第三のチンパンジー」と重複する部分が多く、読んでいなかったらもっと面白く感じていたと思う。
大陸間でその歴史に大きな差異が生じたのは、そこに住む人間の能力の差ではなく、環境の差だったという説明にはなかなか頷けるものがある。個人的には南国で文明が発達しなかったのは、食べ物に不自由しない環境だから、発展する必要が無かったから、と思っていたが、農耕に適した植物や気候、家畜になる動物がいなければ、確かに発達しようがない。
農耕に適した土地に住む集団がやがて近隣を取り込みながら大きな集団となっていき、その過程で様々な技術も発展させ、文明が発達していった。文字を発明していく過程の難解な説明を読んでいたら、自分が普通に読み書きしていることがとんでもなくすごいことのように思えてきた。
そんな文明の発達した大陸からやってきた、馬に乗り、銃を操り、謎の病気を撒き散らす人間は、現地の人間から見たらもう宇宙人ぐらいに見えたのだろう。それか、未来からやって来た人間か。
各大陸ごとに見ていくスタイルだが、最後の方で少し触れている同じ大陸内での差異も興味深い。アメリカ大陸を植民地にしたのはなぜヨーロッパで、同じような文明を持っていた中国でなかったのか。ヨーロッパは複雑な地形の影響で統一されたことがなく、よって様々な国が存在していた。そのため、それぞれの国が色々と試すことができた。うまくいったものがあれば、最初は否定的だった国も生き残るためにそれを取り入れていく。
しかし、比較的なだらかな地形の中国は統一されている時間が長く、時の権力者が何かを否定すると、もうそれは試されることがない。海外への進出も時の権力者によって閉ざされてしまっている。こちらも環境が影響しているが、それとともに色々と試すことが重要だということもよく分かる。
1万3000年という途方もない時間と地球上の広い空間を俯瞰で眺めていると、とても雄大な、人間がでかくなったような気になってくるのも面白い。
著者
ジャレド・ダイアモンド
文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)
- 作者: ジャレド・ダイアモンド,倉骨彰
- 出版社/メーカー: 草思社
- 発売日: 2012/02/02
- メディア: 文庫
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