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「ずる 嘘とごまかしの行動経済学」 2012

ずる 嘘とごまかしの行動経済学

★★★★☆

 

 人はなぜ不正を行うのか、どんな時に不正を行うのか、実験の結果を通して考察する。

 

 人はだれでも不正を行う。この本のなかで紹介される実験でも、不正のチャンスが有ればみな不正を行っている。そのような行動を取りながらも、みな道徳観や倫理観を持ち合わせているような顔をしている。

 

わたしたちは一方では、自分を正直で立派な人物だと思いたい。鏡に映った自分の姿を見て、自分に満足したい(心理学者はこれを自我動機と呼ぶ)。だがその一方では、ごまかしから利益を得て、できるだけ得をしたい(これが標準的な金銭的動機だ)。

p37

 

 この二つの相反する動機を、人は自分を正当化するためのつじつま合わせの言い訳を考え出すことでバランスを取り、ずるをしながら自分のことを正直な人間だと思うことが出来る。「これは横領じゃない、ちょっと借りるだけだ」みたいな。

 

 そしてこのバランスをとるためのつじつま合わせの係数が様々な要因で大きくなっていく。創造性の高さや、疲れの具合といった属人的な要素から、他人の不正を目撃するといった周りの環境が原因となったりする。偽のブランド品を身につけることや、医者が患者との付き合いが長くなることで、不正をしやすくなるという話はなかなか興味深い。

 

 なかでも自分の不正から他人が利益を得る場合は、つじつま合わせの係数が大きくなるっていうのは意外だった。だけど、世のため人のためとか言いながら、過激な行動を取っている団体は、そういうことなのかもしれない。自分の利益のためにやっているわけではなく、皆のためにやっているんだから多少の逸脱は仕方ない、って正当化しやすいというわけだ。

 

 不正を減らすための考察もしているが、なかなか難しそう。グループで互いに監視させると効果があるが、メンバーが仲良くなると逆に不正が行われやすくなる、とか。なかなか悩ましい。人はみな不正をするのだから、それぞれの道徳観に頼るよりも、不正を行いにくいシステムを構築するほうが効果がありそうだ。

 

 ニュースで見る様々な不正はこういう仕組みで起きているんだろうな、と考えながら読むことが出来て面白い。著者のユーモアを交えた語り口も楽しい。不正の仕組みは、不倫が一番説明しやすいのだが、検証が難しいからと述べているのは笑った。読んでる最中にも次々と不正のニュースは流れるので、残念ながら理解を深めるのには最適な環境だ。

 

著者 ダン・アリエリー

 

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