★★★☆☆
感想
”マインドセット”とは「心のあり方」。ひとは、人間の能力は固定的だと信じる硬直マインドセットを持った人と、人間の基本的資質は努力次第で伸ばすことができると考えるしなやかマインドセットを持った人の2種類に分けられる。
予想どおり、しなやかマインドセットを持った人間が人として成長できる。自分の能力を正しく理解し、何が足りないかを考えて努力するからだ。一方の硬直マインドの人間は、自分の能力を過大評価し、それを誇示しようとする傾向があるという。また、能力は固定的だと考えているため、失敗するということは能力がないということを証明することになるので、新たなことに挑戦しようとしない。さらに努力もしない。本気を出せば出来るけど出していないだけ、という言い訳を確保する必要があるからだ。こうして、両者の差は次第に広がっていく。
スポーツ選手でも、将来を期待された選手が伸びなかったり、今はスター選手だが、若いときは特別際立っていたわけではなかった、ということがあるのも、こういうことなのだろう。この本の中では度々、テニスのジョン・マッケンローが硬直マインドセットの例として出てきてなんだか気の毒になってくる。本人がそれを認めているとか、著者が何か恨みがあるとか、理由はよくわからないが。
それから、知能に関してはしなやかマインドセットを持っているが、性格や特性に関しては硬直マインドセットであるといった風に、一人の人間の中でもこの二つが混在していることがあるという。確かに本書で様々な局面でのマインドセットを読み進めていくと、自分の中にも2つのマインドセットが存在していることに気づく。これに関しては注意深く、自分のマインドセットを確認していく必要がある。
本当はこういうしなやかマインドセットを自然と身につけておきたいところ。本書でも、どのような言葉をかければしなやかマインドセットを持った子どもに育つかが述べられている。教師や子育て中の親は読んでおくと良いかもしれない。
子どもに「あなたは頭が良い」と言ってしまうと、その子は自分を賢く見せようとして愚かなふるまいに出るようになる。
p96
何となくアドラー心理学と通じる部分があるようにも感じる。著者は心理学者で様々な研究の成果をもとに書いているのだと思うが、あまりそれを詳細には述べていない。それが読みやすくもあるのだが、物足りなさも感じる。
著者
キャロル・S・ドゥエック
登場する作品
「オクラホマ!」 リチャード・ロジャーズ
マネー・ボール〔完全版〕 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
The Smartest Guys in the Room: The Amazing Rise and Scandalous Fall of Enron
「実験物理学」
この作品が登場する作品