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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「アフター・アース」 2013

アフター・アース (字幕版)

★★★★☆

 

あらすじ

 遭難し地球に不時着した親子。ケガで動けない父親に代わり、息子が100キロ先の通信機器のある場所に向かう。

 

感想

 環境破壊で他の惑星に移住していた地球人が、遭難して不時着したのが地球という設定。人間がいなくなった後の地球はどうなるのだろうと考えてみるのは面白いかもしれない。残された動物たちがどのように進化して、どの動物が主導権を握るのか。ただ、映画の中の地球は今とそんなに変わらず、その期待には応えてくれない。でも人間がいなくなってわずか1000年程度では、そんなに劇的な変化はないのかもしれない。

 

 そんな地球で、別の地点に落下した通信機器の場所までの100キロを移動することになった主人公の少年。偉大な指揮官である父親を持ったプレッシャーや、過去に怪物に襲われた姉を助けられなかったというトラウマのある少年が、冒険を通して成長していく物語と言える。

 

 

 一方の、ケガで動けずに、宇宙船の残骸の中で主人公をモニタリングして見守る父親。最初は息子の様子を見ながら的確な指示を出すが、途中で通信が途絶え、終盤に回復した時には息子の映像は見えるがこちらの声は通じない。まるで子供の成長に従って、ただ見守る事しか出来なくなる親子の関係をそのまま示しているかのようで、うまいプロットだった。

 

 父親役を演じるのはウィル・スミス。ほとんど宇宙船内で座っているシーンばかりなので、仕事が楽そうだ。そんな父親の意のままに、実の息子ジェイデン・スミスが必死に働く、という構図は、黒いコスチュームという事もあって、鵜飼いを連想してしまってちょっと面白い。

 

 クライマックスは人間の恐怖心に反応する怪物が登場し、主人公と対決する。恐怖心を消すことができる父親の話を思い出して、戦いの中でコツを掴む主人公の姿は、まるでフォースを手にしたルーク・スカイウォーカーのようだった。主人公の覚醒ぶりだったり、救難信号発信の映像だったり、とても「スター・ウォーズ」感のある展開。

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 恐怖心を消すためには、起きるかどうかも分からない未来の事は考えずに、今に集中することが大事だ、というのが父親の教えだった。マインドフルネスだったり禅だったりを連想するのだが、アメリカの新興宗教「サイエントロジー」との関連を指摘する声もあったようだ。映画の中では、恐怖心を消す力を獲得した、というような描き方だったが、本来は、上手くいっていたが途中で急に恐怖心が芽生えて駄目になってしまった、というような不安定なものなので、そういった揺らぎが描けていたら、もうちょっと物語に深みが出たかもしれない。

 

 途中で断念しようとしていた割には、あっさりと目的地に到着してしまったな、というのはあるが、まずまず楽しめる作品だった。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本/製作総指揮 M・ナイト・シャマラン

 

原案/製作/出演 ウィル・スミス

 

製作 ジェームズ・ラシター/ケイレブ・ピンケット/ジェイダ・ピンケット=スミス

 

出演 ジェイデン・スミス/ソフィー・オコネドー/ゾーイ・イザベラ・クラヴィッツ/グレン・モーシャワー/クリストファー・ヒヴュ/デヴィッド・デンマン

 

アフター・アース (字幕版)

アフター・アース (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

アフター・アース - Wikipedia

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登場する作品

白鯨 (上) (角川文庫)

 

 

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「香港発活劇エクスプレス 大福星」 1985

香港発活劇エクスプレス 大福星(字幕版)

★★★☆☆

 

あらすじ

 マフィアを追って日本にやって来た刑事は相棒を拉致され、かつての仲間に応援を頼む。

 

感想

 冒頭でジャッキー・チェンとユン・ピョウが出てくるのだが、その後は終盤まで出てこない。彼らに応援を頼まれたサモ・ハン・キンポー演じる男とその仲間たちがメインの物語。ジャッキーが客寄せパンダになってるパターンの映画、多すぎ。

 

 サモ・ハン・キンポー演じる主人公とジャッキー・チェン演じる刑事は仲が悪い設定。主人公は、この刑事を嫌いな理由を色々と挙げるのだが、それがなかなかの卑劣ぶりで、ちょっと引いてしまうほど。もしかしたらサモ・ハン・キンポーのジャッキーに対する私怨がこもっているのでは、と穿った見方をしてしまった。

 

 

 中盤は、主人公らが繰り広げるコメディが中心となる。だが、いかにもな80年代ノリで、なかなか見ているのがしんどかった。友人同士でじゃれ合っているような、子どもっぽい悪ふざけを延々と見せられている気分。

 

 そんな彼らのファッションも、いかにもな80年代感。特に主人公がラストに来ていた黄色い上下のトレーナーはなかなかすごい。もしかしたらブルース・リーを意識していたのかもしれないが、それを着て外に出る勇気はないわーと思ってしまった。

 

 そして、この映画の舞台は日本で、富士急ハイランドが登場したり、アラレちゃんが登場したりして、当時の日本の様子が見られるのが面白く、見どころの一つと言える。だが、ジャッキー・チェンが東京で滞在していた囲炉裏のある不思議な間取りの家は、さすがに違和感があった。海外ロケをすると、海外らしさを出そうとして過剰になってしまうのは、どの国の映画でもやってしまいがち。

 

 それから、敵役の一人として山口百恵に似た、筋肉がムキムキの日本人女性が登場する。志穂美悦子か?と思っていたのだがそうではなく、西脇美智子という人で、当時「ボディビル界の百恵ちゃん」と呼ばれていたらしい。彼女が主人公らと戦う時の衣装がなかなかすごくて、呆気に取られてしまった。

 

 中盤の中だるみはかなりのものだが、主人公らにジャッキーとユン・ピョウ演じる刑事が加わったラストのアクションシーンは見ごたえがあって、結局見入ってしまった。やはり本物は凄いなと感心する。

 

スタッフ/キャスト

監督/出演 サモ・ハン・キンポー

 

製作総指揮 レイモンド・チョウ

 

出演 リチャード・ン/チャールズ・チン/スタンリー・フォン/エリック・ツァン/ジャッキー・チェン/ユン・ピョウ/ラム・チェンイン/西脇美智子

 

香港発活劇エクスプレス 大福星 - Wikipedia

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関連する作品

前作 

五福星 (字幕版)

五福星 (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

 

次作 

七福星 (字幕版)

七福星 (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

 

 

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「スイス・アーミー・マン」 2016

スイス・アーミー・マン(字幕版)

★★★☆☆

 

あらすじ

 無人島で助けを待っていた男は、漂着した十徳ナイフのような男の死体を使って故郷へ帰ろうとする。 

 

感想

 おならを動力にした水上スキーのようなものになったり、口から真水が出たりして、何かと役に立つ機能を持つ死体が登場するという、一言で言えばとてつもなく変な映画。シュールというか、悪趣味というか、下品というか、何とも言えない世界観に戸惑わさせられる。死体役を「ハリー・ポッター」のダニエル・ラドクリフが演じているのだが、よく引き受けたなと驚いてしまう。

ハリー・ポッターと賢者の石 (字幕版)

ハリー・ポッターと賢者の石 (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

 

 映画はそんな設定なのだから、当然バカバカしいコメディ映画なのだろうなと思っていたらそうでもない。確かに笑えるシーンはたくさんあるのだが、次第にいい話の要素も入ってくる。好きな女性に声をかけることも出来なかった主人公が、死体との会話を通じて劣等感を解消し、自信をつけていく物語となっていく。

 

 おそらくこの映画を見て、めちゃくちゃな設定の映画なのに最後はホロリとさせてすごい、という感想を持つ人がいる事は想像できる。だが個人的にはコメディなのかヒューマンドラマなのか、どっちかにして欲しいというのが素直な感想。あまりそんな意外性は求めていないので、これだとただの中途半端な映画のように思えてしまう。どうせなら突き抜けたおバカなコメディ映画にして欲しかった。

 

 

 ストーリー的にも、主人公は島から脱出し一刻も早く故郷に帰りたい、という感じだったのに、途中で死体と戯れ、だらだらと過ごしているのがイライラした。後に故郷までは何日もかかる距離ではなかった、という事が判明するのだが、だったらなおさらさっさと帰れよ、と思ってしまった。でも、それを指摘したら「怒るなよ。それもユーモアじゃん、分かんないの?」とか半笑いで答えられそうな感じがなんか嫌だ。それはそれで言い訳を用意して逃げているようにも思える。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 ダニエルズ(ダニエル・シャイナート/ダニエル・クワン)

 

製作 ローレンス・イングリー/ジョナサン・ワン/ミランダ・ベイリー/アマンダ・マーシャル/エヤル・リモン/ローレン・マン

 

出演 ポール・ダノ/ダニエル・ラドクリフ/メアリー・エリザベス・ウィンステッド

 

スイス・アーミー・マン(字幕版)

スイス・アーミー・マン(字幕版)

  • 発売日: 2018/02/21
  • メディア: Prime Video
 

スイス・アーミー・マン - Wikipedia

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「17歳の風景 少年は何を見たのか」 2005

17歳の風景 [DVD]

★★★☆☆

 

あらすじ

 母親を殺し、自転車を北へ走らせる17歳の少年。2000年に起きた「岡山金属バット母親殺害事件」をモチーフとした映画。

岡山金属バット母親殺害事件 - Wikipedia

 

感想

 殺人事件を描くのではなく、その後の、少年が自転車で北に向かう様子が描かれる。たまに他の人物たちが登場する事はあるがほとんど言葉を交わすこともなく、ただただ少年が自転車を走らせる姿が延々と映し出されるロードムービー。タイトル通り、事件後に少年が見ただろう風景を捉え、彼がそこで何を考え、何を思っていたのか、観客に想像させようとしているような映画。

 

 少年を演じるのは柄本佑。ほとんどセリフもなく、表情も変えず、ただ自転車を漕いでいるだけなのだが、いかにも思い詰めて何かやらかしそうな顔をしているので、詳細に事件の事は描かれていないのに妙に説得力がある。いい顔だ。黙々としている彼の代わりに、時おり流れるインパクトのある友川かずきの歌が、彼の心を表現しているかのようだった。

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 途中で数少ない登場人物の一人、針生一郎演じる老人が少年に語り掛けるシーンがある。これがいかにもな老人の語り口で印象的だった。どんどんと話が逸れていき、まるで一人語りのようでいっこうに終わる気配がない。

 

 針生一郎は評論家で、役者ではないので演技ではなくアドリブで喋っているだけなのだと思うが、語っているうちに次々と思い出して、次々と語りたいことが溢れてくる感じ。それでも普通なら収拾がつかなくなって、何が言いたかったのか分からないグダグダの話で終わってしまうところを、最終的にはちゃんと本題に戻ってきてしっかりと話をまとめて終わらせたのはさすがだった。ただものじゃない。 

機関〈17号〉針生一郎特集 (美術をめぐる思想と評論)

機関〈17号〉針生一郎特集 (美術をめぐる思想と評論)

  • 発売日: 2001/06/01
  • メディア: 単行本
 

 

  モチーフとなった実際の事件の少年は、岡山から秋田まで行ってそこで捕まったとの事だが、この映画ではほとんど日本海側の雪国を自転車で走る様子が映し出される。雪が降り積もるような場所で自転車なんかが走れるのか?と変な心配をしてしまったが、道路はきちんと除雪されていてちゃんと走りやすいようになっていた。

 

 きっと北国では、雪が降ることは織りこみ済みで、それに対処する方法もちゃんと整備されているという事か。逆に滅多に雪が降らない地域だと、降雪時に道路の除雪がされず、道端にノーマルタイヤでスリップして動けなくなった車があちこちで停まっている、みたいな光景が広がりがちだ。ただ、映画では除雪されていない山道も登場し、北国と言えども自転車で走るにはきつい道があることも分かる。北国の道路事情を知るにもいい映画だ。

 

 

 ほとんど誰とも言葉を交わすこともなく、ひたすら自転車を漕ぐ少年。雄大な自然の中でも景色を楽しむ素振りはなく、ただ前だけをじっと見つめて自転車を走らせる。きっと自分のやらかした事にまともに向き合わないですむように、北海道へ向かうという困難な目標を定めて、それに集中することで現実逃避をしているのだろう。ふとした瞬間に事件のことを思い出してしまっても、無心で自転車を漕ぐことで忘れることができる。

 

 しかしそれもゴールが見えた時、たどり着くのが困難だと思えたゴールが見えてしまった時に効力を失ってしまう。それ以上の目標を新たに定めることができず、現実に立ち戻るしかなくなってしまった。少年にとってこの自転車旅は、ある意味で彼自身が設けた心を整理するためのモラトリアム(執行猶予)期間だったと言えるのかもしれない。

 

スタッフ/キャスト

監督 若松孝二

 

出演 柄本佑/不破万作/田中要次/針生一郎/関えつ子 

 

音楽 友川かずき

 

17歳の風景 [DVD]

17歳の風景 [DVD]

  • 発売日: 2007/10/26
  • メディア: DVD
 

  

 

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「ダウンタウン」 1990

ダウンタウン [DVD]

★★★☆☆

 

あらすじ

 左遷のような形で犯罪多発地域に異動となった白人警官。

 

感想

 治安の良い地域からダウンタウンの犯罪多発地域に左遷された白人警官が、あまりの環境の違いに戸惑う姿を楽しむコメディ映画と言えるが、あまり面白くないというのが正直なところ。そのくせ、シリアスな場面は妙に重苦しかったりして、とてもバランスが悪い。

 

 もっと笑いの量を増やして、分かりやすいコメディ映画にして欲しかった。あるいは逆に、シリアス路線でも良かったのかもしれない。ただシリアスなパートは、ありがちな話なので陳腐になってしまうかもしれないが。とにかく、お気楽に見ればいいのか真面目に見ればいいのか、ちゃんと分るようにしてくれた方が落ち着かない気分にならずにすむので有難い。

 

 

 映画の方向性はイマイチ定まっていなかったが、メインとなる事件の描き方は面白かった。早い段階で犯人も事件の大体のあらましも分かるのだが、肝心の彼らの悪事の実態は終盤になるまで分からない。その真相が明らかになった時は、なるほどうまい手口だなと感心してしまった。クライマックスのアクションも、主人公の車の運転が上手過ぎる事にはかなり引っかかったが、見ごたえがあって終盤はなかなか悪くない展開だった。

 

 この映画は白人の主人公が、フォレスト・ウィテカー演じる黒人警官に最初は拒絶されながらも次第に認められ、絆を深めていくというバディー・ムービーでもある。なのに肝心のクライマックスでは黒人警官が不在。一番盛り上がるはずの所だったので、肩透かし感が半端なかった。それにあの展開であれば、他の同僚たちとの関係をもっとちゃんと描いておくべきだった。

 

 主人公は、黒人警官の子供たちにビーチ・ボーイズを教えたりして影響を与えているのに、その逆に彼らから影響を受けてる様子はなくて、これもまたバランスが悪い。現代だったら色々と言われてしまいそうだ。ベタだがヒップホップ音楽を聴くようになったり、彼らのソウルフードであるホルモン料理が大好きになったりして、互いに良い影響を与え合っている風にしてくれていたら、どこか居心地の悪い思いをしなくて済んだかもしれない。

 

 しかし、主人公の好きなミュージシャンがビーチ・ボーイズというのは、さすがに古臭い気がする。サーフィンをする白人の裕福な家庭の子供たち、というイメージで、白人文化を象徴するようなグループだからチョイスしたのだと思うが。

ペット・サウンズ

ペット・サウンズ

 

 

スタッフ/キャスト

監督 リチャード・ベンジャミン

 

出演 アンソニー・エドワーズ/フォレスト・ウィテカー/ペネロープ・アン・ミラー/デヴィッド・クレノン/ジョー・パントリアーノ/アート・エヴァンス/ワンダ・デ・ジーザス/グレン・プラマー

 

音楽 アラン・シルヴェストリ

 

ダウンタウン [DVD]

ダウンタウン [DVD]

  • 発売日: 2006/03/10
  • メディア: DVD
 

ダウンタウン (1990年の映画) - Wikipedia

 

 

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「項羽と劉邦 鴻門の会」 2014

項羽と劉邦 鴻門の会(字幕版)

★★★☆☆

 

あらすじ

 漢の初代皇帝・劉邦は晩年を迎え、過去の戦いを振り返る。

項羽と劉邦 鴻門の会 - Wikipedia

 

感想

 晩年を迎えた劉邦が過去を回想しながら、後顧の憂いをなくすために粛清を行っていく様子が描かれる。キーとなる「鴻門の会」も項羽との対決も、中国人や歴史に詳しい人ならみんな知っているような事なので、描き方を工夫しているという事なのだろう。

 

 劉邦が天下を取って行く過程がアクション満載で描かれていく映画かと思っていたがそうではなく、登場人物たちの心理的側面を丁寧に描いていく内容となっている。映像も彼らの内面を浮かび上がらせようとするように、陰影が濃くなっている。

 

 

 もはや劉邦の意識が混濁しているという事なのか、韓信が粛清されていく流れがいまいち分かりづらかった。韓信はまず牢獄に6年間つながれ、その後、張良の家に6年幽閉された後、謀反の嫌疑で処刑された、という事か。6年もあの状態でつながれるのはきついし、その後に牢獄から出したというのもすごい。そんなに長い事つないでいたという事は、もはや見捨てたようなものかと思っていたが、現代と同じように懲役6年、みたいな感じだったのか。

 

 韓信が謀殺されるとほぼ分かっていながら、そこに向かって一歩ずつ進んでいくときの、何とも言えない表情が切なかった。そして処刑の瞬間は、走馬灯のように劉邦との思い出が駆け巡る。この二人の楽しかった過去の思い出の総集編は、もう男女の恋愛とそう変わらないなと思ってしまった。二人で見つめ合い、笑顔を交わしている。

 

 そして劉邦も死期を迎える。「鴻門の会」がすべてだった、と語るわけだが、そこで死んでいたら今の彼はなかったという意味では、確かにターニングポイントであったことは間違いない。でも、映画的にはそんな風に感じられるようには描かれていなかったのが若干モヤモヤとした。

 

 ただあの窮地に全力で彼を守ろうとしてくれた人間たちを、今は次々と粛清しているという何とも言えないやりきれなさは伝わってくる。天下を取ったとしても楽しい事ばかりではない。ラストの白髪、白装束でふらふらと彷徨う年老いた劉邦の姿は、黒澤明の「乱」のシーンを思い起こさせた。

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スタッフ/キャスト

監督/脚本/製作 ルー・チュアン

 

出演 リウ・イエ/ダニエル・ウー/ニエ・ユエン

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項羽と劉邦 鴻門の会(字幕版)
 

項羽と劉邦 鴻門の会 - Wikipedia

項羽と劉邦 鴻門の会 | 映画 | 無料動画GYAO!

 

 

登場する人物

劉邦/項羽/韓信/呂雉/張良/蕭何/項伯/子嬰/項荘

 

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「スーサイド・スクワッド」 2016

スーサイド・スクワッド(字幕版)

★★★☆☆

 

あらすじ

 メタヒューマン対策として集められた使い捨ての犯罪者たち。「DCエクステンデッド・ユニバース」シリーズ第3作目。

 

感想

 減刑や特別待遇をチラつかせて、政府の都合の良いように使い捨てる計画で集められた死刑や終身刑となった極悪人の犯罪者たち。最初に彼らの犯罪者ぶりが描かれるが、皆個性的で多種多様だ。

 

 なかでも、ジョーカーの恋人、ハーレイ・クインは、露出の多い服装でバットを手にしたクレイジーな女。いかにも漫画的なキャラクターなのだが、リアル路線の実写映画に溶け込んだキャラクターに仕上げているのはさすがだ。演じるマーゴット・ロビーの演技力によるところが大きい。とはいえ、かなりギリギリな感じはあるのだが、その際どい感じが良いのかもしれない。

ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY(字幕版)

ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY(字幕版)

  • 発売日: 2020/05/15
  • メディア: Prime Video
 

 

 悪人集団の戦う姿を描きつつ、彼らを操る政府の極悪非道ぶりも描いて、本当の「悪」とは何か?みたいなテーマを問おうとしていたような気がするのだが、それが上手くいっていないのは、そもそもの「悪」が上手く設定されていないからだろう。

 

 登場する悪人たちは善悪の判断がつかず、何をしでかすか分からない悪人たちではなくて、ただマイ・ルールに則って動いているだけ。それは最初から窺えて、そうでなければ、こんな簡単に極悪人たちが仲良くチームを組めるわけがない。まずは仲間内で揉めに揉めるはずだが、そんな事は全くなかった。

 

 

 それは政府に常に監視され、生殺与奪の権利を握られているのが理由なのかもしれないが、本当にヤバい奴らであれば、それでも言うことを聞かないはずだ。そんなある意味でちゃんと理性のある人間たちを、まるで人間のクズみたいな扱いをしている事にちょっと違和感を感じてしまった。それにメンバーそれぞれの行った犯罪を見ていくと、そこまで極悪人ではないのかも、という気にもなる。ウィル・スミス演じる男はただ仕事として殺し屋をやっていただけだし、何人かは、望まない身体や能力を持ってしまった故に、という悲しきモンスター風な者もいる。

 

 クレイジーなメンバー達が、陽気に愉快に任務を遂行していくような映画だったら痛快だったのかもしれない。だが、やっているミッションの本当の目的を知った途端に、「それは出来ない」と急に真顔になったりして、え、悪人のくせにそんな事を気にするのか、と冷めてしまった。そこは、望みを叶えてくれるならなんだってやるよ、という態度でいて欲しかった。そして時おり悪人ならではの鋭い一言を放ってくれたら、それで満足できたような気がした。

 

 とはいえそんなことをしたら、単なる馬鹿っぽい映画になってしまい、深みが無くなってしまうというのは分かる。だが、かといって過去に犯した罪を悔い悩み、反省して真っ当に生きていこう、と決意する物語にしたら、刑務所で上映したくなるような更生を促す暗くて重い映画になってしまう。おそらくは両者の間のどこかにするのが良いのだろうが、そのバランスが難しい。

 

 最初は彼らの事を、何をしでかすか分からないような、とんでもなくヤバい奴みたいに描いていたくせに、最後には随分と普通の人間らしい存在になってしまっていたのがモヤっとする。観ていたら、そもそも「悪」とは何かが分からなくなってきた。製作者の意図とは違う意味で「悪」について考えてしまう。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 デヴィッド・エアー

 

製作総指揮 ジェフ・ジョンズ/ザック・スナイダー/デボラ・スナイダー/コリン・ウィルソン


出演 ウィル・スミス/ジャレッド・レト/マーゴット・ロビー/ヨエル・キナマン/ヴィオラ・デイヴィス/ジェイ・コートニー/ジェイ・ヘルナンデス/アドウェール・アキノエ=アグバエ/福原かれん/アダム・ビーチ/ベン・アフレック/エズラ・ミラー/アイク・バリンホルツ/スコット・イーストウッド/カーラ・デルヴィーニュ /コモン/(写真)ジェイソン・モモア

 

スーサイド・スクワッド(字幕版)

スーサイド・スクワッド(字幕版)

  • 発売日: 2016/11/23
  • メディア: Prime Video
 

スーサイド・スクワッド (映画) - Wikipedia

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ワンダーウーマン(字幕版)

ワンダーウーマン(字幕版)

  • 発売日: 2017/10/27
  • メディア: Prime Video
 

 

 

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「女帝 春日局」 1990

女帝 春日局

★★★★☆

 

あらすじ

 江戸城大奥内での陰謀に巻き込まれる形で、徳川家光の乳母となったのちの春日局、おふく。

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感想

 後継ぎに恵まれないことが、秀忠の第2代将軍就任の障害となっていたために、焦っていた大奥の女たちにより企てられた陰謀。そこにうってつけの血筋の赤子を産んだのちの春日局である主人公がいたというのは、あまりに都合が良すぎるのだが、なかなか面白い歴史改変だ。

 

 しかし、そのきっかけとなった家康のやりたい放題ぶりは、まさに天下人といったところで、楽しそうだった。まるでVシネみたいな展開もあるのだが、きっとこんな事を日常茶飯事でやっていたのだろうなと想像してしまう。これくらいのバイタリティーがないと、天下なんて取れないのだろう。好色ぶりを見せながらも、しっかりと将軍としての風格も示した若山富三郎のメリハリの利いた演技が見事だった。

 

 

 その後、秀忠に本当の男児が生まれて、主人公と大奥の女たちとの間に確執が生まれる。女たちは、秀忠を将軍職に就けるためになりふり構わずやったのだから、もうそのままにしておけば良かったのに、と思ってしまった。彼女たちの中で、正当な血を引く者に跡を継がせたいという、新たな欲が出てしまったという事か。それから大奥の事とは言え、秀忠の存在感が薄かったのも解せなかった。

 

 この女たちの戦いに勝利して、主人公は権力を握っていく、という話なのだが、あまり主人公の凄みは伝わってこない。確かにお役御免にされそうになった時に、ここが勝負時とばかりに強かさは見せたが、でもそれだけ。ただ運が良かっただけ、という印象の方が強い。

 

 主人公は、気抜けしてしまった旦那を捨てて江戸に出たりと、気の強さは垣間見せていたわけだから、もっと野心を前面に出して、大奥の中でバチバチと火花の散るような権力闘争を見せて欲しかった。もっと言えば、陰謀はすべて主人公が仕掛け、赤ん坊も徳川家とは無縁の子供だったら、もっと彼女の凄みが感じられたかもしれない。

 

 細かい所を言えば色々と気になる点はあるのだが、豪華なセットや衣装、そして草笛光子と淡路恵子の、世の酸いも甘いも噛み分けたようなベテラン女性を演じた演技もよくて、見ごたえのある映画にはなっていた。

 

スタッフ/キャスト

監督 中島貞夫

 

出演 十朱幸代/名取裕子/鳥越マリ/草笛光子/吉川十和子/原田大二郎/本田博太郎/淡路恵子/長門裕之/若山富三郎/堂本直宏(堂本剛)

 

撮影 木村大作 

 

女帝 春日局

女帝 春日局

  • 発売日: 2015/12/25
  • メディア: Prime Video
 

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登場する人物

春日局/徳川秀忠/お江与(崇源院)/小早川秀秋/稲葉正成/大久保忠隣/本多正信/徳川家康

 

  

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「バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生」 2016

バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生(字幕版)

★★★★☆

 

あらすじ

 スーパーマンに反感を覚えるバットマン。「DCエクステンデッド・ユニバース」シリーズの第2作目。

 

感想

 正直、前半は良く分からなかった。前作となる「マン・オブ・スティール」を見てないせいかと思ったが、そのせいだけでもないらしく、この映画の未公開シーンを追加した「アルティメット版」を見ないと分かりづらい内容になってしまっているようだ。

 

 それから、バットマンはこのシリーズ初登場なのに、さも当然のように登場していて、どのように誕生して、これまでどんな風に活躍してきたかというのは描かれておらず、それでいいの?と思ってしまった。でも、クリストファー・ノーランの「バットマン」シリーズもあることだし、それを描くとくどく感じる人も多いだろうし、詳細はそっちを参照してくれ、という事なのかもしれない。

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 ぼんやりとしか話の流れが分からないし、雰囲気も陰鬱でイマイチな映画だなと思っていたのだが、バットマンとスーパーマンが派手な戦いを繰り広げる中盤くらいから面白くなってきた。といっても物語の面白さというよりは、戦闘シーンの面白さなのだが。どちらか一方が圧倒的に強いわけではなく、何度も反撃を喰らいつつも最終的にはなんとか勝つという展開に、手に汗握って見入ってしまった。プロレス的な面白さと言っていいのかもしれない。

 

 

 そして、対立していたスーパーマンとバットマンの和解。なんだか喧嘩をした後に親友になってしまう不良漫画のスケールがでかい版のようで微笑ましい。母親の事を持ち出されると心がグラついてしまうところとか、男子のマインドは世界共通なのだろう。

 

 この映画ではDCコミックスのキャラクター「ワンダーウーマン」も登場する。自分の中ではスーパーマンとバットマンは超メジャーなキャラクターだが、ワンダーウーマンは誰?みたいな感じなので、ビッグな二人の共演にわざわざ出さなくてもいいのでは、と思ってしまった。それに彼女の強さの度合いもよく分からないので足手まといになりそう、と余計な心配までしてしまった。だがこのタイプの映画だと、ヒーロー同士の力のバランスが難しそうだ。

 

 最後はヒーローたちが集結することを匂わせてエンディング。マーベルのシリーズもそうだが、ヒーローがチームを組んで戦う方式というのは日本の戦隊ものと似ている。もしかしたら何らかの影響を与えているのかもしれないとふと思った。でも西欧でも人間がチームを組んで活躍する映画というのはよくあるので、超人的なヒーローは孤高でないといけない、という思想があるのかもしれない。そう考えると、一神教が何らかの影響を与えているのか?と思ったりもした。

   

スタッフ/キャスト

監督/原案 ザック・スナイダー

 

脚本 クリス・テリオ

 

脚本/原案/製作総指揮 デヴィッド・S・ゴイヤー


製作総指揮 スティーヴン・マヌーチン/ベンジャミン・メルニカー/マイケル・E・ウスラン/エマ・トーマス/ウェスリー・カラー/ジェフ・ジョーンズ

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出演 ベン・アフレック/ヘンリー・カヴィル/エイミー・アダムス/ジェシー・アイゼンバーグ/ダイアン・レイン/ローレンス・フィッシュバーン/ジェレミー・アイアンズ/ホリー・ハンター/ハリー・レニックス/ガル・ガドット/TAO/エズラ・ミラー/ジェイソン・モモア/スクート・マクネイリー/ジェナ・マローン/カラン・マルヴェイ/マイケル・シャノン/ジェフリー・ディーン・モーガン/ローレン・コーハン

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音楽 ハンス・ジマー/ジャンキーXL

 

バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生(字幕版)
 

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マン・オブ・スティール(字幕版)

  • 発売日: 2013/12/18
  • メディア: Prime Video
 

 

DCエクステンデッド・ユニバース 次作 シリーズ第3作目

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「男子高校生の日常」 2013

男子高校生の日常

★★☆☆☆

 

あらすじ

 女子高と共同で 文化祭を行う事になり、女子を意識しだす男子高校生たち。

 

感想

 女子に興味はあるが、いざ面と向かうと何も言えなくなってしまうとか、結局そうなることは分かっているのに、それでもやっぱり女子と接点を持ちたいと思ってしまうとか、この年頃の男子高校生の複雑な精神状態をうまく描けている。友人たちと子供のようにじゃれ合ったりしつつも、どこかで互いの女子への好奇心具合を探ったり。

 

 しかし、一方の女子の描き方は酷かった。この年頃では女子の方が大人っぽいという事を表したかったのかもしれないが、ただただ男子の事を見下し、小馬鹿にしている嫌な奴らという印象しかない。その代表格の女子役の山本美月は、上手く演じたところで損しかしないのでは?と心配になってしまった。

 

 

 女子は女子で大人ぶって興味ないようなふりしているが、実際は普通に男子を意識している、という描き方の方が、自然だったように思う。実際の所は誤解なのだが、男子高生の目を通すとそう見えたという事なら、客観的には中立に描いて、台詞などで笑いに変えた方がしっくりくる。あまりにも女子高生たちが感じ悪く見えてしまって、本来なら男子と何かあるのかなと思うようなシチュエーションだが、そんなのなくて結構、と言いたくなった。

 

 映画はタイトル通りで、男子高校生の日常をただただ描いただけの物語。起承転結もなく、だらだらと同じテンポで90分。これを映画でやろうとした意味が正直よく分からない。「サザエさん」のように、登場人物の設定がずっと変わらない30分ほどのコメディドラマシリーズでやるなら理解できるが。

 

 映画なんだから、多少は男子高生らに何らかの変化が訪れるのかなと思ったのだが、最後まで何も起きず、何も変わらないエンディングで脱力してしまった。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 松居大悟

 

原作 男子高校生の日常 1巻 (デジタル版ガンガンコミックスONLINE)


出演 菅田将暉/野村周平/吉沢亮/岡本杏理/山本美月/太賀/角田晃広/東迎昂史郎/栗原類/上間美緒/三浦透子/山谷花純/白鳥久美子/高月彩良/小池唯/奥野瑛太/佐藤二朗

 

男子高校生の日常

男子高校生の日常

  • 発売日: 2014/03/19
  • メディア: Prime Video
 

男子高校生の日常 - Wikipedia

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「帰ってきたヒトラー」 2015

帰ってきたヒトラー(字幕版)

★★★★☆

 

あらすじ

 現代にタイムスリップしたヒトラーは、テレビ出演をきっかけに人気者となっていく。 

 

感想

 ナチスドイツの総統として振舞うヒトラーと現代のドイツ人が交わることで浮き彫りになるギャップや感覚の違いを楽しむコメディ映画なのだが、全然噛み合わないというわけでもなく、むしろ現代人にそれなりの共感が生じてしまっていることにゾッとしてしまう。勿論面白いのだが、どこかで単純に笑ってはいられないなという、うすら寒い感覚がある。 

 

 きっと当時も、ヘンな人だけど言ってることは一理あるよな、おかしな事言ってないよな、みたいな感覚で少しずつ支持を集めていったのだろう。彼のやり方は、時勢や情勢が合えば、人々に受け入れられる可能性のある普遍性を持ったものだという事を教えてくれる。

 

 

 ヒトラーが外に出て世間の人たちと会話するシーンは、アドリブ形式で撮影されたそうだが、普通のおばさんとかが無邪気に外国人排斥の意見を言っていたりして、すごいなと思ってしまった。日本だったら「自分はただの日本を愛するどこにでもいる普通の日本人なんですが…」というよく分からない長いエクスキューズで前置きをしてからでないと、そういうことは言わないような気がする。無邪気に本心を言うのと、防御線を張らないと本心を言えないのと、どっちが良いのか悪いのか、よく分からないが。

 

 しかし、ヒトラーはもっと人々の拒否反応を引き起こすものかと思っていたので、町の人たちのそうでもない反応が意外だった。単純にヒトラーが登場するのは良くて、鉤十字のマークがついていたら駄目とか、そのあたりのタブーの線引きが良く分からない。結局は、賛美する内容になっていないかなどの中身が重要という事なのか。

 

 テレビ出演したヒトラーは、意外にも世間で人気となる。彼自身の大衆への接し方は、総統感を出しながらもかなりまともな対応。確かにそうでないと大衆の支持は得られなかっただろうなと思わせられた。それに対して、彼に思想的に近いはずの極右政党や積極的な支持者に対しては、かなり手厳しい対応をしていたのは、かなり皮肉が効いていた。彼から見れば、子どもの兵隊ごっこ並みの、モノマネしているだけの偽物にしか見えなかったのだろう。

 

 これは確かに的を得ているような気がする。日本でもヒトラーのような過激な発言をする人がいるが、彼らは皆批判されると逃げるか無視するか、論点をずらすか罵倒するか、もしくは急に被害者面をし出すかで、まともな議論をしようとせず、信念がない事だけがよく分かる。多分本物が一番忌み嫌うタイプだろう。ヒトラーがネオナチに襲われるとか、もう笑うしかないが、彼らならそういう卑怯なことをやりそうである。

 

 そういった風刺の効いた笑いだけでなく、ヒトラーを発見した男がなぜか「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の主人公ぽい衣装を聞いていたり、個人的には本編を見ていないので詳細は分からないが、「総統閣下はお怒りの様子です」ネタでおなじみの「ヒトラー 〜最期の12日間〜」のパロディーもあったりして、単純に笑えるシーンもある。笑いの種類が豊富で感心してしまった。

 

 それでいて、現代でもナチスドイツのような事が起こり得る、という警鐘も鳴らしていて、本当によく出来ている。あまり誰も拒絶反応を示してないが、ホロコーストの件はどうなのと少しひっかかっていたのだが、それもおばあさんが突然激怒するシーンがあって、逆にインパクトのある効果を生み出していた。

ヒトラー ~最期の12日間~ (字幕版)

ヒトラー ~最期の12日間~ (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

 

 その後早速、ヒトラーをムッソリーニに置き換えたリメイク映画が作られたようだが、もし日本版を作るとどうなるのだろう。そもそもヒトラーの代わりは東条英機?もしくは昭和天皇?誰になるのだろうか。昭和天皇でやったら騒動が起きそうなのは分かるが、誰でやるにしろ、面白くはならなさそうだ。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 ダーヴィト・ヴネント

 

原作 帰ってきたヒトラー 上 (河出文庫)


出演 オリヴァー・マスッチ/ファビアン・ブッシュ/カッチャ・リーマン/クリストフ・マリア・ヘルプスト/フランツィスカ・ウルフ/トーマス・ティーメ

 

帰ってきたヒトラー(字幕版)

帰ってきたヒトラー(字幕版)

  • 発売日: 2016/12/23
  • メディア: Prime Video
 

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登場する人物

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関連する作品

ヒトラーをムッソリーニに置き換えたリメイク作品 

帰ってきたムッソリーニ(字幕版)

帰ってきたムッソリーニ(字幕版)

  • 発売日: 2020/03/03
  • メディア: Prime Video
 

 

  

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「ジャッキー・チェンの秘龍拳/少林門」 1976

ジャッキー・チェンの秘龍拳/少林門 (字幕版)

★★★☆☆

 

あらすじ

 少林寺を裏切り、勢力を振るう兄弟子を倒すため、修行を積んだ主人公。主演はジャッキー・チェンではなく、レオン・タン。

  

感想

 ジャッキー・チェンは主人公じゃない、という前提知識があるかどうかで、映画の印象がかなり変わってしまいそう。タイトルを信じて見始めると、騙されたと思って、もうそれだけで腹立たしく感じてしまうはずだ。

 

 画質はかなりきれいなのだが、まだジャッキー・チェンが主演をバンバンとやり出す前の作品。彼もサモ・ハン・キンポーも、ほんのチョイ役で出ているユン・ピョウも全然若い。そして監督はジョン・ウー。彼がこの時代から活動していて、ジャッキー・チェンらと接点があるという事が、何だか意外な気がしてしまうが、彼のほうが8歳ほど年上だから別に不思議ではないのか。

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 この映画の主人公、レオン・タン演じる若者は、優等生というか、真面目というかで、あまり愛嬌がない。勿論、敵を倒すのに愛嬌なんていらないのだが、映画的には随分と面白みに欠けてしまう。キャラクターとして、もうちょっと何か魅力的に感じる部分が欲しかった。

 

 それでも主演をやるだけあって、レオン・タンの武術の腕はなかなかのもの。テコンドーの達人らしく、片足で立ったまま足技を連続して繰り出すシーンはすごかった。そしてそれを撮るのはジョン・ウー。それなりに見ごたえのあるアクションに仕上がっている。

 

 

 ただ、敵と激しく戦っていても、両者がほぼ無言なのはイマイチ盛り上がりに欠ける。砲丸投げの選手なども雄叫びを上げるのは決まって投げた後なので、声を出しながら戦うと力が入らないという事なのだろうとは思うのだが、絵的にはどうにもさまにならない。そう考えると、ブルース・リーの「アチョー」などと発する怪鳥音というのは、映画的に効果的な表現方法と言えるのかもしれない。

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  映画は、主人公の元に仲間が集まり、皆が協力して敵と戦う、という物語で、それぞれに見せ場も用意されており、なかなかうまくまとまっている。だが、先が読める物語ともいえて、意外性は感じないかもしれない。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本/出演 ジョン・ウー

 

製作総指揮 レイモンド・チョウ

 

出演 レオン・タン/ジャッキー・チェン/ジェームズ・ティエン/サモ・ハン・キンポー/ユン・ワー/ユン・ピョウ

 

音楽 ジョセフ・クー
 

ジャッキー・チェンの秘龍拳/少林門 (字幕版)

ジャッキー・チェンの秘龍拳/少林門 (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
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「007 カジノロワイヤル」 1967

カジノ・ロワイヤル 1967 (字幕版)

★★★☆☆

 

あらすじ

  引退し隠遁生活を送っていた007・ジェームズ・ボンドは、各国の諜報機関のトップに請われて復帰することになる。007シリーズのパロディ。

 

感想

 007シリーズのパロディ映画。上品な「オースティン・パワーズ」といった所か。ただ、笑わせようとしているポイントは理解できるが、今となってはそんなに笑えない。ただ、豪華な出演陣でまずまずは楽しめる。

オースティン・パワーズ(字幕版)
 

  

  出演陣の中で印象的だったのは、実際にジェームズ・ボンドのモデルの一人とされているデヴィッド・ニーヴン。上品でダンディーで小粋なジョークも言い、確かに元祖ジェームズ・ボンドといった風格が漂っていた。

The Moon's a Balloon

The Moon's a Balloon

 

 

 そして、ピーター・セラーズも若きジェームズ・ボンドといった雰囲気で良かった。彼はもっと世代が上の人かと思っていたが、全然若かった。しかし、良い存在感を放っていたのに、訳が分からない感じで途中でいなくなってしまった。なんでも彼は撮影中、大物オーソン・ウェルズに怖れおののき、ついには途中で降板してしまったらしい。スターが終結すれば色々あって、このエピソードもそれはそれで面白い。

 

 映画では、この時代特有なレトロフューチャーな世界観のセットや、シュールな絵画を再現したようなセットなど、こちらもお金をかけていて見応えがあった。こういう映画ならではのシーンというのはワクワクさせてくれる。

 

 

 コメディを楽しむというよりは、豪華なスターやセットを楽しむという感じだった。ただ、この中では若手のウディ・アレンやジャン=ポール・ベルモンドが登場するとコメディが活性化するような感じがあって、やはりいつの時代も若い世代の活躍が活気を生むのだなと実感した。

 

スタッフ/キャスト

監督 ジョン・ヒューストン/ケン・ヒューズ/ロバート・パリッシュ/ジョセフ・マクグラス/ヴァル・ゲスト

 

監督/出演 ジョン・ヒューストン

 

原作 007/カジノ・ロワイヤル (創元推理文庫)

 

出演 ピーター・セラーズ/ウルスラ・アンドレス/デヴィッド・ニーヴン/オーソン・ウェルズ/ジョアンナ・ペティット/ダリア・ラヴィ/デボラ・カー/シャルル・ボワイエ/ジョージ・ラフト/バルバラ・ブーシェ/ジャッキー・ビセット/ピーター・オトゥール/デヴィッド・マッカラム/アンジェリカ・ヒューストン/キャロライン・マンロー/バート・クウォーク/デヴィッド・プラウズ

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音楽 バート・バカラック/ハーブ・アルパート&ザ・ティファナ・ブラス

 

カジノ・ロワイヤル 1967 (字幕版)
 

007 カジノロワイヤル (1967年の映画) - Wikipedia

 

 

 

関連する作品

原作が同じ作品 

カジノ・ロワイヤル (字幕版)

カジノ・ロワイヤル (字幕版)

  • 発売日: 2014/02/26
  • メディア: Prime Video
 

 

 

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「九ちゃんのでっかい夢」 1967

九ちゃんのでっかい夢

★★★☆☆

 

あらすじ

 ガンで余命が幾ばくも無いことを知り絶望するが、自殺する勇気がなく、殺し屋に自身の殺しを依頼する芸人。

 

感想

 初めてがっつりとカラーで動いている坂本九を見たが、ツルツルだと思っていた肌の質感とかが全然違って意外だった。映画館の大きなスクリーンで観たら結構インパクトがあるかもしれない。とっちゃん坊やというか、童顔で可愛らしいイメージだったが、後ろ姿なんてそこらにいそうな普通のおじさんだった。

坂本九 プレミアム・コレクション BHST-165

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  • アーティスト:坂本九
  • 発売日: 2015/11/09
  • メディア: CD
 

 

 ただ、朗らかで親しみの持てるキャラクターであることは間違いない。逆にこのキャラクターが、彼のビジュアル的なイメージに下駄をはかせていたといえるかもしれない。ちなみに伊東四朗や三波伸介ら芸人たちも出演しているのだが、まじまじと見てみると皆いかつい顔をしているし、どことなくヤクザな雰囲気が漂っていてなんか怖い。これもいつもニコニコしている姿に騙されてしまっているという事なのかもしれない。

 

 芸人の話という事で、主人公である坂本九が舞台で歌って踊ったり、コミカルな出し物をするシーンがあって、まさにエンターテイメント映画といったところ。今見るとそんなに笑えるわけではないが、きっと当時は映画館で大いにウケて、観客の日ごろの憂さを晴らすのにもってこいだったのだろう。

 

 

 流行りの曲のモノマネもしているようだったが、そういう時事ネタを織り交ぜているところも大衆娯楽映画ぽい。坂本九は実はそんなに歌は上手くないのかなと思っていたが、この映画内では普通に上手かった。

 

 クライマックスは殺し屋を巻き込んでのドタバタ劇。ただ本当にドタバタしているだけで、笑いは薄かった。この中で、外国人役の男たちが外国語で喋るシーンを妙に長々とやっていたのは何故なのだろう。当時は外国人自体が珍しかったので、聞き慣れない外国語が耳に可笑しく響いたという事だろうか。

 

 その後の、舞台の股旅姿のままで劇場を飛び出し、現代の町を走り回る画は面白かった。確か映画「幕末太陽伝」で、監督の川島雄三は、こんなことをやりたかったそうだが、やっても全然ありだったなと感じた。

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 エンディングは、「市民ケーン」ぽかったオープニングにつながるような、上手い締めくくり方。でもちょっとコメディ映画にしては、物悲しすぎるような気もした。

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スタッフ/キャスト

監督/脚本

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出演 坂本九/倍賞千恵子/竹脇無我/ジェリー富士夫/佐山俊二/E・H・エリック/大泉滉/渡辺篤/左卜全/三波伸介/伊東四朗/谷よしの/犬塚弘/桜井センリ/有島一郎

 

九ちゃんのでっかい夢

九ちゃんのでっかい夢

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

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「アニー・イン・ザ・ターミナル」 2018

アニー・イン・ザ・ターミナル(字幕版)

★★☆☆☆

 

あらすじ

 裏社会を取り仕切る男に、現在の殺し屋を始末するので代わりに雇って欲しいと依頼する女。 

 

感想

 謎の女が、今雇っている殺し屋を始末するから代わりに自分を雇ってくれと、裏社会の大物に持ちかけるところから物語が始まる。大物はすんなりとその話に乗るのだが、全然メリットないのになんで?と思ってしまった。別に今の殺し屋に不満があるわけでもなく、この女を代わりに雇ったところでギャラが安くなるわけでもなく、特にメリットはないはず。もしかしてこの大物は大したことない奴なのかも、と最初からつまづいてしまった。

 

 映画はほとんど夜のシーンで構成され、光と影の妖しい雰囲気に満ちていて、それ自体は悪くない。ただ、物語は思わせぶりな会話、思わせぶりな行動に溢れているだけで、その実、大したことは起きない。「不思議の国のアリス」を参照しているようだし、敢えてそうした不思議でミステリアスな空気を醸し出そうとしているのだろうが、どうにもそれが余計なことに思える。単にわかりづらいだけで、効果的とは思えなかった。

 

 

 終盤に入り、ぼんやりとした特に面白げのない話がようやく終わりかけた時、最初のどんでん返しが起きる。ただこれがどんでん返しとしてはありきたりの、そしてそれまでに何度も頭をよぎるくらい予想できたベタなもの。しょうもなさすぎて、力が抜けた。しかも、マイク・マイヤーズ、大して変わっていないという。せめて、もっとびっくりするような変装をしておいてくれよと思ってしまった。

 

 ただ製作者側もこれがベタ過ぎるというのは計算の上だったのか、さらなるどんでん返しを用意していた。しかし、もうこちらの心のシャッターは閉まりかけていたので、もうなんでもいいから早く終わってくれ、という思いの方が強かった。しかも、意外と冗長。ここにそんなに時間をかけてしまうと、なんだか映画としてバランスが悪いなと、落ち着かない気分になってしまった。雰囲気はあるが、中身はない映画。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 ヴォーン・スタイン

 

製作/出演 マーゴット・ロビー

 

出演 サイモン・ペグ/デクスター・フレッチャー/マックス・アイアンズ/マイク・マイヤーズ/ニック・モラン/マシュー・ルイス

 

アニー・イン・ザ・ターミナル(字幕版)

アニー・イン・ザ・ターミナル(字幕版)

  • 発売日: 2018/12/12
  • メディア: Prime Video
 

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登場する作品

不思議の国のアリス (角川文庫)

 

  

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