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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「アスファルト」 2015

アスファルト

★★★☆☆

 

あらすじ

 親が不在がちな少年と隣に引っ越してきた中年の女優の交流など、フランス郊外の団地で繰り広げられる三組の男女の物語。

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 フランス映画。100分。

 

感想

 フランス郊外の団地を舞台にした三組の男女による群像劇だ。中でも団地のエレベーターの修繕費を出すことを拒否した男の話が面白かった。二階なのでエレベーターなんて使わないからと拒み、それを使わないことを条件に支払いを免除されたのに、数日後にちょっとした事故で車いす生活を余儀なくされてしまう。さっそくエレベーターを使わざるを得ない状況に陥って、笑ってしまった。

 

 ここで、助け合うべき団地生活を拒絶した罰が当たったと、教訓めいた話で終わらせないのがいい。彼は、エレベーターを使っていることがバレないようにひと気の少ない深夜中心の生活を送るようになるのだが、そのおかげで病院の夜勤の女性と知り合い、ロマンスが生まれる。その前に「マディソン郡の橋」を見ていたのは伏線だったと分かる二人のやり取りには、思わずニヤリとさせられた。

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 団地に住む老婆が、地球帰還の際に不時着した宇宙飛行士のアメリカ人と交流することになる突飛な設定も可笑しみがあった。言葉が通じないのに、なぜか心は通じ合う。大爆笑をかっさらうようなコメディではなく、どこかとぼけた味で笑いを誘う作風だ。どことなくアキ・カウリスマキ監督作品と似ている。

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 間の抜けたトーンは悪くなかったが、全体としては薄味で物足りなさが残る。もうちょっと濃い何かが欲しかった。

 

 

 人生とは思い通りにはいかないものだが、でも悪いことばかりでもない、と気持ちがふっと軽くなるような映画だ。

 

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 サミュエル・ベンシェトリ


出演 イザベル・ユペール/ギュスタヴ・ケルヴェン/ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ/タサディット・マンディ/ジュール・ベンシェトリ/マイケル・ピット

 

音楽 ラファエル

 

アスファルト

アスファルト

  • イザベル・ユペール
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アスファルト (2015年の映画) - Wikipedia

 

 

登場する作品

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「ザ・ファブル 殺さない殺し屋」 2021

ザ・ファブル 殺さない殺し屋

★★★☆☆

 

あらすじ

 殺しを禁じられている殺し屋は、かつて仕事で接触し、車いす生活を送ることになってしまった少女が、今は怪しげな犯罪集団にいることを知る。

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 シリーズ第2作目。131分。

 

感想

 前作同様、伝説の殺し屋が殺しを禁じられた状態で戦う物語だ。冒頭で描かれる車いすの少女との最初の接点となった仕事の回想シーンは、激しいアクションでいきなり圧倒される。前作同様、なかなか日本では見られないレベルのクオリティだ。

 

 そして物語の導入部分が始まる。「普通」が分からない主人公のコミカルな日常シーンを交えつつ展開されていくのだが、残念ながらこちらもまた前作同様に面白くない。演出が悪いのか演技が悪いのか、そもそも面白くないのかよく分からないが、もはや安定のつまらなさだ。このコメディパートがやって来ると、またかと一気に気分が沈む。

 

 

 それに加えて今回は敵役の素性が分かりにくい。善人のフリして裏であくどいことをやっているらしいのは分かるのだが、具体的に何をやっているのかは曖昧だ。そんな状態でだらだらと続く中盤はかなりの停滞感があった。

 

 さらに車いすの少女のシーンは、泣ける話、いい話にしたいという思惑がだだ漏れで、あざとさがある。その下心のせいなのか、彼女のシーンがあると妙にしっとり、じっとりとした雰囲気となり、冗長となる。映画のリズムが悪くなり、これもまた停滞感の要因となっていた。

 

 クライマックスは、団地を舞台にした敵との戦いだ。アクションとなると途端に生き生きとした映像となり、グッと魅力的になる。先の読めない動きの連続でボルテージが上がった。その後のもうひと山ある地雷のシーンも見応えがあった。

 

 続編で新鮮さがない分、前作みたいにつまらなさをアクションが凌駕するまではいかず、相殺するだけにとどまってしまった印象だ。もう笑いは捨てて「ジョン・ウィック」シリーズみたいに、ひたすらアクションをやった方が良かったのかもしれない。あれはあれで可笑しみもある。bookcites.hatenadiary.com

 

 前作からの改善があったとすれば、木村文乃演じる相棒にちゃんと見せ場が用意されていたことくらいだろうか。アクションは素晴らしいのに、それ以外が残念な映画だ。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 江口カン

 

原作 ザ・ファブル(1) (ヤングマガジンコミックス)

 

出演 岡田准一

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木村文乃/平手友梨奈/安藤政信/黒瀬純/好井まさお/橋本マナミ/宮川大輔/山本美月/佐藤二朗/井之脇海/安田顕*/佐藤浩市

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*特別出演

 

音楽 グランドファンク

 

ザ・ファブル - Wikipedia

 

 

関連する作品

前作

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「ザリガニの鳴くところ」 2022

ザリガニの鳴くところ (字幕版)

★★★★☆

 

あらすじ

 街の有力者の息子が湿地帯で死んでいるのが見つかり、その近くに一人で住み、皆に「湿地の娘」と呼ばれていた若い女が容疑者として逮捕される。126分。

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感想

 幼い頃に湿地の家に置き去りにされ、そのまま学校にも通わず一人で生きてきた若い女が主人公だ。そんな彼女を町の人は気味悪がり、「湿地の娘」とよんでいる。容疑者となった彼女の裁判と、彼女の過去の回想が並行して描かれていく。

 

 彼女が一人で暮らすことになった経緯は壮絶だ。暴力を振るう父親に耐えきれなくなった母親がまず出て行き、やがて同様に兄や姉が出ていく。そして主人公と父親だけになったところで父親が出て行ってしまう意表をつく展開だ。出て行った母親や年上の兄弟たちは余裕がなくなり、自分の身を守ることで精一杯だったのだろうから仕方がないが、まさかその後こんなことになっているとは思わなかっただろう。

 

 

 だが、一人になった幼い主人公が、サポートしてくれる人がいたとはいえ、独力で生きていけたのはすごい。しかもその日を何とか食いつなぐだけではなく、湿地の生物のスケッチを楽しんだりと、ちゃんと「生活」をしている。行政の保護を拒絶するほどで、湿地での暮らしに完全に順応していたと言っていいだろう。その後は書き溜めたスケッチを出版して、経済的にも安定した。

 

 もはや一人で余裕で生きていけそうだった主人公だったが、それでも年頃になると、異性を求めるようになったのは自然の摂理ということだろうか。しかし、彼女に読み書きを教えてくれた最初の男は納得だったが、次の死んでしまった良家の男は初めから不誠実さが滲み出ていたので、それでも付き合うのかと意外だった。そして案の定それが露呈し、主人公を脅かすようになる。女の平穏な暮らしを脅かすのはいつも男だ。

 

 ただこの男も、主人公がプレゼントするも母親は醜いと思っていた首飾りを肌身離さずつけていたわけだから、彼女のことを本当に好きだったのかもしれない。だが世間体やしがらみに囚われて、「湿地の娘」と呼ばれる彼女への想いを遂げられなかった。だからといって、彼の行った酷い仕打ちを正当化する事は出来ないが。

 

 裁判では、気の毒な境遇の主人公に手を差し伸べることのなかった町の人々に対して、批判の目が向けられている。主人公もそんな彼らに敵意を表わしていた。

 

 主人公は幼い頃に一度だけ学校に行こうとしたが、同級生の冷たい視線に耐え切れず、数時間であきらめてしまった。初日はそんな思いをすることがあるかもしれないが、そのうち皆の態度も変わってくるはずで、もうちょっと頑張ればいいのに、と思ってしまった。だが、家族も誰も助けてくれないような状況で、もっと頑張れと気軽に言ってしまうのは酷なことなのかもしれない。むしろ、そんな状況で勇気を振り絞ってよく学校に行ったとほめるべきなのだろう。

 

 裁判の結果やその後の展開は、それまでの流れからなんとなく想像がついたが、主人公が悪い顔をして終わるのかと思ったら、生き残るためにはそんなの当たり前、みたいな、悪びれた様子が全くなかったのは逆に良かった。ザリガニが鳴くような自然の奥深くで生きてきた彼女にとっては、それは当然の自然の摂理だったのだろう。すぐ真相を明らかにせずに長いスパンをとったのも、時間がもたらす無常を感じられて味わい深かった。

真実の行方 (字幕版)

真実の行方 (字幕版)

  • リチャード・ギア
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 主人公の青春物語や一代記、女性や子供の抑圧の話、また、裁判ものやミステリーものなど、色んな要素がつまった物語だ。堪能できた。

 

スタッフ/キャスト

監督 オリヴィア・ニューマン

 

原作 ザリガニの鳴くところ (ハヤカワ文庫NV)


製作 リース・ウィザースプーン/ローレン・ノイスタッター

 

出演 デイジー・エドガー=ジョーンズ/テイラー・ジョン・スミス/ハリス・ディキンソン/マイケル・ハイアット/デヴィッド・ストラザーン/サム・アンダーソン/ギャレット・ディラハント/アーナ・オライリー

 

ザリガニの鳴くところ (字幕版)

ザリガニの鳴くところ (字幕版)

  • デイジー・エドガー=ジョーンズ
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ザリガニの鳴くところ - Wikipedia

 

 

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「コンフィデンスマンJP ロマンス編」 2019

コンフィデンスマンJP ロマンス編

★★★☆☆

 

あらすじ

 香港の富豪の女性にターゲットを定め、仲間と共に詐欺を仕掛けていた女は、かつてコンビを組んでいた男と再会する。

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 テレビドラマの劇場版。シリーズ第1作。116分。

 

感想

 テレビドラマの劇場版だ。ドラマは一話分を見たことがある程度だったが、そんなに支障を感じることなく見ることが出来た。ドラマから引き続き登場しているらしい脇役たちも想像で補える程度の役割だ。連ドラを見ていない人でも楽しめて、見ている人はより楽しめるように工夫されているように感じる。

 

 序盤はこのシリーズの世界観をよく理解していなかったので、主人公らのハイテンションぶりに戸惑いがあったが、次第に馴染んできた。これは役者陣がちゃんとやり切っているのが大きいだろう。下手をすると大惨事になりかねないが、その際どさが良かったりする。

 

 

 序盤は楽しい感じで物語が進むのだが、中盤になると主人公やターゲットの富豪の女性の恋愛話がクローズアップされ、急にしっとりウェットな雰囲気が流れ出す。これがとてつもなくつまらなかった。こういうのが好きな人にはいいのかもしれないが、こんなに叙情的にする必要はなかった。中だるみがすごい。

 

 ところで映画の内容とは関係ないが、富豪役の竹内結子と相手役の三浦春馬の二人のやり取りは、この二人の役者のその後を思うとなんとも言えない気持ちになった。

 

 その後は主人公の意表をつく行動が描かれる。主人公が情緒に流された形だ。だがそんなわけはないので、どうせ裏があるのだろうと驚きはなかった。それよりもどこからが騙しだったのかが気になったが、まず、その種明かしの説明がもっさりとしていてキレがなく、若干イラついていしまった。そして、結果から逆算すればそうなるけど最初からそう計算してやるのは難しそうな計画だったことが分かり、あまり爽快感はなかった。

 

 ただ、中盤のつらい停滞感を別にすれば、全体としてはエンタメ感があり、難しいことを考えずに見るには悪くない映画だ。詐欺の内容はともかく、成功して喜ぶシーンは楽し気で、面白いものを見たような気にはさせてくれる。

 

スタッフ/キャスト

監督 田中亮

 

脚本 古沢良太

 

出演 長澤まさみ/東出昌大/小手伸也/小日向文世/織田梨沙/瀧川英次/Michael Keida/前田敦子/佐津川愛美/岡田義徳/桜井ユキ/山口紗弥加/小池徹平/佐藤隆太/吉瀬美智子/石黒賢/竹内結子/三浦春馬/江口洋介/和田聰宏/小栗旬/芳本美代子/鈴木拓/ジャッキーちゃん

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コンフィデンスマンJP - Wikipedia

 

 

関連する作品

次作 シリーズ第2作

 

 

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「少林寺三十六房」 1978

少林寺三十六房(字幕版)

★★★★☆

 

あらすじ

 清の支配下で抵抗運動をしていた青年は、家族や仲間を殺され、強くなるために少林寺で修行することを誓う。115分。

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感想

 オープニングタイトルで主人公の披露する武術が、どこかファニーでありながらもカッコいい。作り物の滝や夕陽などセットはシンプルなのに、味がある。これは本物の武術家である主人公の凄みが表れているからだろう。

 

 清への抵抗運動で家族や友人を失った主人公が、強くなるために少林寺に入門し、三十五房で修業をしていく物語だ。反復の積み重ねの修行シーンは冗長になったりマンネリしたりしがちだが、時にコミカルに、テンポよく描かれていてそんなことは全くなかった。主人公の上達する様子がコンパクトに効果的に表現されていて見事だ。

 

 

 あまりにも巧みに演出されているので、もしかしてこのまま三十五房すべてでの修行シーンを一つずつ描いていくのかと不安になってしまうほどだった。だがもちろんそんなことはなかった。最初だけしっかり見せて、あとはこんな感じでクリアしていきましたと省略されている。

 

 主人公は最初はやる気だけの未熟の若者でしかなかったのに、修行を通していつの間にひとかどの人物といった佇まいに変貌を遂げた。最後の試練での三節棍を使った戦いも見応えがあった。

 

 ほぼ全編が修行シーンの修行映画と言っていいが、寺で行われているだけに、線香を供えたり鐘を鳴らしたり、洗濯したり食事をしたりと、仏事や修身生活に修行が紐づけられているのが興味深かった。日々の単調な生活に彩りを与えようと工夫した結果、もしかしたらこの拳法は生まれたのかもしれないなと思ったりした。

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 筋トレにハマっている人は、日常生活の何気ない動作の中に筋トレ要素を導入しようとしがちらしいが、それと似たようなものだろうか。でもそれって、仏事に集中しておらず雑念だらけということになるのでマズいような気がしないでもない。だが宗教にエンタメ要素は必要だ。お経にあえて節をつけ、唄うように唱えるのも、キリスト教に聖歌があったりするのも同じ理由だろう。楽しみがなければこんな生活やってられるかというのが本音なのかもしれない。

 

 修行を終えて故郷に戻った主人公は、そこで当初の目的を果たそうとする。だが戦うことは寺の精神に背くことなので、あまり本人が表に立たないようにしており、上手く配慮されている感じがあった。ラスボスとは直接戦うが、とどめを刺すところまでは見せず、別にそれはどうでもいいんですけどねとでも言うように、その後の寺に戻って主人公が修行を施しているシーンへとシレっと切り替えられる。

 

 タイトルでは三十六房なのに、実際にはなぜ三十五房しかないのだろう?と当初に抱いた疑問も解消され、スッキリとするエンディングだ。最後の地元での戦いにもう少し時間を割いても良かったような気もするが、つい真似したくなるようなワクワクする修行映画となっている。よく出来ている。

 

スタッフ/キャスト

監督 ラウ・カーリョン

 

出演 リュー・チャーフィー/ロー・リエ/ワン・ユー/ラウ・カーウィン/ユエン・シャオティエン

 

少林寺三十六房(字幕版)

少林寺三十六房(字幕版)

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少林寺三十六房 - Wikipedia

 

 

関連する作品

続編

続・少林寺三十六房 [DVD]

続・少林寺三十六房 [DVD]

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「アクト・オブ・バイオレンス」 2018

アクト・オブ・バイオレンス(字幕版)

★★★☆☆

 

あらすじ

 独身最後のパーティに出かけた婚約者が誘拐され、兄弟とともに救出に乗り出した男。92分。

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感想

 三人の兄弟が、巨大な人身売買組織に誘拐された末弟の婚約者を取り戻そうとする物語だ。冒頭で彼らの少年時代の他の子供達との乱闘シーンが描かれたので、それが今につながる因縁になったのかと思ったのだが、ただ単に兄弟の絆の強さを示しているだけだった。思わせぶりな演出でいきなり肩透かしを食らってしまった。

 

 末弟の婚約者が拉致されるも警察は信用できないと、彼らは兄弟だけで救出することを決める。武装して敵のアジトを急襲し、拷問して情報を聞き出す。公権力も操れるくらいのヤバそうな巨大な相手にそんな馬鹿なと思ってしまう身軽さだが、躊躇なく突撃して敵をなぎ倒していく彼らの勢いは気持ちがよかった。

 

 

 上の二人は元軍人ということで、その強さや自信があるのも理解できる。だが末弟は素人だ。軽い手ほどきを受けただけなのに、いつの間にか普通に銃を撃ち、敵を殺して立派な戦力になっていた。その適応力と伸びしろがすごい。実は三兄弟の中で一番すごいかもしれない。

 

 ついでに言うと拉致された婚約者も常に反抗的な態度を崩さず、隙さえあれば抵抗して殴りかかり、脱走も試みていて勇ましかった。ある意味でお似合いのカップルだ。

 

 敵は強大なので当然反撃もされる。だが、身内が狙われるとか初歩的なことはさすがに事前にケアしておけよと思ってしまった。そこは犯罪のプロではない元軍人の詰めの甘さが出てしまったのかもしれない。それに覚悟を決めてヤバい組織に挑んだのだから、きっちりとボスにとどめを刺しておけよとも思ったが、それも婚約者を取り戻すことしか考えていなかったからなのだろう。

 

 そもそも荒唐無稽な話だし、味方の犠牲者のメンツを見ても予定調和的だと感じてしまうが、余計なことはせず、ただひたすらまっすぐ敵に向かって撃ちまくるだけの邪心のなさは清々しさがあった。

 

 そして主役のような佇まいで実は主役ではないブルース・ウィリスが、最後の美味しいところだけをきっちりと持っていくご都合主義的な展開には、思わずニヤリとしてしまった。兄弟がとどめを刺さなかったのはこのためだったのかと深く頷いた。

 

 よく考えると、元軍人とはいえ一般人がこんなことが出来てしまうなんてどんな国だよと怖くなってしまう映画でもある。裏から手が回って警察が手を出せないからと民間人に頼り、しかもちゃんと解決してしまう話だ。

 

 

スタッフ/キャスト

監督 ブレット・ドノフー

 

出演 ブルース・ウィリス/コール・ハウザー/ショーン・アシュモア/アシュトン・ホームズ/メリッサ・ボローナ/ソフィア・ブッシュ/マイク・エップス

 

アクト・オブ・バイオレンス - Wikipedia

 

 

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「野のユリ」 1963

野のユリ [DVD]

★★★★☆

 

あらすじ

 車で旅する青年は、故障のために立ち寄った荒野の一軒家で東ドイツの修道女らと出会う。

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 アカデミー賞主演男優賞。原題は「Lilies of the Field」。94分。

 

感想

 旅の途中でたまたま立ち寄っただけの場所に長居することになった黒人青年の物語だ。この青年を演じるシドニー・ポワチエがとても爽やかだ。陽気で礼儀正しく、知性も感じさせる。これで見事な歌まで披露するので、オバマ元大統領みたいなパーフェクトな人物なのかと思ったが、歌は音痴で吹き替えだったそうだ。ちょっと安心する。

 

 主人公は出会った修道女に神からの遣いだと思われ、断り切れずに彼女たちの教会づくりを手伝うようになる。そしていつの間にか彼の心に使命感が芽生え、仕事に打ち込むようになっていく。修道女たちは念願がかなうし、主人公も成長するしで、宗教的ないい話だ。無邪気な彼女たちとの交流にもほっこりする。

 

 

 だが見方を変えれば、女たちに取り込まれてしまった男の話と見ることも出来る。だから「砂の女」のような怖さを感じなくもない。だが世の中とはそんなもので、最初はそんなつもりはなかったのに一生の仕事になったり、軽い気持ちでやってみたことがライフワーク的な趣味になったりする。むしろ決めた通りの人生を歩む方が難しい。人生は何がきっかけでどうなるか分からない。「一期一会」だとか「人間万事塞翁が馬」なんて言葉に感じ入ってしまうのはそのためだろう。

 

 主人公が手伝いを始めた最初の頃、修道女が相手にも関わらず、ちゃんと報酬を貰うつもりでいたのは感心した。対価を貰って仕事をする考えがしっかりとあり、ボランティアといえども無償では働かないとの強い意志が見える。奇特にもタダ働きしてくれるのがボランティアだからと、節約のために積極的に利用しないと損、とか考えてるらしいどこかの国の人が聞いたらビックリするかもしれない。

 

 彼の後に続くように街の人々も協力をするようになるが、その中の一人が手伝う理由を「万が一、神様がいた時のための保険」と言っていたのも印象的だ。皆が何らかの対価を期待して行動している。宗教に関わる話なのに現金な、と思わなくもないがリアリティはある。逆に、何の見返りも求めないとアピールされる方が嘘くさく感じてしまうかもしれない。

 

 自然と集まった人々の力で協会が完成していく様子には胸が熱くなるものがあった。あまりにも善なる世界だと思わなくもないが、一種のファンタジーだと考えれば悪くない。ラストの主人公の姿に、彼は本当に神が遣わした者だったのでは?としんみりとしてしまった。

 

スタッフ/キャスト

監督/製作/出演* ラルフ・ネルソン

 

原作 The Lilies of the Field

 

出演 シドニー・ポワチエ/リリア・スカラ/ボビー・ドリスコール*

*クレジットなし

 

音楽 ジェリー・ゴールドスミス

 

野のユリ

野のユリ

  • シドニー・ポワチエ
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この作品が登場する作品

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「決戦は日曜日」 2022

決戦は日曜日

★★★☆☆

 

あらすじ

 老年の国会議員の私設秘書を長年務めてきた男は、議員が倒れて後継者として立候補することになったその娘をサポートし、共に選挙を戦うことになる。

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感想

 選挙を舞台にしたコメディ映画だ。立候補者がまともに漢字を読めなかったり、ポリコレ的失言をしたり、敢えて犬笛を吹いたり、秘書にパワハラしたりする。秘書も議員に濡れ衣を着せられたり、隠し撮り動画で告発したりする。そして、そんな彼らの元にはアクセス数稼ぎの迷惑なユーチューバーがやってくる。

 

 今の政治にまつわる諸問題を幅広く取り上げていて感心するが、正直、現実がもっと酷いので全然笑えない。昔もこんな議員はいたがごく一部だったし、すぐに退場していったのでまだ笑うことが出来た。だが今はこんな議員たちが大多数で、責任も取ることなくいつまでもふんぞり返って居座っている。

参院政倫審29人全員が「出席拒否」 “裏金問題”での追加審査要求に応じず(FNNプライムオンライン(フジテレビ系)) - Yahoo!ニュース

 

 この映画では、常にゆるい空気が漂っているのが印象的だ。選挙期間中にもかかわらず熱気はなく、秘書たちは流れ作業的に業務をこなすだけ、立候補者はただ皆の指示に従うだけ、支援者や地方議員たちはただ周辺で駄弁っているだけだ。トラブルやスキャンダルが起きても築き上げてきたマニュアル通りに動くだけで危機感は全くない。

 

 しかも、誰も政策の話を一切する気配がないからすごい。もはや候補者すらも含めた選挙に関わる全ての人が、惰性で動く大きな機関の歯車にしか過ぎないかのようだ。そこには誰の意志も介在していないかのように見える。こんな風に思考停止して、長年同じことをただくり返しているだけなのだから停滞するのも当然だ。この国の政治に漂う無力感や閉塞感がよく表れている。そんな彼らが唯一エキサイトした姿を見せたのが、金の話になった時だけというのも象徴的だ。

 

 

 政治的状況の描き方は悪くなかったが、残念ながら物語としてはイマイチだ。まずサポートしている候補者がどんな人物なのかが曖昧だった。初登場時にもっともらしいことをペラペラと喋っていたので、対選挙にだけ特化した英才教育を受けたサイボーグな世襲候補かと思っていたのに、案外と基本的な選挙対応でヘマをしていた。

 

 彼女は、世間知らずで浮世離れはしているものの、一般的な感覚は持ち合わせているお嬢様ということなのかもしれない。だが、彼女が欺瞞だらけの選挙に反発することで物語は動き出すのだが、このキャラクターにはその説得力がなかった。そもそも何を考えているのか、その本心が分からない。せめて選挙に対するやる気だとか新人の初々しさだとか、もっと人間味を見せて欲しかった。

 

 この候補者を演じた宮沢りえは、人の気持ちが理解出来なさそうな、心のこもっていない喋り方で、いかにもな女政治家らしさを醸し出していたが、このシチュエーションにはそぐわないキャラになってしまっていた。そこそこのキャリアのある政治家だったら相応しかったのだが。

 

 それに呼応した主人公も、それまでの不条理を散々受け流してきたのにそこでスイッチはいる?みたいな唐突感があり、こちらもリアリティがなかった。しかもその割には熱意が感じられない。敢えて全体的に熱くならないように抑えていたのかもしれないが、いくらなんでも温度が低すぎた。

 

 今の状況では、現実を笑い飛ばせるくらいのコメディにするのはさすがに難易度が高そうだが、せめて少なくとも人間ドラマくらいには仕立てて欲しかった。結局当選してしまった思想も政策もない空っぽの世襲の候補者が、急に頑張る気になったところで何もハッピーエンドじゃない。むしろ害悪になる可能性だってある。

 

 こんな現状はいい加減に変えなきゃいけないと思わせてくれる映画ではあった。ちゃんと選挙に行って、その後も監視を怠らない。民主主義の基本を地道にやっていくしかないのだろう。この映画も、なんだかんだ言っても一番悪いのは結局国民だよねと言っている。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 坂下雄一郎

 

出演 窪田正孝/宮沢りえ/赤楚衛二/内田慈/小市慢太郎/音尾琢真/前野朋哉

 

決戦は日曜日

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「バッドガイズ」 2022

バッドガイズ(字幕版)

★★★☆☆

 

あらすじ

 世間から恐れられている悪党グループのボスは、作戦中に芽生えた良心が邪魔して黄金の像を盗み出すのを失敗してしまう。100分。

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感想

 主人公がオオカミなので、擬人化した動物たちが住む世界なのかと思っていたら、普通に人間も登場して意表を突かれた。人間と擬人化された動物が共存する世界が舞台となっている。だがそのおかげで、主人公らが人間たちにビビられまくる冒頭のシーンは、彼らが動物なのに喋るからなのか、それとも悪党だからなのかが一瞬よく分からなかった。

 

 主人公の仲間たちも皆動物で、ヘビにタランチュラ、サメやピラニアがいる。皆物語で悪役にされがちな、嫌われがちな生き物たちだ。周りに悪そうな奴だと見られていると、自ずと悪ぶるようになってしまうステレオタイプの弊害が垣間見える設定だ。

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 悪ぶっていった主人公が、人を助けることの喜びを知ったことから気持ちに変化が生じていく。犯行に失敗して捕まってしまった主人公らに更生のチャンスが与えられのをいいことに、改心したふりをして更なる悪だくみを目論んでいたのに、本当に善に目覚めてしまう物語だ。ミイラ取りがミイラになってそのまま終わっていたらイイ話すぎて面白みに欠けたが、ちゃんとその後に見せ場が用意されていた。

 

 ただ仲間が、善人になってしまった主人公を非難する展開になんだかモヤモヤしてしまった。主人公に対する彼らの変わらないで欲しい、裏切られたという感情がどうにも悪人らしくない。親兄弟を裏切り、女房子供を泣かせ、友人を利用してこそ悪人だろう。友情を重んじている時点でもはや普通の人と大差ない。

 

 

 それに善人であろうとしている普通の人だって、ふとしたはずみで親兄弟を裏切ってしまうことも、女房子供を泣かせてしまうことも、友人を利用してしまうこともある。そう考えると、悪人って何?善悪って何?と分からなくなってしまう。善悪は簡単に描けるようなものではない。

 

 ストーリーはすっきりしなかったが、カーブですごい角度に車が傾いたり、空高くジャンプしたり、空中で泳いだりと、どこかルパン三世を思わせるような躍動感あふれるアクション描写は見ごたえがある。登場する車がカッコよかったり、音楽が洒落ていたりと雰囲気も良い。

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 クールな世界観はいいのだから、説教臭くしないで普通に怪盗もの、それこそルパンみたいな物語にしてくれれば良かったのにと、惜しい気持ちになってしまう映画だ。

 

スタッフ/キャスト

監督 ピエール・ペリフィル

 

原作 バッドガイズ1

 

出演 サム・ロックウェル/マーク・マロン/クレイグ・ロビンソン/アンソニー・ラモス/オークワフィナ/リチャード・アイオアディ/ザジー・ビーツ/リリー・シン/アレックス・ボースタイン/バーバラ・グッドソン

 

バッドガイズ(字幕版)

バッドガイズ(字幕版)

  • オークワフィナ
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「ゴジラ-1.0」 2023

ゴジラ-1.0

★★★★☆

 

あらすじ

 戦争末期に死ぬのを恐れて逃げた島でゴジラを目撃した特攻隊の男は、戦後に日本を襲撃したゴジラを倒すために立ち上がる。

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 アカデミー賞視覚効果賞。国産実写「ゴジラ」シリーズ第30作目。125分。

 

感想

 今回のゴジラはどんな感じで登場するのかと期待して見ていたら、早い段階でいきなりさらっと現れて笑ってしまった。だが日本人にとってゴジラはこれくらいの存在なのかもしれない。雲の上の存在ではなく、近所のちょっと怖いお兄さんくらいのポジションだ。怖いことは怖いが親近感もある。盛り上げて満を持しての登場もいいが、今回のあっさりとした登場の仕方は新鮮で良かった。

 

 怖気づいて生き残り、仲間を助けられずに自分を責める元特攻隊の男が主人公だ。序盤はこの主人公の戦中戦後の様子が描かれていく。この間、ゴジラは一旦脇に置かれるので、普通の反戦映画のような内容となっている。この後の展開を考えると必要なパートであることは分かるが、もうちょっと工夫が欲しかった。凡庸で停滞感があった。

 

 やがて強大なゴジラが本州に現れ、打倒作戦が始まる。作戦を立案し、皆で準備をして実行に移る。皆が一丸となって一つのことをやろうとする流れが出来上がっていく過程はワクワクし、気分が盛り上がった。

 

 

 この作戦を主導する博士を演じる吉岡秀隆がいい。くしゃくしゃとした表情に、何歳だか分からない得体の知れなさがあり、髪型も含めて魅力的なキャラだ。主人公よりも目が行ってしまう。

 

 多くの人間が力を合わせて作戦を実行し、最後は主人公がとどめを刺す。これまでの展開上、主人公がどうなるのかは予想がついたが、まさかそうはならなないのか?と一瞬不安にさせた後、少しの間を置いてからやっぱりそうだったと安心させる演出は見事だった。安堵とカタルシスが同時に訪れる。

 

 このゴジラとの戦いには、戦争はしないのが一番だが、どうしてもやらなければならないのならこういう戦いをしたい、というメッセージが伝わってくる。人命を軽視した大日本帝国に対する強い憤りと不信感がある。そもそもこの作戦が民間によるもので、政府が不在なのは皮肉だ。

 

 戦争に心残りのある者たちの延長戦、といった趣のある戦いで、彼らの想いに胸が熱くなる。だがこのマインドを認めてしまうと、一億玉砕するまで戦わなかったことを悔やむ人たちまで認めなければならなくなるので、危うい気はする。なんなら悔いがあるからと、新たな戦争を引き起こす要因にもなりかねない。

 

 戦争なんて個人が納得する形で終わるはずがないのだから、いつかケリをつけなければと考えるよりも、結果をそのまま受け入れることが大事だろう。もしゴジラとの戦いがなかったら、主人公はまだ自分の戦争は終わっていないと一生うじうじしながら生きることになったはずだ。そんな生き方をするくらいなら、悔いはあるが今となってはどうしようもないと受け入れて、気持ちを切り替え新たな一歩を踏み出した方がいい。

 

 最後のヒロインの話はご都合主義が過ぎるが、色々と考えさせられながらもゴジラとの戦いに熱くなれる娯楽作品だ

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 山崎貴

 

出演 神木隆之介/浜辺美波/山田裕貴/青木崇高/安藤サクラ/佐々木蔵之介/阿南健治/マイケル・アリアス/阿部翔平/笠井信輔

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音楽 佐藤直紀/伊福部昭

 

編集 宮島竜治

 

ゴジラ-1.0

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前作 シリーズ第29作

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「暗闇でドッキリ」 1964

暗闇でドッキリ

★★★☆☆

 

あらすじ

 富豪の家で使用人が何者かに殺され、事件の捜査を担当することになった主人公クルーゾー警部は、美人の使用人に目を付ける。

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 「ピンク・パンサー」シリーズのスピンオフ的扱いだが、実質上のシリーズ第2作目とされる作品。原題は「A Shot in the Dark」。102分。

 

感想

 前作に登場した間抜けな警部、クルーゾーを主人公とした物語だ。今回は世界一のダイヤモンド「ピンクパンサー」は登場せず、豪邸で起きた連続殺人事件が描かれる。

 

 冒頭はその最初の殺人事件から始まる。事件前に屋敷内を大勢の人間が行ったり来たりする様子が「裏窓」的に描かれるだが、人の動きがあまりにも複雑で、全く把握できなくて焦った。

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 そして主人公がやって来て捜査が始まる。相変わらずドタバタで細かなギャグで笑いを取っていくスタイルだ。単発でやられるとイラっとするが、執拗にやられるとくだらなさ過ぎて次第に笑えてくる。それにかける意味不明な情熱に、なんでそこまでやるの?やらないと死んでしまうの?と呆れて笑ってしまう感じだ。

 

 状況的には完全にヒロインが犯人であるにもかかわらず、美人なので逮捕したくない主人公の捜査もどきが繰り広げられる。真犯人をおびき出す名目で何度も容疑者の彼女を釈放するのは面白かったし、嫉妬させる名目でデートして、ハワイアンやフラメンコ、コサックダンスといった各国のダンスを見て回るシーンはエンタメ感があって楽しかった。ただ全体としては、今の感覚ではそこまで笑えるものではなかった。

 

 

 クライマックスは、全員を集めての主人公の謎解きシーンだ。ドタバタで間抜けぶりを晒してきた主人公が、最後だけは見事に事件解決してキメるパターンなのかと思いきや、最後の最後までグダグダだった。ワチャワチャしたまま終わる締まらない展開は、スラップスティックなコメディに相応しい結末で悪くなかった。そして把握できなくて焦った冒頭のシーンも、それで良かったのだなと安心した。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本/製作 ブレイク・エドワーズ

 

脚本 ウィリアム・ピーター・ブラッティ

 

出演 ピーター・セラーズ/エルケ・ソマー/ハーバート・ロム/ジョージ・サンダース/グレアム・スターク/アンドレ・マランヌ/バート・クウォーク

 

音楽 ヘンリー・マンシーニ

 

暗闇でドッキリ

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前作 シリーズ第1作

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ピンクパンサー2 [DVD]

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「片腕必殺剣」 1967

片腕必殺剣(字幕版)

★★★☆☆

 

あらすじ

 兄弟子らに妬まれ片腕を切り落とされた武術家の男は、恩人である師匠の窮地を救うために駆け付ける。

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 香港映画。111分。

 

感想

 片腕の主人公が活躍する物語だ。まず彼が片腕となった経緯がすごい。そんなことで?という驚きと、そんな簡単に切り落とせちゃうの?という二重の驚きがあった。腕なんてそう簡単に切り落とせないはずだが、それなりに鍛錬を積んだ人間の怒りのこもった会心の一撃だったからなのだろう。

 

 その後は二つの武術の流派が対決する展開となるのだが、どちらの流派も、弟子たちが師匠の言うことを聞きやしないのが面白い。すぐに師匠の目を盗み、やってはいけないことをやって問題を起こしてしまう。

 

 

 ヤクザの世界と同じで、この世界も地元の手の付けられないような若者たちがやってくるところなのかもしれない。そして、日々の鍛錬に耐え、生き残ることが出来た者だけが風格を身にまとう。師匠による弟子たちの扱い方も、ヤクザの親分が血気盛んな子分を扱う様子とよく似ていた。

 

 中盤は、片腕となった主人公の訓練シーンが少しあるものの、メインは主人公以外で行われる二つの流派の戦いだ。特殊な武器を生み出した敵に、次々と主人公の兄弟弟子たちがやられていく。

 

 中には師匠のために弟子が身を挺して敵の情報を入手しようとする熱い展開もあったりするのだが、いかんせんその弟子たちの事前情報がゼロなので、まず誰?となってしまってあまり感情移入ができなかった。なんとなく察する事は出来るが、ちゃんと前振りはして欲しかった。

 

 そして敵が生み出した特殊な武器がなんかズルい。盾のような剣で、それで相手の剣を封じ込めておいて別の剣で切りつける戦法だ。サッカーの試合かと思っていたら急に手を使ってきたみたいな、それありなの?と思ってしまうような戸惑いがあった。

 

 だがこれは、日本刀一本でやり合う日本の剣術の試合をイメージしている自分が悪いのだろう。ブルース・リーだってヌンチャクで素手の相手と戦うこともあるし、互いに違う武器を手にする時もある。日本の剣豪でも二刀流で戦う者はいた。

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 相手がそれに怒ってはいなかったので、きっとこの武器は中国武術のマナーには則っているのだろう。他の場面では、格の違う師匠格との戦いを遠慮したり、負けを認めることで慈悲を請うたりしていて、武士道的な何らかのルールのようなものが存在しているらしい事は窺える。

 

 あまり活躍の場がなかった主人公は、最後の最後に出番がやって来る。高倉健の任侠映画とよく似たスタイルだ。味方の窮地に颯爽と現れ、中ボスとラスボスをやっつけてしまう。流れとしては気持ちいいのだが、古い映画なのでアクションの演出が鈍重に感じてしまい、爽快感はなかった。効果音が少なく、無言で戦うので息苦しさがある。

 

 父親の形見の折れた剣で戦う片腕の主人公は、異形のヒーローだ。演じるジミー・ウォングは顔が小さく、まるでアニメのキャラクターのような佇まいでカッコ良った。その後のジャッキー映画などで、大物感を漂わせながら登場していた時はどこが良いのかさっぱりわからなかったが、若い頃はシュッとしていたのだなと、その人気の理由が分かったような気がした。

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スタッフ/キャスト

監督/脚本 チャン・チェ

 

出演 ジミー・ウォング/リサ・ジャオ・ジャオ/ティエン・ファン

 

片腕必殺剣(字幕版)

片腕必殺剣(字幕版)

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関連する作品

続編

続・片腕必殺剣 [DVD]

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リメイク作品

 

 

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「ソフィーの選択」 1982

ソフィーの選択 (字幕版)

★★★☆☆

 

あらすじ

 作家を目指してニューヨークにやってきた南部の青年は、上階に住むポーランド人女性とユダヤ系アメリカ人のカップルと知り合い仲良くなる。

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 アカデミー賞主演女優賞。151分。

 

感想

 ブルックリンで風変わりなカップルと知り合った南部の青年が主人公だ。カップルのポーランド系移民の女性ソフィーにほのかな恋心を抱くようになる。男二人に女一人の三角関係が描かれていくが、三人が友だちの関係ではなく、一組のカップルと一人の男と明確に分けられる組み合わせなので、どうしても主人公に邪魔者感がある。

 

 カップルが目の前でいちゃつく時間があったりするのに、主人公はよく平気でずっと一緒にいられるものだ。たまに一緒に過ごすならいいが、いつも一緒だとさすがに気持ち悪い。本当は主人公にも恋人がいれば、二組のカップルの話となって落ち着くのだが、彼に恋人ができないのだから仕方がない。それにこういう歪な関係には、大抵誰かの密かな恋心が潜んでいるものだ。

 

 

 この三人の奇妙な関係を描きながら、ポーランド人女性ソフィーの過去が少しずつ明らかにされていく。彼女はナチスドイツの収容所にいたことは明かしているが、その詳細についてはなかなか語ろうとしない。戦時中の話で、あまり思い出したくないことばかりだろうからそっとしておけばいいのに、主人公がちゃんと話をしてごらん、という態度なのが不可解だった。

 

 過去は包み隠さず正直に告白した方がいいという考え方なのだろうか。宗教的な倫理観からきているのかもしれないが、とても酷なことをしている。作家としての好奇心もあったのではないかと邪推してしまう。話せば楽になることもあるからその気になったら聞くよ、ぐらいのスタンスであればよかった。

 

 女性がどんな酷い目に遭ってきたのかと戦々恐々としていたのだが、親の影響で加担者側にいたことが分かって意表を突かれた。だが戦争は、多くの人が何らかの関与をして起きるわけだから、純粋な戦争被害者というのは少ないのかもしれない。無邪気に悪意を剥き出しにしたり、プロパガンダに乗せられ踊ってしまうことで戦争への流れを生み出していく。戦後それに気まずい思いをする人は多いだろう。

 

 そんな彼女も結局、敵国のポーランド人ということでナチスの収容所に入れられてしまう。こんな風に、そっち側にいるつもりだったのにこっち側として扱われて当惑していた人はたくさんいたのかもしれない。今でも、こっち側なのになんでそっち側にいるみたいな振る舞いをするのだろうと不思議に思う人はあちこちで見かける。

 

 収容所で彼女は、究極の決断を下していたことが明らかになる。これが、彼女をどこかエキセントリックな男と付き合わさせ、どこか地に足が付かない暮らしをさせていた要因だった。あんな過去を背負ってしまったら、もはやまともに生きていく気力など湧かないのだろう。同じように心に闇を抱えた男と共鳴するのは理解できるような気がする。

 

 暗い過去を持つポーランド人女性を演じたメリル・ストリープが、迫真の演技を見せている。特に戦時中の頬がこけ、やせ細った姿には痛ましさがあった。訛りのある英語も良かった。

 

 彼女をはじめ多くの人たちが命令に黙々と従い、列車に乗り込んで収容所に運ばれていく様子に、人を効率的に殺すためのシステムを運用しているナチスの異常さや恐ろしさがひしひしと伝わってくる。人間のやることではない。

 

 彼女のように誰にも言えない、言いたくない過去を抱えてしまう人がたくさん生まれてしまう戦争なんて、やるものではないなと当たり前の想いを改めて強くした。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本/製作 アラン・J・パクラ

 

原作 ソフィーの選択 上巻 (新潮文庫 ス 11-1)


出演

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ケヴィン・クライン/ピーター・マクニコル/(声)ジョセフ・ソマー

 

音楽 マーヴィン・ハムリッシュ

 

ソフィーの選択 (字幕版)

ソフィーの選択 (字幕版)

  • メリル・ストリープ
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「ワイルド・タウン/英雄伝説」 2004

ワイルド・タウン/英雄伝説

★★★☆☆

 

あらすじ

 故郷に久しぶりに帰って来た元軍人の男は、新しく出来たカジノによって町が荒廃し、権力を握ったオーナーにより牛耳られていることに憤る。

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 1973年の映画「ウォーキング・トール」のリメイク。原題は「Walking Tall」。80分。

 

感想

 地元に出来たカジノに憤る元軍人の男が主人公だ。まずは訪れたカジノで不正に気付き、暴れる。大勢の警備員に取り押さえられて半殺しの目に遭ってしまうがなんとか復活し、今度はオーナーがドラッグを広めていることに怒り、暴れる。義憤にかられるのは分かるが、あまりにも直情的すぎて笑ってしまった。もっと他にやりようはあったはずだ。

 

 その結果主人公は逮捕されてしまう。カジノオーナーに行政も司法も牛耳られている状況下では不利だったが、住人たちの支持を得てなんとか無罪を勝ち取れた。この判決は、法に則るなら腑に落ちないのだが、これが裁判員制度の良いところなのだろう。法では量れない機微を汲むことができる。もちろんそれがデメリットになることもあるわけだが。

 

 そして主人公は保安官となり、反撃に出る。だがやってることは、友人を相棒に採用したり、容疑者の車を嫌がらせで破壊したりとなかなか酷い。やってるのがあのザ・ロック(ドウェイン・ジョンソン)だから観客は不安なく見ていられるが、普通だったら腐敗や汚職、権力濫用を心配してしまう状況だ。それに言及してジョークにもしていたが、あまり笑えない。

 

 序盤に主人公がすぐに暴れていたのもそうだが、全般的にこの映画では内容に比べて登場人物らのノリが軽いきらいがある。主人公の相棒となった友人もそうで、特別強いわけでもないのに敵に襲われるとコミカルな雰囲気で対処する。だが全く余裕のない状態の時に相手が殺しに来ているわけなので、全然笑ってる場合ではない。死んでも全然おかしくないシチュエーションだ。笑えない状況で笑わそうとしてくる演出はちょっとどうかしている。

 

 主人公の反撃に敵は当然黙っていない。部下に命じて保安官事務所を襲撃させる。しかしアメリカ映画ではよく見る光景だが、平気で警察や保安官といった公権力に攻撃を仕掛けるあっちの悪党たちはいったい何なのだと思ってしまう。独立心に富む国民性なのか、銃社会の弊害なのか。日本だとヤクザだって警察と全面的に戦うことはしない。

 

 

 ラストは敵との直接対決だ。それなりのカタルシスは得られるのだが、ストーリー展開に緩急がなく、呆気なさがあった。もう少しタメを作って気分を盛り上げる時間を確保して欲しかった。事務所を襲撃されたその足ですぐに敵の本拠地に乗り込むのは、物語として性急すぎる。起承転結をじっくり描くよりも、サクッと見られる上映時間の短さを優先したのかもしれないが。

 

 ルールはあくまでも物事を円滑に進めるための原則でしかなくて、それに固執して何が何でも守らなければいけないものと考えてしまうのは間違っているのかもなと感じてしまう映画だ。ルールなのだからとにかく守れと思考停止するのではなく、本質を見失わない柔軟さをもっていたいものだ。

「時間守らないのがおかしい」 水俣病被害者団体に批判電話やメール | 毎日新聞

 

 

スタッフ/キャスト

監督 ケヴィン・ブレイ

 

出演 ザ・ロック(ドウェイン・ジョンソン)/ジョニー・ノックスビル/ニール・マクドノー/クリステン・ウィルソン/アシュレイ・スコット/ジョン・ビーズリー/マイケル・ボーウェン/ケヴィン・デュランド

 

ワイルド・タウン/英雄伝説

ワイルド・タウン/英雄伝説

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関連する作品

リメイク元のオリジナル作品

 

続編

 

 

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「ぼんち」 1960

ぼんち [DVD]

★★★★☆

 

あらすじ

 大阪船場の商家で当主となった男は、女系家族の中で監視されながらも女遊びを繰り返す。104分。

 

感想

 しばらく婿養子が続き、女が強い女系家族の商家を舞台に、当主となった若い男の放蕩の人生を描く。久々の直系の男子で、当主となった主人公は、しきたりだの慣習だの何から何まで祖母と母の監督下で暮らしている。それでも女遊びは普通にやっているのがすごいが、これすらも商家のルールに定められている。

 

 得てしてルールというものは厳格で、対象が聖人君子であることを前提にしたものが多いが、こんな風に金も権力もあれば禁止したところでどうせ隠れて女遊びするよねと、それすらも織り込んでルールを作ってしまっているのは面白い。女たちも当主がルールの範囲内で女遊びをしている限りは割り切って不問に付している。

 

 

 これならグレーゾーンをめぐる不毛な攻防戦だとか、細かい規則が増えていくだけのイタチごっこのルール改正も不要なので合理的だ。実利を重んじる商売人らしい現実主義だ。政治の世界も裏金はいくらまでなら良し、ただし官房機密費に手を付けたら死刑、とかにすればいいのかもしれない。とはいえ、そこまで政治家を甘やかさなければならない必要は何もないのだが。

 

 女たちの監視の中では、主人公の結婚相手が気に入らず、跡取りの男児を産んだらすぐに別れさせたのが怖かった。その結婚相手を選んだのは、彼女たち自身だったにもかかわらずだ。さらには万が一婿養子を迎える時に備えて、当主の娘を産ませようと自分たちが気に入った若い女に妾になるよう仕向けたりもする。家を中心に物事を考えると、何かと歪で気味悪いことをすることになってしまいがちだ。

誕生4日後の孫を「創業家の養子」にするため英国へ…超名門企業の「男児を世継ぎにしたい」という異様な執着 | 文春オンライン

 

 だが女たちにしてみれば、家を無事に存続させることだけが自身の安泰を保証するものなので、必死になるのも仕方がないのかもしれない。男の世界である商売には手を出さない以上、それ以外をしっかり見張るのが彼女たちの出来ることだ。政治の世界でも、国民がちゃんと監視していないと政治家がやりたい放題やって国が衰退してしまうのと同じだ。

 

 女たちの言いなりの主人公は、何もできないバカ息子なのかと思ったら、案外しっかりと商家を切り盛りしていて驚いた。変なしきたりばかりが強調されていたが、商家には代々受け継がれてきた一流の商売人になるためのマニュアルやルールもあって、それもちゃんと叩き込まれていたのだろう。

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 女遊びの中で得たヒントを商売に活かしたりもしていて興味深い。ちなみにタイトルの「ぼんち」には下記のような意味があるらしい。

 

 放蕩を重ねても、帳尻の合った遊び方をするのが大阪の“ぼんち” 。  

山崎豊子 『ぼんち』 | 新潮社

 

 くそ真面目に仕事に打ち込むだけでなく、稼いだ金でちゃんと遊び、人生を謳歌している感じがして悪くない生き方かもしれない。もちろん、誰も悲しませない現代型の放蕩でないといけいないが。

 

 余談だがお菓子の「ぼんち揚げ」の「ぼんち」もここから来ているそうだ。

 

 管理しようとする女たちの監視をのらりくらりとかわしながら、マイペースで我が道を行く主人公を市川雷蔵が好演している。彼と関係を持つ妾たちとのそれぞれのやり取りは見ごたえがあった。彼女たちもたくましい。特に終盤の、解き放たれたようなあっけらかんとした女たちの入浴シーンにはグッとくるものがあった。

 

 戦中や戦後の厳しい時代も生き抜いた主人公の、頼りなさそうに見えてしっかりと芯のある強さに心打たれる。しみじみとした余韻が残る映画だ。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 市川崑

 

脚本 和田夏十

 

原作 ぼんち(新潮文庫)

 

出演 市川雷蔵/若尾文子/越路吹雪/山田五十鈴/草笛光子/中村玉緒/船越英二/京マチ子/中村鴈治郎/北林谷栄/菅井一郎/浜村純

 

音楽 芥川也寸志

 

撮影 宮川一夫

 

ぼんち

ぼんち

  • 市川雷蔵
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ぼんち (小説) - Wikipedia

 

 

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