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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「ブルーアワーにぶっ飛ばす」 2019

ブルーアワーにぶっ飛ばす

★★★★☆

 

あらすじ

 東京で荒んだ生活を送っていた女は、祖母の快気祝いのために実家の茨城に帰省する。

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感想

 帰省を予定していた女が、車を買ったばかりの友人に唆され、勢いで一緒に実家に帰ってしまう物語だ。序盤は主人公の東京での荒んだ生活が描かれる。既婚だが不倫中で、昼は仕事でピエロのように振る舞い、夜は潰れるまで飲み騒ぐ。何をやってるのだと自分でも思いながら、ズルズルとそんな生活を続けている。

 

 そんな彼女が友人と共に実家に帰る。母親に指摘されていたが、実家に戻った途端に主人公の声が小さくなり、言葉少なになるのが印象的だ。彼女をそんな風にさせてしまうふるさとのいなたさや実家のしみったれ具合がよく演出されている。

 

 

 故郷に複雑な感情を持つ者にとって帰省とは厄介なものだ。こんなところは嫌だと飛び出してきた場所であり、辞めた会社や別れた人などと同様に、本来はもう戻ることのない過去のものだ。しかし家族の縁を切るほどではなかった場合にはそういうわけにもいかず、渋々戻らざるを得ない時がある。

 

 そこで故郷の嫌いだったところを再確認し、さらには、まだそんな事やっているのかとか、今はこんなことになっているのかとか、今はもうどうでもいい知りたくもなかったことを目の当たりにすることになる。暗然とした気持ちになる。

 

 とはいえ故郷は故郷だ。自身のルーツであることには違いない。それに故郷のすべてが嫌いだったわけでもない。今の自分を形作っている原体験や故郷に置き去りしてきたものを思い出し、感情が揺さぶられてしまう。

 

 主演の夏帆をはじめ、”友人”役のシム・ウンギョン、主人公の家族役たちと、皆がいい演技で見ごたえのあるドラマとなっている。特に主人公の父親役のでんでんが、久々に帰省した娘に最初にかけた言葉のトーンは、肉親ならではのいかにもなもので非常にリアルだった。人には家族にしか見せない顔がある。

 

 タイトル通りぶっ飛ばし気味で、登場人物たちの露悪的な言動に嫌悪感を抱いてしまうところがないわけではなかったが、それだけ現代日本の人々の心が荒んでいるということなのだろう

 

 あんなに嫌だった田舎を飛び出した結果がこれかよと、今の荒んだ生活に自己嫌悪に陥りつつ、それでも新たな気持ちが芽生えて笑顔となり、東京へと車を走らせるラストシーンが心に残る。とかく故郷は面倒だ。完全に嫌いにはなれないのが辛い。

 

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 箱田優子

 

出演 夏帆/シム・ウンギョン/渡辺大知/黒田大輔/でんでん/南果歩/ユースケ・サンタマリア/嶋田久作/伊藤沙莉

 

音楽 松崎ナオ

 

ブルーアワーにぶっ飛ばす - Wikipedia

 

 

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「フレンチ・キス」 1995

フレンチ・キス

★★☆☆☆

 

あらすじ

 フランス出張中に新たな恋に落ちてしまった婚約者を取り戻すため、飛行機恐怖症を押して現地に向かう女性。

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感想

 婚約者にフラれた女性が、機内で出会ったフランス人男性とやがて恋に落ちる物語だ。まずなんと言っても主演のメグ・ライアンが魅力的だ。ショートカットのブロンドヘアに青い瞳、豊かな表情で惹きつける。さすがロマンティック・コメディの女王と呼ばれていただけのことはある。

 

 だがコメディとして全然面白くないのが辛い。第一印象で最悪だった二人が、喧嘩をしながら仲良くなっていく定番パターンのラブコメだが、そのやりとが可もなく不可もなくといった具合で、ただその成り行きを眺めるしかなかった。元婚約者とのやり取りも特に面白くない。

 

 そしてロマンティックでもない。そもそも相手の男は主人公に密輸をさせようとした小悪党だ。そんな男を好きになるだろうか。その事実を知った時点で普通ならもう終わりだろう。

 

 

 やがて、密輸品を取り戻そうと彼女に付きまとっていただけの男は、寝ぼけまなこの主人公に勘違いでキスされたことで相手を意識するようになる。一方の主人公は、男の実家に行ってビッグな将来の夢を聞いたことで、ワルだと思っていたけどこの人いいかも、と思うようになる。二人共まるで思春期の子どもみたいで、さすがに純真無垢すぎやしないかと思ってしまった。

 

 主人公が憧れのエッフェル塔を二度ほど見逃し、その後列車の中でようやく見ることが出来た時、求めているものって案外近くにずっとあるのに気づかないんだよね、ちなみに運命の人はここにいます、とばかりに隣に座っていた男が彼女の前に座り直すシーンの演出は上手かった。でもそれだけだった。

 

 ロマンティックでもコミカルでもないが、ロマンティック・コメディの女王の全盛期を堪能するにはいい映画だ。

 

スタッフ/キャスト

監督 ローレンス・カスダン

 

製作/出演

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出演 ケヴィン・クライン/ジャン・レノ/ティモシー・ハットン/フランソワ・クリュゼ    

 

音楽 ジェームズ・ニュートン・ハワード

 

フレンチ・キス

フレンチ・キス

  • ローレンス・カスダン
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フレンチ・キス (映画) - Wikipedia

 

 

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「モーリタニアン 黒塗りの記録」 2021

モーリタニアン 黒塗りの記録(字幕版)

★★★★☆

 

あらすじ

 人権派弁護士の女性は、アメリカ同時多発テロ事件の容疑者とされ、米軍に起訴も裁判もされないまま何年も拘束され続けているモーリタニア人の男性がいることを知り、彼の弁護を買って出る。

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 事実を基にした物語。129分。

 

感想

 911テロの容疑者として不当に拘束され続けた男に関する物語だ。怪しい奴を全員拘束しておけ、中には無実の者もいるかもしれないが気にするな、とかまるで中世と変わらないやり方で、人権なんて全く無視されている。戦争などでもそうだが、個人単位ではありえないことが国家単位になると平然と行われるのは何なのだろうか。

 

 これも国家を揺るがすようなテロ事件にパニックになっていたからなのだろうが、時間が経つことで冷静さを取り戻し、さすがにそれは駄目だろうと声を上げる人が出てくるのは心強い。不当拘束されているモーリタニアン人の存在を知ったジョディ・フォスター演じる弁護士は、その弁護を買って出る。

 

 

 だがテロリストと目される人物の弁護をすることを非難する人は多い。そんな人たちに対して彼女が、依頼人の権利を守ろうとしているだけ、それはあなたや自分のためだと主張するシーンは、強く心に響いた。本当にその通りで、次は自分かもしれない、と想像する力があるかどうかの問題だろう。なんの根拠もなく、次が自分のわけがないと思い込んでいるのならおめでたすぎるだろう。それこそお花畑だ。

 

 不都合な事実を隠蔽したい国家を前に、弁護士は何度も行く手を遮られる。だがどこかの国と違って、しっかりと三権分立が機能して政府に忖度しない司法が頼もしい。事実を隠蔽したいのは国家ではなく、時の政府でしかないことを教えてくれる。

 

 さらには公僕としての責任感から真相解明に協力する内部の人間が現れたり、法廷で対決するはずの海軍検事も遵法精神に反する事は出来ないと政府の意向を拒否したりと、あちこちで人々の良心が垣間見られる。こういった動きこそが本当の愛国心ある行動だろう。

 

 これらは民主国家の基本だが、なぜか羨ましく感じてしまうのはなぜだろう。なにかあると簡単に建前をすべてうっちゃり、長い物に巻かれまくる自称民主国家もあるらしい。

 

 弁護士の裁判準備の様子と拘束中のモーリタニアン人のこれまでが並行して描かれ、そこからひとつの真実につながっていく過程には引き込まれるものがあった。中盤の拷問シーンで物語的な面白みは薄まり、停滞感が出てしまったが、ここはちゃんと描いておかないといけない場面なので仕方がない部分はある。

 

 拷問ありで10数年も拘束されるなんて殺人よりもひどい扱いだ。全然ハッピーエンドとは言えなくてぐったりとしてしまうが、それでも何とか正義は保たれたと辛うじて安堵する事は出来る。

 

スタッフ/キャスト

監督 ケヴィン・マクドナルド

 

原作 モーリタニアン 黒塗りの記録 (河出文庫)

 

製作/出演 ベネディクト・カンバーバッチ

 

出演 ジョディ・フォスター/タハール・ラヒム/シェイリーン・ウッドリー/ザッカリー・リーヴァイ/ドゥニ・メノーシェ

 

モーリタニアン 黒塗りの記録 - Wikipedia

 

 

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「それから」 1985

それから

★★★★☆

 

あらすじ

 実家からの援助に頼って生きる男は、大阪から戻ってきた友人と密かに思いを寄せるその妻と再会する。 

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 キネマ旬報ベスト・ワン作品。

 

感想

 主人公は高学歴だが働かず、実家に頼って暮らす男だ。当時は「高等遊民」と言ったが、今ならニートだろうか。ただ彼が言っていたように、働く理由もないのに働く必要はない、というのは確かにその通りではある。

 

 そんな主人公を演じるのは松田優作だ。周囲の冷ややかな視線を淡々と受け流し、叶わぬ恋に思い詰める男を好演している。ただ、今も活躍する役者陣に混じると、早逝した彼が年齢的にどの位置にいるのか、最初はいまいち感覚がつかめず混乱してしまった。

 

 

 彼より上の世代かと思った小林薫は同世代の友人役で、もっと上で親世代かと思っていた草笛光子はちょっと上の義理の姉役だった。49年生まれの松田優作は、生きていたら今は75歳くらいなのかと遠い目をしてしまった。

 

 それからヒロインで友人の妻役の藤谷美和子は、とても明治の女ぽい顔立ちをしている。タイトルバックで浮かび上がる彼女の顔は、本当に明治期の写真のようでしっくり来た。

 

 主人公と友人の妻の関係がしっとりと描かれていく。お互いがお互いの気持ちを分かっていながら何も言わず、二人は互いの家を足繁く行き来する。だが言葉にしなくても、二人の強い想いは言外から濃厚ににじみ出てしまっている。何も語らないだけに逆に淫靡だ。友人は当然気付いているのだろう。久々の再会のときからすでに、主人公と相対するのを避けていたのが印象的だ。

 

 一途な恋を貫く主人公だが、これは彼がニートであることも影響しているだろう。もし彼が社会に出ていたら、次第にその気持ちは薄れていき、やがて新たな恋に出会っていたはずだ。しかし彼は彼女への想いを大事に抱えたまま、世間から離れ閉じこもってしまった。

 

 忙しく働いている他の人から見れば、まだ続いていたの?と呆れてしまう類のものだ。世間からのん気な身分だと思われてしまうのも仕方がない。

 

 それでも恋は恋だ。自分に正直に、打算なしで突き進んだ主人公の誠実な姿には心を打たれた。じっくりと丹念に描かれているので冗長に感じてしまうところはあったが、時おり挿入される奇妙なシーンがいいアクセントになっていた。

恋

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スタッフ/キャスト

監督

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脚本 筒井ともみ

 

原作 それから (角川文庫)

 

出演 松田優作/藤谷美和子/小林薫/美保純/森尾由美/イッセー尾形/羽賀健二/川上麻衣子/草笛光子/風間杜夫*/中村嘉葎雄

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*友情出演

 

音楽    梅林茂

 

それから

それから

  • 松田優作
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それから - Wikipedia

 

 

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「つぐない」 2007

つぐない (字幕版)

★★★☆☆

 

あらすじ

 姉と使用人の息子の密会を目撃した少女は動揺し、邸内で起きた事件に嘘の証言をしてしまう。

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 原題は「Atonement」。123分。

 

感想

 十代の多感な少女が、不意に大人の世界を覗き見してしまったことから始まる物語だ。普通なら大人に嫌悪感を抱いて終わりだが、その日は別の事件がさらに起きてしまったのが不運だった。

 

 動揺していた彼女は、その日の出来事で心に渦巻いていた様々な感情を、そこで無分別にぶつけてしまった。この態度自体も未熟な十代ならではだが、それが姉や使用人の息子、そして自分のその後の人生に大きな影響を与えることになる。

 

 

 前半はそんな運命の一日がじっくりと描かれる。同じ出来事を別の視点から再度描く演出は面白かったが、話がどこに向かおうとしているのかがよく分からず、推進力には欠ける展開だった。

 

 後半はその数年後、戦争が始まって出征した使用人の息子の様子を中心に描かれる。兵士たちが行く広大な平原の映像は美しく、カオス状態のダンケルクでの長回しのシーンには圧倒された。ただ、これらが本筋のストーリーとどのような関係があるのかは見えない。

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 そして運命の日以降バラバラになっていた少女、その姉、使用人の息子が再び一堂に会して、終盤へと向かう。ラストで元少女によって真実が明らかにされるが、そこでようやくそれまで描いてきたことの意味が分かった。現実は甘くない。

 

 各シーン、各シークエンスに見応えはあり、ストーリーにも心打たれるものがあるのだが、登場人物の心情が見えづらく、各場面の意図が伝わりづらいのが少々しんどかった。

 

スタッフ/キャスト

監督 ジョー・ライト

 

脚本 クリストファー・ハンプトン

 

原作 贖罪 (新潮文庫) 

 

出演 ジェームズ・マカヴォイ/キーラ・ナイトレイ/シアーシャ・ローナン/ロモーラ・ガライ/ヴァネッサ・レッドグレイヴ/ブレンダ・ブレッシン/ベネディクト・カンバーバッチ/ジュノー・テンプル/アンソニー・ミンゲラ

 

撮影 シェイマス・マクガーヴェイ

 

つぐない (字幕版)

つぐない (字幕版)

  • キーラ・ナイトレイ
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つぐない (映画) - Wikipedia

 

 

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「SHAME シェイム」 2011

SHAME-シェイム- 劇場公開版 ※R18版  (字幕版)

★★★☆☆

 

あらすじ

 自宅に妹が居候を始めたことにより、生活がおかしくなっていくセックス依存症の男。

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感想

 主人公はニューヨークの高級マンションに住むエリートサラリーマンで、セックス依存症の男だ。娼婦やバーで会った女性と夜な夜な関係を持ち、さらには風呂場や職場のトイレで自慰をして、暇さえあればネットのエロ動画を見ている。

 

 かなり度を越してはいるが、これが中学生男子だったら普通だったりする。ただし主人公は全然楽しそうではなく、常に悲哀漂う顔をしている。だから依存症なのだろう。もしこれが満喫している様子なら、何も問題ない行為とされるのかもしれない。同じことをしていても本人の気持ち次第で病気とされたりされなかったりするのだとしたら興味深い。

 

 

 そんな日々を送る主人公の家に妹が転がり込んでくる。冒頭から彼の家の留守電に、別れた恋人のような未練がましいメッセージを何度も残していた女性が妹だったとは驚いたが、つまりはそういうことなのだろう。風呂場で裸を見られても平然としていたり、主人公が眠るベッドに妹が潜り込んできたりと、多分に近親相姦の匂いが漂っている。

 

 そして主人公の依存症は、この妹との問題に起因しているらしいことが段々と伝わってくる。歌手の妹がバーで「ニューヨーク・ニューヨーク」を歌い、その歌詞に妹と距離を取って新たな人生へ再出発しようとした自分を重ねたのか、主人公が静かに泣くシーンは印象的だった。満たされない想いを埋めようとした結果、依存症になってしまった。

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 だから彼の性的行為は恋愛とは切り離されている。この映画では赤が恋愛の象徴として使われているが、主人公と関係を持つ時、女たちは身につけた赤い衣装や貴金属を外す。だから赤いネックレスをつけたままの職場の女性とはうまく関係を持てなかった。妹との関係で、そうなってはいけないと常にストッパーをかけてきた影響だろう。その後の自棄になった主人公の、なんでもありの行けるところまで行こうとする暴走ぶりには闇の深さを感じてしまった。

 

 多くを語らない静かな演出で分かりにくさがあるが、それでも最後まで見ることが出来てしまう不思議な力を持った映画だ。見るたびに新たな発見がありそうだ。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 スティーヴ・マックイーン

 

脚本 アビ・モーガン

 

出演 マイケル・ファスベンダー/キャリー・マリガン/ジェームズ・バッジ・デール

 

SHAME -シェイム- - Wikipedia

 

 

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「レイダース 欧州攻略」 2018

レイダース 欧州攻略(字幕版)

★★☆☆☆

 

あらすじ

 CIAの高度なセキュリティシステムが乗っ取られ、凄腕エージェントの男は同業の女性と共に解決を依頼される。

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 「攻略」シリーズ第3作目。

 

感想

 シリーズものだと知らずに三作目から見てしまったが、前作からのつながりはほぼ無いらしく、特に問題ないようだ。だが続編だと知って、だからか!と思ってしまったほど、説明もなくどんどんと展開していく物語だった。

 

 各シークエンスが丁寧な前振りがないままにいきなり始まってしまうので、何が起きているのかがよく分からない。今のは何だったのだ?と振り返って考えようとしても、その暇は与えられずにすぐに次のシークエンスが始まってしまう。その連続がひたすら続き、おかげで半分くらいは何やっているのか分からない状態で、混乱したまま見続けることになる。

 

 

 監督としては、先に何かやって後で説明する構成にしているつもりのようだが、その説明が早足過ぎてよく分からない。その説明シーンに対する説明が欲しいと思ってしまうレベルだった。映画を通して、たとえ今は分からなくても後でちゃんと説明してくれるはずだという信頼関係が築かれることはない。まったく油断できず、無駄に疲弊してしまう。

 

 それから、敵を追うメインの展開と共に、主人公と女性のラブコメ的なやり取りが描かれ、これが見どころの一つになっているはずなのだが、思ったよりも笑わしに来ないというか、意外と普通の恋愛描写をしているだけなのが意味不明だった。ロマンチックでもないし、どこかちぐはぐで、どうしたいのだ?と逆に聞きたくなってしまった。

 

 ラストには大どんでん返しがある。しかしそもそものストーリーを曖昧にしか把握していないので、してやられた感も爽快感もなく、無表情で「なるほど、分かりました」と受け入れるのみだった。この映画はなんとなく、相手の反応を気にすることなく自分の喋りたいことだけを喋り、最後に一方的にガッハッハと笑いながら去っていくおじさんを連想させる。その場に残された観客は、今の何だったの?と互いに顔を見合わせることしかできない。

 

 ただ、派手なアクションにサスペンス、恋愛ものに家族もの、さらには笑いも涙もある風の演出が施されているので、雰囲気だけで楽しめる人には満足できる映画なのかもしれない。よく分かんないけどなんか愉快なおじさんだったね、と。

 

スタッフ/キャスト

監督/撮影 ジングル・マ

 

出演

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クリス・ウー/ティファニー・タン/ドゥ・ジュアン/ジージャー・ヤーニン/ジョージ・ラム

 

 

 

関連する作品

前作 シリーズ第2作目

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「ミニオンズ フィーバー」 2022

ミニオンズ フィーバー (字幕版)

★★★★☆

 

あらすじ

 憧れの悪党グループの元メンバーに連れ去られた怪盗グルーの行方を追うミニオンズ。

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 原題は「Minions: The Rise of Gru」。シリーズ第2作目。88分。

 

感想

 まだ少年の怪盗グルーが連れ去られ、ミニオンズが救出に向かう物語だ。前作同様に三匹のミニオンがメインとなって活躍する。これまではどこかでたくさんのミニオンたちがわちゃわちゃするシーンを期待してしまい、物足りなさを感じるところがあったが、今回はそんなことはなかった。

 

 前作でその設定に慣れて、ミニオンの群れとしか認識していなかったのが、それぞれのキャラが見えるようになってきたのも大きいだろう。そうなるような演出が施されている。単純にこの三匹の物語として楽しめた。

 

 

 今回は、この三匹のミニオンが、ボスの監禁されているサンフランシスコへと向かい、最後に敵と戦うという分かりやすい冒険のストーリーだ。登場する人物やキャラも前作ほど多くなく、スッキリとしている。また、三匹とは別に行動する一匹のミニオンが登場し、いいアクセントになっている。

 

 これらがコミカルに描かれていくのだが、そのどれもが面白かった。ミニオンズのチャップリン的なドタバタな動きも楽しいし、何を喋っているのか分からないのになんとなく言ってる事ややろうとしている事が伝わってくるのも可笑しい。この感覚は、猫や犬の動物動画を見ている感覚に近いかもしれない。気が付けばニコニコしながら彼らを見つめている。

 

 クライマックスは、悪党軍団との派手な対決で盛り上がる。カンフー修行で強くなったミニオンズと同じように、師匠の教えを受け、憧れだった悪党グループを倒す少年グルーの成長物語にもなっていて、見るものに勇気と元気を与えてくれる。コンパクトにまとまったエンタメ作品だ。

 

 

スタッフ/キャスト

監督 カイル・バルダ

 

製作 クリス・メレダンドリ/ジャネット・ヒーリー/クリス・ルノー

 

出演 ピエール・コフィン/スティーヴ・カレル/タラジ・P・ヘンソン/ミシェル・ヨー/RZA/ジャン=クロード・ヴァン・ダム/ルーシー・ローレス/ドルフ・ラングレン/ダニー・トレホ/ラッセル・ブランド/ジュリー・アンドリュース/アラン・アーキン/ジミー・O・ヤン/ケビン・マイケル・リチャードソン/ジョン・ディマジオ/ウィル・アーネット/スティーヴ・クーガン

 

音楽 ヘイター・ペレイラ

 

ミニオンズ フィーバー - Wikipedia

 

 

関連する作品

前作

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「グッド・ヴァイブレーションズ」 2012

グッド・ヴァイブレーションズ(字幕版)

★★★☆☆

 

あらすじ

 1970年代。紛争が続き、人通りの絶えた北アイルランドのベルファストで、音楽好きの男がレコード店をオープンする。

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 北アイルランドのレコード店・レーベルである「グッド・ヴァイブレーションズ」の創設者で、ベルファスト・パンクのゴッドファーザーと呼ばれるテリー・フリーの半生を描く。事実を基にした物語。

 

感想

 終わらない紛争に嫌気がさし、レコード店を開いた男の話だ。治安が悪化し、巻き添えになるのを恐れて誰も街を出歩かなくなった時代に、敢えて店を出そうとする主人公は相当な変わり者だ。しかも特に成功する目算があったわけでもなく、やりたいからやっただけのノープランだ。

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 それでも少しずつ人は集まるようになる。そして今度は気に入った地元バンドのレコードを出すレーベルを始める。これまた売れそうだと判断したからではなく、単に気に入った曲がレコード化されていないと知ったからだ。だがそうした彼の動きが多くの人を惹きつけ、音楽が絶えて久しかったベルファストにムーブメントを起こしていく。

 

 やがてバンドを引き連れ、バンでツアーにも出るようになる。その最中に紛争警戒中の警官に職務質問され、対立しているはずの地域の人間が一緒に行動していることに驚かれるシーンは印象的だった。誰がどこの地域出身なのか、そこにいた誰もがまったく気にしていなかった。

 

 

 当時カトリックとプロテスタントで対立していた人たちは、貧困や格差で余裕をなくし、視野が狭くなっていたのだろう。冷静に考えればそれは人間の属性の一つでしかなく、それだけで相手を判断してしまうなんて、ましてや争うなんて馬鹿げている。

 

 そういうことに気付かせてくれるのが音楽の力、カルチャーの力なのだろう。心に余裕がないと文化を楽しめないと言われるが、文化を楽しむことで心に余裕が生まれることもあるのかもしれない。

 

 そこそこ順調でうまくいっているのに経済的には苦労し、妻にも愛想をつかされてしまう主人公には、もっとちゃんとした経営をすればいいのにと思ってしまう。だが本音を言えば主人公は、ただ好きな音楽を聴いて酒を飲んで酔っ払っていたいだけなのだろう。それができる環境が周りになかったから自分でやっただけで、はなから金儲けがしたかったわけではない。

 

 最後に紹介されたレコード店のその後の歴史には思わず笑ってしまったが、それだけ地域に愛されているのだろう。主人公も本望に違いない。きっと主人公みたいな人は世界中のあちこちにいて、儲からないよと嘆きながら今日もローカルな活動を続けている。そう想像すると世界はそんなに悪いものじゃないかもと思えてくる。

 

 描き方が断片的で分かりづらく、音楽映画としての盛り上がりにも欠けたが、こんなムーブメントがあったと知ることが出来る興味深い映画だった。

 

スタッフ/キャスト

監督 リサ・バロス・ディーサ/グレン・レイバーン


出演 リチャード・ドーマー/ジョディ・ウィッテカー/マイケル・コーガン/カール・ジョンソン/リーアム・カニンガム/エイドリアン・ダンバー/ディラン・モーラン


音楽 デビッド・ホームズ/キーファス・グリーン

 

 

 

登場する人物

テリー・ホーリー/アウトキャスツ/ルディ/アンダー・トーンズ

 

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「g@me.」 2003

g@me.

★★★☆☆

 

あらすじ

 任されていた大きなプロジェクトを中止にされてしまった男は、それを決めたクライアント企業の重役に恨みを抱き、その娘に狂言誘拐を持ちかける。

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感想

 主人公が大企業の重役の娘と手を組み、その親から大金をせしめる物語だ。その発端となったのは、任されていた大きなプロジェクトがその重役の鶴の一声で中止にされたことだった。しかしいくら大きなプロジェクトだったとはいえ、中止を決めた依頼主にそこまでの恨みを持つだろうか。

 

 クライアントは改めて別の企画を立ち上げようとしていたようなので、キャンセル料を踏み倒されたりなどの酷い仕打ちを特にされたわけではない。それなのに怒ってしまう主人公には、それこそ客を何だと思っているのだと言いたくなる。

 

 

 その後に主人公が、中止を決めた重役の家の周りを意味もなくうろうろするのも不気味だった。そして、そこでたまたま知り合った重役の娘と共謀し、狂言誘拐を行なうことになる。重役との交渉や身代金の受け取りの様子はスリリングで面白かったが、主人公はただの会社員のはずなのに、なんでそんなに手口が鮮やかなの?という疑問は心のどこかに常にあった。

 

 それが分かるような描写はほぼ無かったが、天才的でプライドが高い男という設定なのだろう。だが、軽いノリで犯罪に手を出すところも解せず、どちらかというと病的な人間に見える。

 

 計画は見事に成功するが、それには裏の事情があったことが明るみになり、主人公は驚かされる。思わぬ展開で面白かったのだが、ここでも、だとしたら重役は機転が利きすぎだし、なんでそんなに手口が鮮やかなの?となってしまった。これに犯行中に主人公と女の間に芽生えた愛が絡み、その後はもつれた展開となっていく。

 

 細かい機微の描写はないが、二人が恋に落ちるのはなんとなく分かる。しかし、それなら両者とももっと素直に真相を打ち明けるべきだった。そうしていれば二転三転する展開に翻弄されずに済んだはずだが、変なプライドが邪魔をして、互いにゲームを降りることが出来なかったということか。煮え切らない二人にイライラしてしまう。

 

 それでもきれいに話が収束し、いい感じにエンディングを迎えるのかと思ったら、いかにも昭和でウェットな展開が待っていた。20年以上前の昔の映画に言うのもあれだが、今だにそんな風に、自分には幸せになる資格がない、我慢しなければいけないとか言ってるから、誰も幸せでない社会になっちゃうんだよと腹が立ってきた。

 

 大まかなプロットとしては面白かったので、これをたたき台にして細部を詰めていけばいい映画になりそうだ。だからこれが最終の完成形と言われると、色々と残念に感じてしまう。

 

スタッフ/キャスト

監督 井坂聡

 

脚本 尾崎将也/小岩井宏悦

 

原作 ゲームの名は誘拐 (光文社文庫)


出演 藤木直人/仲間由紀恵/石橋凌/宇崎竜童/IZAM/入江雅人/ガッツ石松/椎名桔平/小日向文世/生瀬勝久/東野圭吾大倉孝二/伊藤さおり/虻川美穂子/福井謙二/藤村さおり

 

g@me.

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ゲームの名は誘拐 - Wikipedia

 

 

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「バンブルビー」 2018

バンブルビー (字幕版)

★★★★☆

 

あらすじ

 死んだ父親を思い、義理の父親がいる家族に馴染めない少女は、18歳の誕生日におんぼろの黄色い車を手に入れる。

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 シリーズ第6作目。114分。

 

感想

 時系列的にはシリーズ第一作目よりも前の80年代が舞台となっている。序盤はセットや衣装、小道具などで80年代ぽさを強調するような演出が盛りだくさんだ。音楽も80年代風の曲が次々と流れ、このまま主人公が歌い出して、青春ミュージカル映画になっちゃうんじゃないかと思ってしまうような瞬間があって面白かった。

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 今回はタイトルからしてこれまでと違うが、トランスフォーマー同士の戦いよりも主人公とバンブルビーの交流をメインに描いたスピンオフ的な作品だ。戦いで傷つき記憶を失ったバンブルビーと、彼を世間から守ろうとする主人公が絆を深めていく様子は、80年代風演出と相まって、まるで「ET」のような懐かしいSFX映画の趣があった。

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 またコメディーパートも、これまでのシリーズのようなガチャガチャした騒々しさがなくなっており、穏やかな気持ちで楽しめる。そんな中でバンブルビーが、カセットデッキで気に入らない曲をかけられると、すぐにカセットテープを勢いよく吐き出すシーンには爆笑してしまった。聴いた途端にそうしたくなるような曲に遭遇することはわりとあるので、気持ちは痛いほどよく分かる。

 

 いい感じで物語が進んでいたが、終盤のいつもの敵ロボットたちとの戦いのくだりが始まると、途端に面白みが薄れてしまった。本当はETよろしく、派手に戦わずにバンブルビーが星に帰るのを涙ながらに見送るくらいでちょうど良いのだが、これが本題なので仕方がない。

 

 

 それでも長時間が当たり前になっていたシリーズの中で、2時間未満に上映時間を抑えてきたのは好感が持てる。主人公の成長や家族との関係、そしてちょっとした恋なども描かれる、ノスタルジックで程よい青春映画となっている。

 

スタッフ/キャスト

監督 トラヴィス・ナイト

 

製作 マイケル・ベイ

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出演 ヘイリー・スタインフェルド/ジョン・シナ/ジョージ・レンデボーグ・Jr/ジョン・オーティス/ジェイソン・ドラッカー/パメラ・アドロン/グリン・ターマン/レン・キャリオー/グレイシー・ドジーニー

 

出演(声) ディラン・オブライエン/ピーター・カレン/ グレイ・グリフィン/スティーヴン・ブルーム/ アンジェラ・バセット/ジャスティン・セロー

 

音楽 ダリオ・マリアネッリ

 

バンブルビー (映画) - Wikipedia

 

 

関連する作品

前作 シリーズ第5作目

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次作 シリーズ第7作目

 

 

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「人生の動かし方」 2019

人生の動かし方

★★★★☆

 

あらすじ

 求職実績が欲しいがために受けた面接で採用されてしまった前科ありの黒人男性は、四肢の麻痺を抱える資産家の男の介護をすることになる。

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 事実を基にした2011年のフランス映画「最強のふたり」のリメイク作品。原題は「The Upside」。

 

感想

 生きる気力が湧かない身体障碍者の資産家と、幸せになりたいのに上手くいかない金のない青年が交流する物語だ。互いに正反対で交わるはずのなかった二人が、知らなかった相手の世界に足を踏み入れることで変わっていく。

 

 住む世界が違う二人だが、共通点はあった。それはともに社会的弱者である点だ。黒人で前科のある青年はまともに生きようとしても社会に受けれてもらえず、資産家は障害によって初対面の人に敬遠されてしまう。資産家の「私はいつもいないことにされる。金持ちだと知られるまでは」という嘆きは悲しかった。

 

 

 だが同じ社会的弱者でも、青年は生まれた時からなので(悲しいことではあるが)慣れている。だが資産家はある日突然そんな立場になってしまったので、まだ受け入れきれていないところがあり、その対処の仕方もまだ確立できていない。だから二人が影響を与え合うとは言いながらも、青年が資産家を叱咤激励する場面が自然と多くなっている。

 

 そんな両者のやり取りは微笑ましくて面白い。ただ、青年がオレ流のやり方を押し付けているだけに見えるシーンがいくつかあったのが気になった。特に資産家の文通相手の手紙を、相手が動けないことをいいことに勝手に読み、しかも電話まで掛けるシーンはやり過ぎ感があった。

決断=実行

決断=実行

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 きっと青年は、資産家のためにやっているのだから多少強引でも構わないと思っているのだろう。だがそれは、ハラスメントをする人の発想と何ら変わらない。悪気がなかったで済ませられない事だ。

 

 二人の関係も、偉い人がヤンキーを面白がっているような感じがあったり、俺の言うことを聞いておけば間違いないという青年の傲慢さが感じられたりと、リメイク元のフランス映画ほどの爽やかな感動はなかった。それから話は変わるが、やる気の感じられない適当な邦題もひどい。

 

 それでもダレることのない物語の運び方は上手かった。この手の作品にはなかなか手が伸びないのだが、いざ見てみたら、思っていたよりスルッと見ることが出来て感心した。

 

スタッフ/キャスト

監督 ニール・バーガー

 

原作

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出演 ケヴィン・ハート/ブライアン・クランストン/ニコール・キッドマン/ゴルシフテ・ファラハニ/テイト・ドノヴァン/ジュリアナ・マルグリーズ

 

音楽 ロブ・シモンセン

 

人生の動かし方

人生の動かし方

  • ケヴィン・ハート
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人生の動かし方 - Wikipedia

 

 

関連する作品

リメイク元の作品

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「ライアーゲーム 再生」 2012

LIAR GAME REBORN -再生-

★★★☆☆

 

あらすじ

 戸惑う元教え子と共にライアーゲームに再び参加した主人公は、20億円を賭けた椅子取りゲームに挑む。

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 サブタイトル「再生」の読みは「リボーン」。人気テレビドラマシリーズの劇場版第2弾。131分。

 

感想

 主人公ら参加者が、イス取りゲームで賞金を競う物語だ。主人公は早い段階で、このゲームがいわゆる椅子の奪い合いではなく、陣取り合戦であることを看破する。だが、いきなりネタばらしをするのではなく、観客にそれを気付かせる演出で楽しませて欲しかった。

 

 ゲームの本質が明らかになった後は、もはや椅子に座る様子すら見せることはなくなり、3つに分かれた陣営による言葉中心の駆け引きや買収合戦が描かれるようになる。この様子はそれなりに面白いのだが、皆が勝負に出るのがあまりにも早すぎるような気がした。

 

 

 3つの陣営のうち2つが同盟を結んだのなら、まず残りの1つを確実に退場させる方がいいように思えるが、なぜかその途中で内輪もめを始めてしまった。ほぼ勝ちは決まったので味方を減らして取り分を増やそうとしたのか、あるいは3つ巴の構図を残した方が戦略的に有利だったのか、それとも他に理由があったのか。その説明が欲しかった。

 

 皆ペラペラとしゃべっているわりには、肝心の戦略については誰も何も教えてくれない。物語的にはこの方が面白いのは分かるが、納得できる理由が必要だろう。

 

 一進一退の白熱の攻防戦が続き、主人公も優勢に立ったり劣勢になったりする。そんな中で、自分たちのターンでは雄弁で強気の主人公が、相手のターンになった途端に黙りこくってしまうのがちょっと面白かった。まるで、普段は威勢のいいことを言っているのに都合が悪くなるとダンマリを決め込むSNSアカウントみたいだった。

 

 不満はありながらも勝負の行方を楽しめていたのだが、ほとんど密室の会話劇が延々と続く展開に、終盤は段々と息苦しくなってきた。もっと外の景色を映すとか、動きのあるシーンを入れるとか、息抜きとなる時間をつくる工夫が欲しかった。それに言葉による取引や駆け引きだけでなく、別の陣営のイスを探し出して盗もうとする毛並みの違うキャラがいても良かった。

 

 映画らしい演出も特になく、途中にCMでも入ればちょうど良さそうな内容に、これなら普通に連続テレビドラマでよくない?と思ってしまった。

 

 それから、そういえばそんなことがあったなと忘れていた伏線を、ラストで回収するシーンも無茶だった。3つの椅子と色の組み合わせを列挙するだけで本の大部分を占めてしまうだろうとツッコみたくなった。

 

 

スタッフ/キャスト

監督    松山博昭

 

原作 LIAR GAME 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)

 

出演 松田翔太/多部未華子/濱田マリ/要潤/小池栄子/船越英一郎/斎藤陽子/新井浩文/高橋ジョージ/野波麻帆/前田健/大野拓朗/竜星涼/芦田愛菜/渡辺いっけい/鈴木浩介/鈴木一真/江角マキコ

 

音楽 中田ヤスタカ

 

LIAR GAME (テレビドラマ) - Wikipedia

 

 

関連する作品

前作 劇場版 第1作目

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「ステップ・アップ」 2006

ステップ・アップ (Step Up) (JA-Subbed)

★★★☆☆

 

あらすじ

 悪友とつるんで芸術学校に忍び込むも捕まってしまった不良の青年は、裁判所にその学校での奉仕活動を命じられる。

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感想

 ダンス好きの不良少年が、芸術学校に通う生徒たちとの交流を通して夢を見つける物語だ。裁判所命令で清掃員としてやってきた主人公が、グイグイとそこの生徒に声をかけていくのはすごい。生徒と清掃員の関係なんて壁がありそうなものなのに、アメリカではこれが普通なのか、それとも主人公が不良ならではのハートの強さからなのか。

 

 しかも主人公は掃除をしながら、厳しい練習に明け暮れる生徒たちを俺の方が上手いと半笑いで眺め、挙句の果てには練習相手に困っていたヒロインの相手役に名乗り出る。普通なら自惚れの強いバカがいた、で終わるところだが、見事に合格してしまうのだからびっくりだ。彼に才能があったということなのだろうが、主人公がなぜそんなに上手いのかは説明されない。

 

 

 ヒロインの練習相手を務めるようになった主人公は、改めてダンスの楽しさに気付き、また彼らとは人生への取り組み方に違いがあることを知る。さらにはヒロインとの恋、新しい仲間たちとの友情や古い仲間たちとの軋轢、そして友の死と、青春映画にありがちな展開が繰り広げられる。

 

 ベタでツッコミどころはたくさんあるのだが、ダンスに恋に友情と、ティーンムービーとしてはそれなりの安定感がある。続編がいくつもつくられるのも納得のフォーマットだ。

 

 だが娘に対するヒロインの母親の豹変ぶりや教師の甘い対応、ヒロインの物分かりの良さと、終盤に怒涛のように訪れる予定調和の連続には呆れてしまった。

 

 それから、印象に残るシーンにしたかったであろう波止場でヒロインと踊る場面は、もうちょっと丁寧に撮影すればいいのにと思ってしまった。構図はちゃんと考えられているのだが、ノイズの多い映像の雑さが気になった。

 

 たいして練習もしていない主人公にすべてを持っていかれてしまうので、日々努力をしている生徒たちが気の毒になってしまうところはあるが、気軽に楽しむには悪くない青春映画だ。

 

スタッフ/キャスト

監督 アン・フレッチャー

 

製作    エリック・フェイグ/アダム・シャンクマン/ジェニファー・ギブゴット/パトリック・ワックスバーガー

 

出演 チャニング・テイタム/ジェナ・ディーワン/マリオ/レイチェル・グリフィス/アリソン・ストーナー/ヘヴィ・D

 

音楽 アーロン・ジグマン

 

撮影 マイケル・セレシン

 

ステップ・アップ - Wikipedia

 

 

関連する作品

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「ミニオンズ」 2015

ミニオンズ (字幕版)

★★★★☆

 

あらすじ

 太古の時代からその時の最凶の生き物に仕えてきたミニオンズたちは、新たなボスを求めて代表者三名を旅立たせる。

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 「怪盗グルー」シリーズのスピンオフで、「ミニオンズ」シリーズの第一作目。

 

感想

 ミニオンズが怪盗グルーに出会うまでが描かれる。冒頭で、太古の時代から彼らの生きる目的は最凶のボスに仕えることだった、と紹介されるのだが、彼らの無邪気で可愛らしい外見にはそぐわないリアリスティックな方針に思わず笑ってしまった。

 

 そして彼らが初めて登場した「怪盗グルーの月泥棒」を見た時に感じた違和感は、これだったのかと納得した。悪党とつるむようなキャラではないように見えたのだが、そういう生存戦略ならば仕方がない。

 

 

 恐竜や原始人などに仕えた後、自分たちだけで暮らし始めるも生きがいがなく、うつ状態に陥ってしまったミニオンズは、新たなボスを求める旅に代表者を送り出す。たくさんいるミニオンズを登場させ続けると収拾がつかなくなるので、その中の三匹だけをフィーチャーして物語をスッキリとさせる演出はさすがだ。

 

 ただ、ミニオンズがスクリーン狭しとワチャワチャと終始駆け回り続けるカオスな映画も見たかったような気もする。ゲームの「ピクミン」もそうだが、似たようなキャラの集団が動き回る様子は、見ているだけで気持ちよかったりする。昆虫とかは無理なのでCGなどに限った話だが。

 

 一応、旅立った三匹と同時に、残された大勢のミニオンズの様子も描かれるし、最終的には皆で合流するので、集団としての面白さもちゃんと担保されてはいる。

 

 三匹は最凶の女盗賊を見つけ、ボスになってもらおうとするが、とあるきっかけで裏切ったと誤解され、攻撃されるようになってしまう。強い者にすがろうとするのはいいが、もしその強い者に敵とみなされ襲い掛かられたらどうするのだ?という命題を突き付けられたわけで、なかなか深い。

 

 考えてみれば、長いものに巻かれるのは人間の常なので、ミニオンズは民衆のメタファーみたいなものだろう。権威主義者たちが権威に目を付けられた時、どんな行動に出るのかは興味がある。ミニオンズたちは何とか脅威から逃れた後、新たなボスを見つけ、再び無邪気に仕えようとしていたが。学ばないところは大衆ぽいかもしれない。

 

 コミカルなシーンも多く、音楽も良いので、誰でも楽しめそうな内容となっている。子供はビートルズや月面着陸のネタを理解できるのか?と思うところはあるが、それはそれで何度見ても楽しめるポイントになって来るのかもしれない。教養が深まれば、より楽しめる。

 

 

スタッフ/キャスト

監督/出演(声) ピエール・コフィン/カイル・バルダ

 

出演 サンドラ・ブロック/ジョン・ハム/スティーブ・クーガン/マイケル・キートン/マイケル・ビーティー/アリソン・ジャネイ/ケイティー・ミクソン/スティーヴ・カレル/ジェニファー・ソーンダース/アンディ・ナイマン/真田広之/ジェフリー・ラッシュ

 

音楽 ヘイター・ペレイラ

 

ミニオンズ (字幕版)

ミニオンズ (字幕版)

  • サンドラ・ブロック
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ミニオンズ - Wikipedia

 

 

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