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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「トゥルー・クライム」 1999

トゥルー・クライム(字幕版)

★★★★☆

 

あらすじ

 問題ばかりを起こして上司から疎まれていたベテラン記者は、事故で亡くなった同僚の代役として急遽、刑執行直前の死刑囚のインタビューを任される。

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感想

 型破りな記者が、無実の罪で死刑を宣告された男を救う物語だ。よくある冤罪事件ものだが、それが死刑執行当日の一日で行われるのが特色だ。じっくりと調査して証拠を揃え、裁判で無実を訴えっているような時間はない。主人公が真相を求めて奔走する様子と、死刑囚が刑執行前の最後の一日を過ごす様子が並行して描かれる。

 

 このような人命が関わる切羽詰まった状況の中では重苦しい空気になりがちだが、意外とコミカルなシーンは多い。主人公である記者は同僚と軽口を叩きあったり、約束していたからと時間がない中で娘を無理に動物園に連れて行ったりする。余裕があるなと思ってしまうが、主人公はまだ半信半疑だったからだろう。

 

 

 そんな中で面白かったのは、ジェームズ・ウッズ演じる編集長とのジョークを交えた丁々発止のやり取りだ。奥さんを寝取る話をネタにしたりして、どこまで冗談でどこまで本気なのかが分からない。当惑しながらも、真顔で話す二人に思わず笑ってしまう。これらは男らしさを基としたジョークなのだろう。奥さんを他人に貸してやれる男としての度量の広さや、そんなことでは傷つかないタフガイぶりをアピールしている。

 

 これらは男ばかりの集団でありがちなもので、互いに冗談と認識しているうちはいいのだが、エスカレートしたり、中の誰かが真に受けてしまうと大ごとになってこじれてしまうやつだ。この映画では、クリント・イーストウッドの映画らしく、男らしさをベースにした笑いが多い。時代の変化と共に冷や冷やするシーンにもなってしまいそうだが、クリント・イーストウッドだからセーフ、みたいな属人的なところもあるかもしれない。

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 一方の冤罪の死刑囚は、もはやあきらめて現実を受け入れ、静かに最後の一日を過ごそうとしている。それにしても好きな食べ物をリクエストできたり、妻や娘と過ごせたりと色々とわがままを聞いてもらえるずいぶんと快適な環境だ。彼は無実だろうと思っているから見ていられるが、凶悪事件の加害者がこんな待遇を受けているのを見たらまた違った感想を抱いてしまいそうだ。そういえばこの頃はよく死刑をテーマにした映画が作られていたなと思い出したりした。

デッドマン・ウォーキング

デッドマン・ウォーキング

  • スーザン・サランドン
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 主人公と死刑囚は途中で一度しか顔を合わせないが、ここが主人公の男らしさが爆発する見せ場となっている。銃も使わず誰も殴らないのに、それでも主人公のタフガイぶりがしっかりと伝わってくるのはさすがだ。

 

 正直なところ、検察や被告側、マスコミなどが長年関わり、誰も気づかなかったのに、わずか数時間で主人公が気づき、一日で解決まで持って行ってしまう展開はさすがに無理があるような気がする。だが主人公が抱える問題も描きつつ、スリリングな展開で見せる映画だ。散りばめられた伏線をうまく回収し、重すぎず軽すぎずの程よいトーンで上手くまとめられている。多くを語らないエンディングも洒落ていた。

 

スタッフ/キャスト

監督/製作/出演

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原作 真夜中の死線 (創元推理文庫)

 

出演 イザイア・ワシントン/ジェームズ・ウッズ/リサ・ゲイ・ハミルトン

デニス・リアリー/バーナード・ヒル/フランシス・フィッシャー/ダイアン・ヴェノーラ/デイル・ポーターハウス    マイケル・ジェッター/メアリー・マコーマック/マイケル・マッキーン/ジョン・フィン/シドニー・ターミア・ポワチエ/エリック・キング/クリスティーン・エバーソール/アンソニー・ザーブ/ルーシー・リュー/ウィリアム・ウィンダム

 

音楽 レニー・ニーハウス

 

撮影 ジャック・N・グリーン

 

トゥルー・クライム(字幕版)

トゥルー・クライム(字幕版)

  • クリント・イーストウッド
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トゥルー・クライム (1999年の映画) - Wikipedia

 

 

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「乞食大将」 1952

乞食大将

★★★★☆

 

あらすじ

 豪傑として知られる戦国武将・後藤又兵衛は、地元の有力領主・宇都宮家に対する主君・黒田長政の取り扱いに反発し、家臣らと共に出奔する。62分。

 

感想

 戦国武将・後藤又兵衛が、黒田家を出奔するあたりから大阪冬の陣に向かうまでの様子が描かれる。又兵衛を演じる市川右太衛門は、最初は面白い顔の人だなくらいの印象しかなかったが、物語が進むにつれて次第に惹きつけられていく。

 

 目が大きく、くっきりとした顔立ちの彼は自然と目を引く。時代劇スターは顔のデカさが重要だったなどと聞くが、それが実感できた。映像の中でとても見栄えがして、存在感がある。北大路欣也は彼の息子だそうだが、言われてみるとよく似ている。

 

 そんな彼が演じる後藤又兵衛は、豪快な性格だ。戦に負けてもよくある事だとカラカラと笑い、主君の命令も気に入らなければ頑として断る。見ていて気持ちの良いキャラクターだ。主君のもとを去った彼を、元の家来たちが次々と追いかけてくるのもよく分かる。

 

 

 家来たちが俺も連れて行けと詰めかけるこのシーンは、微笑ましくて思わず笑ってしまったが、演出的には時代を感じるものだった。今なら悠長にいちいち一人ずつ描かないだろう。だがそれ以外は、古い映画にありがちなかったるさを感じてしまうようなシーンはなかった。それどころか、馬を走らせるシーンなどは今でも通用しそうなほどの迫力があった。これはCGに頼らず、実際に人海戦術で撮るからこそ出る迫力なのかもしれない。

 

 主君を持たない武将が諸国を彷徨う感じはあまりなかったが、苦境を苦境とも思わない主人公のキャラクターは十分に堪能できた。同情を寄せていた宇都宮家の生き残りたちとの胸が熱くなるようなやり取りもある。

 

 それから豪傑と言われているのに、戦場での戦闘シーンが一切ないのもよく考えるとすごい。諸事情で公開が遅れたようで、しかも62分しかないので、もしかしたら本当は戦場のシーンも加えるつもりだったのかなと想像してしまうが、この上映時間の短さのおかげもあって、気軽に楽しめる娯楽映画となっている。

 

スタッフ/キャスト

監督 松田定次


脚本 八尋不二

 

原作 乞食大将 後藤又兵衛 (徳間文庫)

 

出演 市川右太衛門/月形龍之介/羅門光三郎/香川良介 /藤野秀夫

*澤村マサヒコ名義

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乞食大将

乞食大将

  • 市川右太衛門
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乞食大将 - Wikipedia

乞食大将【パブリックドメイン】 - YouTube

 

 

登場する人物

後藤又兵衛(後藤基次)/宇都宮鎮房(城井鎮房)/黒田甲斐守長政(黒田長政)/徳川家康

 

 

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「グランド・イリュージョン 見破られたトリック」 2016

グランド・イリュージョン 見破られたトリック(字幕版)

★★★☆☆

 

あらすじ

 再始動したマジシャン集団は、携帯会社の陰謀を暴こうとするが何者かに妨害され、捕らえられてしまう。

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 「 グランド・イリュージョン」の続編。原題は「Now You See Me 2」。

 

感想

 手品師たちが巨悪を暴く物語だ。手品もペテンの一種だから、大きく括ればペテン師たちの物語と言えるだろうか。ペテン師たちが悪者をやっつけ、彼らの悪事を公表して懲らしめる。それを効果的に行うにはショーの要素があった方がいいので、マジック・ショーの形式を取っていると考えればいいのだろう。誰もが簡単に情報を発信できる時代だから、埋没しないためには伝え方を工夫しなければならない。なんだか世相をよく反映しているように見える。

 

 だがおそらくこの映画はそんなことは一切考えておらず、ただペテンに手品の要素をたくさん加えようとしているだけだろう。敵から盗んだカード型のチップを隠すため、メンバーがカードマジックの技術を駆使するシーンなどは、必要以上に手品要素を盛り込もうとしているように感じてしまい、興醒めるするところがあった。冷静になってしまうと、そこでわざわざ手品を使う必要があるのか?、と思ってしまうシーンは多い。

 

 それからやっぱり、CGをいくらでも使える映画の世界でマジックをやられてもあまり面白みはない。「雨を操れます」と言われても、「うん、CGを使ってるからね」と思うだけだ。スーパーヒーローが特殊能力を披露するのとはわけが違う。

 

 メンバーがアメリカからマカオへ瞬間移動してしまった場面は面白かったが、これは実際のマジック・ショーでやることは出来ないものだ。トリックには感心したが、これは手品というよりもペテンだろう。ペテン師の映画でも出来る。

 

 

 

 物語は前作の内容を踏まえた上で進行する。だがそれをほとんど覚えていなかったので、細かい部分はあまりうまく理解できなかった。物語自体も説明が不十分なところがあり、なにをやっているのかよく分からないシーンも多かった。その代わりテンポはいいので、あまり深く考えずに雰囲気で楽しむことはできる。今回から加わった新メンバーの女性キャラが、空気を読めない言動ばかりするのも面白かった。

 

 ラストは詐欺師の物語の定番で、観客を騙す仕掛けが用意されている。だがそれがバレバレだったのは残念だ。そんなところで計画が狂うなんてあり得ないと思ってしまうようなところでミスをするので、すぐに勘付く。おかげでそこから大どんでん返しまでの時間帯は白々しいものとなってしまった。ただトリック自体は悪くなかった。ショー的にやるとバレやすくなってしまうのかもしれない。

 

 映画とマジックがうまく融合していないような気がしてしまうシリーズだ。どうもしっくりと来ない。

 

スタッフ/キャスト

監督 ジョン・M・チュウ

 

脚本/原案/製作総指揮 エド・ソロモン

 

製作 アレックス・カーツマン/ロベルト・オーチー/ボビー・コーエン

 

製作総指揮 ケヴィン・デラノイ/ルイ・レテリエ

 

出演 ジェシー・アイゼンバーグ/マーク・ラファロ/ウディ・ハレルソン/ダニエル・ラドクリフ/デイヴ・フランコ/リジー・キャプラン/ジェイ・チョウ/サナ・レイサン/マイケル・ケイン/デヴィッド・ウォーショフスキー/ツァイ・チン

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関連する作品

前作

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「記憶にございません!」 2019

記憶にございません!

★★★★☆

 

あらすじ

 史上最悪と言われ、支持率が一桁しかなかった首相は、聴衆に石をぶつけられ記憶喪失になってしまう。

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感想

 権力と金に固執し、国会では暴言を重ね、態度も横柄だった史上最悪の首相が主人公のコメディ映画だ。支持率も一桁しかない設定だが、こんな首相でも現実だったらきっと支持が30%くらいはあるんだよなと思ってしまうと、最初は気分が乗らず、なかなか物語の世界に入っていけなかった。こういう政治コメディは、現実の政治がまともに機能している時にしか笑えないのではないかと半信半疑になっている自分がいた。

 

 だが次第にそんな不安は消え、最悪だった主人公が、記憶喪失がきっかけで最高の首相へと変身していく物語を純粋に楽しむことができた。何よりもネタとして取り上げる政治的トピックが誰もが気になるようなものばかりで、それに対する風刺も的確にキマっているのが良い。言いたいことを代弁してくれたようなカタルシスがあった。政権が何をしでかそうがとにかく支持することにしているらしい30%の人たちは楽しめないかもしれないが。

 

 

 そんな中で、首相が幼なじみの業者に便宜を図っていた理由が「いい顔をするため」と言っていたのは、的を射ているなと感心した。金のためではなく、首相の俺はこんな事もしてあげられちゃうんだよ、と友人に親切な態度を示すためだけに作られた大学が現実にあったが、権力維持や裏金確保などの政治的目的があったのならまだしも、友人にいい顔をするためだけに税金が無駄遣いされては納税者としてたまらない。

 

 しかも金銭的な見返りを求めていないので、犯罪として立証するのが困難なのも厄介だ。「誰かにいい顔をするために悪いことをした罪」を設けて欲しいくらいだ。そんなところで奉仕の精神を発揮していないで、国民全体に奉仕してもらいたかった。

 

 それからある人物が主人公を「卑しくてお金に汚くて権力志向で自己顕示欲の塊」と評していたが、それって馬鹿な子供と変わらないなと思ってしまった。そんな人間しか首相になれないのだとしたら、確かに苦労せずに育った世襲議員の方が向いているかもしれない。

 

 主人公を演じる中井貴一が、最悪の総理から誠実な総理に至るまでの過程をコミカルに熱演している。特に序盤の記憶喪失になったばかりで状況が上手く飲み込めず、ただオロオロする様子はまるで志村けんのようだった。その他、小池栄子や木村佳乃なども見事なコメディエンヌぶりを見せていて、役者陣の好演が光る。それから、異常に福耳な男や半そで短パンスーツの男など、何人かおもしろ政治家が登場するのに一切それに触れようとしなかったのもじわじわ来た。

 

 さすがに理想主義的だろうと思ってしまうシーンもあるが、良く出来た政治コメディ映画に仕上がっている。そしてこんなことが現実に起きないかなと夢想してしまうから困る。現実だと、100回くらいは記憶喪失にならないとまともな首相に変わってくれなさそうではあるが。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 三谷幸喜

 

出演

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ディーン・フジオカ/石田ゆり子/小池栄子/斉藤由貴/吉田羊/木村佳乃/田中圭/草刈正雄/寺島進/濱田龍臣/有働由美子/梶原善/藤本隆宏/迫田孝也/ROLLY/後藤淳平(ジャルジャル)/宮澤エマ/小林隆/飯尾和樹(ずん)/阿南健治/近藤芳正/川平慈英/天海祐希/(声)山寺宏一

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音楽    荻野清子

 

記憶にございません! - Wikipedia

 

 

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「バトル・オブ・ザ・セクシーズ」 2017

バトル・オブ・ザ・セクシーズ (字幕版)

★★★★☆

 

あらすじ

 1973年、男女の賃金格差是正を訴え、女子テニス協会を立ち上げたテニス選手、ビリー・ジーン・キングは、往年の男子テニスの名選手ボビー・リッグスに「男対女」の試合を挑まれる。

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 実話を基にした作品。

 

感想

 男女間の賃金格差の是正を目指し、女性選手の地位向上のために戦った女子テニス選手の物語だ。一般的に男女には体力差があるので、それが格差の理由だと男性側は反論する。だがそれに対する主人公の、興行としての集客数には大差がないのだからそれはおかしい、という主張は納得できるものだった。ビジネスとして稼いでいる金額が同じなら、同じだけの賃金を支払うべきだろう。

 

 だがテニスは、プレイヤーが男でも女でも集客数がさして変わらない、スポーツの中でも珍しい競技かもしれない。他にはゴルフや陸上競技などがあるくらいだろうか。女子サッカーや女子バスケなどは一時的なブームが起こることはあるが、一般的には男子よりも集客数が少なく、注目度が低い。これらのスポーツでも同様の議論が起こることがあるが、これに関してはどう捉えるべきなのか、今はちょっと分からない。ただ主張すること自体は悪くないだろう。

 

 主人公は当時のトップ・プレイヤーでありながら、格差を訴えて行動した。選手としてトップにいるだけでも大変なのに、そんなことまでするなんて素直に感心してしまった。影響力のある選手がやるからこそ効果がある、との責任感もあったのだろう。今でも「本業にだけ集中してろ」と批判する人はいるが、彼女は行動したからこそテニス界を変えることができた。これは彼女がいくら本業に集中し、試合に勝ち続けたところで決して成し遂げられなかった事だ。

 

 

 だから逆に、本業に集中しているだけでは駄目だ、ということなのかもしれない。これは別に彼らのような特殊な職業だけでなく、普通のサラリーマンにも言えることだろう。真面目に働き、その後で居酒屋で愚痴を言っているだけでは駄目で、そのために行動しなければ何も変わらない。

 

 映画の後半は、物語のメインである男子テニスの往年の名選手との試合の様子が描かれる。それまであまりテニスのシーンがなかったのはこのためだろうと思っていたのだが、この試合もあまり劇的に盛り上げようとする様子はなく、ただ淡々と描かれるだけだった。

 

 正直少し拍子抜けしてしまったのだが、この映画は主人公の女性の地位向上のための戦いを描くもので、熱血スポーツ映画をやるつもりはなかったということだろう。主人公自身が言っていたように、対戦相手の選手は男性的なものを示すピエロでしかなく、この試合はそれと対峙する彼女の戦いを象徴的に示しているにすぎない。

 

 主人公の戦いだけでなく、対戦相手の男性選手の妻や子供との問題、ギャンブル中毒なども描かれて、単なるフェミニズム映画にしない深みのあるものとなっている。また、主人公は女性差別とは戦ったが、同性愛については(この時は)公表せず隠したままにしている。そこに彼女の人間味が感じられるのもいい。何が何でも世の中と戦わなければならないわけではなく、自分が行動したいと思った時に無理せずやればよい、ということも教えてくれているかのようだ。

 

 「女は台所と寝室にいるだけでいい」などと著名人が公然とテレビで言い放つなど、当時の女性蔑視に対する世間の許容度に唖然としてしまうシーンがいくつもあった。なかでも、主人公の試合の解説を行なった女性選手に対して、背の高い男性司会者が彼女の首に手をまわし、背後から抱きかかえるようにずっとインタビューしていたシーンは吐き気がするほど気色悪かった。当時の男性の、女性に対する考え方や態度が一目瞭然で分かってしまうようなシーンだった。

 

スタッフ/キャスト

監督 ジョナサン・デイトン/ヴァレリー・ファリス

 

脚本 サイモン・ボーファイ

 

製作 クリスチャン・コルソン/ダニー・ボイル/ロバート・グラフ

 

出演 エマ・ストーン/スティーブ・カレル/アンドレア・ライズブロー/サラ・シルヴァーマン/ビル・プルマン/アラン・カミング/エリザベス・シュー/オースティン・ストウェル/ジェシカ・マクナミー/ナタリー・モラレス/エリック・クリスチャン・オルセン/ルイス・プルマン/ウォレス・ランガム/フレッド・アーミセン

 

バトル・オブ・ザ・セクシーズ - Wikipedia

 

 

登場する人物

ビリー・ジーン・キング/ボビー・リッグス/ジャック・クレイマー/マーガレット・コート /ロージー・カザルス/ジュリー・ヘルドマン/ジュディ・テガート/ケリー・レイド/ナンシー・リッチー

 

 

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「仄暗い水の底から」 2002

仄暗い水の底から

★★★☆☆

 

あらすじ

 離婚調停中で子供の親権を確保するために急ぎ入居したマンションで、次々と奇怪な現象に遭遇する女。

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感想

 外ではしとしとと雨が降り続き、あちこちに水たまりができて、部屋にはジメジメとした湿気が満ちている。水のイメージに満ちた映像だ。物語の世界観がうまく表現されている。

 

 序盤は主人公が一人娘と共に引っ越してきたマンションで、奇妙な現象に次々と遭遇する様子が描かれる。古ぼけたうらぶれたマンションで、他の住人の気配はほとんどなく、無愛想で無反応な管理人、要領を得ない不動産屋、水漏れする天井と、ホラー映画特有のなにか嫌な感じがよく表れている。大騒ぎするほどではないが、地味にどこかひっかかる出来事が次々と起こることで、そのイヤな感じが徐々に増幅されていく。

限界マンション: 次に来る空き家問題

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  • 作者:米山 秀隆
  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
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 そしてそれがリミットを越えた時、クライマックスが始まる。一気にたたみ掛けるように恐ろしい展開が起きるのかと思ったが、案外とおとなしかった。それまでに大体の物語のあらましが予想出来てしまっていたことも影響したのかもしれない。まったりとしたテンポでクライマックスに向かっていく印象だ。

 

 ただ考えてみれば幽霊とは、恨みがある相手でもなければむやみやたらと人を襲うものではないので、仕方がないのかもしれない。どちらかと言うと人間を積極的に襲うというよりも、つい迷惑をかけてしまう存在だろうか。心を病んだ人が他人に迷惑をかけてしまうのと似ている。

 

 

 だから、正直なところ、クライマックスでの主人公の行動には、なんで「アルマゲドン」みたいになっているのだ?と笑ってしまったのだが、あながち間違っていなかったのかもしれない。主人公は、無念で憑りついてくる幽霊に同情し、受け入れてしまった。娘を守るためでもあったが、完全なる自己犠牲の精神だ。

アルマゲドン (字幕版)

アルマゲドン (字幕版)

  • ブルース・ウィリス
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 ホラーなのに泣かせようとする展開にも呆れる気持ちがあったが、そもそも幽霊とは淋しく物悲しい存在だった。何かしらの未練があるから成仏できずにいる。

 

 ジャパニーズ・ホラーの基本はしっかりと押さえ、物語自体も分かりやすかったのだが、20年も前の作品だからか、怖さを感じることはほどんどなかった。

 

 それからどうでもいいが、流れっ放しの水道の蛇口は気付いたらすぐに閉めろよ、と言いたくなってしまうシーンが何度かあった。

 

 

スタッフ/キャスト

監督 中田秀夫

 

脚本

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鈴木謙一

 

原作 「浮遊する水」 「仄暗い水の底から (角川ホラー文庫)」所収

 

出演

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小日向文世/菅野莉央/水川あさみ/小木茂光/徳井優/諏訪太朗/品川徹

 

音楽 川井憲次

 

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関連する作品

アメリカでのリメイク作品

 

 

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「ハンガー・ゲーム FINAL: レジスタンス」 2014

ハンガー・ゲーム FINAL:レジスタンス(字幕版)

★★★☆☆

 

あらすじ

 ハンガーゲームの勝者として反乱軍に迎えられた主人公は、次第に革命のシンボルとなっていく。

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 「ハンガー・ゲーム」シリーズ三部作の三作目で二部作の第一部。

 

感想

 前作までの殺し合いのバトルロワイヤル要素はなくなり、主人公が政府に抵抗する反乱組織のシンボルとなっていく様子が描かれていく。レジスタンス活動の士気を高めるために、主人公は皆の前で演説したり、病院を慰問したり、プロパガンダ用の映像に出演したりする。

 

 こうなってくる最初からレジスタンスの物語として描けばよかったのでは?と思ってしまうが、ハンガーゲームがなければ、若い主人公が革命のシンボルになる説得力のある理由が見つからないし、反体制側にもシンパシーを感じられなかったかもしれない。それにインパクトも無くなって、世間に関心を持ってもらえなかった可能性もある。そう考えると話のツカミとしては必要だったと言える。

 

 

 体制側の上級国民たちに搾取されて貧しい暮らしを余儀なくされ、挙句の果てには彼らの余興のために意味のない殺し合いまでさせられていた大衆がついに立ち上がり、革命運動を始める。体制側の人間や搾取される側なのになぜか体制側にいるつもりの気の毒な人たち以外であれば胸が熱くなる展開のはずだが、いまいち気分が盛り上がらないのは主人公のモチベーションがズレているからだろう。

 

 主人公の最大の関心事は、敵に捕らえられた相棒の男を救い出すことだ。革命ではない。だから彼を救出できるのならと反乱軍に協力しているだけのように見えてしまい、ついでのように描かれるレジスタンス活動には高揚しづらい。皆のシンボルのはずの彼女が、一致団結すべき反乱軍の結束に水を差してしまっている格好だ。

 

 それから反乱軍の動きが、実際の戦いよりもプロパガンダを描くことに重きを置いているのも要因の一つだろう。主人公の役割だからということもあるが、それだけ革命には士気を維持することが重要だということでもある。そういう意味では革命の教科書的映画とも言えて、実際に現実世界での抵抗運動で参考にされているのも肯ける。

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 単なるバトルロワイヤルから体制を倒すスケールの大きな物語へと発展したのに、その内実は相棒の男の安否だけを気に掛けるこじんまりとした物語になってしまっている。主人公が戦う姿もほぼ見れない。最後の大団円の前なので、あまり盛り上げすぎてもいけないのだろうが、それにしてもずいぶんと静かでおとなしい印象だ。

 

スタッフ/キャスト

監督 フランシス・ローレンス

 

脚本 ダニー・ストロング/ピーター・クレイグ

 

原作 ハンガー・ゲーム3 上マネシカケスの少女 (文庫ダ・ヴィンチ)

 

製作総指揮    スーザン・コリンズ/ジャン・フォスター/ジョー・ドレイク
アリソン・シェアマー


出演 ジェニファー・ローレンス/ジョシュ・ハッチャーソン/リアム・ヘムズワース/ウディ・ハレルソン/エリザベス・バンクス/ジュリアン・ムーア/フィリップ・シーモア・ホフマン/スタンリー・トゥッチ/ドナルド・サザーランド/サム・クラフリン/ジェナ・マローン/ジェフリー・ライト/マハーシャラ・アリ/ナタリー・ドーマー/エヴァン・ロス/ウェス・チャサム/エルデン・ヘンソン/ロバート・ネッパー/サリタ・チョウドリー

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関連する作品

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次作 三部作の三作目 二部作の第二部

 

 

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「ハンガー・ゲーム2」 2013

ハンガー・ゲーム2(字幕版)

★★★☆☆

 

あらすじ

 前作でハンガーゲームに勝利した主人公だが、体制に対する反抗的な態度を権力者に疎まれ、再びハンガーゲームに参加させられてしまう。

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感想

 序盤は、主人公らが体制に反発を示すシーンが続く。個人的には単純にバトルロワイヤルを楽しみたい気持ちがないわけでもないが、考えてみれば「誰かが殺し合えと言ったから殺し合いました。」では、これほど主体性のないことはない。なぜこんなことをしなければいけないのだ?と異を唱えるのは当然のことなのかもしれない。いや権威主義に抗うためにも異を唱えるべきだろう。

 

 主人公は、体制が主催した殺し合いのハンガーゲームに勝利したのだから、本来は社会のヒーローとして取り扱わなければならない人物だ。しかし、そんな人物に反体制的な態度を取られてしまうと、権力者にとっては厄介な存在となる。戦争のヒーローが反戦を訴えるようなものだろうか。体制側は、彼女を世間の反発を招かずに排除するため、再び彼女をハンガーゲームに参加させることを決める。

 

 主人公は当然それに反発するも、参加せざるを得ない。それでもゲーム前のセレモニーの場で他の出場者と連帯して不満を表明して見せたりと、なんとか反発の姿勢を示し、反骨心を見せている。だがいざゲームが始まると、躊躇なく全力で相手を殺しに行っていて、ちょっと笑ってしまった。しかし、いくら自分がそんなことはやりたくないと主張しても、相手はそんなのお構いなしに殺しに来るのだから当然といえば当然だ。やられる前にやるしかない。

 

 

 主人公は、理想だけでは生きていけないことを理解しており、現実的な姿勢を示したと言えるだろう。これも平和主義者が戦場に行けば敵を殺してしまうのと似ている。理想と現実の中でどう生きるべきか、色々と考えさせられるストーリーだ。

 

 主人公はしっかりとゲームに適応するが、完全な無差別の殺し合いになったわけではなく、一部の出場者と協力し合いながら生き残っていく。相手をどれほど信用するべきなのか、疑心暗鬼になりながらも絆を深めていく様子は見ごたえがあった。この先、彼らがいつ袂を分かち、どのような対決に発展していくのかと興味深かった。

 

 だが、バトルロワイヤルとしては中途半端な形でゲームは終わってしまう。前作と違い、単純な殺し合いを描くことがメインでないことは分かっており、序盤にしっかりと前振りもあったので、そこまでがっかりはしなかったが、それでもやはりゲームに対する消化不良感は残った。

 

 そして迎えるエンディングは、三部作の真ん中の二作目らしい結末だった。ハンガーゲームよりももっと大きな戦いが待ち受けていることを暗示し、最終作への期待を高めている。最終作が実は2部構成であることを後で知って、えっ?と思ってしまったが。

 

 主人公が本命の男をほったらかし、恋人同士だと世間を偽っている別の男とどんどんと関係を深めていくので、その恋がどこに向かうのか、地味に気になるようになっている演出も上手い。これだけが気になってシリーズをすべて見る人もいるかもしれない。

 

スタッフ/キャスト

監督 フランシス・ローレンス

 

脚本 サイモン・ボーファイ/マイケル・アーント

 

原作 ハンガー・ゲーム2 上 (文庫ダ・ヴィンチ)


製作総指揮 スーザン・コリンズ/ジョセフ・ドレイク/ルイーズ・ロズナー/アリソン・シェアマー

 

出演 ジェニファー・ローレンス/ジョシュ・ハッチャーソン/リアム・ヘムズワース/ウディ・ハレルソン/エリザベス・バンクス/レニー・クラヴィッツ/ジェフリー・ライト/スタンリー・トゥッチ/ドナルド・サザーランド/トビー・ジョーンズ/ウィロウ・シールズ/サム・クラフリン/ジェナ・マローン/アマンダ・プラマー

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ハンガー・ゲーム2(字幕版)

ハンガー・ゲーム2(字幕版)

  • ジェニファー・ローレンス
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「BLUE/ブルー」 2021

BLUE/ブルー

★★★★☆

 

あらすじ

 ボクシングが大好きだが連敗続きのボクサーと、その周囲のボクシングに関わる人たち。

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感想

 主人公は誰よりもボクシングを愛しているが、全然勝てないボクサーだ。情熱があっても才能がなければ勝てないという残酷な現実を突きつけられている。

 

 時には基本を指導する若手に陰口を叩かれ、面と向かって馬鹿にされたりもするが、それでも主人公は卑屈になるでも開き直って居丈高になるでもなく、素直に現実を受け入れた上で黙々と練習に励んでいる。その自然体の姿には、人間としての強さが感じられてカッコいい。そんな人間的魅力あふれる主人公を、松山ケンイチが雰囲気たっぷりに演じていて素晴らしい。

 

 

 主人公の他に、才能がありながらもボクサー脳で脳機能の低下が深刻な後輩、主人公の幼なじみで後輩の恋人の女性、モテたいとジムに入会してきた初心者など、ボクシングに関わる人物たちがたくさん登場する。そこで描かれているのは、ボクシングというスポーツの魅力に憑りつかれてしまった男たちの姿と、それを不思議そうにながめる女性の姿だ。

 

 特に意中の女性の気を引きたいがために、ボクシングをやってる風の感じをちょっと身に付けたいだけ、とやって来た柄本時生演じるよこしまな男などは、気が付けば半年もジムに通ってしまっており、その時点ですでにボクシングの魅力にハマってしまっていると言っていいだろう。なにがそこまで人を惹きつけるのか、本当にボクシングは不思議なスポーツだ。

 

 屈託ないように見えた主人公が、チャンピオンになった後輩に本心を吐露した終盤のシーンはドキドキする。だが同時に、彼だって人並みに嫉妬や悔しさを抱えていることが分かって少しホッとする。自分より才能があり、幼なじみの女性を手に入れた後輩に対する複雑な思いはあるが、それらすべてをボクシングに対する愛が凌駕してしまっているということなのだろう。

 

 連敗続きでカッコ悪いはずなのに、なぜかカッコいいボクサーの姿が描かれる。「ローキー」とは真逆とも言えるボクシング映画だ。ラストシーンになるまで主人公がどんな仕事をしているかすら分からないくらい、全編ボクシングに溢れており、どっぷりとボクシングの世界に浸れる。

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スタッフ/キャスト

監督/脚本 𠮷田恵輔

 

出演

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木村文乃/柄本時生/東出昌大/竹原ピストル/よこやまよしひろ

 

BLUE/ブルー

BLUE/ブルー

  • 松山ケンイチ
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「レクイエム」 2009 

レクイエム(字幕版)

★★★☆☆

 

あらすじ

  テロが横行していた時代の北アイルランドで暗殺を行なった少年と、その被害者となった家族が30年後にテレビの企画で対談することになる。

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 原題は「Five Minutes of Heaven」。

 

感想

 テロで殺人を行った加害者と、当時現場に居合わせていた被害者の弟が30年後に顔を合わせる物語だ。被害者の弟は、兄を殺された上に、現場にいたのに何もせずに見殺しにしたと母親からその後責められ続け、苦しんで来た。当時8歳の子供に対してこの母親の仕打ちは酷いなと思ってしまうが、彼女は彼女で誰かのせいにしなければ事実を受け止められなかったのだろう。これもまた事件が生んだ悲劇だ。

 

 被害者の弟が、テレビの企画で加害者と面会するまでの間、煩悶し心が揺れる様子はとてもリアルだった。一般的には寛容な態度を示すのが理想なのはよく分かった上で、でもそんなことできない、許せないと言う気持ちが抑えられない。とても素直な被害者の感情が表現されている。

 

 

 この件に限らず、世間は事件の被害者に対して報復を求めない寛容な態度を求めがちだ。だが当事者からすれば、事件で被った苦痛に耐えるだけでなく、聖人のように振る舞うことまで求められるなんて二重の苦しみだろう。ニュースでたまに聖人のように振る舞う被害者家族を目にすることがあるが、尊敬しかない。だが、彼らのような被害者は特別で、普通は怒り狂ったり、復讐心に燃えたりするのが自然だろう。

 

 だから被害者の弟が、結局テレビ番組での加害者との面会を拒否したのも肯ける。テレビ局側は二人の嘘のないリアルな姿を撮影したいとは言っているが、なんだかんだで期待しているのは二人が和解する姿だろう。慣れないカメラの前で不本意ながら彼らの期待に沿うような行動を取ってしまう可能性もあるし、そうしなかった場合は心のせまい奴だと視聴者にみなされる可能性がある。彼にとってメリットはほぼ無い。ましてや報復などしたら、逆に世間から非難を浴びるだろう。

 

 一方の加害者は加害者で苦しんでいる。何年経っても殺してしまった被害者のことが忘れられない。個人的な恨みが原因でないだけになおさらだろう。彼は彼でこの出来事に片を付けたいと思っており、テレビの企画が駄目になった後、個人的に被害者の弟とコンタクトを取り、直接会おうと試みる。

 

 両者がかつての事件現場で再会するのがクライマックスだ。被害者の弟が感情むき出しで襲い掛かり、加害者はそれを受け止める。ただ加害者が、相手の気のすむまで暴れさせるつもりかと思ったのに、途中で反撃に出たのは意外だった。だが相手が加害者になってしまったら、この先自分と同じ気持ちを味わうことになるから配慮したのかもしれない。

 

 これが思っていたよりも激しいアクションに発展して呆気に取られてしまったが、それがきっかけとなって両者の問題にケリがつく。結局、被害者は事件にいつまでも囚われるの止めて、未来を見て生きていくのが最善だ。最初から分かり切っていたことだが、そういうものだと最初から言い聞かせるよりも、やりたいようにやった後での方が自分を納得させることができるような気がする。

 

 そして被害者も許されて安心するわけだが、加害者と被害者が取り戻した心の平穏は種類が違う。晴れ晴れとした気分になるのはきっと加害者だろう。なんだか不公平だなと思ってしまう。そもそも加害者が抱える苦しみは、事件を起こさなければ存在しなかったものなので自業自得だ。不幸な災難でしかない被害者とは全く違う。

 

 こうした両者の非対称性が人間関係をこじれさせるし、国や組織同士の絶え間ない諍いを生んでしまうのだろう。これを解決することは簡単ではないが、国や組織の場合だったら、まずは加害者が言っていたように報復の連鎖の中に若者を引き込まないことが大事なのかもしれない。

 

スタッフ/キャスト

監督 オリヴァー・ヒルシュビーゲル

 

製作 スティーヴン・ライト/オーエン・オキャラハン

 

出演 リーアム・ニーソン/ジェームズ・ネスビット/アナマリア・マリンカ

 

レクイエム(字幕版)

レクイエム(字幕版)

  • リーアム・ニーソン
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レクイエム (2009年の映画) - Wikipedia

 

 

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「ライジング・ドラゴン」 2012

ライジング・ドラゴン(字幕版)

★★★★☆

 

あらすじ

 過去に強奪され国外に持ち出された文化財を元の国へ返還させる運動が盛り上がる中、消息不明となっている中国の国宝級の十二支のブロンズ像を手に入れることを依頼されたトレジャーハンター。

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感想

 ジャッキー・チェンが、最後の本格アクション映画として挑んだ作品だ。その意気込みを感じさせるような、アクション満載の映画となっている。冒頭の全身ローラースーツによるカーチェイスから、無人島での冒険活劇、そして決死のスカイダイビングなど、その種類も豊富で、色んなパターンが楽しめる。ジャッキー映画定番の三菱車がちゃんと使われているのも地味にうれしい。

 

 大きなヤマ場が何度もあり、体感的には三本分くらいの映画を一つの映画に詰め込んだような、内容の濃さだった。いろんな要素を詰め込み過ぎると取っ散らかった印象の物語になりがちだが、この映画はそれらがすべて凄いアクションを見せるため、という目的がはっきりしているので、一貫性を失っていない。ただアクション以外のシーンは、テンポよく描こうとしすぎていて、少しストーリーは分かりにくくなってしまっている。

 

 この映画で感心するのは、前振りがしっかりとしていることだ。何かが起きる前に必ずちゃんとした丁寧な説明が行われる。これくらいやってくれると分かり易くていい。まさに子供から大人まで楽しめる大衆娯楽映画といった趣がある。

 

 

 奪われた文化財を自国に取り戻そうというメッセージは、愛国心を煽るプロパガンダ臭がないわけでもないが、中国だけでなくエジプトやインドなど古代文明が栄えた地域を中心に全世界的なムーヴメントとして描いているので納得できる。それに中国はかなりの被害国なので、そう言いたくなる気持ちも理解できる。トレジャー・ハンター物語シリーズの最終作に相応しいメッセージかもしれない。

 

 ジャッキー・チェンの全盛期の動きと比べてしまうと物足りなく感じるかもしれないが、それでも、豊富なアイデアでもっとすごいアクションを見せてやろう、という彼の情熱は、全く衰えていないことがよく分かる。クライマックスでのスカイダイビングの着地シーンは、ジャッキーはやっぱりすごいなと改めて感心してしまうような迫力があった。

 

 コミカルでカッコいい彼のようなアクション・スターが今後現れることはないだろう。彼の唯一無二ぶりを噛みしめるように味わいたい、最後の本格アクション映画だった。エンドロールでの彼のメッセージに、しんみりとしてしまう。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本/製作総指揮/出演

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脚本/製作総指揮 スタンリー・トン

 

出演 クォン・サンウ/ジャン・ランシン/ヤオ・シントン/リアオ・ファン/ローラ・ワイスベッカー/オリヴァー・プラット/チェン・ボーリン/スー・チー/ダニエル・ウー/ジョアン・リン

 

ライジング・ドラゴン - Wikipedia

 

 

関連する作品

前作

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「ニック・オブ・タイム」 1995

ニック・オブ・タイム (字幕版)

★★★☆☆

 

あらすじ

 駅で出会った二人組の謎の男女に娘を人質に取られ、選挙活動中の知事を暗殺するよう脅迫された男。

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感想

 謎の男らに娘を人質に取られた男が、ホテルで選挙活動中の知事の暗殺を強要される映画だ。犯人らは実行しなければ娘を殺すと脅している。だがそんなことをするくらいなら自分たちでやればいいのに、と先ず思ってしまう。ただこれは、自分たちがやったとバレると政治的な背景まで暴かれて、受けるダメージがデカくなってしまうからなのだろう。なんのつながりもない素人にやらせ、その口も封じてしまえば、目的は果たせるし、後顧の憂いもなくて都合が良い。

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 そんな犯人たちの要求にしぶしぶ従うフリをしながらも、主人公は常にピンチを脱する機会を窺っている。だが犯人がずっと自分のまわりをウロウロし、しかも知事の関係者の中にまでその一味がいることが分かってくると、うかつに動くこともできなくなってくる。じりじりともどかしい手に汗握る展開だ。

 

 このにっちもさっちもいかない状況を脱したのは、主人公がなんとか助けを求めることができた一人の従業員だ。彼の主導によりホテルマンたちが大活躍する。ここからは主人公よりも、この従業員の機転の利いた動きが目立ち、まさに彼こそがヒーローだった。彼に協力する同僚たちの多さにも彼の人望の厚さを知ることができる。彼がいなければ主人公はどうすることもできなかっただろう。彼を主人公にした映画でも良かったかもしれない。

 

 

 ラストは従業員らの協力に加えて、主人公の一か八かの思い切った行動が功を奏して窮地を脱することができた。終始、緊迫感があり見応えはあったのだが、主人公はよくやった、と喝采したくなるような爽快感はない。それよりも、あの時ああすればよかったとか、この時こうしてたらとか、もっと他にやりようがあったような気がすることばかりで、スッキリしない思いが漂い続けた。

 

 特に、主人公が見張りの男を出し抜き、人質の娘のいるバンに近づいた時は最大のチャンスだった。この時はリスクを恐れて止めてしまったが、結局最後は運頼みだったのだから、それならここで一か八かの賭けに出るべきだったような気がしてならない。寝ている娘を大きな声で起こして呼び寄せるとかできたはずだ。ここで終わらせていれば、余計な被害者を出さずに済んだ。

 

 見終わった後に、なぜかひとりで反省会をしたくなってしまう映画だ。世間にいる事件の被害者たちもこんな堂々巡りの後悔を、日々心中でくり返しているのかもしれない。

 

スタッフ/キャスト

監督/製作 ジョン・バダム

 

製作    ジョン・バダム

 

製作総指揮 D・J・カルーソー

 

出演 

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クリストファー・ウォーケン/チャールズ・S・ダットン/ローマ・マフィア/マーシャ・メイソン/ピーター・ストラウス/グロリア・ルーベン

 

ニック・オブ・タイム (映画) - Wikipedia

 

 

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「ブラックキス」 2004

ブラック・キス

★★☆☆☆

 

あらすじ

 新人モデルの女は紹介された先輩の家でルームシェアして暮らし始めるが、周辺で猟奇的な殺人事件が次々と起こる。

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感想

 主人公のルームメイトの周辺人物が次々と猟奇的に殺されていく。その殺され方がなかなかグロく、ちゃんと狂気を感じるのが良い。しかも殺され方がワンパターンでなく、バラエティに富んでいるのが面白かった。

 

 警察による事件の捜査と、主人公とルームメイトの変化する関係が同時進行で描かれていく。ルームメイトに関する情報が明らかになるにつれ、捜査が進展する展開だ。ただ、捜査がメインの時は良かったが、二人の関係に重点が置かれる中盤は少し停滞感があった。

 

 

 事件解決のヒントを得て捜査が一歩前進したかと思えば、肩透かしを食らって半歩後退、だがトータルでは少しずつ犯人に迫っている、といった捜査の様子は、なかなか手に汗握るものがあり、見ごたえがあった。犯人をミスリードするような演出もあり、推理を楽しませてくれる。

 

 そして終盤、ついに犯人が明らかになる。だが、それまで丹念に積み上げてきた伏線をすべてうっちゃるような人物が犯人で驚いてしまった。ミステリーでそれは反則だろう。今までの捜査は何だったのだと言いたくなるような展開だ。

 

 さらにそこから犯人の超人的なアクションまで見せられて、なんだか急に違う種類の映画になってしまったような印象だ。これなら最初から犯人目線で描いたアクション映画にした方が良かったかもしれない。それにこんな人間が犯人なのだから説明不要だろうと誤魔化してしまっているが、それぞれの事件の詳細もちゃんと種明かしして欲しかった。

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 ある意味で衝撃の終盤が用意されている映画だ。

 

スタッフ/キャスト

監督/原案/脚本 手塚眞

 

出演 橋本麗香/川村カオリ/安藤政信/松岡俊介/小島聖/岩堀せり/あんじ/矢島健一/光石研/榊英雄/利重剛/綾野剛/鈴木一真/オダギリジョー/草刈正雄/奥田瑛二

 

音楽 高木完

 

 

 

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「ナショナル・セキュリティ」 2003

ナショナル・セキュリティ (字幕版)

★★★☆☆

 

あらすじ

 警察官学校を追い出された男は、自分が原因で警官をクビになった男と同じ警備会社の警備員として再開する。

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感想

 警察官に憧れる黒人警備員と警察官をクビになった白人警備員の物語だ。二人が出会ったきっかけは、黒人警備員の主人公が警官から車泥棒と疑われて声をかけられたことだった。ここでひと騒ぎあり、主人公が警官に暴行されたように見えたために世間を騒がす事件となってしまった。

 

 この一連のシーンは、コメディなので面白おかしく描いてはいるが、もろにブラック・ライヴズ・マターのきっかけとなった事件と同じなので、全然笑えなかった。こんな事件は昔から定期的に起きているので、こんな風にネタにすることでチクチクと白人をけん制しているようにも見えた。

歌と映像で読み解くブラック・ライヴズ・マター

歌と映像で読み解くブラック・ライヴズ・マター

  • 作者:藤田正
  • シンコーミュージック・エンタテイメント
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 このギャグを笑えるのは、というか笑っていいのは黒人だけのような気がする。この映画ではこういった差別や偏見をネタにしたものが多かったが、アメリカの観客は人種を問わず大爆笑したりしていたのだろうか。そのあたりの感覚がうまく掴めない。

 

 世間を騒がす騒動に発展したこの事件で、主人公は敢えて誤解を解こうとしなかったので、警官は有罪となりクビになってしまう。当然、警官は主人公を快く思っていなかったのだが、ひょんなことから二人はコンビを組み、ある事件の犯人を追うことになる。犬猿の仲の二人が、喧嘩しながらも協力し合う様子がコミカルに描かれる。

 

 

 ただ、元警官は犯人に相棒を殺された恨みがあるから分かるが、主人公がそれに付きあう理由がよく分からなかった。犯人に差別的なことを言われたから、では弱いような気がするが、主人公的にはそれで十分な理由になるということだろうか。それに警備をしていた倉庫が襲われた責任感と警察官に憧れていたほどの正義感も影響しているのかもしれない。

 

 差別ネタに関しては笑っていいものかと困惑してしまう部分もあり、そんなに笑えるシーンは多くなかった。二人の相棒ぶりもあまり噛み合っているようには見えなかったが、アクションはまずまずといったところだった。音楽も良い。めちゃくちゃ面白いわけではないが、かといって全然面白くないわけではなく、ほどほどには楽しませてくれる映画だった。

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スタッフ/キャスト

監督 デニス・デューガン

 

製作総指揮/出演 マーティン・ローレンス

 

出演 スティーヴ・ザーン/コルム・フィオール/ビル・デューク/エリック・ロバーツ/ロビン・リー

 

音楽 ランディ・エデルマン

 

ナショナル・セキュリティ - Wikipedia

 

 

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「亜人」 2017

亜人

★★★☆☆

 

あらすじ

 人類から派生した死んでもすぐに蘇る「亜人」であることが判明した主人公は、政府に拘束され人体実験を繰り返されていた。

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感想

 亜人対人類と主人公の戦いが描かれる。物語は、亜人であることが判明して政府に拘束され、人体実験を繰り返されていた主人公が、綾野剛演じる亜人のリーダーに救出される場面から始まる。主人公は人類の非人道的な行いの被害者であり、リーダーが助けなければずっと捕らえられたままだった。そう考えると、どうしても亜人側に感情移入したくなるのは当然だ。

 

 だが、映画はなぜか人類側の視点で描かれていく。それが終始、腑に落ちなかった。主人公が、組織の末端の人間を彼らは悪くないと庇うのは理解できるとして、悪逆非道のすべてを不問にして、あっさりと人類側に付いてしまったのは納得できなかった。普通に考えたら、亜人側に賛同できなかったとしても、人類側に付くこともないだろう。

 

 

 そのため、どうして残虐な人類側の応援をしなければならないのだ?と納得できない感情を抱えたまま、映画を見続けることになった。主人公が共闘することになった玉山鉄二演じる冷酷な現場責任者も、実はいい奴だった、となるような描写もなく、最後まで人類側の悪事は放置されたままで処理されることはなかった。一応、現場責任者が組織で板挟みになったり、悪事の張本人たちが死んだりはしているが、偶発的な出来事でしかなく、そこにカタルシスはない。お前らは人類なんだから、なんにしたって結局人類を応援するんだろ?と小馬鹿にされているような気分だ。

 

 ただ、映画の雰囲気やアクションなどはなかなか良くて、それ以外のストーリーも駆け足気味ではあるが悪くない。脇役に新鮮味のあるキャストを使っているのもいい。若干、「幽霊」の設定が物語から浮いて、その存在意義がよく分からなかったが、原作の漫画にあるもののようだし、そういう「設定」として見れば許容範囲だ。

 

 それなりの映画になり得たはずなのに、物語の基本中の基本である主人公や人類に共感して感情移入できる状況を作れなかったかったことが、すべてを台無しにしてしまっている。かなり残念な映画だ。

ストーリー

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スタッフ/キャスト

監督 本広克行

 

脚本 瀬古浩司/山浦雅大

 

原作 亜人(1) (アフタヌーンコミックス)

 

出演 佐藤健/綾野剛/玉山鉄二/城田優/千葉雄大/川栄李奈/浜辺美波/山田裕貴/品川祐/吉行和子/中村育二/升毅/今野浩喜/オラキオ/森岡龍/北山雅康/HIKAKIN/大森一樹/志賀廣太郎/(声)宮野真守

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音楽 菅野祐悟

 

亜人

亜人

  • 佐藤健
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亜人 (漫画) - Wikipedia

 

 

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