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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「チョンキンマンションのボスは知っている アングラ経済の人類学」 2019

チョンキンマンションのボスは知っている アングラ経済の人類学

★★★★☆

 

内容

 香港・チョンキンマンションで怪しい商売をして暮らす東アフリカのタンザニア人たち。彼らの生活に密着し、そこから見えてきた独特の考え方や独自のシステムを紹介する。

 

感想

 天然石や中古車等の輸出入業から売春などの裏稼業まで、様々な商売をしながら香港で暮らすタンザニア人たちの生活に著者が密着し、その実態を明らかにする。誰も信用しないと言いながら誰とでもつき合う不思議なコミュニティの内幕が紹介されており、大変興味深い。

 

 彼らの生活ぶりを読んでいて特に印象的なのはその自由さだ。商談に平気で遅刻したりすっぽかしたりするし、夜はパーティで皆とバカ騒ぎ、もしくは現地の恋人と過ごしたり。そしてそれらの様子をSNSで発信したりもする。お金がなければおごってもらうし、あればおごる。時には年上の異性に養ってもらったりすることもある。実はその裏にはしたたかな計算があったりするようだが、それでも皆肩ひじ張らずに生きていて、ストレスは少なそうだ。

 

「(前略)日本人は真面目で朝から晩までよく働く。香港人も働き者だが、彼らは儲けが少ないことに怒り、日本人は真面目に働かないことに怒る。仕事の時間に少しでも遅れてきたり、怠けたりズルをしたりすると、日本人の信頼を失うってさ。アジア人のなかでいちばんほがらかだけれども、心のなかでは怒っていて、ある日突然、我慢の限界が来てパニックを起こす。彼らは働いて真面目であることが金儲けよりも人生の楽しみよりも大事であるかのように語る。(中略)だから俺はサヤカに俺たちがどうやって暮らしているのかを教えたんだ。俺たちは真面目に働くために香港に来たのではなく、新しい人生を探しに来たんだって」

p236 

 

 そんな彼らの中のひとりによる日本人評が色々と考えさせられる。日本人の長所として勤勉さや忍耐強さがよく挙げられるが、今はそれがすべて悪い方に出ているのかもしれない。例えば、最悪の状況でもじっと耐え、限界まで黙々と働く人が多いからブラック企業は存在できている。社員誰もが勤勉でも忍耐強くもなく、すぐに文句を言ったり辞めたりするなら、ブラック企業は自ずと待遇改善をしなければならなくなりブラック企業ではなくなるはずだ。そろそろ日本人は、文句を言わずに黙って従うことを良しとするのではなく、自身にとって居心地の良い環境を作り上げることにもっと力を入れるべきなのだろう。もっと自分自身を大事にしても良いはずだ。

 

 

 時おり学術的となって少し難しくなってしまうが、基本的には読みやすいノンフィクション。読んでいると、彼らと日本人の違いは狩猟民族と農耕民族の違いから来ているのだろうかとか、彼らは彼らでタンザニア人のなかでも特殊なのかもしれないなとか、色んな思考が頭の中をめぐり刺激的だ。世界は広く、色んな人がいる。

 

著者

小川さやか

 

 

 

登場する作品

アジアで出会ったアフリカ人―タンザニア人交易人の移動とコミュニティ

悪循環と好循環: 互酬性の形/相手も同じことをするという条件で

シェア[ペーパーバック版] 〈共有〉からビジネスを生みだす新戦略

TRUST 世界最先端の企業はいかに〈信頼〉を攻略したか

シェアリング・エコノミー--Uber、Airbnbが変えた世界 (日本経済新聞出版)

「招き猫」 「タクラマカン (ハヤカワ文庫SF)」所収

 

 

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「東京自叙伝」 2014

東京自叙伝 (集英社文庫)

★★★★☆

 

あらすじ

 明治維新から現代にいたる各時代に、東京の地霊が憑依した人物たちの物語。  

 

感想

 明治維新から現代にいたるまでの東京・日本の歴史が、時代ごとに6人の人物の目を通して描かれていく。東京の地霊が彼らに順に乗り移っているという設定で、彼らの行動には共通したものがあり、そこから東京の特徴のようなものが浮かび上がってくる仕掛けとなっている。

 

 とりあえず、それぞれの人物の人生を描いた伝記として面白い。幕臣から新政府の官吏となった男や軍人、ヤクザや水商売の女、原発作業員など、それぞれの立場から見たその時代の出来事が語られ、当時の人たちの心情がリアルに感じられる。

 

 

 どの登場人物も最初はいたって普通に見えるのだが、読み進めるうちにちょいちょいあれ?と思うような、おかしな言動がある。関東大震災で警備中に罪のない人を殺しちゃったかもしれないけど、治安維持のためだから多少のミスは仕方がないとか、戦力的に負けるのは確実だけど、そんなことを言うと上司がご機嫌ななめになっちゃうから勝敗は数じゃない、あんな軟弱な奴らに我が皇国の臣民が負けるわけがない、みたいな気持ちよくなっちゃう作文をして報告書を出しておこうとか。

 

 

 図らずも宇治田が漏らした本音、即ち「なるようにしかならぬ」とは我が金科玉条、東京と云う都市の根本原理であり、ひいては東京を首都と仰ぐ日本の主導的原理である。東京の地霊たる私はズットこれを信奉して生きてきた。なるようにしかならぬ――これより他に正しく人を導く思想はない。なにしろ世の中はなるようにしかならぬのだから、それもマア当然です

単行本 p348

 

 そのおかしな部分、違和感の正体が、いわゆる東京の特徴ということになる。何事も「なるようにしかならぬ」とまともな計画を立てず、無邪気な楽観主義で場当たり的な対応をくり返し、失敗しても無反省でしょうがなかったで済ませてしまう事。特に戦時中はそれが顕著で、この時の主人公である軍人の男の無責任ぶりは、読んでいて逆に惚れ惚れしてしまうほど。日本と無関係の他国の人間であれば、定期的に繰り返される芸術的な責任逃れの言い草に爆笑すること必至のはずだ。

 

 この小説では2011年の東日本大震災後までが描かれているのだが、もし今のコロナ禍を同じように描いていたら、どんな風になっていたのだろうと想像してしまう。現実はまるでこの小説の続編のように「なるようにしかならぬ」のグダグダぶり。小説の中では東京の特徴として、「成り行きに即した発言」しかしないというのも挙げられていたが、確かに今のグダグダぶりを擁護する人たちがしているのも大体これで、単なる現状追認だ。

 

 本書では、東京の駄目なところが全国に蔓延してしまい、滅亡に向かう日本が最後の浮かれ騒ぎとして廃墟の中で行うのが東京オリンピック、と予言していたが、現実にはもはや日本は浮かれ騒ぎすらもできなくなっちゃったのかと切ない気分。でも世界と比較したら自分たちはまともじゃないのだという事を自覚できたという意味では、コロナ禍は不幸中の幸いだったのかもしれないと思ったりした。今読むには最適な、色々と考えさせられてしまう小説だった。

 

著者

奥泉光

 

 

 

登場する作品

日本後紀(上)全現代語訳 (講談社学術文庫)

吾輩は猫である (新潮文庫)

「インターナショナル」

海行かば

シューベルト:鱒

好色五人女 (岩波文庫 黄 204-4)

 

 

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「大人のための昭和史入門」 2015

大人のための昭和史入門 (文春新書)

★★★☆☆

 

内容

 昭和史の主な出来事を、最新の研究に基づいて読み解いていく。

 

感想

 タイトルには「大人のための」とあるが、大人なら常識的に持ってるはずの知識を前提に、という意味なら、その前提となる歴史知識が深すぎるような気がする。単純に自分が大人のくせに知識が浅すぎるだけなのかもしれないが、だいたいどれも深いところからさらに深いところに入り込んでいくので、ついていくだけで精一杯のものが多かった。昭和史にそれなりの知識がある人がそれを深めるためには良い本のような気がする。

 

 まず冒頭の半藤一利らによる座談会で、世界から見た昭和の日本の動向について話し合われているのだが、その中で日本がことごとく世界の情勢を読み間違えていた、という指摘には、頭がクラクラとしてしまった。それなのに意気揚々と威勢よくやっていたなんて、まるでピエロのようだ。このあたりは色々な見解があって意見が分かれるのだろうが、それでもその後、敗戦という大失敗をしてしまったわけなので、どこかで何かを間違えたのは間違いない。

 

 

 座談会の後は、各識者がそれぞれ昭和史の重要なトピックを取り上げて解説していく。その中で印象的だったのは、戦後の天皇の人間宣言というトピックで語られる天皇とマッカーサーが一緒に並んだ写真の話。写真の二人の姿を見て「そりゃ日本は戦争に負けるわけだわ」と多くの人が一瞬で納得してしまったという。政治や軍のシステムがどうとか、社会体制がどうとかいちいち説明しなくても、たった一枚の写真で理解させることが出来てしまった。視覚に訴えることの重要性がよく分かる。百聞は一見に如かずだ。

 

 日本人がマッカーサーに烈しく求めたのは情緒的紐帯、すなわち父として、自らの保護者、庇護者としてのマッカーサーであった。「保護者」に求めるものとは、自分を保護し擁護し、そして承認してほしいという欲望と不可分にある。

p210

 

 そして占領政策のためにやって来た、つい最近まで敵として戦っていたマッカーサーを、日本人が熱烈に支持したというのもなんだか不思議な気がしてしまった。でも最近でも前アメリカ大統領だとか前首相とかを熱烈に支持する人がいたのだから、これは動物的な本能なのかもしれない。「保護者」を求めるという事は、まだ精神的に未熟な子供と同じという事だが、こういう人たちは日本に特に多いような気がする。SNSで「保護者」の承認を求めるかのように、必死に媚びてアピールしている人たちをよく見かける。 

  

 読んでいると色々と議論を呼びそうだなと想像してしまうような箇所もあって、近現代史というのは厄介だなと思わなくもない。でも、戦国時代の話で感情むき出しの議論になることはまずないのだから、近現代史でも同じように議論出来ればいいのに。最近のことだけに妙に感情移入してしまって冷静になれない人が多いから難しいのか。

 

 日本では現代史を学校でちゃんと教えないとよく言われるが、もしかしたらそういった事も影響しているのかもしれない。でも、日本が世界と対峙するようになった近現代の歴史を知らないと、世界の中で日本がなぜ今の位置にいるのか理解できないし、その地位を向上させるにはどうすればいいのかも見えてこないはずだ。いつまで経っても「保護者」を求めているようでは駄目だろうと思うが、別にそれで構わないと思っている人も割と多そうだ。

 

著者

水野和夫/船橋洋一/保阪正康/半藤一利/出口治明/佐藤優/川田稔/広中一成/井上寿一/別宮暖朗/北村稔/田嶋信雄/佐藤元英/宮崎哲弥/五百旗頭真/日暮吉延/福永文夫/眞嶋亜有/木村幹

 

 

 

登場する作品

講和会議を目撃して

Myths of Empire: Domestic Politics and International Ambition (Cornell Studies in Security Affairs) (English Edition)(帝国の神話)」

アメリカの鏡・日本 完全版 (角川ソフィア文庫)

十八史略 (講談社学術文庫)

「満蒙問題私見」 石原莞爾

中国近代軍閥の研究 (1973年)

二・二六事件 脱出

「特高 今こそ私は言える」 小坂慶助

日中戦争−戦争を望んだ中国 望まなかった日本

正義論

正しい戦争と不正な戦争

昭和天皇実録 第一

 

 

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「侍女の物語」 1985

侍女の物語

★★★★☆

 

あらすじ

 宗教国家となった近未来のアメリカで、支配者層の子どもを産む道具として生きる事になっていまった女性。

 

感想

 タイトルからどことなく中世ヨーロッパの貴族社会を描いた物語なのかと想像していたが、近未来のディストピア社会を描いたSF小説だった。女たちの自由は大幅に制限され、子どもを産むことが最善とされる社会。そして子宝に恵まれない権力者たちには、妻の代わりに子供を産む女が「侍女」としてあてがわれることになっている。主人公はそんな「侍女」として、司令官と呼ばれる男の家に仕える女性だ。  

 

 物語の背景となる社会の様子や主人公の置かれた状況は、最初に詳しく説明されることなく始まり、次第に少しずつそれらが明かされていくという構成。とはいえ、主人公自身もすべてを把握しているわけではないので、最後までどうしてそのような社会となったのか、そして具体的にはどんな社会システムなのかといった詳細は分からない。でもきっと抑圧されたディストピア社会が実現する時には、こんな風に詳しい説明もなく、よく分からないうちにそうなってしまっているのだろう。確かな情報がなければ対処のしようがなく、ただ従うしかない。

 

 

 そんないつの間にかディストピアとなった社会で、生きていかなければならなくなった主人公。自由のない社会で従順なフリをしつつも、密かに監視の目を盗んでは、わずかな自由を享受する姿がリアルだ。案外、ディストピア社会になっても、人々は完全に飼いならされてしまうのではなく、こんな風に面従腹背で生活するような気がする。勿論、今の社会でも見られるように、自ら進んで盲目的に服従する人たちもある程度はいるとは思うが、多くの人は制限の中でも出来ることを探り、隙あらば監視の目をかいくぐろうとするのだろう。

 

わたしは彼女を他人の目だけを意識して行動する女だと思っている。自然に振る舞うのではなく演技をする女だ、と。

単行本 p41 下段

 

 自由のない監視社会では、他者と連帯することが難しいのが最大の難関だ。いくら面従腹背だとしても、誰もが密告を恐れて他人の前では従順なフリをする。主人公は相互監視のためにペアを組まされている女性を、「演技する女」だから信用ならないと警戒しているが、それはまた相手も同じで、従順なフリをしているだけの主人公を全く同じように信用ならないと警戒している。こんな風にいちいち他人を疑ってかからなければいけない状況では、監視の目を盗んで享受する自由もごくわずかなものしかない。だから「侍女」としての任務からも逃れられず、唯々諾々と従うしかない。そんな主人公を覆っている諦念にはやるせなさを感じてしまった。

 

 最後はなんとなく「アンネの日記」を彷彿とするような、突然プツリと途切れてしまう終わり方。その後、彼女がどうなったのか色々と想像してしまう。

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著者

マーガレット・アトウッド 

 

侍女の物語 - Wikipedia

 

 

登場する作品

「愚案一つ」  ジョナサン・スウィフト

 「バレエ音楽《レ・シルフィード》(レ・シルフィド)」

Come to the Church in the Wildwood (Church Organ Version)(原始林の中の教会へおいで)」

Whispering Hope(希望のささやき)」

ハード・タイムズ(困難な時世)」

There Is a Balm in Gilead(ギレアデに平穏あり)」

 

 

関連する作品

続編 

 

 

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「ディス・イズ・アメリカ 「トランプ時代」のポップミュージック」 2020

ディス・イズ・アメリカ 「トランプ時代」のポップミュージック

★★★★☆

 

内容

 2010年代後半の各グラミー賞授賞式のトピックを紹介しながら、アメリカ社会の政治と音楽のつながりを読み解いていく。ラジオ番組の内容を再構成したもの。 

 

感想

 グラミー賞授賞式の出席者たちの政治的言動や社会的メッセージを通して、アメリカ社会の今を読み解いていく。しかし毎年の授賞式の様子を見ていくだけで、アメリカのの世相が手に取るようにわかるというのはある意味ですごいことだ。日本だと政治や社会問題に関するミュージシャンの意見を聞く事はほとんどないが、アメリカでは日常茶飯事だ。

 

 そもそもミュージシャンは曲に色々なメッセージをこめることが多いわけで、それを色んな表現手段で伝えようとするのは自然な事だ。それに多くの若いファンを持ち、世間の注目を集める立場として、正しい振る舞いをしなければいけないという社会的責任を感じているという事もあるのだろう。それからここ最近は、音楽ジャンルとしてヒップホップの勢いが強いことも関係しているのかもしれない。彼らは俺すごいとかあいつダサいとか、なんでもズバズバと言っていくスタイルだし、時機を見てタイミングよく曲を発表できる瞬発力もある。そんな彼らの反応の良さが、社会運動を加速させるような相乗効果を及ぼしているように思える。

 

 

 授賞式で取り上げられたトピックは、LGBTの権利や性差別、人種問題、そしてトランプ前大統領の様々な排他的政策に対する抗議など。その多くはいわゆるマイノリティの正当な権利を求める声だ。でもよく考えてみると授賞式の参加者たちは様々なバックボーンを持った人たち。彼らマイノリティーたちの多様性が、世界をリードする音楽を生み出している背景にあるわけで、なかなか皮肉な構図ではある。マジョリティーたちは彼らの音楽を楽しみつつも、自分たちの既得権益を守るために彼らの権利を侵害しているわけだ。

 

 毎年、様々な問題が炙り出されているという事は、それだけアメリカ社会には深刻な問題がたくさんあるという事なのだが、それでもこうやって皆が声を上げ続けることで少しずつではあるが社会は良くなっている。それから、単発で声をあげるのではなく、それを継続する事がとても重要なのだという事を強く感じた。望んでいなかったトランプが大統領に当選した後、ミュージシャンたちは一旦は失意に沈みながらも、やがては仲間を鼓舞し、団結を呼びかける声をあげるようになったというエピソードはとても印象的だった。そして4年後にちゃんと彼らの活動は実を結んだ。

 

 こういう本を読んでいると、それに比べて日本は…とやっぱり言いたくなってしまうが、日本はこのあきらめない粘り強さがないのだろうなと思う。ひとときムードが盛り上がっても、上手くいかないと無力感に打ちひしがれて、こんな失意は二度と味わいたくないからもう関わらない、となってしまう。なんならそんなムードに乗せられた自分を恥じ、まだ続けている人たちを積極的に叩く事で自分を慰めている人もいる。だが、本当はそこからいかに続けていけるかが大事で、相手だってその方が怖いに決まっている。中立のつもりでいても相手を利するだけだ。

 

 声を上げ続け、少しずつだが良くなっていくアメリカ社会に対して、一瞬だけ盛り上がってすぐに忘れてしまい、同じところをグルグルと回り続ける日本社会。なかなか幸せになれないわけだ、と思ってしまった。

 

著者

高橋芳朗

 

 

 

登場する作品

彼女が彼女を愛する時 [DVD]

グローリー/明日への行進(字幕版)

The Blacker the Berry

貧困と怒りのアメリカ南部―公民権運動への25年

ストレイト・アウタ・コンプトン (字幕版)

華氏 911 コレクターズ・エディション [DVD]

あの頃ペニー・レインと (字幕版)

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マグノリア [DVD]

「13th -憲法修正第13条-」

ゴーストバスターズ (字幕版)

Lady Sings the Blues (Penguin Modern Classics)

チアーズ!(字幕版)

キューティ・ブロンド (字幕版)

ミーン・ガールズ (字幕版)

13 ラブ 30 [DVD]

オズの魔法使い(字幕版)

ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー (字幕版)

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「Homecoming: A Film by Beyonce」  ドキュメンタリー映画

ブラックパンサー (字幕版)

デッドプール (字幕版)

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ボウリング・フォー・コロンバイン [DVD]

白雪姫 (グリム童話) 

「サムワン・グレート -輝く人に-」 

「トール ガール」 

アイ・フィール・プリティ! 人生最高のハプニング (字幕版)

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グレッグのダメ日記 [DVD]

ラモーナのおきて (字幕版)

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スキャンダル (字幕版)

ディクシー・チックス シャラップ・アンド・シング [DVD]

ガス燈(字幕版)

南部の唄(字幕スーパー版) [VHS]

プリンセスと魔法のキス (字幕版)

 

 

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「読書は格闘技」 2016

読書は格闘技 (集英社文庫)

★★★★☆

 

内容

 「読書は格闘技」と唱える著者の読書の実践方法を紹介する。

 

感想

 「正義」「時間管理術」「グローバリゼーション」など、各テーマごとに様々な本を紹介しつつ、著書がそれらの本との「格闘」の結果得られた知見や考察などが語られていく。たくさんの本が紹介されているので、そのテーマについて知りたいときには参考になりそうだ。読書術の本でありながら、読書ガイドの側面も持っているといえるだろう。そして、各章の最後にはその他の参考になりそうな本が紹介され、その難易度も記されているのだが、この難易度の設定が、自分がなんとなくイメージするものと違っていて不思議だ。難しそうなものが難易度Cで、そうでもなさそうなものが難易度Aだったりする。

 

 読み進めているうちに感じるのは、あるテーマについて知見を深めたいときは、それに関する本を一冊ではなく何冊も読んでみる事の重要性。テーマは同じだが異なる立場で書かれた様々な本を読み、その違いや共通点に注目して「格闘」することで、バランス感覚のある意見を持つことが出来るようになる。逆に一冊の本しか読まず、それを聖書のように有難がって理解したような気でいると、知らず偏った意見の持ち主になってしまう。それこそただの信者と同じだ。

 

 

 本書では様々なテーマが取り上げられているが、中でも「教養小説」の章で、「タッチ」や「エヴァンゲリオン」と少女漫画との類似性を指摘する場面は面白かった。確かに平凡な主人公が美少女のために頑張って内に秘めた才能を開花させていくというストーリーは、何のとりえもない女子がイケメンに見初められて始まる少女漫画のシンデレラストーリーとよく似ている。

 

 あるテーマでは読んだことのある本が何冊も紹介されているのに、別のテーマでは一冊も無かったりと、自分がよく読む本にジャンル的な偏りがあることを思い知らされてしまう本でもある。そして著者のその守備範囲の広さに感心してしまう。自分もあまり読んだことのないジャンルの本も読みたいなと思ってはいるのだが、いつもいざとなると食指が伸びない。無理して読むこともないのかもしれないが、そういう興味の幅広さが教養の深さへとつながっていくはずだ。とはいえ他に興味が芽生えるまでは、今興味のあることを深めていけばいいのかなとも思っている。

 

著者

瀧本哲史 

 

 

 

登場する作品

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読書について 他二篇 (岩波文庫)

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韓非子 (第1冊) (岩波文庫)

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思いやりの人間関係スキル :一人でできるトレーニング

高慢と偏見(上) (光文社古典新訳文庫)

龍馬の手紙 (講談社学術文庫)

bookcites.hatenadiary.comエクセレント・カンパニー Eijipress business classics

MADE IN JAPAN―わが体験的国際戦略

君主論 (講談社学術文庫)

反マキアヴェッリ論 (近代社会思想コレクション)

ディスコルシ ――「ローマ史」論 (ちくま学芸文庫)

企業・市場・法 (ちくま学芸文庫)

組織の経済学

「王様のレストラン」の経営学入門―人が成長する組織のつくりかた

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虚妄の成果主義

ゼロのちから――成功する非営利組織に学ぶビジネスの知恵11

フラット化する世界 経済の大転換と人間の未来〔普及版〕(合本) (日本経済新聞出版)

文明の衝突

新版 歴史の終わり〔上〕: 歴史の「終点」に立つ最後の人間 (単行本)

レクサスとオリーブの木―グローバリゼーションの正体〈上〉

「アジア半球」が世界を動かす

コークの味は国ごとに違うべきか

超・階級 スーパークラス

貧困の終焉: 2025年までに世界を変える (ハヤカワ文庫 NF 404)

ジェフ・ベゾス 果てなき野望-アマゾンを創った無敵の奇才経営者

ユダヤ人の歴史 (河出文庫)

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「A」タイム―時間管理のスーパーテクニック

ザ・ゴール

もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら

繁栄 明日を切り拓くための人類10万年史

寿命1000年―長命科学の最先端

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闘うプログラマー[新装版] ビル・ゲイツの野望を担った男達

点と線

存在と時間I (中公クラシックス)

現代の二都物語

年収は「住むところ」で決まる 雇用とイノベーションの都市経済学

都市は人類最高の発明である

アマン伝説 (光文社知恵の森文庫)

ミッション・トゥ・マーズ 火星移住大作戦

遠距離交際と近所づきあい : 成功する組織ネットワーク戦略

八十日間世界一周 (創元SF文庫)

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天才を考察する―「生まれか育ちか」論の嘘と本当

天才の世界 (知恵の森文庫 t ゆ 1-1)

イーロン・マスク 未来を創る男

ジョルジオ アルマーニ 帝王の美学

近代日本の万能人 榎本武揚

幼児教育の経済学

究極の鍛錬

キャズム

ポジショニング戦略[新版]

「売る広告」への挑戦―ダイレクトマーケティングの父・ワンダーマン自伝

心脳マーケティング 顧客の無意識を解き明かす Harvard Business School Press

その〈脳科学〉にご用心: 脳画像で心はわかるのか

新ネットワーク思考―世界のしくみを読み解く

なぜこの店で買ってしまうのか ショッピングの科学 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

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動物農場〔新訳版〕 (ハヤカワepi文庫)

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マトリックス (字幕版)

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ニュー・アトランティス (岩波文庫)

ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか

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天体の回転について (岩波文庫 青 905-1)

ユートピア (岩波文庫)

成長の限界 人類の選択

2050年の世界 英『エコノミスト』誌は予測する (文春文庫)

ポスト・ヒューマン誕生 コンピュータが人類の知性を超えるとき

サンスクリット版縮訳 法華経 現代語訳 (角川ソフィア文庫)

21世紀の資本

正義論

Political Liberalism (Columbia Classics in Philosophy)(政治的リベラリズム)」

アナーキー・国家・ユートピア―国家の正当性とその限界

正義論の名著 (ちくま新書)

隷属への道

権利論

神と国家と人間と (法哲学叢書)

道徳性の起源: ボノボが教えてくれること

イェルサレムのアイヒマン――悪の陳腐さについての報告

ヴィルヘルム・マイスターの修業時代〈上〉 (岩波文庫)

源氏物語(1) 現代語訳付き (角川ソフィア文庫)

次郎物語(上) (新潮文庫)

真実一路 (新潮文庫)

路傍の石 (新潮文庫)

魔の山(上)(新潮文庫)

ヴィルヘルム・マイスターの遍歴時代〈上〉 (岩波文庫)

ぼんぼん (岩波少年文庫)

銀河鉄道の夜

しろばんば (新潮文庫)

千の顔をもつ英雄〔新訳版〕上 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

勉強革命! 「音読」と「なぜ」と「納得」が勉強力とビジネス力をアップさせる

山月記

「山月記」はなぜ国民教材となったのか

故郷(中国語・日本語訳併記版) 魯迅小説集

魯迅「故郷」の読書史―近代中国の文学空間 (中国学芸叢書)

君たちはどう生きるか (岩波文庫)

スイミー―ちいさなかしこいさかなのはなし

晩年の子供 (講談社文庫)

ごん狐

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オツベルと象 (ミキハウスの絵本)

源氏物語 文庫 全10巻 完結セット (講談社文庫)

しろいうさぎとくろいうさぎ (世界傑作絵本シリーズ)

ローラの世界―大草原の小さな家

ぐりとぐら [ぐりとぐらの絵本] (こどものとも傑作集)

いやいやえん (福音館創作童話シリーズ)

アナと雪の女王 (字幕版)

魔法にかけられて (字幕版)

ハリー・ポッター文庫全19巻セット(箱入)

ロード・オブ・ザ・リング (字幕版)bookcites.hatenadiary.com

ライラの冒険 [DVD]

100万回生きたねこ (講談社の創作絵本)

黄金の羅針盤 (ライラの冒険シリーズ (1))

エルマーのぼうけん (世界傑作童話シリーズ)

 

 

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「ウンコな議論」 2005

ウンコな議論 (ちくま学芸文庫)

★★★★☆

 

内容

 日々様々な場所で繰り広げられている「ウンコな議論」。その中身について考察する。原題は「On Bullshit」。

 

感想

 まずこの本の邦題がよくないよなと思ってしまう。たとえ中身が頷けるものだったとしても、日常の会話の中でこの本の名前を言い出しにくい。それに「今日の会議、まさにウンコな議論だったよね」とも口にしづらい。その点、最近売れた本の「ブルシットジョブ」はそれをちゃんと分かっていた。これもタイトルが「ウンコな仕事」だったら人々がこんなにも話題にしなかったかもしれない。あまり売れなかったというこの本を他山の石にしたという事なのだろう。

 

 ただ、訳者が解説で弁明していたが、ネイティブの人たちがこの本のタイトルを見た時のインパクトを日本で再現するつもりだったら、「ウンコな議論」が正解なのは間違いない。著者は汚い言葉のタイトルをつけたかっただけのはずなので、ちゃんと意図を汲んだことになる。ただ、それに対する反応がネイティブと日本では違ったという事だろう。面白がって手に取るか、拒絶してしまうか。著者の意図を汲みつつ日本で受け入れられる表現も考えなければいけないなんて、翻訳の仕事も大変だ。

 

 本書は50ページしかない本文に、訳者による解説50ページが加わってようやく100ページを超えるという薄い単行本。だからあっさりと読了できるかと思ったのだが、道徳哲学者による文章という事でなかなか手強く、読み応えのある内容だった。それとは別に、そもそも「ウンコな議論」という言葉自体が、日本語としていまいちピンと来ないというのも大きかったかもしれない。よく使われる慣用句的なものでもないので、このワードが出てくる度に毎回、空虚な言葉の羅列とか中身のないやつね、と脳内で再認識する必要があった。このあたりも翻訳者が苦労してそうだった。

 

 ウンコ議論や屁理屈は、知りもしないことについて発言せざるを得ぬ状況に置かれたときには避けがたいものである。したがってそれらの生産は、何かの話題について語る義務や機会が、その話題に関連した事実についての知識を上回る時に喚起されるのである。

単行本 p51

 

 とはいえ、日本にもこのいわゆる「ウンコな議論」というものは日常的によく見られるものだ。これは主に議論の体裁を保つための時間稼ぎとして行われている、という著者の解説は腑に落ちた。すでに多数決で結論は決まっているのだが、数の論理で押し切ったと批判されないよう、議論をしたという実績を作るためだけに空虚な答弁を繰り返したり、討論なんかしたくないのに、しなきゃいけないので予定時間を消費するためだけにあまり関係のない話を長々としたり。好意的に捉えれば座持ちが上手いという事だが、普通に考えれば単なる時間の無駄でしかない。本題とは全く関係のない、例えば過去の東京オリンピックの思い出のような昔話を延々と話されたりしたら、うんざりするのも当然だ。

 

 

 そして、そんなウンコな議論をする人たちは、自分の話す中身が真実かどうかに全く関心がないという説明にはゾッとした。自分は嘘をついていると認識している人であれば、真実を知っており、その上で相手を騙そうとしているわけで、少なくとも相手に何らかの影響を与えようと考えている。だがウンコな議論をする人は、時間稼ぎだけが目的なので、話の中身の真偽や相手を説得することに全く興味がない。つまり相手とコミュニケーションを図る気はなく、下手すれば存在すら気にかけていないという事で、よく考えるととてつもない怖さを感じる。最近、そんな人が増えているような気がするが、この本では分析にとどまり、解決策などは語られていないので、どうすればいいのだろうかと色々と考えてしまった。

 

 考えているうちにふと思ったのだが、「ウンコな議論」をもっとしっくりくる日本語に言い換えるとすると、今だと「ごはん論法」がそれに一番相応しいかもしれない。

 

著者

ハリー・G.フランクファート 

 

翻訳 山形浩生

 

ウンコな議論 - Wikipedia

 

 

登場する作品

The Prevalence of Humbug and Other Essays(世にはばかるおためごかし)」

ピサ詩篇

Dirty Story: A Further Account of the Life and Adventures of Arthur Abdel Simpson(ダーティー・ストーリー)」

「Lying(嘘をつくこと)」 聖アウグスチヌス

 

 

この作品が登場する作品

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「アジアンタムブルー」 2002

アジアンタムブルー (角川文庫)

★★★★☆

 

あらすじ

 恋人を失った悲しみから立ち直れない男。

 

感想

 恋人を失った悲しみに打ちひしがれ、仕事にも行かずデパートの屋上で時間を潰す日々を繰り返す主人公。 そこで頭をよぎっているのは恋人との思い出だけでなく、これまでの人生の様々な出来事だというのが面白い。だが過去を振り返るモードになると、一つの事だけではなく、次から次ととめどなく、色々な事を思い出してしまうものだ。主人公はそれらの思い出から人生を見つめ直していく。

 

 僕は死んでいく葉子ではなくて、生きている葉子と今ここにいるのである。

p269

 

 前半は現在の失意の日々とそんな過去の思い出を振り返り、後半は恋人との最後の日々が描かれていく。これから死んでいく人間と一緒にいる事を想像すると、どういう気持ちで過ごせばいいのかよく分からなくて戸惑ってしまうが、上記の言葉は、難しく考えなくていいのだなと、気分を少し楽にさせてくれる。よく考えてみれば、自分を含めて誰もが死んでいっているわけで、それが1か月後なのか、50年後なのか、早いか遅いかの違いでしかない。だからそれをことさら意識する必要はないのかもしれない。

 

 

 恋人の闘病生活の描写は、延々と続くわけではなく、割とあっさり目に描かれている。だが淡々とした二人の様子を読んでいたら、突然無性に悲しくなったりした。ほとんど苦しむことなく眠るように恋人が最期を迎えたのには、少しきれいすぎる気がしてしまったが。

 

 バラバラになっていた過去の思い出を振り返って整理して、妻との日々に再度向き合った主人公。枯れてしまうかのようしなびてしまった草木が、再びみずみずしく活力を取り戻すように、生きる力が漲ってくる主人公の姿に清々しさを覚えた。こういうのは、ある時突然やってくるものだ。いつまでも無いものを探し続けるわけにはいかない。 

 

著者

大崎善生 

 

アジアンタムブルー - Wikipedia

 

 

登場する作品

ブリング・オン・ザ・ナイト

フェイシング・ユー

リトゥーリア

エヴリ・ブレス・ユー・テイク(エブリィ・ブレス・ユー・テイク)」

Whole Lotta Love (Remaster)(ホール・ロッタ・ラヴ)」

クリムゾン・キングの宮殿 (ファイナル・ヴァージョン)(紙ジャケット仕様)」所収 「コンフュージョン・ウィル・ビー・マイ・エピタフ」 

ユア・ソング(僕の歌は君の歌) (Remastered 2016)

抱きしめたい (Remastered 2009) 

 

 

関連する作品

映画化作品 

 

 

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「地球星人」 2018

地球星人(新潮文庫)

★★★★★

 

あらすじ

 幼い頃につらい思いをし、社会にうまく適合できない女。

 

感想

 物語は主人公の幼少期から始まる。母親や姉から邪険な扱いを受け、周囲を窺いながらびくびくして生きる主人公。最初は母親の行き過ぎた愛情が歪んだ形となって表れてしまっているのかと思っていたが、どうやらそういうわけではないらしく、辛いなと思っていた所に、塾講師からのとんでもなく酷い仕打ち。この年齢でこのハードモードはしんどい。序盤は読んでいるだけで、どんどんと気分が沈んでいってしまう。

 

 ところであまり本題とは関係がないが、最近、生徒の下着を教師が確認するという校則が酷いと話題になっていたが、教師の言い分の「生徒のため」という言葉は、性的虐待をするために幼児を誘い込む大人がかける言葉と全く同じだ。そう気づいてしまうと、そういう嗜好を持った教師が、自らの欲望を満たすためにそういう口実で始めたのだろうな、と穿った見方をしてしまう。その後は、ルールなので、決まりなので、の一点張りで、だれも明確な理由を説明できないまま続けられてきたのだろう。「生徒のため」と言えば、合理的な理由がいらなくなる風潮は何とかして欲しい所。

「下着は白」着替え時に先生が同席 「ブラック校則」女子中学生が投書|総合|神戸新聞NEXT

 

 夫と私は、「ちゃんと洗脳してもらえなかった人」たちだった。洗脳されそびれた人は、「工場」から排除されないように演じ続けるしかない。

p138

 

 幼少時の経験から、世間に疑問を感じ、うまく適合できずに生きることになった主人公。ただ、そんな世間に反発を覚えて抵抗するのではなく、早く洗脳されてしまいたいと思っているのが切ない。世の中は変だと思いながら、そう思う自分が間違っているのだと感じている。

 

 こういう物語は、最終的には何とか世間との妥協点を見つけ、折り合いよくやっていけるようになりました、とか、最悪の場合だったら、絶望して自殺してしまいました、とかの着地点に向かっていくのだろうなと思っていたら、どんどんととんでもない方向に向かっていく。こちらが勝手に設けていた越えちゃいけないラインを軽々と飛び越えていってしまって、読んでいるこちらがドキドキしてしまうほど。

 

 

 ラストはもう、頭おかしいと言ってしまってもいいような展開なのだが、そうやって単純に切り捨てることが出来ない程、主人公の側に立っている自分に気付く。あんなにクレイジーに見えた主人公の夫も、いつの間にか普通に思えるようになっている。読んでいるだけで段々と体力奪われていくような小説。久々にヤバい本を読んでしまった。

 

著者

村田沙耶香

 

 

 

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「グロースハッカー」 2013

グロースハッカー

★★★★☆

 

内容

 見込み客を集めるだけでなく、製品・サービスの開発からその後の成長までに関わっていく新しマーケティングのスタイル「グロース・ハック」について紹介する。

 

感想

 大々的な予算を使って有名人を招待して派手な発表会を行い、皆の注目を集め宣伝する、といったような旧来のマーケティングとは異なる、新しいマーケティングのスタイル。曖昧な雰囲気ではなく、目に見える数値をもとに試行錯誤を繰り返し、予算をかけずに製品やサービスを急成長させていく。その手法が、「Evernote」や「Spotify」といった(当時の)勢いのあるIT企業が行ってきた実例を挙げつつ紹介されている。

 

 ただし、本文は100ページに満たないボリュームなので、具体的なマニュアルではなく、どのように取り組むべきか、そのマインドセット(心構え)を身につけるための本となっている。それにおそらく、実際にどう行うかはその製品やサービスによって大きく変わるので、この本で紹介される実例をすべてやったところで必ずしもうまくいくとは限らないだろう。このマインドセットを身につけた上で、それをどう行うか、自分の頭で考えることが大事だ。これは決してIT分野に限った話ではなく、著者自ら実践して証明したように、本をベストセラーにするという旧来の商品にも通用する話だというのが勇気づけられる。また必ずしもデジタルツールを使うだけでもなく、時にはアナログな手法が有効なことだってある。

 

 従来式のマーケティングモデルの最も悪いところは、派手で大々的な立ち上げ神話だ。もう一つは、「(製品やサービスを)公開さえすれば、人は集まってくる」という、ウェブにかかわる人の多くが思い込んでいる幻想だ。


 アーロン・シュワルツが気づいたことを思い出してほしい。ユーザーは引き込まなければならない。いいアイデアだけでは不十分だ。実際、顧客は「獲得」するものだ。だが、その方法は絨毯攻撃ではなく、ふさわしい相手にターゲッティングしたピンポイント攻撃だ。

p54 

 

 まずは良い商品を作り、それを気に入るだろう人を呼び込んで彼らに宣伝してもらい、そこから得たフィードバックをもとに製品をよりよく仕上げていく、そのサイクルを繰り返すことで製品は市場のニーズにぴったりと合うものになっていく。それがほとんど費用をかけることなく誰にでもできるのだから面白い。

 

 本文の後の解説で、「クックパッド」や家計簿アプリ「Zaim」でどのようなグロースハックが行われているのかが具体的に紹介されていて、マインドセットだけでなく、実際にどう行うのかもイメージすることが出来る分かりやすい構成。ただ読んでいて思ったのは、解約する会員の数を減らすという目的でグロースハックを行なったら、最終的には解約画面が見つけ難くなってユーザーの使い勝手を悪くしただけ、という落とし穴にはまりこんだりしないか、という事。気づかないうちにそうなってしまうこともあるだろうが、分かった上で敢えてそうしている悪いサービスもありそうだ。あのサイトとか。

 

 

 それから時々、大々的にデザインを刷新するサービスなどもあるが、あれはグロースハックを一旦リセットするのか、それともハックの結果なのか、もしく別の技術的な理由によるものなのか、気になる。

 

著者

ライアン・ホリデイ

 

解説 加藤恭輔 

 

グロースハッカー

グロースハッカー

 

 

 

登場する作品

ブレア・ウィッチ・プロジェクト (字幕版)

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リーン・スタートアップ

なぜ「あれ」は流行るのか?―強力に「伝染」するクチコミはこう作る!

The 4-Hour Chef: The Simple Path to Cooking Like a Pro, Learning Anything, and Living the Good Life

「売る」広告[新訳]

 

  

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「セールスマンの死」 1949

アーサー・ミラーⅠ セールスマンの死 (ハヤカワ演劇文庫)

★★★☆☆

 

あらすじ

 仕事や家族の事で多くの問題を抱えたセールスマンの男。戯曲。

 

感想

 疲れ果てたセールスマンの物語。仕事で結果を出せず、旅回りにも疲れ果てた男。しかも成人した息子たちは親を安心させるような職業についておらず、心労はたまるばかり。そんな現在の姿と、回想シーンで見せる過去の成功したセールスマンとしてブイブイいわせていた姿の対照的な落差が物悲しい。

 

 それからまず、当時の「セールスマン」という職業に対する認識が、今とはずいぶん違うのだろうなというのが、劇中から窺える。主人公は「何を売るかではなく、誰が売るかが重要だ」みたいなことを言っていて違和感があったのだが、どうやら今のCMタレントのような感覚でいるようだ。こんなに魅力的な自分が売り込んでいるのだから欲しくなるに決まっている、みたいな。だからタレントと同じで、歳を取れば人気に陰りが見えるし、そうなれば過去の栄光にすがりつきたくなるのだろう。

 

 

 それでも自分の職業に無邪気に誇りを持てていたというのは羨ましい。今だと自分の職業に誇りを持っているなどと声高に言う人なんて、怪しい商売をしている人だけのような気がしてしまう。だがその誇りが驕りにつながり、子どもたちの今の体たらくを招いてしまった主人公。とはいえ実際のところ、そんなにこの主人公が子供たちに言い聞かせていたことは間違っていなかったのでは、と感じてしまっている自分がいる。世間を見渡してみれば、勉強ができるよりも、愛想よく皆の人気者でいた方が、コネがたくさんある方が、いい人生を送っているように見える。

 

 主人公の住む家が、自然に囲まれた一軒家だったのが、やがて大きなアパートに囲まれた居心地の悪い家に変わっていったという描写は、栄華を誇った一家の没落する姿を暗に示しているかのよう。さらにこれはその後のアメリカの行く末を示唆しているようにも見える。しかも、その誇示していた栄華も実は虚飾だったのでは、というのがさらに気持ちを空しくさせる。どこかで間違えたかもと不安を覚えながら、それでも虚勢を張り、自分たちはすごいんだと言い聞かせてやってきたが、やがて厳しい現実に直面して打ちのめされる時が来る。そんなセールスマンの姿に、誰かであったり、どこかの国であったりが投影されて、色々と考えさせられる。

 

著者

アーサー・ミラー 

 

セールスマンの死 - Wikipedia

 

 

登場する作品

ビヤ樽ポルカ

 

 

関連する作品

映画化作品 

セールスマンの死 [DVD]

セールスマンの死 [DVD]

  • 発売日: 2009/10/26
  • メディア: DVD
 

 

 北京におけるこの作品の公演記

北京のセールスマン

北京のセールスマン

 

 

 

この作品が登場する作品

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「本の読み方 スロー・リーディングの実践」 2006

本の読み方 スロー・リーディングの実践 (PHP文庫)

★★★★☆

 

内容

 本をじっくりと読んで堪能する読書法の紹介。

 

感想

 速読がすごいとは思ってはいないのだが、自分もどちらかというと本を読み飛ばしてしまいがち。なのでスローリーディングを提唱する本書はなかなか興味深かった。中でも心に残ったのは「「辞書癖」をつける」という項目。読めない漢字でも、雰囲気で何となく意味は類推できるので、辞書を引いて調べずに、そのまま読み進めてしまうという事はよくある。でも、ここで調べるか調べないかは、蓄積される知識量に大きな差が出てくるはずだ。それに、いつか実生活で無知をさらけ出して恥をかくことになってしまうかもしれない。

 

 政治家も「みぞうゆう(未曾有)」「よせき(寄席)」等の読み間違いをしたとよく揶揄されているが、試験をパスするための勉強しかしてこなかった人は案外、たくさん本は読むが、速読しかしてこなかったのかもなと思った。高度な試験で漢字の読み方を聞かれることなどまずないので、疎かにしていたのだろう。ただ世襲議員の場合は、勉強もせず、まわりも気を使って間違いを指摘できないから、という別の問題があるような気はするが。そういう自分も「奇しくも」が「くしくも」という読みだという事を最近知った。「きしくも」と「くしくも」という二つの別の言葉があるのかと思っていた。どこかで恥をかく前に気付いてよかったと密かに胸をなでおろしている。今後は読めない漢字や知らない言葉等はなるべく調べるようにしていきたい。

 

 

 後半は、実際の小説などの文章を使って、スローリーディングの実践方法が紹介されていく。いつもの自分流の読み方以外に、こういう視点で読むことも出来るのかと新鮮な気分になる。様々な着眼点の持ち方を、感覚やセンスではなく、知識として体系的に知っておくと確かに読書の技術が上がりそうだ。これまで読んで来た本も、これらの方法を用いて再読してみたら、さらに深く味わうことが出来て、感想も変わってくるかもしれない。

 

 取り上げられる小説の中には著者自身の作品「葬送」もあり、本人から読み取って欲しいところなどの解説があって、とても興味深かった。こういう作家本人による解説というのは面白いのでどんどんとやって欲しいが、もしノリノリで饒舌に語っているのを見てしまうと、逆に「そんな解説が必要な本など書くなよ」とか思ってしまいそうなので難しいところ。この本のように、頼まれたからやるけども…、みたいな渋々のポーズがあると素直に読めるが、毎回それをやるのは面倒くさそうではある。

葬送 第一部(上) (新潮文庫)

葬送 第一部(上) (新潮文庫)

 

 

 本書でも言及されているように、突き詰めてしまえば正しい読書法なんて無いのだが、どうせ読むならその本を十分堪能できたと思えるような読み方をしたいな、と思わせてくれる本。

 

著者

平野啓一郎 

 

本の読み方 スロー・リーディングの実践 (PHP文庫)

本の読み方 スロー・リーディングの実践 (PHP文庫)

 

 

 

登場する作品

憂い顔の童子 (講談社文庫)

遅読のすすめ

性の歴史 1 知への意志

こころ

法の精神 (中公クラシックス)

モンテスキュー: その生涯と思想 (叢書・ウニベルシタス)

伊豆の踊子 (新潮文庫)

小林秀雄全作品〈1〉様々なる意匠

モオツァルト (角川文庫)

吾輩は猫である

存在と無〈1〉現象学的存在論の試み (ちくま学芸文庫)

存在と時間〈上〉 (ちくま学芸文庫)

葬送 第一部(上) (新潮文庫)

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「橋」 「カフカ短篇集 (岩波文庫)」所収

変身 (角川文庫)

私という小説家の作り方 (新潮文庫)

高瀬舟

高瀬舟縁起

翁草 (1980年) (教育社新書―原本現代訳〈55,56〉)

妄想

城 (新潮文庫)

美女と野獣(新潮文庫)

かえるの王子様 世界の童話シリーズその155

最後の変身 (文春文庫)

鏡子の家 (新潮文庫)

「私の文学」 「一草一花 (講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ)」所収

蛇にピアス (集英社文庫)

アッシュベイビー (集英社文庫)

AMEBIC (集英社文庫)

刺青

檸檬 (角川文庫)

葬送 第一部(上)(新潮文庫)

ハリー・ポッター文庫全19巻セット(箱入)

性の歴史 3 自己への配慮

 

 

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「サルなりに思い出す事など 神経科学者がヒヒと暮らした奇天烈な日々」 2002

サルなりに思い出す事など ―― 神経科学者がヒヒと暮らした奇天烈な日々

★★★★☆

 

内容

 ヒヒを観察するためにアフリカにやって来た神経科学者の回想記。

 

感想

 まずこの2度見せずにいられないタイトルがいい。原題は「A Primate's Memoir(霊長類の回想録 )」なので大体あってるし。え、サル?どういうこと?と思わず手に取りたくなるような大きな釣り針、トリガーが仕掛けられている。

 

 本書では、アフリカに行ってヒヒの集団を観察するアメリカ人神経科学者の体験が綴られる。とりあえずアフリカで動物を観察している人たちというのは動物学者ばかりかと思っていたので、神経科学者のような、そうではない科学者もいる事が意外だった。でもよく考えてみれば、どんな分野でも研究室で管理された動物を観察することはよくあるわけなので、それを管理されていない自然な状態の動物でやりたいとなれば、現地に行くしかないということなのだろう。勿論、本人が望めば、という事だろうが。

 

 

 著者が長年観察するヒヒ集団の様子を読んでいると、動物にも個性があるという事が良く分かる。賢くボスの座を守るものがいれば、だた闇雲に攻撃を仕掛けるものもいる。立派な体格を持ちながら心優しいものや仲間の嫌がる事しかしない性格の悪いものもいる。個性の多様さは人間と変わらない。個人的には、ボス争いには関心を示さず、ニッチな戦略で充実した生活を送り、長生きもした「イサク」の生き方に惹かれた。でもこんな風にそれぞれが違って多様性があるからこそ集団は存続できているわけで、そう考えると日本社会で見られる皆と同じじゃないとイヤ、という風潮はあまりよくない傾向なのかも知れない。

 

 それからヒヒたちの集団でも、虐げられた弱者がさらに弱者を叩くという八つ当たり行為が普遍的にみられるという事を知って、なんとも言えない気分になった。これは、そういう行為は動物全般で一般的に見られるという事なのか、それともヒヒの進化の具合が人類に近いからなのか、どっちなのだろうか。 

TRAIN-TRAIN(デジタル・リマスター・バージョン)

TRAIN-TRAIN(デジタル・リマスター・バージョン)

  • 発売日: 2013/08/09
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

 

 本書ではそんなヒヒとの生活だけでなく、アフリカの人々との交流の様子も描かれていて、異文化体験記としても面白い。漠然としたイメージしかなかったマサイ族が、現地ではどういう存在なのかが良く分かり、興味深かった。それにアフリカにおける様々な問題の多くには、未だにヨーロッパ諸国によるかつての植民地支配の痕跡が見て取れるということも。 

 

 最終章のヒヒたちの世界におけるパンデミックの様子は読んでいて辛かった。そしてせっせと解剖を続ける著者がまるで殺人鬼のようで空恐ろしくなる。でもここで非道になれないと科学的な調査は出来ない。そんな彼もさすがに自身が長年観察を続けた愛着あるヒヒ集団に対しては戸惑いを見せていて、その気持ちは痛いほどよく分かった。感情移入しすぎたといえるかもしれないが、感情移入しないとアフリカの僻地で長年の観察研究なんてできないだろう。

 

 

 野生動物を観察しながら暮らすなんてロマンがあるように見えるが、こんな厳しい現実に直面する事もあるのだぞと、最後に突き付けられたような気分。そういう意味では、著者が映画「愛は霧のかなたに」で有名な、マウンテンゴリラと共に暮らした動物学者ダイアン・フォッシーがいた場所を訪れた時のエピソードも示唆的だった。 

愛は霧のかなたに (字幕版)

愛は霧のかなたに (字幕版)

  • メディア: Prime Video
 

 

著者

ロバート・M. サポルスキー 

 

 

 

登場する作品

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おおスザンナ

「あなたは悪い男」

「悲しみは旅行鞄につめて」 

フォスター:スワニー川

ヨセフとその兄弟 1

サタデー・ナイト・フィーバ (字幕版)

オブ・ラ・ディ、オブ・ラ・ダ (2009 Digital Remaster)

マーラー:交響曲第4番 亡き子をしのぶ歌

レ・ミゼラブル (赤)

ヴェルディ:歌劇「アイーダ」全曲

 

 

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「ホット・ロック」 1970

ホット・ロック (角川文庫)

★★★★☆

 

あらすじ

 外国大使から独立時に失った国の宝を取り戻すよう依頼された犯罪者たち。ドートマンダー・シリーズ第1作目。

 

感想

 

 アメリカで行われている展覧会に出展されたエメラルドを盗み出すよう依頼された主人公たち。軽妙な会話やユーモアを交えながら計画が実行されていく。どことなく伊坂幸太郎の「陽気なギャング」シリーズを思い出させるが、小説の中で言及したこともあるくらいなので、勿論あちらがこの作品を意識していたのだろう。シリアスで重厚な犯罪小説もいいが、こうやって軽口を叩き合いながらもプロフェッショナルに仕事に取り組む集団の話も楽しくていい。愉快で読んでいるうちに心が軽くなる。

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 彼らの最初の犯行からそうなのだが、ほとんど完璧に仕事をこなしているのに、毎回運悪く何らかの問題が発生して失敗に終わるという彼らのツイてなさも面白い。やれやれだぜと落ち込みながらも渋々と次の仕事に取り掛かる。こんなに何度も犯行を繰り返すとなると、その方法を考えるだけでも大変そうだが、毎回ユニークな犯行を提示してくる著者はすごい。最後は催眠術を持ち出してきたりして、ちょっと雑になる感じも可笑しかった。

 

 そしてこんなに犯行を繰り返すとなると、どこかで裏切り者が出てくるのではないかと思ってしまうものだが、メンバーの誰もがそんな事は想像だにしておらず、チームのために働くのが当然だと考えているのも安心する。みんなどこか変なところのある愛すべきキャラクター達だ。凄腕なのにどこか抜けている彼らのようなチームには、そんなドロドロとした話は似合わない。仲良しであってほしい。シリーズ化されているので、どこかでそんな話も出てくるのかもしれないが。

 

 

 これまでに何度か映画化されているようだが、確かに映画にしたら面白くなりそうだと思ってしまうような小説だ。その場合、今だと監督スティーブン・ソダーバーグ、主演ジョージ・クルーニーかな、いや監督ウェス・アンダーソンか?と考えたりして、それもまた楽しい。

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著者

ドナルド・E・ウェストレイク

ホット・ロック (角川文庫)

ホット・ロック (角川文庫)

 

 

 

登場するキーワード

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関連する作品

ドートマンダー・シリーズ 次作

 

映画化作品 

ホット・ロック [DVD]

ホット・ロック [DVD]

  • 発売日: 2009/05/02
  • メディア: DVD
 
エンター ザ イーグル [DVD]

エンター ザ イーグル [DVD]

  • 発売日: 2001/03/25
  • メディア: DVD
 

 

 

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「抹香町・路傍」 1997

抹香町・路傍 (講談社文芸文庫)

★★★★☆

 

内容

 私娼窟・抹香町へ通う初老の独身男を描いた「抹香町」などを収録した短編集。 

 

感想

  著者の青年期から老年期までの各年代が描かれた私小説の短編が並んでいる。今までこの著者・川崎長太郎の作品は読んだことがなく、年甲斐もなく欲望に振り回される姿を描いたものが多いのかと思っていたが、すべて読み終えて強く印象に残るのは「老い」を描いた部分だった。老人になっていく自分、老境を迎えた自分の姿を、意識的に描写する場面が多い。両親や家族の昔話が多いのも老いの特徴か。

 

 著者は50歳を迎えても売れない独身の作家という身の上なので、老後に不安を覚えるのは当然のことなのかもしれない。健康のために歩き回って足腰を鍛えたり、食事にも気を使っている。そうやって老後に備えているくせに、金銭的な面については何とかなると高をくくっているのがなんだか可笑しい。貯蓄するために安定した職に就こうなどとはさらさら考えておらず、なんとか暮らせていけるわずかな金銭を、文章を書くという好きな事で稼げているだけで僥倖だと満足している。つまりはそうでなければ生きていても仕方がないという事だろう。それが長く続けられるよう健康の維持に努めているわけだ。

 

 

 そして著者が電気も水道もない小田原の狭い物置小屋で暮らしているというのがすごい。今よりも貧しい時代で感覚も違うのだろうが、それでも特に不満も感じず暮らしていたようなので、彼こそ本当のミニマリストなのかもしれない。現代の意識の高いミニマリストたちは、この先駆者の存在を完全に無視しそうだが。さらに、小田原にいながら東京に文章を送って生活していたというのだから、リモート生活の先駆者でもあるといえる。

 

 それから小説の中では少ししか触れられていなかったが、その後、ちょっとしたブームがやってきて、著者が世間の人気を集めるようになった時には、全国から訪れたファンの女性にこの物置小屋で次々と手を出していたらしい。人生何があるか分からない。この頃について書かれた小説があるのなら面白そうなので読んでみたい。

 

 そしてずっと独り身だった著者は、老年を迎えてから30歳も年下の女性と結婚する。これは奇しくも本書最後の短編「徳田秋声の周囲」で描かれる師匠の徳田秋声と同じような状況だ。著者はこのことについてどう感じていたのだろうか。人生とはこんな風に、意識的なのか無意識なのかに関わらず、過去の出来事が相互にリンクしながら築かれていくものなのだなと、大河ドラマを見たような感慨深さがあった。

 

著者

川崎長太郎 

 

抹香町・路傍 (講談社文芸文庫)

抹香町・路傍 (講談社文芸文庫)

 

 

 

登場する作品

「冬きたりなば(冬来たりなば)」 監督 ハリー・ミラード 

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*所収「三人姉妹」

仮装人物

椿姫 (光文社古典新訳文庫) 

 

 

登場する人物

徳田秋声 

 

 

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