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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「BUTTER」 2017

BUTTER

★★★★☆

 

あらすじ

 容姿端麗とはいえないながら男たちを手玉に取り、殺害した容疑で逮捕された女。そんな世間の注目を集める女を取材することになった女性記者。

 

感想

 実際にあった事件をモデルにした小説。男を騙して金を奪う女と言えば、誰もが美人を想像していたのに、実際はそれとはかけ離れていて皆が驚いた、という事件だった。そんな女に騙されていた男たちはどんな奴だ?とか、容姿じゃなかったら何が秀でていたのか?とか、下世話な関心も集めて、いろいろと世間をざわつかせた。

首都圏連続不審死事件 - Wikipedia

 

 そんな世間の戸惑いが小説にも反映されているが、その中でも女性たちが彼女に寄せた関心が大きく取り上げられている。世間の男は理想の女性像を語り、女はそれに合致するように日々努力しているのに、全然合致しない女性が男にモテまくっていたというのはどういうことだ?みたいな戸惑いや動揺。

 

 主人公の女性記者が取材のために拘置所で被告人と何度も面会することで、彼女の生い立ちや事件の様子が次第に明らかにされていく。ただ、それよりも取材する主人公の心境の変化がメインに描かれている。世間の常識に縛られていた主人公が、彼女に魅了されてしまう前半が印象的だった。

 

 

 女性に限らずだが、多くの人は世間が定めた基準に従って生きている。太ってはいけない、だらしなく生きてはいけない、努力を怠ってはいけない、と。個人的には、みんなこんな感じなのか、自分に厳しいなと思ってしまったのだが、自分は自分で別の世間の基準に従ってしまっているのだろう。皆が自分を厳しく律しているから、その分、そうじゃない人を叩きたくなるのかもしれない。

 

 物語の中で、主人公の価値観はあちこちに揺れる。一度は被告に心酔しかけながらも、やがては冷めた視線になっていく。この辺りの不安定さがとてもリアルだ。何にも縛られず自由に見える人でも、その人はその人で独自の基準に従っているだけで、時にはそれで苦しんでいたりする。

 

こうしている今も基準は上がり続け、評価はどんどん先鋭化する。この不毛なジャッジメントから自由になるためには、どんなに怖くて不安でも、誰かから笑われるのではないかと何度も後ろを振り返ってしまっても、自分で自分を認めるしかないのだ。

p540

 

 自由とは簡単なものではない。その模索する感じ、明確な答えは用意されておらず、こんな風なのかなと曖昧なままにしているのが、妙にしっくりと来た。

 

 物語は、被告と主人公のちょっとした心理戦や、突然主人公の親友が意外な行動をとり出すサスペンス、たくさんの料理が登場するグルメ描写と、盛りだくさんな内容で読みごたえがある内容となっている。

 

著者

柚木麻子

 

BUTTER

BUTTER

  • 作者:柚木麻子
  • 発売日: 2017/06/30
  • メディア: Kindle版
 

 

 

登場する作品

ちびくろ・さんぼ

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麗しのサブリナ (字幕版)

マイ・フェア・レディ スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]

パリの恋人 (字幕版)

ローマの休日(字幕版) 

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銀河鉄道の夜 (角川文庫)

奇子 1

 

 

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「にんじん」 1894

にんじん (光文社古典新訳文庫)

★★★☆☆

 

あらすじ

 赤茶けた髪、そばかすだらけの顔で「にんじん」とあだ名される少年の物語。連作短編小説。

 

感想

 「にんじん」と呼ばれる少年と、その家族を中心とした小話が連作で綴られる。少年を主人公にした物語なので、ほんわかした雰囲気の物語なのかと思っていたら、全然そんな風になっていなくて戸惑った。

 

 何よりも主人公は家族、特に実の母親から嫌われている。悪質な嫌がらせやひどい仕打ちをされていて、読んでいるとだんだん嫌な気分になってしまう。今なら普通に虐待だ。しかも、そんな風に家族に嫌われる理由や原因も明らかにされないので、困惑するばかり。著者の自伝的物語と言えるそうなので、書いてる本人もその理由が分からなかったのだろう。

 

 

 家族に冷たくされる主人公。しかし、なんて不幸なんだと自己憐憫に陥って、同情を誘うような展開になりそうなものなのに、そうはしない事に感心する。つらい仕打ちに泣くのではなく、上手くやり過ごす術を身に着け、こんな事なんでもない、平気だという態度を取ろうとする。ある意味では処世術を学び成長していると言える。

 

 そんな健気な主人公だが、彼は彼で結構ひどい。

 

にんじん「君は貧乏で、僕は金持ちだから、僕は君のことをばかにしてもおかしくないんだ。でも、大丈夫。僕は君のことを大事に思ってるから」

 文庫版 p184

 

 近所に住む女の子にこんな言葉を吐いたりする。むしろ、そんな環境にいるからこそ、こうなってしまうのだろう。心が歪んでいる。虐待を受ける子供の闇が垣間見えるような気がした。

 

 そして、物語の中で頻繁にみられるのが、残虐な表現。狩りの獲物の息の根を止める仕事をしたり、猫を殺したり。今と違って、食べるために動物の命を奪うことが身近な時代だったという事もあるのだろうが、しかし描写は明らかにそれ以上の関心をそこに寄せていることが分かる。

 

 なかなか死なない鳥や体が欠損しても生き続ける猫など、それを描く著者の目に奇妙な執着心を感じる。これも虐待の影響があるのだろう。それから、指に刺さった釣り針を取るために、指の肉をナイフでえぐる描写は読んでるだけで痛くて、かなりの苦痛だった。

 

 ハードモードの少年時代を生きる主人公。生き抜く知恵を身に着けて、そこで生き延びることは出来そうだが、でもまともな大人にはなれないのだろうな、と思ってしまった。サイコパス的な雰囲気をまとっていそうだ。モデルとなった著者自身はどんな人間だったのだろうか。いろいろ想像してしまう。

 

スタッフ/キャスト

ジュール・ルナール

 

にんじん (光文社古典新訳文庫)

にんじん (光文社古典新訳文庫)

  • 作者:ルナール
  • 発売日: 2017/07/07
  • メディア: Kindle版
 

にんじん (小説) - Wikipedia

 

 

登場する作品

La Henriade(アンリヤード)」

新エロイーズ 全4冊 (岩波文庫)

 

 

関連する作品

 映画化作品(1932)

にんじん [DVD]

にんじん [DVD]

  • 発売日: 2011/05/25
  • メディア: DVD
 

 

映画化作品(2003)

にんじん [DVD]

にんじん [DVD]

  • 発売日: 2008/07/23
  • メディア: DVD
 

 

 

この作品が登場する作品

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「小沢健二の帰還」 2017

小沢健二の帰還

★★★★☆

 

内容

  90年代後半、日本の音楽シーンから姿を消し、近年再び姿を現した小沢健二は、その間何をしていたのか。その謎を追う。

 

感想

  90年代中盤、テレビに出まくっていた小沢健二は次第に露出を減らし、ある時ぷつりとその消息を絶った。売れなくなったアーティストと同じ軌跡ではあるが、アルバムごとにテイストを変えたり、原盤権を握るなどちゃんと考えてコントロールする頭の良い人でもあるので、生き残ろうとして必死に足掻いて失敗したのではなく、自ら去ったのだなというのは感じていた。

 

 ただめちゃくちゃ熱心なファンだったというわけではないので、それに気づいたのは彼がいなくなってしばらく経ってからだったが。時々、懐かしい気分になって当時の彼の曲を聴いたりしていたが、ある時ふと「ある光」の歌詞がすっと頭に入ってきて、愕然としたのを覚えている。当時の彼の思いが生々しくストレートに表れていることに気付いて。

www.youtube.com

 

 本書では、姿を消した後の小沢健二の様子を窺い知ることが出来る。華やかな舞台を自ら去って隠遁生活を送っていたというわけではなく、ニューヨークでパーティーに出席したり、NBAの試合を観戦したりと相変わらずの華やかな日々や、世界各地を旅したり住んだりと充実した生活を送っていたようである。しかし、Jay-Zと接点がある、というのは意外だった。

 

 ある意味では、自分の関心のおもむくままに自由気ままに動く羨ましい生活である。しかし、きっと金銭的余裕もあるだろうから、自分は満たされているので他は知らん、みたいになりそうなものなのに、しっかりと世界の社会問題に目を向けているのが立派だなと思う。自分だけではなくて、世界を良くしたいと考えている。良い悪いという事ではなくて、これは性分なのだろうが。

 

 

 そして、近年の大衆音楽への復帰。自分のやりたい音楽を貫いて生き残る人、皆の期待に応え続けることで生き残る人、そしてその中間でバランスをとりながら生き残る人、と様々なタイプのミュージシャンがいるが、彼は自分を自分で無くしてまで続けたくはなかったという事なのだろう。「裏切ったことで裏切らなかったこともある」という小沢健二の言葉は重い。

 

 そして、自分で納得できるからこそ、表舞台に帰還した。それは復帰作の「流動体について」の歌詞を見ても読み取ることが出来る。「ある光」の内容と呼応する部分もあって、作品の中に素直な気持ちを反映していく人だという事が良く分かる。

www.youtube.com

 

 小沢健二がネット上で公開して今は消されている文章なども紹介されていて、著者はよくそんなの保存していたなと感心してしまう。そういった数少ない文章やインタビューの断片から丁寧に様々な情報を読み取ろうとしていく姿勢に、このテーマに対する真摯さが感じられた。そして、小沢健二に対するリスペクトも伝わってくる。

 

 今後の小沢健二の活動は、これまでのようにどうなるか分からない部分は多分にあるが、本人の意向を尊重して、納得した活動をしてくれればいいなと思っている。そして、これは本人の意向に反することなのかもしれないが、シングルとして発表するも今は廃盤となって、アルバムにも入っていない曲たちを、再び音源化して気軽に聴けるようにしてくれると嬉しいのだが。

 

著者

宇野維正 

 

小沢健二の帰還

小沢健二の帰還

  • 作者:宇野 維正
  • 発売日: 2017/11/29
  • メディア: 単行本
 

 

 

登場する作品

岡崎京子 戦場のガールズ・ライフ

天才バカボン (10) (竹書房文庫)

near, far 二階堂ふみ写真集 (SPACE SHOWER BOOKs)

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ミルクチャンのような日々、そして妊娠!?―yoshimotobanana.com〈2〉 (新潮文庫)

ちびまる子ちゃん コミック 全17巻セット

エコロジスト宣言

三つのエコロジー (平凡社ライブラリー)

Ecology of Everyday Life: Rethinking the Desire for Nature

不都合な真実 (字幕版)

「うさぎ! 沼の原篇 ひふみよ限定版 2010年夏」 小沢健二

「算盤の書」 レオナルド・フィナボッチ

「おばさんたちが案内する未来の世界 Old Ladies' Guide To The Future」

ヘルタースケルター (FEEL COMICS)

老いと幼なの言うことには

 

 

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「素粒子」 1998

素粒子 (ちくま文庫)

★★★★☆

 

あらすじ

 母親を同じくしながら互いのことを知らずに育った兄弟のそれぞれの人生。

 

感想

 主人公は分子生物学者の弟。それと対比するように国語教師の弟の人生も描かれていく。 物語は彼らの祖父の人生を描くところから始まって、フランスらしい回りくどさだなと最初は思っていたが、どうやらこれは20世紀の人類の歴史を紐解くためだという事に途中で気づいた。

 

 考えてみれば20世紀は激動の時代で、人々の暮らしがこんなにも激変した100年は無かった。そして人々の考え方も大きく変化していく。特に主人公たちの生きた時代、20世紀後半は人々の意識の変化のスピードが著しく、彼らはそれにただ従って生きていくだけでも大変だった世代かもしれない。

 

 

 20世紀はそれまで人々が宗教や道徳の力で築いてきた動物ではない人間らしさというものに、いやいや、とはいってもやっぱり人間も動物だし、野蛮で欲望もあるし、すべてを我慢するのは辛いよ、と揺さぶりをかけた時代と言える。子孫を残すためだけに、結婚し子供をつくり、そして働くのではなく、もっと自分の欲望のままに人生を楽しんでもいいはずだ、と。

 

 人々が欲望を再び開放し始めて多くの人がそれを支持し、そのように生きようとした。しかし、だからといって皆が欲望を満たすことが出来たわけではなく、そこには格差が生じる。あらゆる欲望を満たし充実した人生を送る人がいる一方で、それを尻目にほとんど欲望を満たすことが出来ない、みじめな思いをする人もいる。

 

 当然、欲望を満たせない人の方が数が多いわけで、そのような人や、そのような価値観になじめない人にとっては、かつての結婚して子孫を残すという人生モデルが一般的だった時代よりも苦悩は大きくなる。かつてのやり方のすべてが良かったというわけではないが、良かった面もあったとはいえるだろう。いわゆる保守の人間が重視する側面だ。

 

人生がこれほど限られたもので、可能性なんかたちまち消えてしまうだなんて、十七歳のころには想像もつかなかった。

 単行本 p302

 

 そして、欲望を満たし充実した人生を送っていた人でさえ、いつかは老いを迎える。つまりほぼ全員がいつかは人生に行き詰ってしまう。ではどうするか。もはやスマホのない生活に戻ることは不可能なように、かつての生活に戻ることは出来ないだろう。ただ前に進むしかない。そして本書が導き出した結論、突然明らかになったSF的展開に驚いてしまった。

 

 基本的に面白い物語なのだが、時々差し挟まれる生物化学や哲学の話が少し難解でしんどかった。でもそれがこの結末のための伏線だったとは。上手く構成された小説だ。結末で導かれた世界は、果たしてそれはそれで素晴らしい世界なのか、色々と考えてしまう。

 

著者

ミシェル・ウエルベック

 

素粒子 (ちくま文庫)

素粒子 (ちくま文庫)

 

素粒子 (小説) - Wikipedia

 

 

登場する作品

部分と全体―私の生涯の偉大な出会いと対話

素直な悪女 HDニューマスター版 [DVD]

「犬のピフ」 アルナル

「五人のクラブ」 ブリトン

ヘアー [DVD]

吸血鬼ノスフェラトゥ 《IVC BEST SELECTION》 [DVD]

審判 (岩波文庫)

クロイツェル・ソナタ (岩波文庫 赤 619-5)

「実証主義哲学講義」 オーギュスト・コント

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時計じかけのオレンジ (字幕版)

バルスーズ [DVD](ヴァルスーズ)

エマニエル夫人 [DVD]

クオ・ワディス〈上〉 (岩波文庫)(クオ・ヴァディス)

Les Six compagnons et l'homme au gant(六人の仲間と手袋の男)」

「小さな人魚」

「水夫の歌」 フレール・ジャック

「保守主義者への訴え」 オーギュスト・コント

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What Dare I Think(私が敢えて考えること)」

「最良の世界への回帰」 オルダス・ハックスレー

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Le mystère des saints Innocents (French Edition)(聖なる嬰児の神秘劇)」

「奇妙な孤独」 フィリップ・ソレルス

女たち〈上〉 (河出文庫)

失われた時を求めて(5) 第3篇 ゲルマントの方 1(ゲルマンとの方へ)」

「ポエジーⅡ」 ロートレアモン

「Le vrai visage des seniors(シニアの真の顔)」 コリンヌ・メジー

Synthèse subjective, ou Système universel des conceptions propres à l'état normal de l'humanité ... Tome premier, contenant le Système de logique positive, ... mathématique Volume 1 (French Edition)(主観的綜合)」

ケルズの書――ダブリン大学トリニティ・カレッジ図書館写本

 

 

関連する作品

映画化作品 

素粒子 [DVD]

素粒子 [DVD]

  • 発売日: 2007/11/21
  • メディア: DVD
 

 

 

この作品が登場する作品

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「『男はつらいよ』50年をたどる。」 2019

『男はつらいよ』50年をたどる。

★★★☆☆

 

内容

 国民的映画「男はつらいよ」の50年を振り返る。

 

感想

  山田洋次が監督になるまでの半生が書かれていて、戦前戦中は満州で運転手やお手伝いさんがいるような裕福な暮らしをし、戦後は一転して日本で貧しく苦しい生活を送ったというのは知らなかった。学者先生や日本画の大家、お殿様といった偉いとされている人たちに、寅さんが気さくに話しかけてすぐに仲良くなってしまうというのは、シリーズでよく見られる個人的に好きなシーンなのだが、これは監督のそういった生い立ちが影響しているのかもしれない。

 

 金持ちというだけで皆が勝手に遠慮して距離を取るので寂しい思いをしたり、貧しいからというだけで人々に顧みられない悲しい思いをしたり、といった両方の立場を経験したことで、人間には立場や身分なんてものは無く、誰とでも対等に接するべきだという信念が生まれたのかもしれない。

 

 

 そして、シリーズで個人的に少し苦手ないわゆる尾籠な話、糞尿譚が良く出てくるのも、監督の貧しい時の体験から来ているという事が良く分かった。貧しく苦しい時でも笑いがあれば何とかやっていける。そしてそんなときに彼らが笑いの材料にするのが下ネタ。庶民の笑いには不可欠なネタという考えから来ている。確かに全世界で通用するネタと言える。

 

 寅さんのプラトニックな女性観もどう判断するべきか迷うところではあるが、著者が言うように世知辛い世の中に現れた一人の高僧、みたいに捉えると納得できる部分はある。人々が悩んだり争ったりしているところに現れて、新たな視点を与えたり、忘れてかけていた原点を思い出させる。もはや普通の人とは違う地平線に立っている人。そんな人が女性と常に一定の距離を保つというのはあり得るかもしれない。

 

 読んでいると、寅次郎は渥美清のキャラクターあってのものではあるが、やはり監督である山田洋次の分身なのだなと強く感じるようになった。マンネリだなんだと時に批判されながらも、それでも常に一定のレベルを保って作り続けられたのは、本当に驚異としか言いようがない。

 

 興味深く面白い本ではあるが、タイトルから勝手に予想したような、第一作目から映画や制作現場で起きた出来事や変化を順に辿っていくというような内容ではなかった。著者はほぼ山田洋次と同年代で、映画の制作現場にも出入りしていたようなので、監督や渥美清だけでなく、他の出演者や現場の人たちの様子や声なども聞きたかった。

 

著者

都築政昭 

 

『男はつらいよ』50年をたどる。

『男はつらいよ』50年をたどる。

 

 

 

登場する作品

映画館(こや)がはねて (中公文庫)

映画をつくる (国民文庫 840)

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運が良けりゃ

「意地のすじがね」 北島三郎

男はつらいよ 寅さん読本―監督、出演者とたどる全足跡

宮本武蔵(1) (吉川英治歴史時代文庫)

「怪談宋公館」 火野葦平

新装版 渥美清 わがフーテン人生

寅さんの教育論 (岩波ブックレット NO. 12)

「世界の映画作家14」 キネマ旬報社

寅さん、ありがとう!!「それを言っちゃあ、おしまいよ!!」―渥美清よ永遠に

ローマの休日(字幕版)

喧嘩辰  (MEG-CD)

家族

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故郷

同胞(はらから)

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*「桜の園」

「少年講談全集」 大日本雄辯會講談社編

源氏物語(1) 現代語訳付き (角川ソフィア文庫)

好色一代男 (中公文庫)

津軽

東海道中膝栗毛 上 (岩波文庫 黄 227-1)

日本映画の現在 〜講座日本映画 (7)

可愛い女(かわいい女)」

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男はつらいよ 2 (立風寅さん文庫)

戦争と平和 (一) (岩波文庫)

卒業 デジタル修復版(字幕版)

山田洋次作品集 (8)

「白蘭の歌」

「路傍の石」 監督 田坂具隆

「落語全集」 大日本雄辯會講談社

マッチ売りの少女 【日本語/英語版】 きいろいとり文庫bookcites.hatenadiary.com

二階の他人

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<あの頃映画> あの橋の畔で 第一部 [DVD]

九ちゃん音頭 [DVD]

 「庭にひともと白木蓮」  藤原審爾

「観客はいつも先生だ」 マガジンハウス

いいかげん馬鹿

馬鹿が戦車(タンク)でやって来る

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野良犬

静かなる決闘

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白痴1 (光文社古典新訳文庫)

白痴

若き実力者たち

一握の砂

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 「病める俳人への手紙」 柳田國男

高倉健インタヴューズ: 日本で唯一の貴重なインタヴュー集 (小学館文庫プレジデントセレクト)

ロビンソン漂流記(新潮文庫)

クオレ物語 (世界名作童話全集 55)

小公子 (岩波少年文庫)

学校

学校Ⅱ

 

 

登場する人物

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関連する作品

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「嘔吐」 1938

嘔吐 新訳

★★★☆☆

 

あらすじ

 世界中を旅した後、フランスの港町に居を構え、ある人物の伝記を書くために図書館に通う男。 

 

感想

  金に不自由せず、ただ自分の関心のままに図書館に通い、ある人物のことを調べる主人公の日々が日記形式で綴られていく。劇的な出来事はほとんど起こることなく、主人公の思索がメインとなっている。

 

 その思索から見えてくるのは、主人公が感じている人生への希望の無さ。世界中を旅したがそれは振り返ることでしか物語とならない。つまり人生を前を向いて歩いている時は何でもなく、それを振り返った時にあれは冒険だったと思うだけ。それならば前を向いて生きているときはただ生きているだけでしかないという事で、そこにどんな希望を持てばいいのだろうか、という考えだ。

 

 

 世の多くの人はそんなことを考えもせず日々を生きているわけで、こんなことを考えなければ気が済まない人は大変だなと思ってしまう。そしてそれをすることで人生に希望を失ってしまうなんて、思考能力が高いのも考え物だ。生活に追い立てられておらず、ある意味で暇を持て余しているからともいえるのかもしれない。

 

 そんな感じで暗く物悲しいトーンが続き、そのまま終わっていくのかと思いきや、最後に主人公の中に希望の光が灯り、突如ポジティブな雰囲気が満ちる。なので、わりと読後感は悪くない。

 

 本文の内容は難解ではあるが、かといって手も足も出ないというほどではなく、それが逆に、分かるようで分からないというもどかしさを感じさせられてしまった。正直、あまり理解できなかったというのが本当の所だが、最後の訳者による解説がかなり理解の助けになった。

 

 余生のように残りの人生をあきらめて生きようとしていたが、自ら物語る作品を作るためであれば生きる意義があるのではないかと気づき、希望が生まれた、という事か。

 

著者

ジャン=ポール・サルトル

 

 鈴木道彦

 

嘔吐 新訳

嘔吐 新訳

 

嘔吐 (小説) - Wikipedia

 

 

登場する作品

教会―五幕劇 (1981年)

Some of These Days

マスカーニ:歌劇《カヴァレリア・ルスティカーナ》

純愛―ウジェニー・グランデ (角川文庫)

「泥炭と泥炭層」 ラルバレトリエ

「ヒトパデーシャまたは有益な教え」

「コードベックの矢」 ジュリ・ラヴェルニュv

「青空(ブルースカイ)」

「ケーニヒスマルク」 ピエール・ブノワ

「わが息子たちへの書」 ポール・ドゥーメル

パルムの僧院〈上〉 (岩波文庫)

「皇帝ジョウンズ・毛猿 (1953年) (岩波文庫)(皇帝ジョーンズ)」

ブリタニキュス (1957年)

フランス史 1 〔中世(上)〕 (フランス史(全6巻))

「皇室の菫(すみれ)」 アンリ・ルーセル

霊操 (岩波文庫)

 

 

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「優雅で感傷的な日本野球」 1988

優雅で感傷的な日本野球 (河出文庫)

★★★☆☆

 

あらすじ

 図書館に通い、本の中の野球に関する文章を書き写す男。

 

感想

  1985年優勝当時の阪神の選手たちが多数登場し、おかしなことを言ったり、精神病院に収容されたり、アダルトビデオの男優になったりと、無茶苦茶なことになっていて、問題はなかったのかと心配してしまった。

 

 そんな風でふざけたというか、人を喰ったような内容なのだが、哲学的だったり不条理だったり、抽象的だったりでなかなか難解。面白みのあることを書いているのは理解できるのだが、楽しめないのは読み手のレベルが問題なのだろう。ただ、時代が違うというのも大きいはず。多分これは狙っていると思うのだが、阪神の優勝で湧いたあの当時の人々が、そのとき読むことだけを想定しているような気がする。

 

 

 7つの章に分かれていて、それぞれが独立したような断片的な内容のように思えるのだが、最後まで読んでみるとなんとなくつながりがあることが分かってくる。時系列を意識して読み直してみると、あの章に登場するあの人物はバースで、この人物は掛布だったのか、というのが分かってちょっと面白い。

 

 ただそれでもやっぱり良く分からない、というのが素直な感想だ。

 

著者

高橋源一郎 

 

優雅で感傷的な日本野球 (河出文庫)

優雅で感傷的な日本野球 (河出文庫)

 

優雅で感傷的な日本野球 - Wikipedia

 

 

登場する作品

博物誌

にんじん

We Are The World

プロレゴメナ (岩波文庫)

純粋理性批判 1 (光文社古典新訳文庫)

「実体の本性および実体の交通ならびに精神物体間に存する結合についての新説」 ライプニッツ

単子論 (岩波文庫 青 616-1)

北斗の拳 1巻

残酷物語 (筑摩叢書)

明日なき暴走

政治的ロマン主義 (始まりの本)

〔新装版〕 現代政治の思想と行動

チャンチキおけさ

近代経済学の史的展開 軽装版―ケインズ革命以後の現代資本主義像

新版 資本論 第1分冊

ライ麦畑でつかまえて―The catcher in the rye (講談社英語文庫) (Kodansha English library)

東方見聞録 1 (平凡社ライブラリー326)

La description du monde. texte intégral en français moderne. par marco polo(世界の叙述)」

 

 

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「地図と領土」 2010

地図と領土 (ちくま文庫)

★★★★☆

 

あらすじ

 現代アートに偉大な功績を残したアーティストの生涯。

 

感想

 一人のアーティストの人生が、時おり評伝風の文章も織り交ぜながら語られていく。凄いのがその架空の芸術家が生み出す作品の描写。当然存在しないものなので見たこともないのに、ありありとそれを思い浮かべることが出来る。地図を撮影した写真とか、実在の人物をモチーフにした絵画など、ありそうではあるが凡庸ではなく、評価の高い芸術家だという事にリアリティをもたらしている。

 

 あまり人と関わろうとせず、恋愛や家族にも大きな関心を持たなかった主人公。裕福ではあるが恵まれない家庭環境に育ったせいもあるのかもしれない。そしてそんな彼が唯一興味を持てたのがアート。アートというよりも自己表現といった方がいいかもしれない。人間は金のために動くと言っても限度があって、そこに情熱がなければ心を失っていく。彼の父親がその代表と言えるだろう。

 

 

 主人公の人生には普通にアートがあり、苦労することなく自然と主題が見つかり、新たな作風へと移っていくのが印象的だった。彼に才能があり、それで莫大な富を得たから無理をしなくてよかったともいえるが、もしそうでなくても細々と活動を続けていたような気がする。

 

 そして、話の中に登場するのが著者ウエルベック当人をはじめ、実在のフランスの著名人たち。本人はともかく他の実在の人物たちを登場させて問題は起きなかったのだろうか。さすがにとんでもない事件は、自分自身に起きたことにしているが。実在の人物を登場させることで物語にリアリティを持たせ、その上で自身の姿勢を表明しようとしたのかもしれない。主人公は彼に親しみを覚えていた。

 

 アートの重要性に気づいているのはもちろん主人公だけではない。その表れが世間の田舎への関心の高まりだろう。金のために人間味の薄い仕事をしなければならない都会を離れて、自分らしさを大事にした仕事や生活をしようとする動き。

 

 事件を担当した刑事は、そんな彼らとは正反対に思えるが、彼でさえ、つまらない動機ばかりの事件の中にも、どこかにアート的なものがあるのではと、密かに期待する部分もあった。アートなんて無縁と思っていても、実際はどこかで求めている。人間になくてはならないものなのなのだろう。そしてそれが無ければ人間ではなくなってしまうものでもあるのかもしれない。

 

 いつものウエルベック作品よりは刺激の少ない作品ではあったが、いつものように読み応えのある内容だった。

 

著者

ミシェル・ウエルベック

 

地図と領土 (ちくま文庫)

地図と領土 (ちくま文庫)

 

 

 

登場する作品

「Au secours pardon(助けて、ごめんね)」 フレデリック・ベグベデ

 「Le Blues Du Businessman(ビジネスマンのブルース)」

リュクサンブール公園

やあ、恋人たち

A French Novel (English Edition)

¥999 BOOK PLUS

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Le Sens du combat - Prix de Flore 1996(闘いの意味)」

La poursuite du bonheur(幸福の追求)」

Renaissance(ルネサンス」

 「La France m'épuise(フランスにはうんざり)」 ジャン=ルイ・キュルティス

「La Quarantaine (四十歳)」 ジャン=ルイ・キュルティス

「Le Jeune couple(若いカップル)」 ジャン=ルイ・キュルティス

物の時代 小さなバイク「物の時代」

フリッツ・ラング コレクション/クリティカル・エディション ドクトル・マブゼ [DVD]

ビル・ゲイツ未来を語る

お生まれだイエス様が

La France des saveurs(味わいのフランス)」

「La France en fêtes(祭りのフランス)」 ジャン=ピエール・ペルノ

Pour tout vous dire...(われらが地方のただなかへ)」

Les magnifiques métiers de l'artisanat(素晴らしき職人仕事) 全2巻」

フランス二月革命の日々―トクヴィル回想録 (岩波文庫)

アメリカのデモクラシー (第1巻上) (岩波文庫)

The Return of Don Quixote(ドン・キホーテの帰還)」

ブラウン神父の童心【新版】 (創元推理文庫)

オーレリア―夢と生

守護天使への祈り

Spirou und Fantasio: Schuber: Spirou und Fantasio von Franquin(Spirou et Fantasio)」

論理哲学論考 (岩波文庫)

 

 

この作品が登場する作品 

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「何が私をこうさせたか 獄中手記」 1931

何が私をこうさせたか――獄中手記 (岩波文庫)

★★★★☆

 

内容

 大逆罪で死刑となって服役中に自殺した大正時代のアナキスト・金子文子が、自身の生い立ちをつづった獄中手記。  

金子文子 - Wikipedia

 

感想

 まず、金子文子の手記を出版した関係者による冒頭の前書きの内容がグロい。獄死した文子の遺体を掘り起こし、改めて火葬をするくだり。当時の死んだ囚人の扱いはこんな感じだったのか、それとも大逆罪という罪の重さゆえなのか。

 

 獄中で書かれたこの手記は、物心ついたころから始まる彼女の半生が綴られている。時々、これは手記なのだ、と言い聞かせないと勘違いしてしまいそうなほど、小説的で面白い。文章も読みやすく、頭の良い人だということが伝わってくる。上手く手直しされているのかもしれないが。

 

 

 そしてその内容は、話を盛り過ぎて逆にリアリティがない小説のようで、かなり過酷だ。父親は母親の妹と暮らすようになり、母親は次々と男を変えていく。無籍なので正式に学校にも通えない。金に困った母親に売り飛ばされそうになったり、朝鮮に渡った親戚に引き取られるも下女以下の扱いを受けて虐げられたりと、苦しみしかない。

 

 特に朝鮮でのエピソードが酷過ぎる。世継ぎとして引き取られるも見切りをつけられ、祖母・叔母の吝嗇と見栄のために苦しめられる。外では、良家の人間だから貧乏人と遊んでは駄目、出歩いては駄目と禁止され、内では奴隷同然に働かされ自由は何もない。もっと酷いエピソードもあるが、書いたところで信じてもらえないから書かない、と言っているのが恐ろしい。これ以上何をされたのか想像もできない。

 

 遂には苦しみから逃れるために遂には自殺を決行しようとする文子だが、何とか踏みとどまる。

 

祖母や叔母の無情や冷酷からは脱れられる。けれど、けれど、世にはまだ愛すべきものが無数にある。美しいものが無数にある。私の住む世界も祖母や叔母の家ばかりとは限らない。世界は広い。

p172

 

 極限の状況でこういう考えが出てくるのが凄いが、それでも間一髪だった。数々の巡り合わせが悪ければ、ここで彼女の人生が終わっていても不思議ではなかった程だ。そしてその後も彼女の苦しい生活は続く。

 

 ただ、きっと彼女の味わった苦しみというものは、この貧しい時代に多くの人が味わった事なのだろう。決して彼女が特殊だったわけではないはずだ。そして多くの人はその苦しみを甘んじて受け、ただひたすら耐えて人生を終えていったのだろう。彼女だって母親と同じような人生を歩む可能性だってあったかもしれない。ちなみに「おしん」もほぼ同時代の物語。

24回 少女編

24回 少女編

  • メディア: Prime Video
 

 

 それでも彼女がそうならなかったのは、周囲に流されない強い意志と行動する情熱があったからだろう。そして様々な困難を乗り越えながら、なんで自分はこんなに苦しまなければいけないのだろう、同じように苦しんでいる人たちを助けたい、と考えるようになるのは自然の事なのかもしれない。人によりそれが宗教だったり、教育だったりへと向かわせるのだろうが、彼女はそれがたまたま政治であり、アナキズムだけだったような気がする。

 

 そして大逆事件で同じく死刑を言い渡された夫・朴烈と出会い、いよいよ激しい活動の様子が描かれていくのかと思ったら、そこで終わっていていささか拍子抜けした。もともとは裁判に提出するために書かれたので、その詳細を書くと関係者に危険が及ぶからというのが理由のようだ。

 

 二人が付き合い始める時に、「独身ですか?」から始まり、思想や主義をひとつずつ文子が確認していく場面は、活動家らしいと言えばらしいが、生真面目でなんだか可愛らしかった。

 

著者

金子文子

 

何が私をこうさせたか――獄中手記 (岩波文庫)

何が私をこうさせたか――獄中手記 (岩波文庫)

  • 作者:金子 文子
  • 発売日: 2017/12/16
  • メディア: 文庫
 

 

 

登場する作品

告白 上 (岩波文庫 青 622-8)(「懺悔録」)

「労働者セイリョフ」

「死の前夜」

麺麭の略取 (岩波文庫 青 125-3)

 

 

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「三の隣は五号室」 2016

三の隣は五号室 (中公文庫 (な74-1))

★★★★☆

 

あらすじ

  東京郊外のアパートのある部屋の歴代の住人たちの物語。

 

感想

 まず設定が面白い。あるアパートの一室に焦点をあてた物語。歴代の住人、13組が登場する。ただし時系列に沿って歴史を語るのではなく、時間を行ったり来たりしながら住人たちのエピソードが語られていく。

 

 考えてみればアパートやマンションの同じ部屋の歴代の住人というのは、共通の話題があるので集まってみれば話が盛り上がりそうだ。あの部屋の障子の開け閉めはコツがいるとか、風呂の水が微妙に漏れるとか。隣人や近所の様子なども話題にすることが出来るだろう。なのに当人たちはまず顔を合わすことはないわけで、何かもったいないような気がする。

 

 

 

 様々な歴史がアパートに刻まれていき、少しずつ変更も加えられていく。住人達もそれを感じていて、きっと前の住人がこんな意図で変更を加えたのだろうと勝手に想像している。だけど実は全然違う意図だったり、前の住人ではなく前の前の住人の仕業だったりするのだが、当人たちはそんな事は分からないので勘違いしたまま、別に困ることなく暮らしている。よくある話だが、真実を知っているとなんだか滑稽で面白くもある。

 

 歴代の住人たちそれぞれのエピソードや住人間の同じようなエピソード、引っ越し初日や風邪を引いた時などある出来事に関するそれぞれのエピソードと次々と語られていく。時代は違うが同じ場所で、様々な年齢・性別・国籍の人たちが、それぞれ同じことを考えたり、同じことに対して違うことを考えたりとしている様子を見ていると、人間は同じようで違って、違うようで同じなのだなと、だんだんと達観するような気持になってきた。

 

 長い間住んだ夫婦が転居の準備をしている時に、入居した時と同じシチュエーションに遭遇して当時を思い出し、だけどその時より相手の顔が随分老けたなとしみじみと感じるシーンはなかなか感慨深かった。普段は何も意識していないが、ふとした瞬間に時の流れに気づく。

 

 50年にわたるアパートの物語を、その時々の流行や世相、風俗を取り入れて描かれているのも面白い。しかも誰もが覚えている事ではなく、少しマイナーなものを取り上げているのもいい。

 

睡眠と風邪薬との間の効き目の差は、マクラーレン・ホンダとミナルディ・コスワース間の周回遅れくらいある。

p66

 

 この例えはどれくらいの人間が分かるのだろうかと思ってしまうのだが、でもそれがいい。その他にも、時代による蛇口の変遷など、誰も気にも留めず見過ごしてしまっていそうなことが丁寧に描かれている。大きな変化だけではなく小さな変化の積み重ねもその時代を形作っている要因だ。

 

 そしてきっとそれは人生も同じで、何をしていたか忘れてしまうような一日だってかけがえのない人生の一部だ。そんな日を軽んじないで大事に生きることが重要なのかもしれない。

 

 

著者

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三の隣は五号室 (中公文庫 (な74-1))

三の隣は五号室 (中公文庫 (な74-1))

  • 作者:長嶋 有
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2019/12/19
  • メディア: 文庫
 

 

 

登場する作品

ティーン・ウルフ [DVD]

雨音はショパンの調べ[EPレコード 7inch]

マイ・メランコリー・ブルース

We Are The Champions

ラスト・ボーイスカウト [DVD]

21エモン(1) (てんとう虫コミックス)

時の過ぎゆくままに

ホテル・カリフォルニア

トラック野郎 御意見無用 [DVD]

One

One

ドラえもん(1) (てんとう虫コミックス)

 

 

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「マイ仏教」 2011

マイ仏教 (新潮新書)

★★★☆☆

 

内容

 著者が仏教に興味を持った経緯や関わり、著者なりに理解した仏教が語られる。

 

感想

 まず著者と仏教の関係が描かれる。最初は仏像から入り、次第に教義などにも興味を示していく。京都育ちという地の利もあるが、彼をマニアックに突き詰めていくスタイルへと導いたのは、祖父の存在が大きいのだろう。いくら凝り性とはいえ子供では出来ないことや分からないことはたくさんあるはずで、普通はそこで終わってしまうところを、祖父がさらなるステージへと導いている。

 

 良いか悪いのかは別として、こういうメンター的存在がいるかいないかは大きく影響するような気がする。メンターにより様々な可能性が示唆されれば、それを知りたいという欲求はさらに大きくなっていく。昔は身近にこういう人がいることが重要だったが、今ならネットがその代わりを勤めることになるのだろうか。

 

 

 仏像好きから始まって教義にも関心を持って、どん欲に知識を吸収していく著者。この辺りは本当に好きこそものの上手なれで、好きだからこそ苦も無く出来るのだろう。そしてそこからの発見がマイブームになったり、マイブームの中にブッダの教えを見たりの相乗効果が生まれている。

 

 ブッダの教えだからと単純に無条件に受け入れるのではなく、そこには常に自分の見方が入っている事が好感が持てる。仏教を宗教というよりも哲学として見ているということだろう。「悟りの境地に達したい」ということ自体は煩悩ではないのか?というような疑問がところどころに挿入されていて、対話をしている印象だ。

 

 語られている様々なオリジナリティあふれる仏教的な取り組みの中では、他人の機嫌を進んで取るという「修行」が興味深い。とにかく相手の機嫌を取ることで相手は間違いなく気分が良くなるし、自分も、なんで自分が、みたいな変なプライドに固執しなくなる。そして自分の周りの皆が機嫌が良ければ、必然的に自分も過ごしやすくなる。まわりに幸せを与えて自分も幸せになるという素敵な世界だ。

 

 逆にまず自分が常にご機嫌でいるというのも結構な苦行かもしれない。細かなことにイライラせずにずっとニコニコしているのはかなり大変そうだ。でも人は苦虫を噛みつぶしたような険しい顔をしている人よりも、ニコニコしている人の方が話しかけやすい。こちらも結果的にまわりに人が集まり、こちらのご機嫌さが相手にも伝染して皆がご機嫌という世界になりそうだ。「北風と太陽」の太陽のように。

きたかぜとたいよう (イソップえほん5)

きたかぜとたいよう (イソップえほん5)

  • 作者:蜂飼 耳
  • 出版社/メーカー: 岩崎書店
  • 発売日: 2011/03/04
  • メディア: 単行本
 

 

 読んでいて思うのは、みうらじゅんという人は、常に自分をプレゼンしているなということだ。こんな変なマイブームで面白がっている自分を面白がってもらおうというスタイル。だからその変なマイブーム自体にはあまり興味がなくても、それを面白がって語っている彼の話をついつい聞きたくなってしまう。本人も言っているが、きっとまわりが思うほどお気楽にできることではないはずだ。

 

 仏教に限らず様々な宗教を、信仰としてではなく哲学として学んでみるのは悪くないかもと思わせてくれる本だった。

 

著者

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マイ仏教 (新潮新書)

マイ仏教 (新潮新書)

  • 作者:みうらじゅん
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2012/07/01
  • メディア: Kindle版
 

 

 

登場する作品

見仏記 (角川文庫)

アウトドア般若心経

We Are The World

愛の偶像 (ラブ・アイドル)

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フランケンシュタイン対地底怪獣(バラゴン)

邪鬼の性 (1967年)

お堂で逢いましょう―みうらじゅんの仏画集〈上〉

生きている仏像たち―日本彫刻風土論 (1970年) (読売選書)

 「瓦の美」

心―いかに生きたらいいか

道―本当の幸福とは何であるか (徳間文庫)

パッチギ!

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Imagine

イマジン (2010 Digital Remaster)

イメージの詩

結婚しようよ

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Watching the River Flow (Single Version)

マイ・スウィート・ロード

オール・シングス・マスト・パス

「君は千手観音」

岩波 仏教辞典 第二版

往生要集  合本版全3巻

「正法念処経」

現代語 地獄めぐり―『正法念処経』の小地獄128案内

テンペスト―シェイクスピア全集〈8〉 (ちくま文庫)

ゴッド(神) (2010 Digital Remaster)

スッタニパータ [釈尊のことば] 全現代語訳 (講談社学術文庫)

千の風になって

「アングッタラ・ニカーヤ」(「ブッダの道」 )学研

夢の中へ (2017 Remaster)

人間なんて

 

 

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「こちらあみ子」 2011

こちらあみ子 (ちくま文庫)

★★★☆☆

 

あらすじ

 母親が自宅で運営する書道教室に通う男の子を好きになった女の子。他2編。

 

 

感想

 表題作の「こちらあみ子」。まずは構成が上手い。現在から小学生に戻ってそこから中学卒業までを描き、一旦小学生以前にさらに遡ってから現在に戻ってくる。小中学生時代の主人公に何となく不可解さを感じていたのだが、さらに過去を遡ったことで知らなかった事実が判明し、少し理解できたような気になる。

 

 ただこれも理解できたような気になるだけで、明確な事はあまり分からないのだが、それが色々と想像力を刺激する。この少し曖昧な感じも悪くない。

 

 

 小中学生時代の主人公。カレーを手で食べるとか、気が向いたら学校へ行き好きな時間に帰ってくるとか、風呂に入らないとか、その言動を知るたびにおいおい大丈夫か?とどんどん不安になってくる。家族も腫れ物に触るようにして、彼女に怒ったりしない。

 

 でもええのう。なんか、自由の象徴じゃのう。ま、いじめの象徴でもあるけどの

p74

 

 ただそのうち主人公の言動に爽快感を感じ出している自分に気づく。もしかしたら囚われずに生きるというのはこういう事なのかもしれないとすら思えてきた。自分が好きなように生きていると周りと軋轢を生むが、彼女は彼女に対するいじめのような反応ですら全く意に介さない。なんでこんなことをするのだろうと、ただぼんやり考えるだけだ。

 

 きっと、それと立ち向かおうとする事ですら、まだ外野に囚われているということなのだろう。相手の自分に対する意志は何であれ徹底的にスルーして、ただ自分の意志だけを大事にして貫き通そうとする。小中と自分に声をかけ続けてくれた男の子に対して、一切情に流されず、一貫してつれない態度を取り続ける姿に少し感動してしまった。相手は気にかけてくれるが、自分は相手に興味がないからそれには1ミリも顧みる気はない、という徹底した態度。

 

 もう何が正解なのだか分からなくなるくらい価値観が揺れまくって、ハッピーエンドかどうか判断がつかない終わり方だったが、主人公はこの先も強く生きていくのだろうなと思える結末。そして自分もこんな感じで生きていけたらいいなとポジティブで痛快な気分になった。

 

 残る2編の小説は悪くはないのだが、「こちらあみ子」を読んだ興奮がクールダウンしてしまうような感じでだいぶテンションが下がってしまった。

 

著者

今村夏子 

 

こちらあみ子 (ちくま文庫)

こちらあみ子 (ちくま文庫)

  • 作者:今村 夏子
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2014/06/04
  • メディア: 文庫
 

 

 

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「そして誰もいなくなった」 1939

そして誰もいなくなった (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

★★★★☆

 

あらすじ

 無人島に呼び寄せられた様々な経歴を持つ10人が、次々と殺されていく。

 

感想

 様々な理由をつけて無人島に集められた10人の男女。最初は各人物の把握が大変だが、まんべんなく程よく紹介されていくのでそこまで苦労はしない。

 

 集められた10人が予言通りに何者かに殺されていく。彼らが殺される理由も述べられながらテンポよく死んでいくので、正直、犯人探しをするというよりも次はどうなるのかという興味の方が強く、どんどんと読み進めてしまう。

 

 

 そしてこんな奇妙な設定であるにもかかわらず、物語の進行にほとんど不自然さや無理を感じさせないのがすごい。人々がこれは連続殺人だと気づき、犯人探しをしたり、互いに疑心暗鬼になったり、さもありなんという行動だ。

 

 ただ敢えて言うならば「十人の小さな兵隊さん」という詩になぞらえて一人ずつ殺されていっているのだから、もうちょっとこの詩を気にかけろよ、とは思わなくもない。詩を読めば次にどんな殺され方をするのかは、ある程度想像がつくはずなのだから。ただ、実際に「詩にヒントがある」とか真面目な顔してやっていたら、推理小説の読みすぎと言われてしまいそうだが。

 

 最終的に全員が死んでしまうまで犯人が全く明らかにされないという構成もうまい。タイトル通り、そして誰もいなくなった…という感じがよく出ている。駄目な推理小説だと真相が明らかになると逆に穴だらけでがっかりしてしまうこともあるが、ちゃんと納得できる種明かしだった。最後の一人の殺人方法がちょっとどうかな、と思わないでもないが、上手くいかなかった場合でもまだ別の手段をとれたはずなので、納得できる。古さを感じさせず、長い間読み継がれているの納得の作品だ。

 

 ところで、本書の冒頭には著者の孫による序文が寄せられているのだが、そこで小説の大体のあらましが述べられていて、読む前はあまり事前情報を入れたくない自分としては、いきなりかなりがっかりさせられてしまった。有名な古い作品だから、読んだことがなくても大体の筋は皆知っているでしょうということなのかもしれないが、出来れば巻末にしてほしかった。それでも楽しめたのだからやはりすごいのではあるが。

 

著者

アガサ・クリスティー

 

そして誰もいなくなった (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

そして誰もいなくなった (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

 

そして誰もいなくなった - Wikipedia

 

 

関連する作品

映画化作品

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「私とは何か 「個人」から「分人」へ」 2012

私とは何か――「個人」から「分人」へ (講談社現代新書)

★★★★☆

 

内容

 社会との関係を「個人」という単位で考えていることが、我々を苦しめているのではないかと考え、新たな単位「分人」で捉える「分人主義」を提案する。

 

感想

  仮面をつけた自分だとか、本当の自分だとか考えるから人は苦しくなる。様々な場面で見せる自分はすべてが本当の自分だと認めて、それぞれを「分人」として考えよう、という考え方はすんなりと理解できる。

 

 嫌いな上司に愛想笑いを浮かべている時の自分も、友人と馬鹿笑いしているときの自分も全部本当の自分で、上司や友人とそれぞれ接するときの「分人」になっているという考え方。そもそも本当の自分、偽っている自分と考えるからおかしなことになる。どの自分も本当の自分に決まっているのだ。それらが合わさったものが自分の個性となっている。

 

 

 この分人主義を意識することは、様々な利点がある。たとえば自分のことが嫌いで自分を変えたいと思ったとして、個人主義の考え方であれば自分を丸ごと一新しなければならないが、分人主義であれば好きになれない「分人」になる相手や状況を減らし、好ましい「分人」になる機会を増やし大切にしていけばいい。自分の分人の構成の具合が個性なので、その構成比率を変えるだけで個性を変えることができる。なんとなく気が楽になる。

 

しかし、分人が他者との相互作用によって生じる人格である以上、ネガティブな分人は、半分は相手のせいである

p101

 

 そして、上記のような考え方も面白い。一見、身勝手な感じがするが、良い関係も悪い関係もそうだとすれば、自分に関わる人たちの事を自分のことのように考えられるようになる。身近な誰かの良い事も悪い事も、自分の分人が何らかの影響を与えているわけだから他人事ではない。自分は関係ないと言い切れてしまう個人主義とは全く違う視点になる。

 

 分人には、どんな人とも折り合いよくやれるような社会的な分人、店員と客、上司と部下のようなグループ向けの分人、そして家族や友人のような特定の相手に向けた分人と、それぞれの段階があると紹介される。

 

 読んでいて思ったのはコミュニケーションがうまくいかない人は意外と社会的な分人が上手く機能してないのかも、という事だ。本当の自分を見てくれと言わんばかりにステップを無視して、いきなり特定の相手に向けた分人で人と接しようとする。社会的な分人でいるつもりの相手は戸惑ってしまうだろう。コミュニケーションの問題は、どの段階に問題があるのか、一つずつ確認するということも大事なのかもしれない。

 

 居心地のいい分人やポジティブな気分になれる分人を増やしていけば、自然と自己肯定感の高い人間になれるし、いい人生を送れるようになる。付き合う相手を選びましょうということでもあるが、劇的なことをしなくても緩やかに変わっていくことができるというのは心強い。

 

 しかしそう考えると、公的活動の場でもあり、愚痴をこぼしたり噂話をする居酒屋のような場でもあり、趣味の場であり便所の落書き的な場でもあるネットの世界というのは、どのような分人でいるべきか、設定が難しい場なのかもしれない。ネット全体に対する分人というものを作ったとしてもそれは間違いなくつまらない分人になっているはずだし、公用、趣味用、愚痴用と複数の分人を設定したとしても、それに対するのはすべてがごった煮になった相手なので正しく分人が機能するとは思えない。分人主義についてはまだまだ考察するべきことがたくさんあるのかもしれない。

 

 それから、この本では著者のこれまでの小説が分人主義の視点からそれぞれ解説されているので、過去の作品を読んで来た人には、さらにそういった部分で興味深く読むことができるはずだ。

 

著者

平野啓一郎

 

私とは何か――「個人」から「分人」へ (講談社現代新書)

私とは何か――「個人」から「分人」へ (講談社現代新書)

  • 作者:平野 啓一郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2012/09/14
  • メディア: 新書
 

 

 

登場する作品

日蝕 (新潮文庫)

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ブッデンブローク家の人びと〈上〉 (岩波文庫)

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 (トニオ・クレーゲル)

道化者

私の個人主義

葬送 第一部(上) (新潮文庫)

一月物語 (新潮文庫)

最後の変身 (文春文庫)

変身

顔のない裸体たち (新潮文庫)

他人の顔 (新潮文庫)

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ボヴァリー夫人 (上) (岩波文庫)

「フェカンにて」(あなたが、いなかった、あなた (新潮文庫) 所収)

「les petites passions」(滴り落ちる時計たちの波紋 (文春文庫)

所収)

空白を満たしなさい(上) (講談社文庫)

決壊(上) (新潮文庫)

ドーン (講談社文庫)

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 だから、あなたも生きぬいて (講談社文庫)

ロミオとジュリエット (新潮文庫)

卒業 [DVD]

恋愛及び色情 (角川ソフィア文庫)

豊饒の海 第一巻 春の雪 (新潮文庫)

「愛国心」 三島由紀夫

英霊の聲 オリジナル版 (河出文庫)

痴人の愛 (新潮文庫)

「母を恋うる記」 谷崎潤一郎

少将滋幹の母

蓼喰う虫 (新潮文庫)

卍(まんじ) (新潮文庫)

かたちだけの愛 (中公文庫)

源氏物語(一)桐壺―末摘花 (岩波文庫)

取り替え子 (講談社文庫)

「今後四十年の文学を想像する」(ディアローグ 所収)

 

 

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「うたかたの日々」 1947

うたかたの日々 (ハヤカワepi文庫)

★★★☆☆

 

あらすじ

 ある女性と出会い結婚した裕福な男。しかし、妻が重い病気にかかってしまう。別の邦題は「日々の泡」。

 

感想

 幻想的な表現が多用された小説。正直、書かれている内容がうまくイメージできない部分が多くて少々つらかった。

 

 映画を見て、原作を読んでみる気になったのだが、映画のファンタジー感ある演出はおおむね原作に忠実だったということが良く分かった。映画を観ていたおかげで、小説の内容をイメージしやすかったという部分もある。いい出来の映画だったのだなと、映画の方を再評価したくなった。

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 幸せな時と比べて不幸な時は部屋が小さく見えるとか、暗く見えるとか、そんな比喩的表現を使ったりするが、この小説はそこで終わらず、その比喩に乗っかって実際に部屋を小さくしたり、暗くしてしまう。それによって独特の雰囲気が生まれ、さらにそこから新たなイメージが生れていく。

 

 そんな中で一貫しているのは主人公の愚直なまでの妻への想い。莫大な資産が底をつき、大事な家財を売り払ったり、働いた経験がなかったのに仕事をしたり、友人たちと疎遠になったりと、苦しい状況にいるはずなのに一切苦にせず、ただただ妻の病気が治ることを信じている。

 

 

 だけども訪れる悲しい結末。意気消沈した主人公の姿が切ない。

 

著者

ボリス・ヴィアン 

 

うたかたの日々 (ハヤカワepi文庫)

うたかたの日々 (ハヤカワepi文庫)

  • 作者:ボリス ヴィアン
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2002/01/01
  • メディア: 文庫
 

日々の泡 - Wikipedia

 

 

登場する作品

Chloe

「山の誓い」 バロネス・オルツィ

Slap Happy

Blues Of The Vagabond

Misty Morning

Blue Bubbles (Remastered)

 

 

関連する作品

映画化作品 

クロエ デラックス版 [DVD]

クロエ デラックス版 [DVD]

  • 出版社/メーカー: パイオニアLDC
  • 発売日: 2002/10/25
  • メディア: DVD
 

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