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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「「バカ」の研究」 2020

「バカ」の研究

★★★★☆

 

内容

 心理学、行動経済学、哲学、人類学など、各界を代表する知識人たちによる「バカ」の考察。原書はフランスで出版された。

 

感想

 タイトルからして刺激的だが、全編にわたって何度も「バカ」という言葉が登場してなかなか壮観。特に冒頭の編者による「はじめに」の文章はかなり辛辣で、いきなり苦笑いさせられてしまった。

 

 内容はノーベル賞受賞者のダニエル・カーネマンや神経科学者のアントニオ・ダマシオら各界を代表する人物たちが「バカ」について語る本。当然、彼らの知見をもとにして語られるので、うんうんと頷かされる内容が多い。それぞれが語る各章はわずか数ページなので、コンパクトで気軽に読むことができる。翻訳も不自然に感じる部分がほぼなくて、読みやすい。

 

 

 ただコンパクトな分、物足りなく感じる部分があることは否めないのだが、もっと詳しく知りたい箇所については各章で言及されている本などを読めばいいのだろう。その足掛かりとしても良い本と言える。ちなみに、実際に本人が文章を書いたものと、インタビューされたものを文章化したものがあり、インタビュー分については内容が薄め。

 

ナタン (前略)でもかつては、こうして直接民主制が実現することで、四分の三の人間がバカだと判明するとは思いもしませんでした。これには本当に驚かされました。

p312 「知識人とバカ」 トビ・ナタン 

 

 本書の中では多くの人がインターネットの普及について言及しているが、これについては特にここ数年本当に痛感している。しかも、一般大衆が、というだけではなく、そこまですごくないにしてもさすがにそれなりのレベルは保っているだろうと思っていた政治家や官僚、メディアや各界を代表するような人物たちなど、世の中に影響を与える立場にいる人たちですら、同じように「バカ」が相当数いる事が可視化されたのがショッキングだった。

 

 ネットは、今まで聞く事の出来なかった「バカ」の声を可視化した装置だが、さらに「バカ」に影響を与えてしまう装置だともいえる。現在は、刺激的な情報に日常的に触れられるようになった人類全体が「中二病」にかかってしまっている状態なのかもしれない。ここを上手く乗り切ることができずに変にこじらせてしまうと、厄介な未来がやってきそうで心配だ。

 

 当然なのだがこの本は、安全な高所から「バカ」を論じているわけではなく、いつ何時自分が「バカ」になってしまうかも分からない、という前提に立って論じているので、好感が持てる。どんなにまともな人だって、特定の状況になれば「バカ」になってしまうことはあり得るのだ。この本を読みながら、ここで語られている「バカ」とは自分の事なのでは?と誰もが不安を覚えるはず。逆に言えば、そんな不安を一度も感じることなく読み終えることができた人間だけが、真の「バカ」といえるのかもしれない。

 

著者

 セルジュ・シコッティ/イヴ゠アレクサンドル・タルマン/ブリジット・アクセルラッド/アーロン・ジェームズ/ジャン゠フランソワ・マルミオン/エヴァ・ドロツダ゠サンコウスカ/ダニエル・カーネマン/ニコラ・ゴーヴリ/パトリック・モロー/アントニオ・ダマシオ/ジャン・コトロー/ライアン・ホリデイ/フランソワ・ジョスト/ハワード・ガードナー/セバスチャン・ディエゲス/クローディ・ベール/ダン・アリエリー/ローラン・ベーグ/アリソン・ゴプニック/デルフィーヌ・ウディエット/ジャン゠クロード・カリエール/ステイシー・キャラハン/トビ・ナタン

 

編者 ジャン゠フランソワ・マルミオン

 

翻訳 田中裕子 

 

 

 

登場する作品

痴愚神礼讃 (中公クラシックス)

物の本質について (岩波文庫 青 605-1)(事物の本質について)」

イグ・ノーベル賞 大真面目で奇妙キテレツな研究に拍手!

La démocratie des crédules(だまされやすい人たちの民主主義)」

Les 4 vies de Steve Jobs: Biographie de Steve Jobs (French Edition)(スティーブ・ジョブスの四つの人生 スティーブ・ジョブス伝記)」

チーム内の低劣人間をデリートせよ ——クソ野郎撲滅法

 Assholes: A Theory of Donald Trump (English Edition)(くそったれ ドナルド・トランプ理論)」

James, A: Assholes(くそったれの理論)」

なぜ、間違えたのか?

まちがっている エラーの心理学、誤りのパラドックス

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Le raisonneur et ses modèles(思考者とそのモデル)」

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実践 行動経済学

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パンセ (上) (岩波文庫)

「バカについて」 ジョルジュ・ピカール

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鏡の国のアリス (角川文庫)

進化の意外な順序

Un taxi pour Tobrouk(トプルク行きのタクシー)」

ツールの司祭/赤い宿屋 (岩波文庫 赤 530-1)」」所収 「ツールの司祭」

Trust Me I'm Lying: Confessions of a Media Manipulator (English Edition)(信じてくれ、ぼくは君たちに嘘をついている メディア情報操作者の告白)」

ウワサの真相/ワグ・ザ・ドッグ (字幕版)

I Hope They Serve Beer In Hell

La méchanceté en actes à l'ère numérique(デジタル時代の行動における悪意)」

物の本質について (岩波文庫 青 605-1)(事物の本性について)」

Disciplined Mind: What All Students Should Understand (English Edition)

Truth, Beauty, and Goodness Reframed: Educating for the Virtues in the Age of Truthiness and Twitter (English Edition)

ブヴァールとペキュシェ (上) (岩波文庫)

愚かな決定を回避する方法―何故リーダーの判断ミスは起きるのか (講談社プラスアルファ新書)

選択の科学 コロンビア大学ビジネススクール特別講義 (文春文庫)

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「支離滅裂」 アラン・スーション

L’imposture intellectuelle des carnivores: Essais - documents (French Edition)(肉食動物の知的偽装)」

方法序説 (岩波文庫)

Meatonomics: How the Rigged Economics of Meat and Dairy Make You Consume Too Much?and How to Eat Better, Live Longer, and Spend Smarter by David Robinson Simon(2013-09-01)

Bidoche. L'industrie de la viande menace le monde

種の起源(上) (光文社古典新訳文庫)

イリアス〈上〉 (岩波文庫)

オデュッセイア(上)

フランケンシュタイン

Yesterday(イエスタデイ)」

珍説愚説辞典

こじれた仲の処方箋

本当の勇気は「弱さ」を認めること

 

 

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「湖畔の愛」 2018

湖畔の愛 (新潮文庫)

★★★★☆

 

あらすじ

 主人公が勤める湖畔のホテルで巻き起こる数々の騒動。

 

感想

 巻末の解説で吉本新喜劇的と評されていたが、確かにあの舞台でやっていそうな物語である。同じ設定、同じキャラで繰り広げられる物語だ。抱腹絶倒というわけではないが、それなりに笑える。そして下らないことをやりつつも、時々、何か深遠な言葉も出てきて、その高低差、落差がすごい。

 

私は男性は嫌わないが、そうして安易かつ即座に、場の雰囲気、を創出して、本質的な問題を一時的になかったことにしてしまう年配の男の甘えた雰囲気が大嫌いだ。

文庫 p161

 

 確かにこういう光景をよく見る。おじさん達が深刻そうに話を始めて、急に誰かの一言で皆がガッハッハと笑って終わる、みたいな光景。でもよくよく聞いてみると何も解決していなかったりする。ただオチがついて解決したような気になっているだけという。そして結局、問題は先送りされただけ。これが巷のおじさん達ならまだいいが、政治の世界でも割とよくある光景だったりするから困る。テレビの門外漢のコメンテーターも、こんな感じの人が多い。

 

 少しつながりがありつつも一話完結ぽい三章仕立ての物語だ。各章で、あれはその後どうなったのだ?と思わせるような、やりっぱなしで終わるエピソードがあって気になった。でもきっとこれは敢えてそうしているはずで、それによりなんだか後を引くような余韻があって悪くない。色々と考えてしまう。

 

 

 ラストはどこか宗教色さえ感じさせる結末だ。人は馬鹿げた事やふざけた事をやりながらも生きている。誰だっていつか腹の底から笑える日があることを信じて。そしてかつてそんな日があったことを抱きしめながら。

 

著者

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登場する作品

なごり雪 (シングルバージョン) 

 

 

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「昭和の犬」 2013

昭和の犬 (幻冬舎文庫)

★★★☆☆

 

あらすじ

 戦後に生まれた女性の犬との関わりを中心とした半生が描かれる。直木賞受賞作。 

 

感想

 一匹の犬と飼い主の関係を描いた物語ではなく、その時々に主人公の身近にいた毎回違う犬との話が描かれていく。それは家で飼っている犬だったり、近所や下宿先で飼われている犬、散歩の途中で出会う犬など様々だ。それを通して、人間と犬との関係が変わってきている事がわかって面白い。

 

 戦後すぐの頃は、近所をうろついている犬に餌をあげているだけで飼っている、と言っていたのに、やがて金持ちのステータスとなるような犬が現れ、そして室内犬が現れ、次第に今のようなペットの飼い方へとなっていく。段々と家族とみなすようになっていったという事だろうか。

 

 愛情のかけ方が変化していったとも言えるが、最初の頃は飼っているつもりの犬がいなくなっても、保健所にでも連れていかれちゃったかな、残念だな、とかケロッとした顔で言っていて驚いてしまう。これは主人公の父親のエピソードだったが、主人公に限って言えば、犬に対する並々ならぬ思い入れは感じつつも、時代が変わっても接する態度は常にどこか距離を保っていてドライだ。犬好きにありがちな愛情ダダ洩れで骨抜き状態になるわけではない。おかげで読んでるこちらの犬に対する思い入れが特に強くなくても、好感を持って読むことができる。

 

 

 主人公の幼少の時から始まり、小学生、高校生、大学生へと年齢を重ねていく。そのころまでは特に何の意識もなく読み進めていたのだが、やがて30代を迎え、40代後半と続いていくと、一気に人生の重みというやつがどーんと感じられるようになった。なんだか不思議な気分だが、若さを失うにつれ、それが粉飾していた人生のリアリティがはっきりと見えるようになるからだろうか。

 

「子供ってしつこいのよ。いじめるのはこいつだと決めたら集中攻撃するの」

単行本 p193

 

 犬との関わりで出てきた言葉だが、これはSNSでもよく見かける光景で子どもに限らないよな、と思った。特殊なグループの中でこいつは叩いていい、みたいな了解が出来上がると、その対象が何か言ったら、内容に関わらず何も考えずに条件反射で叩いている。きっと子供だけがしつこいのではなく、人間自体がしつこいのだ。多くは大人になるにつれて分別を身につけるのだが、そうではない人がかなりの数でいるという事だろう。もしくは普段は分別があるのだが、あることに関してだけは分別を失ってしまうとか。

 

 親からも愛されず恋愛にも恵まれず年齢を重ねた主人公の姿に、心のどこかで気の毒だなと思ってしまうのだが、でも実際の所、それがどうかは本人にしかわからない事だ。人の事を勝手に判断するのはしない方がいい。不幸に見えても当人の心を覗けば、満ち足りていることだってあるのだ。

 

著者

姫野カオルコ
 

 

昭和の犬 (幻冬舎文庫)

昭和の犬 (幻冬舎文庫)

 

 

 

登場する作品

「ひばりに寄す」 パーシー・ビッシュ・シェリー

フランケンシュタイン (光文社古典新訳文庫)

  

 

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「見えない暗闇」 1995

見えない暗闇

★★★★☆

 

あらすじ

 妻の浮気相手に暴力を振るい、殺してしまったかもしれないと怯える男。

 

感想

 世の中、みんな分かったような顔をして歩いているが、その実、知っている事なんてごくわずか。日々やっている事のほとんどは全く合理的でなかったりする。妻に浮気されたこの小説の主人公も、なんでそれをしただけで許す気になれるのか、合理的な説明が全くできないような行為によってなんだか許せる気になってしまっている。でもなぜか自分もその気持ちが理解できるような気がしてしまうのは不思議だ。人々は自分を納得させるために時に矛盾した行動を取りながら、日々の困難を乗り越えていっているのだろう。

 

 段々とファンタジー感が強くなっていく物語。だが、そのファンタジー部分の処理の仕方がすごいなと思ってしまった。これはファンタジーなんで、と逃げないような、全てを呑み込もうとするような描き方。人々は見えないものは無いものとして扱ってしまいがちだが、その見えない暗闇には、実は見えないだけで多くのものが蠢いていたとしても不思議ではない。それに案外、自分が見ている世界は実際の世界のごくわずかでしかなかったりする。

 

 

 それを踏まえた上で、チラッと暗闇の中から何かが見えたからといって大騒ぎしたりせず、そういう事もあるだろうと鷹揚に構えている事が大事だ。本人にとっては大ごとかもしれないが、他人から見れば理解できなかったり、とりとめのない事だったりする。それにこだわってしまうと自分の足をすくわれてしまうかもしれない。世の中には自分の想像を超えたことはたくさんあるのだ。

 

 誰もがいいそうなことをいっていた。凡庸な生活を守るためには、凡庸な言葉を避けるわけにはいかなかった。

p129

 

 ちゃんと地の文にも印象的な言葉はあるが、著者はヒットドラマを何本も手掛けた有名脚本家だけあって、セリフだけで多くを描写してしまうシーンが多い。何となく脳内で「ふぞろいの林檎たち」風に会話を再生してしまって、読んでいるうちに久々に山田太一脚本のドラマを見たくなってしまった。

ふぞろいの林檎たち DVD-BOX

ふぞろいの林檎たち DVD-BOX

  • 発売日: 2002/02/22
  • メディア: DVD
 

 

著者

山田太一 

 

見えない暗闇

見えない暗闇

 

 

 

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「ガラスの街」 1985

ガラスの街 (新潮文庫)

★★★☆☆

 

あらすじ

  間違い電話をそのまま受けて、探偵の仕事を引き受けることになった作家の男。

 

感想

 虐待していた父親が自分を殺しに戻って来るので助けて欲しい、という間違い電話の依頼をそのまま受けてしまった主人公。主人公は家族を失って絶望し、人との接触を避けて小説だけを書いて生きている世捨て人のような人物。自分の事などどうでもよく、さらには作家としてのペンネームよりも自身の書く小説の主人公に現実味を覚えているような男だ。そんな男が間違い電話をきっかけに、別名の新たな分身を手に入れて探偵の仕事をすることになる。

 

 彼に間違えて仕事を依頼したのは、幼少時からの父親の虐待により、まともに言葉を話せない青年。その後遺症を乗り越えて必死に自分を取り戻そうとしているが、なかなかうまくいかない。自分を失くそうとばかりしている主人公とは対照的な存在と言えそうだ。そして青年が恐れている父親は、人間が先天的に備えているものが何かを知りたいと、実験として息子に何も与えず何もない状態に保とうとした男。こちらは主人公と気が合うような気がする。

 

 

 探偵として主人公は、ニューヨークに戻って来た青年の父親を毎日見張り、尾行するようになる。そして、日々起きたことをメモしたノートを頼りに対象の意図を読み取ろうとする主人公の姿は、まさに謎解きをする探偵のようだったが、物語はありきたりの探偵小説のようには展開しなかった。

 

 途中で「ドン・キホーテ」に言及して、彼は道化を演じていただけで実際は正気だったのでは?そしてそれには意図があったのでは?などと指摘するシーンがあり、これがこの物語を読み解くカギと言えそうだ。また、主人公がなりすましたその当人も登場するので、同じ名前の二人が存在するという事になり、これは一人の人物の二つの側面を表現しているという可能性もある。この辺りを深く考察してみると、きっと何かが見えてきそうな気がする。

 

著者

ポール・オースター
 

ガラスの街 (新潮文庫)

ガラスの街 (新潮文庫)

 

 

 

登場する作品

東方見聞録 (角川ソフィア文庫)

「月の世界」 ハイドン

エセー 6冊セット (岩波文庫)

「野生詳述」 デフォー

失楽園 上 (岩波文庫 赤 206-2)

言論の自由―アレオパヂティカ (1953年) (岩波文庫)

楽園の回復・闘技士サムソン (1982年)」所収 「楽園の回復(復楽園)」

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「アーアー・ゴードン・ピム」 ポー

鏡の国のアリス (角川文庫)

ドン・キホーテ 前篇一 (岩波文庫)(奇想 驚くべき郷士 ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ)」

 

 

関連する作品

ニューヨーク三部作

幽霊たち (新潮文庫)

幽霊たち (新潮文庫)

 

 

 

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「シンコ・エスキーナス街の罠」 2016

シンコ・エスキーナス街の罠

★★★★☆

 

あらすじ

 政治が腐敗し、テロがはびこるフジモリ政権下のペルーで、スキャンダル写真で世間を騒がすことになった富豪。

 

感想

 全然知らなかったが、ペルーでフジモリ氏が大統領に当選した時、次点だったのは、後にノーベル文学賞も受賞したこの本の著者だったのか。そんな彼が、フジモリ政権の腐敗を題材にして、小説を書いているというのは面白い。しかも大統領や他の何人かの登場人物は実名。きっと自分が大統領になっていたら、もっと素晴らしい未来になっていた、という強い思いがあるのだろう。

マリオ・バルガス・リョサ - Wikipedia

 

 タブロイド雑誌に富豪のスキャンダル写真が掲載された事により起きた出来事が描かれていく。章ごとに異なる人物の視線から物語が語られていくのだが、佳境となる章では全員が登場して、数行ごとに目まぐるしく場面を切り替えながら展開する。一斉に皆が喚きたてているような感じなのだが、それでも内容は理解できて、なんだかマルチタスクをこなしているような不思議な感覚になった。

 

 

 たくさんの人物が登場するが、中心となるのはスキャンダル写真を撮られた富豪の男とそれを掲載したタブロイド雑誌の女。政治の腐敗や貧富の差などの社会問題を浮き彫りにする物語なのだが、中心となる二人がこの事件をきっかけに何かに目覚めた物語として読むことも出来る。一方は真のジャーナリズムに、一方は開放的な性的嗜好に。

 

 読んでいるとどうしても今の日本の状況を連想してしまうのだが、この小説の結末のような事は日本では起きないのだろうなと、暗鬱たる気分になってしまった。

 

著者

マリオ・バルガス・リョサ

 

シンコ・エスキーナス街の罠

シンコ・エスキーナス街の罠

 

 

 

登場する作品

El Plebeyo(エル・プレベジョ)」

「エルメリンダ」 フェリペ・ピングロ

「農民の祈り」 フェリペ・ピングロ

「ロサ・ルス」 フェリペ・ピングロ

「界隈に戻って」 フェリペ・ピングロ

「アメリア」 フェリペ・ピングロ

 

 

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「ハリウッド白熱教室」 2015

ハリウッド白熱教室

★★★★☆

 

内容

 NHK Eテレで放送された「ハリウッド白熱教室」の書籍化。

 

感想

 昔テレビで放送されているのをちらっと見て、面白いなと思った記憶のあるテレビ番組が書籍化されたもの。「脚本」「ビジュアル・デザイン」「撮影」「編集」「音響効果」という5つの映画技術を一つずつ解説していく。

 

 様々な映画のワンシーンを挙げながら説明され、それを文章だけで理解しなければいけないというのがちょっと困るが、題材となるシーンについては詳細を説明されるので何とか理解できる。本当は映像を見ながら説明を聞くのが一番いいのだろうが、本なので仕方がない。

 

 

 様々なテクニックを使って、映画の中の時間の進み方をゆっくりだったり早くだったり、観客に感じさせることができるという話が面白かった。ロングショットなのかクローズアップなのか、画面構成が賑やかなのかシンプルなのか、そのチョイスだけで自在に観客の体感速度を操ることができる。ときどき映画が間延びして感じる事があるのは、監督がそのチョイスを間違えてしまっているからなのかもしれないなと思ったりした。勿論こちらのその時の精神状態も関係しているとは思うが。

 

 こうやって体系的に映画の技術を知ることは、映画の見方がまたひとつ増えるようで楽しい。

 

著者

ドリュー キャスパー
 

 

 

登場する作品

テンペスト―シェイクスピア全集〈8〉 (ちくま文庫)

 

 

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「孤独の発明」 1982

孤独の発明 (新潮文庫)

★★★☆☆

 

あらすじ

 父親の死後にその生い立ちを知ることになった男。

 

感想

 2編からなる2部構成の物語。前半は、父親が死んだ後にその生い立ちを知った男の話。一緒にいても、いつも自分の心の殻に閉じこもっているようだった父親の、その原因を知ることになる。

 

 しかし父親は孤独を抱えていたのに、機械的な受け答えをしているだけで、表面的にはそんな風には見えなくなる、というのは不思議な気がする。案外、心と心の交流なんて、そんなに人は求めていないのかもしれない。単純な言葉のやり取りをしたという事実だけでコミュニケーションを取ったと人々は満足してしまい、その中身はたいして重要ではないという事だろう。そう考えるといつも誠実な対応をしようとする人は生きづらい、というのも分かるような気がする。ある程度の適当さも必要だ。

 

 

 この前編は、語り口が個人的にしっくりと来て好みの感じだったのに、後編はがらりと様相が変わってしまって、とっつきにくい印象の文体になってしまった。外側から見た孤独な人間の話から、孤独な人間その人が一人語りする内容に。

 

 部屋に籠もり、ひとり内省を続ける男。だがその心は、過去の思い出や様々な事物と網の目のようにリンクして小宇宙を形成し、決して孤独ではない。そんな風に見えなくても心に孤独を抱えていたり、逆に孤独そうに見えて実際はそんな事はなかったりと、「孤独」とは捉えどころのないものだ。多くの人がこれを扱いかねて、持て余してしまっている。

 

著者

ポール・オースター 

 

孤独の発明 (新潮文庫)

孤独の発明 (新潮文庫)

 

孤独の発明 - Wikipedia

 

 

登場する作品

ピノキオの冒険

パンセ (上) (岩波文庫)

省察 (ちくま学芸文庫)

「記憶術大全」 コズマス・ロッセリウス

フィネガンズ・ウェイク 1 (河出文庫)

「一八四四年の経済学・哲学手稿」 カール・マルクス

Let's Go Trucks!(レッツ・ゴー・トラックス)」

Caps for Sale: A Tale of a Peddler, Some Monkeys, and Their Monkey Business (Reading Rainbow Books) (English Edition)(帽子売ります)」

マザー・グース1 (講談社文庫)

百万円貰ったら [DVD]

Solitude (Billie Holiday Sings)(ソリチュード)」

ゾーハル〈新装版〉:カバラーの聖典(叢書・ウニベルシタス)(ゾハール)」

「カッサンドラ」 リュコフロン

「カッサンドラ リュコフロンの希臘語原典より翻訳と注解」 ロイストン卿

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戦争と平和(一)(新潮文庫)

千夜一夜物語(全11巻セット)―バートン版 (ちくま文庫)

 

 

この作品が登場する作品

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「江分利満氏の優雅な生活」 1963

江分利満氏の優雅な生活 (ちくま文庫)

 

あらすじ

 昭和30年代、電機会社に勤めるサラリーマン、江分利満(えぶりまん)氏の日常。直木賞受賞作。

 

感想

 会社や仕事、社宅での暮らしや飲み屋の話など、平凡なサラリーマンの日常を綴ったエッセイのような小説。会社員だった著者が、日々の暮らしで思ったことや考えたことを徒然に語って、最後に「…と、江分利満氏は思うのであった。」と付け加えることで小説の体裁にしていて、ズルいというか上手いというか。

 

 ここで語られる昭和30年代のサラリーマン生活は、社員旅行に行ったり遅刻したり、同僚に金を借りたりと随分のんびりしているように感じられる。日本のサラリーマンはいつから悲壮感が漂うようになったのだろう。今どきの若者は…と苦言を呈したりする場面もあったりして、いつの時代も同じだなと苦笑いしたりすることも。でもどこか皆に楽観的な雰囲気があり、明るさを感じる。

 

 

 そして、女性社員についての記述はいかにも昭和で、最古参の女性社員が25歳とか、驚いてしまう。そして、今だとこんなこと書くと叩かれるのだろうなということが書かれていたりして時代を感じる。でも最近、そんな事を言って会長職を辞任した元総理がいたので、案外、この頃の感覚で生きている人が、今の日本を取り仕切っているという事なのかもしれない。そりゃ悲壮感出ちゃうわと思わなくもない。

 

 そんなサラリーマンのエッセーのような内容が続くのかと思いきや、主人公の母親が亡くなったあたりから様相が変わってくる。家族というか、父親との関係が大きな部分を占めてくる。昔は芸人やタレントがよく家にやってきていたとか、自分の妻が死んでもヘラヘラしているとか、序盤は主人公の父親は何者なのか、と訝しんでしまった。

 

 そこから語られる主人公の出自を知ると、平凡なサラリーマンと言いながら、庶民的ではない都会の金持ちマインドがあちこちから滲み出ている事に気付く。今でもSNSに「たまの贅沢で高級レストラン予約してシャンパンあけてきましたー。」とバブル臭満載の投稿している人を見かける事があるが、こういう若い頃に身に付けた生活スタイルはなかなか変えられないし、本人はそれが滲み出ている事に意外と気づかないものだ。

 

 しかし、白髪の老人は許さんぞ。美しい言葉で、若者たちを誘惑した彼奴(あいつ)は許さないぞ。神宮球場の若者の半数は死んでしまった。テレビジョンもステレオも知らないで死んでしまった。

p230

 

 会社の事、家族の事を描きながら、ふとした時に出てくる戦争の話が印象的だった。主人公は昭和の年号と数え年が同じなので、戦争に人生を大きく左右された世代。おそらく物心ついた時に思い描いていたのとは全く違う未来の世界を生きているはずだ。下手したら二十歳そこそこで名誉の戦死をするつもりで、30歳を迎えるなんて思ってもいなかったのかもしれない。

 

 彼らの世代はまだ若すぎたので戦争に対して何かできたとは思わないが、それでも責任を感じているのは、後の世代に同じような思いをして欲しくないからだろう。日本ではこうやって普通に戦争の話が出てくる世代は、今はもうほとんどいなくてそれは良い事なのだが、今度はやたら美化して憧憬の念を持つ人も出てきたりするので厄介だ。それを防ぐには、こうやってその世代の話を本などで知ることが大事なのかもしれない。

 

著者

山口瞳

 

江分利満氏の優雅な生活 (ちくま文庫)

江分利満氏の優雅な生活 (ちくま文庫)

  • 作者:山口 瞳
  • 発売日: 2009/11/10
  • メディア: 文庫
 

江分利満氏の優雅な生活 - Wikipedia

 

 

登場する作品

わんわん物語 スペシャル・エディション [DVD]

シベリヤ物語《完全版》 [DVD]

東京の屋根の下

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(OK牧場の決闘) 

IVC BEST SELECTION 外人部隊 [DVD]

すみれの花咲く頃(菫の花咲く頃)」

酋長の娘(私のラバさん)」

お百度こいさん/惚れたって駄目よ」所収 「お百度こいさん(オヒャクドコイサン)」

人生劇場

「トントントマト・まっかっか(マッカッカのカゴメ)」 楠トシエ

嵐が丘(字幕版)

南部の人《IVC BEST SELECTION》 [DVD]

四条畷

歌劇「天国と地獄」序曲【障害物競走】

歌劇《ウイリアムテル》序曲 1「.夜明け」 2「嵐」 3「.静けさ」 4「.スイス軍の行進」(ロッシーニ)」所収 「夜明け」「嵐」「静けさ(静寂)」

ロッシーニ(1792-1868): 歌劇 「ウィリアム・テル」 序曲から " スイス独立軍の行進 "(スイス軍の行進曲)」

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シャーリー・テンプル 農園の寵児 [スタジオ・クラシック・シリーズ] [DVD]

「海原にありて歌へる」 大木惇夫

戦友別盃の歌

サム・サンデー・モーニング

バイア・コン・ディオス

チェンジング・パートナー

旅情 (ヴェニスの夏の日)

ロック・アラウンド・ザ・クロック(映画「暴力教室」より)

Sho-Jo-Ji(ショジョジ)」

エデンの東

戦没農民兵士の手紙 (岩波新書)

The U.S. Field Artilery March(野砲隊の歌)」

Army Air Corp March(空軍の歌)」

 

 

関連する作品

映画化作品 

江分利満氏の優雅な生活 [DVD]

江分利満氏の優雅な生活 [DVD]

  • 発売日: 2006/02/24
  • メディア: DVD
 

 

 

 

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「日蝕・一月物語」 1998

日蝕・一月物語 (新潮文庫)

★★★★☆

 

あらすじ

 「月蝕」。舞台は中世ヨーロッパ。ある本を求めて旅に出た神学僧は、途中である村に住む錬金術師のもとをを訪ねる。芥川受賞作。

 

 「一月物語」。熊野を旅する青年は、蛇に噛まれて山中の禅堂で療養していたが、そこで不思議な体験をする。 

 

感想

 「日蝕」は、古めかしい文章、擬古文調というらしいが、で語られていく物語。だから難解で読みにくいかと言われたらそんな事はなく、調子を掴めば、単純にただ読みこなせていること自体が楽しくなってくるような感覚はある。文学している感というか。この凝った文章と博識な内容の小説を20代前半の若さで書いた著者には、素直にすごいと感心してしまう。当時話題になったのも頷ける。

 

 物語には錬金術師や両性具有、魔女狩りや異端などといったものが登場し、おどろしい雰囲気に満ちているのだが、、その雰囲気の演出にこの古めかしい文体がかなり貢献しているように感じる。正直内容は完全に理解したとは言えないが、読み応えのある内容。意外とアニメ化したら「エヴァンゲリオン」的な感じになって、面白くなりそうだ。

 

 

 美醜や善悪、正邪といったものは簡単に分けられるものではなく、両性具有のように一つのものが内包している場合も多い。それにそれらは逆に互いに引き寄せ合って、一つになってしまおうとすることもある。そのような事が重ねて起きた時、あり得ない事象が発生したとしても不思議ではない。

 

 「一月物語」は、「月蝕」とはまた文体が違っている事に驚く。こちらは明治文学風というか。こんな風に見事に文体を変えられてしまうと、ちょっとイタコというか、モノマネ芸ぽさも感じてしまった。こちらはどこかの村に残る伝説話のようで、宿の女将が長々と畳みかけるように一人語りするときの疾走感が良かった。

 

著者

平野啓一郎 

 

日蝕・一月物語 (新潮文庫)

日蝕・一月物語 (新潮文庫)

 

日蝕 (小説) - Wikipedia

 

 

登場する作品

「ヘルメス選集」 

「聖トマス神学の擁護」 カプレオルス

自然学 (新版 アリストテレス全集 第4巻)

アリストテレス全集4─天体論・生成消滅論」所収 「生成消滅論」

分析論前書 分析論後書 (新版 アリストテレス全集 第2巻)」所収 「分析論後書」

「アリストテレス範疇論入門」 ポルフュリオス

「自然の鏡」 ヴァンサン・ド・ボオヴェ

テアイテトス (岩波文庫)(ティマイオス)」

「大著作」 ロジャア・ベイコン

「錬金術の鏡」 ロジャア・ベイコン

「聖典」 ライムンドゥス・ルルス

象形寓意図の書・賢者の術概要・望みの望み (ヘルメス叢書)」所収 「象形寓意図の書」

「錬金術大全」 ゲエベル

神学大全I (中公クラシックス)

形而上学叙説―有と本質とに就いて (岩波文庫)(形而上学註解)」

「異端審問の実務」 ベルナアル・ギイ

「魔女の槌」 ハインリヒ・クラアメル/ヤアコブ・シュプレンゲル

旧約聖書 出エジプト記 (岩波文庫 青 801-2)

「カルデア人の神託」

太平記 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典 (角川ソフィア文庫)

「楠公三代記」

森鴎外全集〈10〉即興詩人 (ちくま文庫)

チャイルド・ハロルドの巡礼―物語詩

李長吉歌詩集 上 (岩波文庫 赤 6-1)

 

 

関連する作品

「日蝕」「一月物語」と合わせてロマンティック三部作 

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この作品が登場する作品

「1月物語」

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「プレオー8の夜明け」 1970

プレオー8の夜明け (講談社文庫)

★★★★☆

 

あらすじ

 短編集。表題作は、敗戦後に戦犯としてサイゴン刑務所に抑留された主人公たちの日常を描く。芥川賞受賞作。タイトルの読みは「プレオ―8(ゆいっと)の夜明け」。

 

感想

 従軍体験をした著者による戦争小説。読んでいると、実際に戦争に行った人の話は違うなと実感させられる。戦争経験のない自分たちが考える、戦争はこういうものだったはずという思い込みを打ち壊してくる。

 

 割と頻繁に、死にたくないとか上官がムカつくとか考えていたという話や、また慰安婦の話などが自然な流れで出てくる。自分は日本の戦争映画などは良く描き過ぎだろうと思っている方だが、そんな自分でもえ、戦争ってそんな感じだったの?と驚いてしまうような記述がたくさん出てくる。

 

 

 それについて、きっと著者が戦争中に実際に体験した出来事を書いているのだろうから、嘘だろうとかリアリティがないとも言えない。我々は体験もしていないのに、良くも悪くも勝手に戦争観を築き上げてしまっているのだなと思い知らされる。こちらが思い込んでいるステレオタイプ的な戦争のイメージを打ち壊すような話が、どんどんと出てくるところが逆にリアルだ。

 

 そんな中で、彼らが人の死に対して淡々としているところがとても印象的だった。自分たちと一緒に行動している人たちが敵に囲まれてしまっても、無反応で先に進んで行ったり、重傷者ばかりの病院で、明日は元旦でゆっくりしたいから明日だけは死なないでくれ、と医者が呼び掛けたりと、静かに狂っている。

 

 それからどの短編にも共通しているが、主人公の戦争に対する姿勢がカッコいい。下らないことは下らないと言うし、上官にはたてつくし、禁じられても現地の人と交流したりこっそりと助けようとする。まるで兵隊らしくあることを拒絶しているかのようだ。だからといって頑なではなく、流されるところは流されて、軍人としての心構えはあるが能力が低いだけ、というポジションに収まっている。だから上官も表立って叱責することは出来ない。

 

監獄には何もない。べたっと打ちしおれているだけではしょうがない。だから、何かできることがあったら、育てよう。少しでも楽しいことを考えだして、やっていこう。

単行本 p190

 

 表題作は、戦後に主人公らが戦犯として収容された監獄での日々が語られる。鬱屈した日々を何とか彩りのあるものにしようと、皆で演劇をしたり歌の発表会をしたりと奮闘する主人公の姿に心を打たれる。映画「ショーシャンクの空に」みたいだ。でもなぜか同性愛的な方向に進んでしまって、思ってたのと違う、と主人公がぼやく場面では笑ってしまった。 

ショーシャンクの空に(字幕版)

ショーシャンクの空に(字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

 

 戦争の話というと、勇ましい話や泣ける話ばかりが語られがちだが、こういうありふれた何気ない日常を描いた戦争の話というのも大事なのかもしれないと感じた。こちらの方が戦争の異常さが静かに伝わってくる。

 

著者

古山高麗雄 

 

 

 

登場する作品

「暴君ネロ」 セシル・B・デミル

土と兵隊

麦と兵隊

血と砂 [DVD]

商船テナシチー [DVD](商船テナシテー)」

シェイクスピア全集 (2) ロミオとジュリエット (ちくま文庫)

「花占い」 李香蘭

 

 

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「われら」 1921

われら (集英社文庫)

★★★☆☆

 

あらすじ

 皆が同じようにして暮らす全体主義国家において、一人の女性に恋をしてしまった数学者。

 

感想

 舞台は極度に合理化が進んだ社会。名前はなく皆が番号で呼ばれ、それぞれがいちいち何も考えなくて済むように、皆が同じ時間に起き、同じ服を着て仕事に出かけることになっている。皆同じなので、誰かと比較して不幸を感じる事はないはずだ。心穏やかに暮らせる、この上なく素晴らしい社会だと喧伝されている。

 

 しかし、皆が同じことをしているのだから、何も隠す必要はないだろうということで、皆をガラス張りの部屋に住まわせるというのは徹底している。まるで建物自体が一つの生き物で、それぞれの部屋はその細胞のよう。これをもっと大きく捉えれば、社会全体がひとつの生命体と言っていいのかもしれない。全体主義社会では、もはや「私」というものはなく「われら」しかいない。

 

 

 主人公は数学者ということもあり、合理的で無駄のない社会の正しさに清々しさを感じていたのだが、一人の女性に恋してしまったことによりその価値観が揺らぎ始める。効率的な社会では恋愛は不要とされ、ただ適当なパートナーを上から定期的にあてがわれるだけ。そんな中で誰かを独占したいだとか、個人が主張するのはとんでもない事だ。いけない事だと理解しながら、それに抗えない感情に戸惑う主人公。

 

 ただよく見てみるとこの主人公だけでなく、その周囲の人物たちも決して完全に全体主義に順応してしまっているわけではない事に気付く。主人公にあてがわれたパートナーの女性や受付の女性も、社会システムと自らの感情の間で揺れている。テロ騒ぎが起きたときの大衆の様子を見ていても、皆が決して従順ではなく心に引っかかるものを抱えていることが窺える。考えてみれば、そんな簡単に大衆の心を支配できるわけがない。独裁政権が何かのきっかけで、あっさりと倒されてしまう事があるのもそのせいだろう。

 

 とはいえその逆を返せば、完全に人の心を従わすことができなくても、全体主義の社会が作れてしまうという事でもある。大きな流れが出来てしまうと、誰も抗うことができなくなり、それに飲み込まれてしまう。これは怖い。その前に流れを止めなくてはいけないのだが、皆の気付くタイミングが同じでないことがネックになってくる。いち早く危険を察知して警告を発する人たちが現れたとしても、大げさだ、心配し過ぎだ、と彼らをあざ笑う人たちも必ず出てくる。そして結局、両者が対立している間に波に飲み込まれてしまった、というのはありがちな話だ。それに無自覚に従順な人も多い。

 

 最後はディストピア小説らしい、なんとも言えない結末。微分積分だとかルートだとか数学用語が出てきてちょっと不安になったが、分からなくてもそんなに物語に影響はなかった。逆に、かつての詩は無意味だったと言いながら、それでも”効率的な”詩が存在する世界を設定し、詩的な表現をふんだんに使って物語を描く著書は、本当に詩が大好きなんだろうなと思わせられた。

 

著者

エヴゲーニイ・ザミャーチン

 

われら (集英社文庫)

われら (集英社文庫)

 

われら - Wikipedia

 

 

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「宇喜多の楽土」 2018

宇喜多の楽土 (文春文庫)

★★★★☆

 

あらすじ

 五大老の一人として、豊臣政権を支えた備前岡山藩主・宇喜多秀家の生涯。

 

感想

 宇喜多秀家は、秀吉に可愛がられてお気楽に過ごしていたのかと思っていたのだが、お家騒動があったりして大変だったのか。しかも、隣国で大国の毛利家とそれを警戒する豊臣家の駆け引きに巻き込まれて、いつ押しつぶされてしまうかも分からない状況だった。

 

 そんな厳しい状況の中で、幼少で藩主にならざるを得なかった秀家。タイミングが悪かったと言わざるを得ない。しかし、そんな中で秀吉のために必死に働き、存在感を示していく。

 

 

 秀家自身、自分は優し過ぎて藩主に向いていないと自覚しているのだが、逆にそういう人物こそが、必死に努力し結果を出し続けることができるのかもしれない。ただ、その分悲壮感が漂って、精神的にはきつそうだ。

 

 やがて秀吉が死に、徳川家康が不穏な動きを見せ始める。さらに前田利家がいなくなると、ひとり家康だけが世代が違うということになるのだろうか。若手ばかりの中で、彼らを上手く手玉にとる老獪な家康の姿をイメージすると、なかなか不気味だ。そう考えると家康は、好機が巡ってくるまで本当にひたすら爪を研いでじっと耐え忍んでいた、ということが伝わってくる。

 

 そして、秀家にとって開戦と共に敗戦が決まったような関ケ原の合戦の描写は壮絶だった。西軍のまとまりのなさ、グダグダぶりには少し旧日本軍の姿を思い起こしてしまった。そんな壊滅状態の中で、藩主である秀家を必死に逃れさせようとする家臣の姿には胸が熱くなった。

 

 でも、自身が率いる軍の人間がたくさん死んでいく中、自分だけは生き残ろうとするのは、人としてさすがに忍びないという気持ちは良く分かる。武将が敗戦を悟り、観念して自害するのはこれも大きいのだろう。生き残れば挽回するチャンスはあるのかもしれないが、惨状の中ではそこまで気が回らない。

 

 無事逃れるも、最終的には八丈島に流罪となる秀家。自分の中では、妻の豪姫と共に慎ましくも穏やかな日々を過ごしたのだと思い込んでいたのだが、実際には豪姫はいなかったのか。妻と生き別れとなり、その後50年生きたというのは、想像するに切ない。

 

 どことなく、秀家の父・宇喜多直家を描いた同じ著者による「宇喜多の捨て嫁」との関連も感じられて、2冊を通して読むとなかなか味わい深いものがある。

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著者

木下昌輝
 

宇喜多の楽土 (文春文庫)

宇喜多の楽土 (文春文庫)

  • 作者:木下 昌輝
  • 発売日: 2021/01/04
  • メディア: Kindle版
 

 

 

登場する人物

宇喜多秀家

 

 

 

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「くたばれインターネット」 2016

くたばれインターネット (ele-king books)

★★★☆☆

 

あらすじ

 とある講演の内容がネットにアップされた事により、炎上してしまった中年の女性漫画家。

 

感想

 ネットでの炎上を扱った物語ということで、どのように炎上が起き、それに対してどのような対処をして鎮めていったのかというような事が描かれていくのかと思ったのだが、そうでもなかった。当事者はそれなりに気にはしているが、心を痛めるほどではないという程度だ。炎上に対してどのように行動したかは素っ気なく描かれ、その代わりに主人公や周囲の人物、そしてネットに関わる話などがつらつらと綴られていく。

 

 特徴としては、なかなか話が前に進まないというという事だ。何かにつけて話の腰を折るかのように脱線していく。何気なく出てきたワードに付随する知識や見解が、横道にそれて滔滔と述べられていき、その中には皮肉が効いたものもあって面白かったりはするのだが、回りくどさに辟易とすることもあった。名前が挙がる人物たちが白人かどうかを伝えるために、皮膚組織中に真性メラニンがみつかるかかどうかをいちいち報告したりもする。

 

 

 きっとネットの炎上を描きたかったというわけではなくて、便宜上そういったストーリーをこしらえただけで、それにかこつけて世の中のあれこれについてのよもやま話をしたかったのだろう。

 

 そんな話の中で印象的だったのは、ネットなんて広告のために存在するというものだ。確かに、ネットが普及しはじめた頃は人類の崇高な理念を実現させる画期的な発明のような捉え方がされていたのに、そのIT界の巨人Googleの儲けは広告収入が占めているということを知った時は、え、広告なの?と思ったものだ。結局は、広告料で稼いでいるテレビや雑誌と同じでしかない。

 

 だがテレビや雑誌と違うのは、彼らがクリエイターにギャラを渡してコンテンツを作っているのに対して、ツイッターやインスタグラムといったSNS企業はそんな事をする必要はないという事だ。ユーザーが投稿という形で、無償でどんどんとコンテンツを提供してくれる。ネット企業はそんなコンテンツの間に広告を設置するだけで大儲けができるというわけだ。

 

 だから彼らには崇高な理念もないし、差別や偏見もどうでもよくて、中身が何であれ、人々がヒートアップしてどんどんとコンテンツを提供してくれればそれでいい。そう考えると昨今のツイッタージャパンの不審な挙動もそういう事なのかもな、と納得してしまった。日本では、SNS企業に対してテレビ局のような偏向に対する規制もないのでやりたい放題だ。

 

 それから、インターネットは元々は軍事技術として開発されたので、その開発者たち、つまり白人で男性の思想が色濃く反映されている、というのも何となく理解できる気がする。世界中で緩やかではあるが確実に前進していた人種差別の撤廃や男女平等といった動きに対して、ここ最近ネットを中心として大きな反動が起きているようにも感じる。これは滅びつつある白人男性(と名誉白人と名誉男性)が優位な社会を立て直そうと、必死に抵抗する動きと言えるのかもしれない。

 

 その他では、ある登場人物が性転換している話とか、子どもがいる話とかが、話のついでのようにさらっと出てくるのがとても印象的だった。効果を狙って敢えてやっているのかもしれないが、もはやそういうことをわざわざ最初に言及しておく必要はない、という時代なのかもな、と少し感慨深くなってしまった。

 

 炎上事件が描かれると思ったのに、それよりもそれにまつわる周辺の出来事がだらだらと描かれるこの物語は、調べ物をするはずだったのにだらだらとSNSに興じてしまっている感覚と似ているかもしれない。おそらく著者はこれを意図的にやっている。

 

 このパラレルワールドにおいてネットが人々にもたらす効用というのは、まったきのまごうことなき、掛け値なしの幼児退行なのである。心が傷つくと人々はネットに繋がりこぞって不平を口にする。彼らはその相手を”ママ”と呼ぶ。だからネットを使うことは”ママに逃げ込む”と称される。

p256

 

 ネット企業が広告収入で儲けるために、様々なものを犠牲にしてせっせと無償でコンテンツを提供し続けるのは馬鹿らしいよね、ということだろう。それにネット企業は現実世界に悪影響を及ぼしているかもしれない。まさにタイトルの通り「くたばれインターネット」といったところだ。

 

 最後に、「tumblr」や「Pinterest」が翻訳で変なカタカナ語になっているのが気持ち悪かった。日本でもそれなりの知名度があると思われるので、ちゃんと一般的な「ピンタレスト」「タンブラー」というカタカナ語にして欲しかった。そのほかにもちょいちょい違和感のある言葉が出てきて、本編と関係なく気になってしまった。

Designing Tumblr デザイニング・タンブラー

Designing Tumblr デザイニング・タンブラー

  • 発売日: 2012/09/11
  • メディア: ペーパーバック
 

 

 

著者

ジャレット・コベック 

 

翻訳  浅倉卓弥

 

 

 

登場する作品

大統領の陰謀 (字幕版)

ジュリア [AmazonDVDコレクション]

ガラスの鍵 (光文社古典新訳文庫)

マルタの鷹〔改訳決定版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

Omaha the Cat Dancer (Omaha the Cat Dancer, 1)(オマハ・ザ・キャット・ダンサー」

LEAN IN(リーン・イン) 女性、仕事、リーダーへの意欲 (日本経済新聞出版)

「疑問の世代」 ゼイディー・スミス

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アイアンマン 2 (字幕版)

キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー (字幕版)

マイティ・ソー (字幕版)

アベンジャーズ (字幕版)

アイアンマン3 (字幕版)

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千一夜物語 13冊セット (岩波文庫)

アイド・ラザー・ゴー・ブラインド

Lady Margaret and Sweet William(マーガレットとウィリアム)」

Long Black Limousine(長い黒のリムジン)」

I'm So Depressed(アイム・ソー・ディプレスト)」

異星の客 (創元SF文庫)

ホビットの冒険 上 (岩波少年文庫)

新版 指輪物語〈1〉旅の仲間 上1 (評論社文庫)

エイリアンバスターズ (字幕版)

南の島のリゾート式恋愛セラピー (字幕版)

インターンシップ (字幕版)

人生、サイコー!(字幕版)

コレクションズ (上) (ハヤカワepi文庫)

ユリシーズ 1 (集英社文庫)

ニューロマンサー (ハヤカワ文庫SF)

スノウ・クラッシュ〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)

クリプトノミコン〈1〉チューリング (ハヤカワ文庫SF)

第七の予言

魔力の刻印

Infinite Jest (English Edition)(終わらない冗談)」

肩をすくめるアトラス 第一部

ザ・フェイム(初回生産限定特別価格)

ボーン・ディス・ウェイ(期間限定盤)

アートポップ

純粋理性批判 1 (光文社古典新訳文庫)

クラッシュ (創元SF文庫)

残虐行為展覧会

スーパー・カンヌ

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フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ〔上〕

血みどろ臓物ハイスクール (河出文庫)

日陰者ジュード(上)

New Gods by Jack Kirby(ニュー・ゴッド)」

Homeland (English Edition)(ホームランド)」

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Commoners Crown(コモナーズ・クラウン)」

マウス―アウシュヴィッツを生きのびた父親の物語

水源―The Fountainhead

摩天楼 [DVD]

Wild Dog (1987) #1 (English Edition)(ワイルド・ドッグ)」

「A Bouquet of Lovers(恋人たちに花束を)」 モーニング・グローリー・ゼル・ラベンハート

【合本版】ドラゴンランス 全25巻

My Black Mama 1 & 2(マイ・ブラック・ママ)」 

My Black Mama - Part I(マイ・ブラック・ママ・パート1)」

My Black Mama - Part Ii(マイ・ブラック・ママ・パート2)」

セント・ジェームス病院(セント・ジェームス病院のブルース)」

Unfortunate Rake(不運なレイク)」

Death Letter Blues (Album Version)(死の手紙のブルース)」

Vertigo Visions - The Phantom Stranger (1993) #1 (English Edition)(目眩)」

WATCHMEN 日本語版 (電撃コミックス)

Artaud Anthology(アルトー選集)」

【新訳】吠える その他の詩 (SWITCH LIBRARY)

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Superman: The Dailies, 1939-1940(スーパーマン)」

老人と海 (光文社古典新訳文庫)

ニーチェの馬 (字幕版)

ブラード・ラインズ~今夜はヘイ・ヘイ・ヘイ♪ [feat. T.I. & ファレル・ウィリアムス] [Explicit]

ティモシー・アーチャーの転生〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫SF)

ヴィレット(上) (白水Uブックス)

時計じかけのオレンジ 完全版 (ハヤカワepi文庫 ハ 1-1)

 

 

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「上海フリータクシー 野望と幻想を乗せて走る「新中国」の旅」 2020

上海フリータクシー:野望と幻想を乗せて走る「新中国」の旅

★★★★☆

 

内容

 アメリカ人ジャーナリストが中国でタクシーを運転し、乗客たちから本音を聞く。

 

感想

 まずは、今はどれぐらい交通マナーが良くなったのか、分からないが、あのカオスな交通事情の中国で、外国人が車を運転すること自体がすごいと思ってしまった。よくそんな気を起こしたなと感心する。

 

 著者が始めたのは、ただで車に乗せてあげるので、その代わりに話を聞かせてください、というフリータクシー。ただ、運転中の客との会話が紹介されていくのかと思ったらそうではなく、興味深い乗客と連絡を取り合い、家庭や会社を訪れるような深い付き合いをして、それぞれの考えていることを深く掘り下げて取材していくというやり方だった。

 

 

 様々な事が語られるのだが、やはり気になるのは政治体制の話。政府が締め付けをきつくしていく中で彼らが何を感じ、どう考えているのかが紹介されていく。彼らの多くが、今の体制は決して手放しで素晴らしいとは言えないが、かといってひどい状況とは思っていないというのは意外だった。

 

 でも考えてみれば、今の中国人たちは親たちの世代からは信じられないほどの良い暮らしが出来るようになったのは事実なわけで、それをさすがに最悪と言えないのは当然か。

 

 そして、冷静に中国の状況を見極められる知識層の中でも、中国の体制を良しとする人たちが出てきているというのも驚きだった。アメリカ大統領にトランプが選ばれた事がそのきっかけだったというのは面白い。それまで民主主義は素晴らしいと思っていた一部の中国人たちは、その欠陥をまざまざと見せつけられ、失望させられてしまった。

 

 そう考えると、トランプ大統領が誕生した時に、中国やロシアの政府が喜んでいたのも理解できる。民主主義体制の欠点を指摘して責めることで、自分たちの体制を強化するのに便利な存在だったということだろう。それだけトランプ大統領の誕生は世界中に色々なインパクトを与えた。

 

人びとが政治について語ることができなければ、体制を変える工夫に着手することなどできない、と共産党は知っている。端折られた会話、言いよどみ、そうした一つひとつが、独裁主義と政治的現状にとって小さな勝利になってゆく。

p33

 

 それから、もはや中国人たちは、政府が遮断している外の情報をそんなに求めなくなっているというのもショッキングだった。映画「マトリックス」のように真実の世界ではなく、与えられた世界で満足して過ごしている。ここ10年の中国の情報統制や監視体制の構築は成功をおさめつつあるということか。

マトリックス (字幕版)

マトリックス (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

 

 でも日本にも中国のような強権的な政府を望む人は一定程度いる。読みながら日本社会とそんなに変わらないかもと思うような箇所がたくさんあった。そういった社会にアメリカ人である著者は驚いたり憂慮したりしているが、日本人はきっと著者ほどには驚いたり憂慮したりはしないだろう。少しは理解できてしまうような気がする。

 

 このような政治体制の話だけでなく、この他にも家族や道徳、宗教の話、政府に抵抗を続ける人たちの話など、興味深い話が次々と出てきて面白かった。そして、生きていくために、より良い暮らしのために、中国各地、世界各地を飛び回る彼らのバイタリティには本当に圧倒される。

 

 なんとなく中国はここ最近、力をつけてきた国みたいに考えがちだが、長い人類の歴史の中で考えてみれば、ここ200年くらい調子が悪かっただけで、結局、今の位置が定位置、という事なのかもしれないなと思ったりした。

 

著者

フランク・ラングフィット  

 

上海フリータクシー:野望と幻想を乗せて走る「新中国」の旅

上海フリータクシー:野望と幻想を乗せて走る「新中国」の旅

 

 

 

登場する作品

Take Me Home, Country Roads

イエスタデイ・ワンス・モア

ケアレス・ウィスパー

「墓碑 中国六十年代大飢荒紀実」 楊継縄

「習大大愛着彭麻麻」

Scarborough Fair / Canticle(スカボロー・フェア)」

「主よ、あなたに付き従う」

「剣客」 賈島

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ファインディング・ニモ (字幕版)

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華麗なるギャツビー (字幕版)

We Are The World

「溢れんばかりの花が満開」

「憫農」 李紳

ファン・ファン・ファン (Mono, 2001 Digital Remaster)

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The People's Republic of Amnesia: Tiananmen Revisited (English Edition)(記憶喪失人民共和国 天安門再訪)」 ルイザ・リム

阿Q正伝

サマータイム

「アメイジング・チャイナ(厲害了,我的國)」

タイタニック (字幕版)

  

 

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