感想
世間の人に気の毒だと思われていても、実のところ本人は全然そんなことなく充実して過ごしている事もある。
この本はいくつかの短編からなっているが、中でも「家においでよ」が良かった。奥さんに家財道具もろとも出て行かれた男が、一人取り残されたマンションを自分の城へ変えていく話。きっと結婚している男たちはうらやましいと思うのではないだろうか。
子供の頃に思い描いた夢のある暮らし。でも、現実には奥さんの意向もあるので自分のわがままは通せないし、子供部屋を割り当てたりしていたら、自分の部屋なんて無い事になる。好きなもので埋め尽くされた自分の部屋を持っている既婚者なんて、世にどれだけいるのだろう。
最後の「妻と玄米御飯」は著者の実話なのかと疑いたくなる内容。近年のエコブームを小馬鹿にしたいけど、周りの人達には白い目で見られたくないからとこれを書いたのなら相当うまいな、と思わせる。エコを皮肉りたいけど躊躇する小説家の話を書く小説家、だともうわけが分からなくなって、著者の本心がうまくはぐらかされているような気がする。
著者
関連する作品
「ここが青山」収録