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「暗渠の宿」 2006

暗渠の宿 (新潮文庫)

★★★★☆

 

内容

 芥川賞受賞会見での発言が話題となった著者の作品。

 

感想

 誰にでもコンプレックスはあるものだが、それをひた隠しにする人と敢えてさらけ出す人がいる。後者は他人に知られて馬鹿にされるくらいなら先にさらけ出してしまえ、と言う怯えからくるものだと思うが、得てしてこういう人は攻撃的。時には武器にもする。「~だからって馬鹿にしてるだろ。」みたいな言葉。世の中にはそれを利用して生活している人もいるようだが。

 

 主人公は中卒にコンプレックスを抱えているが、それとは逆に人に優越感を感じているのは東京生まれ、江戸っ子という事なのだろう。気に入らない人間にはとにかく田舎者と馬鹿にする。

 

 

 勝手に被害妄想に陥り暴力的になったり、異常に一人の作家に執着したり、女を手に入れようと必死になったり、人間味あふれる面白い人だ。近付きたくはないけどちょっと遠くで見ていたい人。でもこういう人というのは自分の衝動に正直で何も考えていなさそうなのに、冷静な自己分析が随所に見られてそこがちょっと怖くもある。

 

 いいカッコしたり媚びたりしながら、必死に風俗の女性と付き合おうとしてようやくそれが実りそうになったら、安心してぼろぼろとボロが出てくるところが面白い。

 

著者

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暗渠の宿 (新潮文庫)

暗渠の宿 (新潮文庫)

 

 

 

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