★★★★☆
内容
インドの貧しい人々を救うことに一生を捧げたマザー・テレサの伝記映画。
感想
彼女のしたことは文句なしにすごい事で、真似しようと思っても生半可な気持ちでは無理な事だということは分かるのだが、宗教が絡んでいるとなぜか一言言いたくなる。
彼女は宗教をうまく利用した人だな、と思う。彼女のもともとの性格、思い込んだら誰の意見も聞かず、我が道を進もうとするその性格を、宗教で強化したというか。こういう人は何かの壁にぶつかったときや自分の思い通りにならなかったときに変な方向に進んでしまったり、うまくいきすぎた時は慢心して道を踏み外したりしがちだ。
だけど、彼女はうまくいったときは神様に感謝し、うまくいかなかったときは神様の与えた試練とくじけなかった。それが彼女を常に謙虚にし、一貫した行動をとる人間にした。宗教を他者にではなく、自分自身にうまく作用させているなという感じがする。
彼女が新しい協会を設立しようとしたときに訪れた司祭に述べた、私はペンでそれを使って描くのは神様、という解釈は、神様を利用している感がある。うまいこと言って丸め込んだような感じだが、でもきっと彼女は本当にそう感じていたのだろう。
どちらにしてもこういう事を出来る人っていうのは信念がある人で、そういった意味では宗教というのは存在意義があるのかなって思う。本当は神様じゃなくて自分を信じられればそれで済むのだけれど。
だけどこうやって人の心を強化する作用のある宗教は、悪い方にも利用されることがあって、テロリストになって自爆テロなんかを起こしてしまう事もある。だから、自分が正しいと疑いもなく思っている人たちはたちが悪いと感じてしまう事もあって、ましてや自分でもない、神様のような誰も見たこともない存在を、絶対的に信じている人はもっと厄介に感じてしまう。
と、宗教にちょっと引っ掛かってしまうけど、やはり彼女がすごいのは間違いない。賛同者が現れ次第に大きくなっていく団体を、組織化してシスティマティックにして活動するのではなく、あくまでも個人個人の想いを大事にした活動をしようとしたその意思は、素晴らしい事だな、と思う。
けどこういう人の事を何と評せばいいのかわからなくなってくる。すごいとか素晴らしいとかいう表現は自分が偉そうに使っていいのかと思ってしまう。
スタッフ/キャスト
監督 ファブリツィオ・コスタ
出演 オリヴィア・ハッセー/ラウラ・モランテ/ミヒャエル・メンドル/ヴァレリア・カヴァッリ/イングリッド・ルビオ