★★☆☆☆
内容
近年注目されるようになった、成功するために重要な要素、「グリット(GRIT)」について書かれた本。
感想
著者は広告代理店を共同で創業した二人の女性。なので科学的な話というよりも、グリットの実例を集めた自己啓発的な内容となっている。
まず「グリット」という言葉が分かり辛いが、簡単に言えば「度胸」「復元力」「自発性」「執念」という要素で構成される「やり抜く力」の事。多くの成功者を調査すると才能やIQよりも、このグリットの有無が重要な要素だったという。
つまり才能ばかりが過大評価されるけれども、才能というやつは、一貫して正しい方法で使わないかぎり価値はない。必要とされる労力、ハードワークをつぎ込まないかぎり、それはまだ描かれていない名画、書かれていないソナタ、見つかっていない科学的大発見、実現していない発明と同じである。
p31
グリットがなければ成功しないという話は同意できる。ただ問題はこの「グリット」という言葉の意味するものが曖昧なこと。グリットを構成する要素にしても曖昧で様々に解釈できる。この本もその辺が怪しくて、様々な事例を紹介しているが、本書の構成に合わせて、都合よく解釈しているだけのようにも思えてしまう。常に客観的なデータを示すわけではないので尚更だ。
本書では著者たちの広告代理店の担当者たちが寝る間も惜しんで働き、でかい仕事を獲得した話を紹介し、グリットのおかげだとしている。だけど、悪い方向に転べば、ブラック企業と呼ばれてしまった居酒屋チェーンのようになっていたかもしれない。自分が死ぬほどハードワークするのは自由だが、他人に定義が曖昧なグリットを求めるのは危険な気がする。
才能やIQではなく、誰もが身につけられるグリットが成功を左右するというのは、勇気づけられる話ではある。だがもし皆が同じようにグリットを身につけられるなら、結局、才能やIQが成功の可否を握ることになる。でもきっとそうはならないということは、グリットを身につけるということ自体にも才能が必要だということなのかもしれない。
最後の章で、グリットは善き行いを目指すという話になるのが取ってつけたような偽善のような嘘っぽさを感じてしまった。グリットは善き行いをする際にも活かされます、なら許せたけど。自己啓発書として考えるなら悪くない展開なのかもしれないが。
著書
リンダ・キャプラン・セイラー/ロビン・コヴァル
登場する作品
なぜ、この人たちは金持ちになったのか (日経ビジネス人文庫)
In a Fisherman's Language: An Autobiography by Captain James Arruda Henry (English Edition)