★★★☆☆
内容
何を買うにも現代では様々な選択肢がある。選択肢が豊富なのは良いことのはずなのに、どうしていつも選んだ後にかすかな不満や後悔を抱えてしまうのか。その理由を心理学者が解き明かす。
感想
何かを選ぶということは、それ以外の選択肢を切り捨てることで、人はその選ばなかった選択肢をもし選んでいたらどうなっていただろうかと考えてしまいがちである。その選択で得られたはずの幸せの事を考えると、なんだか選択を失敗したような気分になり、次第に後悔が募ってくる。選ばなかった選択肢が多ければ多いほど、後悔は大きくなっていく。選択肢が多いということは幸せなことのはずなのに、そのせいで不満が大きくなってしまうという矛盾。
何かを選ぶときの姿勢も影響する。あらゆる選択肢の中からベストなものを選ぶのか、それともそこそこのものを選ぶのか。例えばセーターを買おうとした場合、ベストなものを買おうとすればすべての店を見て回ることになり、かなりの時間的コストを費やすことになる。
そうやってベストだと思ったセーターを買ったとしても、誰かがそれよりも素敵なセーターを着ているのを見た瞬間に、自分の買い物が失敗したと後悔することになる。そんな極端な人間はいないと思ってしまうが、全てのものではなくても、あるジャンルにおいてはベストのものを買おうとするということならば、ほとんどの人に当てはまる。
その他にも選択に関する様々な考察、過剰な選択肢が引き起こす問題などが述べられ、最終章では、どうすればなるべく後悔することなく選べるようになるかのポイントが紹介されている。その中のアドバイスで、あえて制約を設ける、というのはなかなか良さそうだ。制限を設けることで自ら選択肢を狭める。制限は、思想信条だったり、規範のある集団に属することで設定できる。
選択という行為は何も買い物の場面だけで行われるのではなく、人生のあらゆる場面で行われるものである。大して重要でないどうでもいい選択で消耗してしまって、人生に訪れる重要な岐路で選択を誤ることがないようにしたいものだ。
著者
バリー・シュワルツ
新装版 なぜ選ぶたびに後悔するのか オプション過剰時代の賢い選択術
- 作者: バリーシュワルツ,瑞穂のりこ
- 出版社/メーカー: 武田ランダムハウスジャパン
- 発売日: 2012/10/25
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- 購入: 2人 クリック: 5回
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登場する作品
The Silent World of Doctor and Patient
Moral Freedom: The Search for Virtue in a World of Choice
The American Paradox: Spiritual Hunger in an Age of Plenty
The Loss of Happiness in Market Democracies (The Institution for Social and Policy Studies)
Exit, Voice, and Loyalty: Responses to Decline in Firms, Organizations, and States
Quarterlife Crisis: The Unique Challenges of Life in Your Twenties
Regret: The Persistence of the Possible
人間の喜びと経済的価値―経済学と心理学の接点を求めて (1979年)
Choosing the Right Pond: Human Behavior and the Quest for Status
Bowling Alone: The Collapse and Revival of American Community
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