★★★☆☆
内容
ポジティブ心理学者がウェブサイトに寄稿した記事をまとめたもの。
感想
そもそも「ポジティブ心理学」とは何か?
ポジティブ心理学とは、人生においてよい方向に向かうことについて科学的に研究する学問である。
p171
ということのようだ。もともと心理学は、精神疾患の治療に重点が置かれていた部分があるので、普通に戻すための研究だけではなく、普通の人がより良い状態、より幸せな状態になる研究もするべきじゃないか、という意味合いがあるようだ。
なんとなく言っていることは分かるのだが、個人的には今いち把握できない部分がある。精神疾患の研究においても、どうすれば悪化するかのネガティブな面ばかり見ているわけではなく、こうすれば改善するとか予防できるというポジティブな面も研究するはず。ポジティブ心理学にしても、ポジティブな状態だけじゃなくネガティブな状態についても調べることになるはずで、どんな研究にしてもポジティブとネガティブ、両面を研究することになる。なので、あえて「ポジティブ心理学」と言う必要があるのだろうかと疑問に感じた。
どんな研究もポジティブとネガティブの両面を見るのであれば、一つの研究を見ただけではその人はポジティブ心理学者なのかは判断できない。その人の複数の研究を見て、この人はポジティブな面に重点を置いた研究をしているようだから、ポジティブ心理学者だろうという推測しかできないような気がする。なので学問というよりは主義のようなものに感じてしまう。
本書はウェブサイトの記事をまとめたものなので、各記事を「省察」としていることからも分かるが、気軽に読めるようなあまり深入りしない内容の記事が並んでいる。内容もポジティブ心理学の研究成果を一つずつ紹介していくというわけでもなく、研究の前提やら研究の結果に対する考察、ポジティブ心理学界隈に関する所感など、ポジティブ心理学自体というよりも、その周辺の話題が多いように感じた。研究の前提に関する考察は難解で分かりづらい部分もあった。
幸せを得るには他者と関わる事が重要だとか、自尊心の低い人は幸福な状況にいても自分にはふさわしくないからと、幸せを享受しようとしない傾向があるとか、面白い考察もあった。沢山の本に囲まれた家庭で育った子供は学校に通う年数が長くなる=高学歴になるという研究結果もあって、今後電子書籍が普及して親が読書家であっても本自体は一冊も家庭に無かった場合はどうなるのか、気になる点でもある。やはり結果は変わってしまうのだろうか。
各考察が読みやすい文量になっているので、ポジティブ心理学の本としてではなく、ポジティブ心理学に軸をおいたコラムとして気軽に楽しむにはいいのかもしれない。
著者
クリストファー・ピーターソン
登場する作品
The Science of Subjective Well-Being
Current Concepts of Positive Mental Health
You Never Even Call Me By My Name
国境を越えた医師―Mountains Beyond Mountains (小プロブックス)
スリー・カップス・オブ・ティー (Sanctuary books)