★★★★☆
あらすじ
中国から息子一家の暮らすアメリカに移り住んだ老人は、言葉の通じない息子の嫁と過ごす日中に孤独を感じていた。アン・リー監督デビュー作。
感想
冒頭の太極拳をする中国人の老人と、苛立たしげな素振りの若い白人の女が一緒の家にいるシーン、どういう状況なのかいろいろと考えてしまった。ただそれもアジア人の男性が子どもを連れて帰ってくることで一気に状況が把握できた。この辺りの見せ方が上手い。
言葉の通じない夫の父親と日中を過ごし、ストレスを抱える妻。言葉はわからなくても色々とコミュニケーションを図る方法はあるはずで、もっと努力しろよといいたくもなるが、そういう事を一通りした後の結果なのかもしれない。同じ場所にいながら違うものを食べ、頑なに自分のやり方を貫いている。
中国で苦労した父親を呼び寄せ、幸せに暮らすという息子の理想。息子の奥さんだって出来ることならそれを叶えてやりたいはずだ。だけどその理想のために、それぞれがどこかで無理をしていると結局、小さな衝突があちこちで起き、ギクシャクしたものになってしまう。
理想を追い求めるよりも、互いに無理をしなくても済むような、適切な距離感を保つことが大事になってくる。この映画のタイトルである太極拳の練習方法の一つ「推手」の極意にも絡めて、そんなメッセージが伝わってくる。
老人がメインで恋愛なんかも描かれるのだが、爽やかさを感じる結末になっている。それは恐らく、この老人を変に同情や憐憫の目で見ることなく、一人の人間として扱っているからだろう。時々ユーモアを交えながら、心温まる物語に仕上がっている。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/製作 アン・リー
出演 ラン・シャン/ワン・ライ/ワン・ボーチャオ/デブ・スナイダー
関連する作品
アン・リー監督 父親三部作 第2作
アン・リー監督 父親三部作 第3作