★★★☆☆
あらすじ
日本の大学に通うスイス人留学生は、本を読み聞かせるボランティアをするために盲目の若い女性の家に通うようになる。
感想
主人公は、点字にされていない本を読みたい盲目の人のために、本を読み聞かせるボランティアだ。確かにそういう人のためには価値のあるボランティアだと思うが、なぜネイティブでない外国人がやるのかが不思議だ。外国人にとっては日本語の勉強になるからというメリットがあるからか。
鈴木保奈美演じる盲目の女性は、自分をしっかり持っているような動じない人間で、吸い込まれてしまいそうな雰囲気を持っている。自信を持っているからこちらが不安を感じた分だけ寄せ付けられてしまうような、少し怖く感じる部分もある。二人が付き合い始めたのも当然、というような感じがした。
留学生はその後のジャーナリストになっていく過程を、「蟻地獄に引きずり込まれるように」と表現していたが、二人が付き合い始めたことのほうがよっぽどその表現がしっくりくる。女性の狙い通りに仕留められた感がある。「砂の女」を朗読していたので、そのあたりは意識していたような気もするが。
主人公は日本語もペラペラで十分日本社会に馴染んでいるつもりなのに、いつまで経っても周りに外人扱いされることに苛ついていたが、それは仕方ないと感じてしまう部分もある。英語で話しかけてくる人だって、悪意ではなく善意でやっている。皆が主人公のことを理解してくれるような田舎の小さなコミュニティではなく、知らない人が行き交う都会では見た目で判断されがちではある。大学でのように、外国人だからと最初から色眼鏡で見てしまっていることもあるが。
だから、見た目で判断しない盲目の女性に惹かれた部分もあるのだろう。そんな彼も、盲目の女性に対してステレオタイプな見方をしてしまったりもするわけだが。
なんとなく日本の昔の映画のような、クラシカルな趣のある恋愛映画だった。
スタッフ/キャスト
監督/脚色/企画/編集 森本功
製作/出演 塩屋俊
出演 エドワード・アタートン/鈴木保奈美/中田喜子/蟹江敬三/渡辺哲