★★★★☆
あらすじ
死んだ母親の遺書にもとづき、彼女の祖国レバノンで父親と兄を探すことになった双子の兄弟。
感想
静かな映画。母親の生涯とそれを辿る子供たちが交互に淡々と描かれていく。それだけにレバノン内戦下での母親の過酷な人生がより際立つ。何が起ころうがもはやいちいち騒いでいられない、ということでもあるのかもしれない。
移民を多く受け入れている国では、祖国で想像を超えるような過酷な経験をした人たちが自分たちの隣近所で暮らしているということもあるのか、と考えると不思議な気もする。きっと彼らはそんな経験をしたことを大っぴらには語るはずがないだろうし。
映画はやがて母親のレバノンでの足跡が明らかになり、その終盤で母親がなぜ奇妙な遺言を残したのか、その理由も判明する。なかなかに衝撃的な事実が明らかになるのだが、それすらも無駄に過剰な演出をせず、淡々としていて好印象。
しかし宗教が違うというだけで、簡単に殺せてしまうというのは何なのだろう。同じ宗教の教徒だ、とアピールするだけで助かるというのもよくわからない。そして何が理由にせよ、一度争いが始まるとそれを終わらせることは至難の業だ。レバノンのこんな広大で美しい自然の中でも、争いごとが起きてしまうのかと虚しい気持ちになる。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 ドゥニ・ヴィルヌーヴ
出演 ルブナ・アザバル/メリッサ・デゾルモー=プーラン/マクシム・ゴーデット/レミ・ジラール