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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「ルーム」 2015

ルーム(字幕版)

★★★☆☆

 

あらすじ

 高校生の時に誘拐されて以降、閉ざされた狭い部屋に監禁され、犯人との間に生まれた子供と共に暮らす女は、息子を説き伏せて脱出を図る。

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 2008年オーストリアで発覚したフリッツル事件を基にした小説が原作。アカデミー賞主演女優賞。

フリッツル事件 - Wikipedia

 

感想

 映画の冒頭は母親と幼い息子の姿を映し出す。どこにでもいるような親子の姿のように見えるが、次第に異変に気づく。一日中狭い家の中にいて、運動ですら狭い部屋の中。誕生日のケーキのろうそくがなくても買いに行こうともしない。家を出ようとしないのだ。

 

 最初は理由もわからず、変わり映えのしない部屋の中のシーンが続いて閉塞感が漂うが、次第に事情が分かるにつれて背筋に冷たいものが走り出す。そこに子供がいることの意味、そして成長して5歳になっているという長い年月の意味。

 

 

 生まれたときから一切外に出たことがない少年。天窓から見える僅かな空だけが外とのつながりだ。母親は外に出られない言い訳に嘘を教え込む。だがテレビは見ることが出来るので、ちょっとそれは苦しいような気もする。実際のところはわからないが。

 

 母親が考え出して子供が実行したプランによって、ついに外の世界に戻ることが出来た二人。ちょっとリアリティ的に問題があるような気がするが、脱出の緊迫感はなかなかだった。そして、少年から聞き出した僅かな情報をもとに、速攻で現場を見つけ出してしまう警察は有能過ぎだ。

 

 母親と両親の感動の再会でめでたしめでたし、で終わらないところはリアルだ。最初は互いに労りあっていた家族もストレスでギクシャクしたり、親にとっては可愛い娘の子供でもあるが、卑劣な犯罪者の子供でもあるというジレンマ。様々な問題が浮き彫りになる。

 

 映画は、母親以外との接触がまったくなかった幼い子供に焦点が当てられている。彼が初めて見た世界はどうだったのか。確かに興味深くはあるのだが、子供にとってはただ新しい環境に移っただけだ。ここまで特異な事情は滅多にないにしても、こういう環境の変化は子供にはよくある話で、実はそんなに珍しくないのかもしれない。

 

 そんなことよりも、子供にばかり気がいっておざなりにしてしまっている母親のほうが精神的にしんどいに決まっている。普通の生活から、異常な環境で生活することを余儀なくされ、何とか脱出することが出来た後も、その過去を抱えて生きていかなければならない。どう考えてもまだまだハードモードだ。

 

 確かに、子役の少年は信じられないくらいいい演技をしていて、メインにしたい気持ちはわかるが、やはり母親を中心に描かなくてはいけないような気がする。

 

 それでも、ラストで少年が母親にかけた最後の一言は良かった。

 

スタッフ/キャスト

監督 レニー・エイブラハムソン

 

原作 部屋 上・インサイド (講談社文庫)

 

出演 ブリー・ラーソン/ジェイコブ・トレンブレイ/ジョアン・アレン/ショーン・ブリジャース/ウィリアム・H・メイシー/トム・マッカムス/ウェンディ・クルーソン

 

ルーム(字幕版)

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  • ブリー・ラーソン
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