★★★☆☆
あらすじ
学校へも行かず、家の一室に籠もって日々を過ごす姉弟と、そこに通う友人。
感想
雪合戦での怪我がもとで家での静養を余儀なくされた少年と、それを看病する姉。母親が亡くなり、二人だけで暮らすことになった姉弟は、世間から隔離された部屋の中で、独自の世界を作り上げていく。
そしてそこに足繁く通う少年を交え、永遠のように繰り返される日々。狭い一室で姉弟は罵り合っては、マウントを取り合う。それはもはや日常で、毎日のように演じられる舞台劇のようですらある。二人がそのように反目しあっていながらもそのような日々を続けるのは、結局互いに愛していたからだろう。だからこそ、相手を手中に収めておきたくてマウントを取ろうとする。
彼らの世界には、外部からの力は及ばない。成長するにつれ、二人の暮らしに変化が訪れるが、その度にまるでそれに抗うかのように元の世界を維持しようとする不思議な力が働く。姉弟もどこかで互いにそれを望み、相手もそう望んでいるかどうかを密かに確認している。
しかし時の流れは、彼らの世界をそのままにしておくわけにはいかない。姉弟を引き離そうとする力と、それを拒む力。二つの力がぶつかった時、悲劇が起きる。悲しい出来事のはずではあるが、姉の企みを知った弟の、アイコンタクトだけで瞬時にそれに乗っかかるある意味でのノリの良さ、それが出来るだけの二人の間での共通理解があることに、一種の様式美のような美しさを感じてしまった。
著者
ジャン・コクトー
登場する作品
「アタリー」
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