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「淵に立つ」 2016

淵に立つ

★★★☆☆

 

あらすじ

 町工場を営む男の前に服役していたかつての友人が現れ、住み込みで働くことになる。

 

感想

 町工場を営む一家。会話のほとんどない夫婦で、妻と娘は食事の前に祈りを捧げ、夫はそれに無関心、という少し違和感を感じる家庭ではあるが、概ね平穏な家庭といっていいのかもしれない。そこに一人の男が現れる。

 

 この男を演じる浅野忠信の得体の知れなさがいい。寝るときもピクニックに出かけるときも、いつもワイシャツにスラックスで革靴。殺人で服役していたが今は反省していると言い、礼儀正しく誠実さを感じさせるが、それをそのまま受け取ってしまっていいのか、どこか確信が持てない雰囲気を漂わせている。

 

 この男の存在が一家に大きな変化を生むことになる。殺人事件の共犯者で男に庇われて罪を免れた夫は、男に負い目を感じ、妻は男の真摯さに惹かれ、そして何も知らない娘は男に懐いてしまう。そして事件は起きた。

 

 浅野忠信演じる男が、もしかしたらそのままの、礼儀正しく誠実な男でしかないのではないか?と疑い始めていたので、正直、男が変化したときにはホッとした部分もある。このまま、ずっと真面目なことを語られていたら辛いなと感じていた。重大な事件が起き、8年の年月が過ぎる。

 

 物語はこの得体の知れない男が残した傷跡についての物語、と言っていいのかもしれない。登場人物たちは基本的には善人なのだが、悪意のない好奇心が周囲を傷つけている。男に関心を持った妻は結果として娘を傷つけ、息子の父親に対する好奇心は、結果として一家を傷つけることになった。好奇心から淵を覗き込んだら、淵に吸い込まれてしまったかのよう。逆に夫は、怖くてちゃんと淵の中身を見ることが出来なかったのかもしれない。

 

 何かを示唆するような冒頭の母娘の会話や、男と妻の会話、モノクロの服しか着なかった男が突然赤い服を身につけるシーンなど、若干わざとらしく感じる部分も無いではなかった。ただ、多くを語っているようでいて肝心なことは何も明かさない演出で、物語に深みがあり、見る度に様々な解釈が生まれそうな映画となっている。

 

監督/脚本/編集 深田晃司

 

出演

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筒井真理子古舘寛治/太賀/三浦貴大

 

淵に立つ

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淵に立つ - Wikipedia

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