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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「Focus」 1996

[Focus]

★★★★☆

 

あらすじ

 盗聴マニアの男を取材していた撮影クルーが、偶然耳にした犯罪の情報を追おうとしたことから事件が起きてしまう。

 

感想

 ドキュメンタリー風の映画、いわゆるモキュメンタリー。この形式だと、普通はそんな危険そうな所に近づかないだろうという所に、登場人物たちが向かってしまうのも何故かすんなり理解できてしまうから不思議だ。危険な場所でインスタ映えを狙って写真を撮ろうとして死んだ人が世界にはたくさんいるらしいが、それと同じことだろう。自分と現実の間にカメラを挟んだだけで、一気に現実味がなくなるというか、どこか第三者的な安全な世界にいるような気になって、無茶ができてしまう。

 

 カメラマンを含めて主要人物はわずか4人。浅野忠信演じる盗聴マニアの男を白井晃演じるディレクターが取材しているという形式。このディレクターの押しの強い感じが、いかにもテレビの人間といった雰囲気を醸し出している。低姿勢のようでいて、相手の弱みや人の良さに付け込み、無神経に踏み込んで、主導権を握ろうとする。口調も敬語だったり上から目線だったり、媚びたり怒ったりとコロコロ変わる。

 

 

 そして取材の最中に偶然盗聴した犯罪情報に首を突っ込んでいく撮影隊。この辺り、もしかしたら当時は、これだからマスコミは…みたいな反応だったのかもしれないが、今だったら皆が、良い画が取れたらSNSでたくさんいいね!が貰えそうだし、バズりそうだもんね、と彼らの気持ちがよく理解できてしまうところかもしれない。

 

 ついに事件が起き、それまでディレクターに押され気味だった盗聴マニアの男の怒りが爆発し、主導権が彼に渡る。男が主導権を握ってからは、今度は彼がディレクターに変わって、カメラマンにどういう風に撮るかの指示を出し始めるのが面白い。カメラマンもそれに素直に従う。

 

 ラストなんて完全に男が何かを撮影する意味がないのに指示を出していて、不思議なのだが何となく理解できてしまう自分がいる。主導権を握るというのはこういうことなのかもしれない。相手が何を見るかですら自分が決める。

 

 リアリティーがあり、緊張感もあり、モキュメンタリーの良さがよく出ている作品になっている。話がどこへ向かうのか、気を休める暇のない展開で、テンポも良く面白かった。

 

スタッフ/キャスト

監督/編集 井坂聡

 

出演

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白井晃/海野けい子/鈴木一功/高田瑞紀

 

出演/撮影/照明 佐野哲郎

 

[Focus]
 

Focus (映画) - Wikipedia

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