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「鳥頭なんて誰が言った? 動物の「知能」にかんする大いなる誤解」 2019

鳥頭なんて誰が言った? 動物の「知能」にかんする大いなる誤解

 

★★★☆☆

 

内容

  生き物について考えるとき、人々は当然のように人類を最も知能の発達した存在としているが、それは果たして真実といえるのだろうか?フランス人生物学者による考察。

 

感想

 タイトルから鳥類や生き物に関する面白話が書かれた本かと想像してしまったが、そうではなく動物の「知能」に関する内容の本だった。著書は、最も知能の高い生き物は「人間」である、という共通認識に疑問を投げかけている。本書ではそんな認識の根拠となっている考え方について一つ一つ反証していく。

 

 具体的には、人間は唯一道具を使えるだとか、生み出した技術を伝承していくことができるとか、共感する力があるという説に対して、他の生き物たちも道具を使ったり、技術を伝承している事実を挙げ、それが出来るのは決して人間だけじゃないことを教えてくれる。さらには生き物たちの人間以上に優れた能力までが紹介される。

 

 

 そのような話を読み進めているうちに、次第に人間と他の動物との大きな違いは何なのだろうと考えこんでしまう。さらには、そもそも知能とは何だろうというところまで疑問は膨らんでくる。

 

 著者も本の中でそれに触れ、もし生き残ることが知能の高さだというのなら、人類の誕生の前から存在し、人類が滅んだ後も生き残るだろう生物のほうが知能が高いといえるのかもしれない、と述べている。確かに数億年後には「人類とかいうそんな生き物もいたが、愚かにも滅びてしまったよ」と言われているのかもしれない。誰がそれを言っているのかは分からないが。

 

 そう考えると、文明を発達させること自体があまり頭のいいことではないように思えてきて訳が分からなくなる。過去には高度に発達した文明が滅んだこともあるわけで、意外と頭の悪い戦略なのかもしれない。自らが作り上げた社会でストレスを抱えて生きるよりも、昆虫のように幸福だとか不幸とかの概念すらない世界で黙々と、子孫を繁栄させて生存していくほうがよっぽど賢いのかもしれないと思えてきた。

 

 本書は、知能とは何か?ということに主眼が置かれているので難しい話になりがちで、なかなかすらすら読むというわけにはいかなかった。時々、動物の面白いエピソードが語られてページをめくる手に勢いが出るのだが、すぐに抽象的な知能に関する話に戻ってしまってトーンダウンしてしまう。なかなかリズムがつかめない本だった。

 

 また内容とは関係ないが、章の中の節のタイトルがページ見開きの最終行に書かれ、次のページをめくると本文が始まるというパターンが多く、精神衛生的に気持ち悪かった。それから翻訳の仕方のせいか、いくつか意味の通じない文章もあり、それも文章のリズムの悪さに一役買ってしまっている気がした。

 

著者

エマニュエル・プイドバ

 

 

 

登場する作品

Le Singe, l'Afrique et l'homme

森の隣人―チンパンジーと私 (朝日選書)

心を育てる せかいむかしばなし 6 イソップ童話2 ― カラスと水差し他9話

 

 

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