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「鳴門秘帖」 1927

鳴門秘帖 全6巻合本版

★★★★☆

 

あらすじ

 倒幕の動きの疑いがある阿波徳島藩の内情を探るために潜入し、その後消息を絶った隠密を探すため、阿波入国の手立てを探る主人公たち。

 

感想

 冒頭の入れ替わり立ち替わり、次々と様々な登場人物が現れる展開が面白い。しばらくは誰が中心の物語なのかわからなかった。一応、主人公は虚無僧姿で放浪する男だが、それぞれの視点で語られる群像劇と言ってもいいかもしれない。

 

 たくさんの登場人物で把握できるかなと不安になるが、程よく脱落していくので何とかついていける。ただ皆結構あっさりと死んでしまって驚くことも多いが、意外性があっていい。そしてなぜか登場する平賀源内が若干浮いているような気がしないでもない。

 

 男前で、大体の女には惚れられてしまう主人公。言い寄る女にはあいまいな態度でお茶を濁しているのに、なぜか料理屋の娘にだけは俺のために徳島藩の男の愛人として現地の内情を探っておいていくれとか、身代わりになれとか甘言を弄して言いように使おうとするのは可哀そうだった。彼女が一番気の毒な扱いかもしれない。

 

 その彼女は徳島藩の男に拉致されて無理やり愛人にさせられたり、主人公の幼馴染の女はある男に幽閉されていたりと、なかなか荒いことをされている。登場人物たちがあっさり殺されたりするのもそうだし、大阪で仲間が目の前で徳島に連れ去られても助けようともせず一旦江戸に戻っちゃったりと、どこかナチュラルに人の命を軽く描いている感じが、江戸時代ではなく、これが書かれた昭和初期という時代を感じてしまう。

 

 江戸、大阪、徳島と広い地域を舞台にしていながら、登場人物たちが様々なところで偶然出会うという都合の良すぎるシーンがありすぎるのが気になるが、先の読めない展開が続いてかなりの長編だがぐいぐいと引き込まれる。細かい問題点はないわけじゃないが、そんなのが気にならないくらい面白い。まさに皆が楽しめる大衆娯楽小説だ。何度も映画化やドラマ化されているのも納得できる。

 

 昨年もNHKがBSでドラマ化したようだが、それでもこの小説は段々と映像化されることは少なくなり、世の中から消えていっている。自分もこの小説の存在を知らなかった。こんなに大人気だった作品ですらこんな感じだとすると、歴史に名を残すような作品を残すという事はとてつもないことだなと強く思わずにはいられない。

 

著者 吉川英治

 

鳴門秘帖 01 上方の巻

鳴門秘帖 01 上方の巻

 

鳴門秘帖 - Wikipedia

 

 

登場する作品

八?通志(修?本)(套装共2册)

「還 家 抄」

 

 

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