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「紙屋悦子の青春」 2006

紙屋悦子の青春 [DVD] 

★★★☆☆

 

あらすじ

 太平洋戦争末期、鹿児島県で兄夫婦と暮らす女性に、縁談が持ち上がる。

 

感想

 病院の屋上での老後を迎えた主人公夫婦のシーンから映画は始まる。二人はとりとめのない会話を交わしている。このシーンが10分ほど、ほとんどカットも変わらず続き、もしかしてここのシーンだけで映画は展開されるのかと、一瞬不安になってしまった。

 

 それから戦争末期の二人の若いころに舞台が移る。ただこちらもほとんど舞台は主人公たちの住む家の中だけ。会話が中心の映画で、それに気づき慣れるまではペースを掴むのに苦労した。

 

 

 ただそれが分かってくると、妹に見合いを切り出す兄の気まずさや、久々に夫が帰ってくることを喜び、でもどこかで道草をしていた事に拗ねている兄嫁の可愛らしさや、見合いで緊張し固くなりながらも主人公を気に入っている様子の若い青年の初々しさなど、会話の中にいろいろな表情が読み取れて、面白い。

 

 ぜんぜん派手な戦争シーンなどはないのだが、食料事情の話だったり、徴用の話、特攻隊に志願した兄の後輩が挨拶に来たりと、戦争が家庭の中にまで入り込んでいる様子がひしひしと伝わってくる。特に少し帰りの遅い家族を心配する一家の様子が印象的だった。戦争中だから突然、空襲やらで死んでしまうこともあり得るのだなと妙に戦争のリアルを感じさせられた。一家は両親を空襲で亡くしているだけに、そんな風に誰かも突然死んでしまうんじゃないかと終始ドキドキしていた。こんな日々を過ごすのは嫌だなと素直に思う。

 

 キャストを見ると、この登場人物たちの年齢設定はどうなっているのか良く分からなくなるが、昔の人は老けて見えたし、役者は実年齢より若く見えるしでちょうどよいのかもしれない。主演の原田知世なんて肌も若くて全然違和感がなく、初々しささえ感じさせてすごい。

 

 戦時中の僅か数日が描かれるだけだが、主人公たちのその後は、冒頭のとりとめのないような会話の端々から窺うことができる。病院の屋上で黄昏ているような老夫婦にもこんな物語がある。世の中はいろんな人の物語が絡み合って出来上がっているのだなと不思議な気分になる。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 黒木和雄

 

出演 原田知世/永瀬正敏/小林薫/本上まなみ/松岡俊介

 

紙屋悦子の青春 [DVD]

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  • 原田知世.永瀬正敏.本上まなみ.松岡俊介
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紙屋悦子の青春 - Wikipedia

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