★☆☆☆☆
あらすじ
ゲーム会社でバイトを始めた引きこもりがちの女は、ひょんなことからゲームのキャラクターのイラストを担当することになる。
感想
数々の人気ドラマを生み出してきたという脚本家の作品とは思えないほど、脚本がひどい。ひどいのは脚本だけではないが。
引きこもりがちな若い女が社会に出て成長していく物語。引きこもりがちの主人公を最初から父親が心配し、サポートしようとするのは分かるのだが、三浦貴大演じるバイト先の社員やその元彼女も当然のようにサポートしようとする理由が良く分からない。
社員の男は別に主人公に気があるわけでもなく、仕事を頼んだのに途中で投げ出され、多大な迷惑をかけられたにもかかわらず心配しているし、その彼女は一度しか会ったことがないのに逃げ出してきた主人公を家に住まわせる。意味が分からない。強いていうなら二人とも優しいから?
でもそんなに世の中、優しい世界ではないと思うのだが。皆が当然のように主人公を応援するので、お前も応援するよな?と同調圧力をかけられているような気分になって感じが悪い。そんな人たちに庇護された主人公のすっとぼけた演技にも腹が立ってくる。タイトルは「世界は最初からきみのもの」が相応しい。
そして主人公の要領を得ない言葉を、超人的な能力で理解し会話を成立させる登場人物たち。長年連れ添った夫婦じゃないんだから。しかも寸分の無駄もない的確な返答をして物語の推進力がマッハの速度。天才過ぎる。みんながまるで数週間前から何を言われ、自分は何と答えるべきか決めていたかのような話しぶり。とんとん拍子で話が進む。
さらにときおり嫌な感じのシーンがあって、しばらくしてからあーあれは笑わせるところだったのかと気づくことが多かった。全然コミカルシーンが成立していない。酔いつぶれた主人公の同居人を家まで送ってそのまま襲おうとした男が、主人公に気づいて寝ちゃった同居人の代わりに相手をしろよと迫るシーンは、男のむき出しの欲望が露わで嫌悪感しかなかったが、あれも多分コミカルシーンのつもりだったと思う。全然笑えない。比留川游をはじめとした役者陣の演技力の問題もあることにはあるが、ここまで全体的にひどいということは監督の責任だろう。音楽のつけ方も酷かった。
きっとネットでは罵詈雑言であふれているのだろうなと思ったら全然そんなことはなくて、あれ?となってしまった。サバゲ―好きな人たちがその描写で怒っているぐらい。そのサバゲ―は一応前振りになっていて、後半その伏線は回収される。個人的にはその展開自体が狙っている感じで寒くて嫌いだったが、上手くやったとしても日本ではもうこれは成立しないかもな、と思ってしまった。治安が悪くなったというか、殺伐としてきたというか。これは脚本のせいではなく時代のせいなのだが、リアリティがありすぎて別の意味でもヒヤリとしてしまった。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 尾崎将也
出演 門脇麦/三浦貴大/比留川游/マキタスポーツ/YOU
音楽 川井憲次