★★★★☆
あらすじ
今は家族をもち幸せに暮らす男は、上司となったかつての恋人に関係を迫られるも断ったところ、翌日に暴行されたと訴えられ左遷されそうになる。
感想
女性の男に対するセクハラ。そう聞くと珍しく感じるが、男女を逆の立場にすると割とありふれた事件になってしまう。その後の展開も同じで、事件の状況を事細かに聞かれ、過失があったんじゃないかと責められる。責任者は曖昧に事を収めようとするし、周囲も腫れものに触れるような扱いで遠巻きに見ている。
ただ被害者が女性のセクハラ事件で、男性が被害者に同情はしてもその立場に自分がいる事を想像することはあまりないと思うので、こうやって実際に男を被害者の立場に立たせて見せるというのは、重要な試みなのかもしれない。大勢の人間の前で赤裸々に語らさせられたり責められたり、加害者の白々しい嘘を聞かなければいけないキツさに初めて気づく男も多いだろう。こういう事に限らず、どんなことでも立場を入れ替えたりして考えてみる事の大切さを感じる。つまりは想像力だ。
セクハラ事件が解決して終わりではなく、そのまま社内の権力争いへと移行していくのが映画としての深みを感じさせるが、これは男女が逆でも同じことが出来るのかな、と思ってしまった。でもこれは、加害者が加害者として認められたのに依然として強い立場にいるからで、つまりはただのセクハラ事件ではなくその裏にもっと大きな陰謀が潜んでいるということだ。本当であればセクハラ事件が解決すれば加害者はすぐに去り、権力争いをする必要がない。
ハイテク企業が舞台となっており、オープンで開放的なオフィスがうらやましい。社員も楽しそうに仕事をしている。というか仕事してる?と思ってしまうほど。単純にオフィスの様子を見ただけで働きたいとか思ってしまうので、IT企業がオフィスのデザインにこだわるのも分かるような気がする。
ハイテク企業ということで、バーチャルリアリティー的なものも登場する。その質は今見ると古臭く感じてしまうが、方向性は今と大体合っている。VRゴーグルをしてヴァーチャル空間をうろつく。この仮想空間で情報を漁っていたら、敵が現れて驚くという演出はちょっと笑ってしまった。
ただ、仮想空間でもファイル棚からデータを探したり、メールが封筒から出てくるような演出をしたりといった、現実世界に似せるという試みは今はあまりやられていない気がする。現実世界とデジタルの世界は別物、という認識をするようになったということか。確かに現実と同じように仮想空間のファイルを漁るより、検索する方が早い。
ヒールっぽい顔をしているマイケル・ダグラスが困ったり呆然としたり、怒ったり悔しがったり、喜んだり得意満面になったりとする姿はとても映像として映える。観客を惹き込むいいサスペンス顔をしていてる。
スタッフ/キャスト
監督/製作 バリー・レヴィンソン
原作 ディスクロージャー〔上〕
製作 マイケル・クライトン
出演 マイケル・ダグラス/デミ・ムーア/キャロライン・グッドール/ローマ・マフィア/ディラン・ベイカー/ローズマリー・フォーサイス/デニス・ミラー/ドナル・ローグ/ファラ・フォーク
音楽 エンニオ・モリコーネ