★★★☆☆
あらすじ
柔道家として数々の試合に挑む男。黒澤明の初監督作品。
感想
公開時より20分ほど短縮されてしまっているせいか、それとも初監督作だからなのか、ストーリーは荒っぽく、ブツ切り感がある。単純にテロップ表示でストーリーを紹介することでつないだりもしている。
ただそれでも黒澤監督らしい画ぢからの強い映像が要所要所に現れ、ぐっと惹きつけられる。和服姿の女性が下駄の鼻緒が切れて片足立ちしている姿や、柔道の試合で対戦相手が壁にたたきつけられ観戦している者たちが呆然と立ち尽くしているシーンなどは、一枚の絵として成立しそうな構図だった。この辺りはやはり監督の画家的センスが影響しているのだろう。
そして少し雑なストーリーではあるが、いがみ合い、憎しみ合って戦うのではなく、互いの威信をかけて戦うという、まさに武道の精神が感じられるものとなっている。さらに対戦相手だけでなくその関係者の思いを知ることで主人公が苦悩したりと、単純に勝った負けたを描くのではない深みがある。
肝心の試合シーンは今の進化したアクションシーンと比べると見劣りしてしまうのは否めないが、それでもラストの広大な原っぱでの決闘シーンは、吹き荒ぶ風に流れる雲、揺れる草とスケール感のある映像で圧倒された。
スタッフ/キャスト
監督/脚本
原作 姿三四郎(上)
出演 大河内傳次郎/藤田進/轟夕起子/月形龍之介/志村喬/青山杉作/菅井一郎
撮影 三村明
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