★★★★☆
あらすじ
インドの動物園をやめて一家でカナダへ移住する船旅の途中で遭難し、小さなボートでトラと共に漂流することになった青年。127分。
感想
小さなボートでトラと共に漂流するなんて絶対無理、ファンタジーならわかるけど…と思っていたのだが、いざ見てみたらこれならあり得なくもないのかな、と納得してしまった。しかも、可愛い猫のようなトラといったファンタジーではなく、ガチで獰猛なトラだったが。
序盤の主人公の少年時代を描くインドでの物語は、南国らしいカラフルな映像が美しい。そして、移住のための船旅の途中で遭難するシーンは迫力満点だ。荒れ狂う大波に放りだされてそれだけでも恐ろしいのに、そこに輸送していた動物たちまで現れる。まさに受難だ。
しかし、救助用の小さなボートにシマウマやハイエナなどと同乗することになるなんて、もうどうしていいか分からない。しかもこの先どうなるかもわからない漂流のボートだ。メルヘンの世界なら楽しい船旅になるのだろうが、普通の動物たちなのでそんなこともない。互いが互いを食料とみなしていそうだ。人間にできることは、動物を海に突き落とすことぐらいだろうか。
最終的には主人公とトラだけになったボート。居心地の良いボートはトラに占有されて、自分はボートにつないだ小さな自作のイカダの上で過ごすしかない主人公の姿には苦笑しかない。でも襲われないためにはそれしかない。
漂流するボートに次々と試練が訪れ、何が起きるか分からない展開で目が離せない。そして、大海原に時おり広がる美しい光景。主人公とトラとボートという、考えてみればシンプルな舞台設定だがそれを感じさせることがない。
最後はちょっとしたどんでん返しも用意されている。どんでん返しというよりもこの物語の別の見方を示唆しているといった方が正しいか。なかなか親切丁寧な映画でもある。
それを踏まえて改めて振り返ってみると、獰猛な虎に居座られてイカダに追いやられてしまっていたことや、夜の海の美しさに魅入られて大事な食料を失ったことなど、いろいろな意味が隠されているような気がしてしまう。主人公が何度も口にしていた宗教の観点から見ることも出来そうだ。
単純な漂流物語としても面白いし、その裏で意味深な出来事も潜んでいそうな深みのある映画だった。
スタッフ/キャスト
監督/製作 アン・リー
原作 パイの物語
出演 スラージ・シャルマ/イルファーン・カーン/タッブー/レイフ・スポール/アディル・フセイン/タッブー/レイフ・スポール/ジェラール・ドパルデュー/王柏傑/ジェームズ・サイトウ
音楽 マイケル・ダナ
撮影 クラウディオ・ミランダ
ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日 - Wikipedia