★★☆☆☆
あらすじ
ウィルスが蔓延し、人類が絶滅状態に陥った世界。感染源となったニューヨークでただ一人生き残り、治療方法を探す男がいた。
リチャード・マシスンの小説の三度目の映画化作品。100分。
感想
何度も映画化されている作品だからなのか、どこまでが前提の知識となっているのか曖昧な作品だ。蔓延したウィルスの特徴や感染したらどうなるか、ゾンビのようなダークシーカーという存在などは、既に観客が知っている前提だったのだろうか?
何の説明もなく物語を展開されても、タイミングよく必要な情報を与えられたり、何が何だか分からないうちに巻き込まれていく登場人物たちと同じ体験が出来たりするのであればそれはそれでありなのだが、この映画は観客だけが取り残される。まるで転校生の初日のように主人公の様子を窺い、今起きていることが驚く必要のない日常茶飯事なのか、慌てるべき危機的な出来事なのかを必死に読み取らなければいけない。無駄に疲れる。
しかし、地球上にただ一人取り残された男のゾンビと戦う物語だったら、色々山あり谷ありのストーリーが描けそうなものなのに、なんで一通りやって落ち着いた時期をチョイスしたのだろうか。ゾンビ対策で試行錯誤するところや、他の生存者を探すも見つからず、孤独に絶望するところなどあっただろうはずなのに、そうではなく、それらを乗り越えて、ルーティンが出来上がった落ち着いた日々を描いている。
もしかしたら単純に荒廃したニューヨークの姿を描きたかったのかもしれない。人と車であふれていた通りに雑草が生え、野生の動物たちが闊歩するニューヨークを。確かに悪くはなかったが、メインで描く事ではないだろう。おかげであまり目的が見えない中途半端な日々を過ごす主人公を見させられているだけで退屈だった。日常となった非日常を過ごす、主人公の惰性の日々だ。
そんな主人公の前に他の生存者が登場し、ようやくこれから何かが始まる、と思ったら、ほどなく呆気なく映画は終わってしまった。主人公の目標だった治療方法をようやく発見できたのに、感慨を抱く暇も与えてくれない。あっという間に伝説になって終わってしまった。すごい雑だ。
雑と言えば、映画の中で言及しているボブ・マーリ―の取り扱いだ。敢えて取り上げているのだから、やる以上はちゃんとやれと言いたくなった。あまり愛を感じない雑な言及の仕方だった。
そして、孤独な主人公の心の支えとなっていたペットの犬だが、この犬がいつもペロペロ、ペロペロ、ペロペロとウィル・スミスの顔を舐めているのが目障りだった。おかげで愛犬との悲しい別れのシーンも、残念ながら特に悲しくなかった。犬への演技指導も雑だ。
スタッフ/キャスト
監督 フランシス・ローレンス
原作 地球最後の男 (ハヤカワ文庫 NV 151 モダンホラー・セレクション)
出演 ウィル・スミス/サリー・リチャードソン/アリシー・ブラガ/ダッシュ・ミホク/チャーリー・ターハーン/ウィロー・スミス/ケイティ・クーリック/アン・カリー
登場する作品