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「きみはいい子」 2015

きみはいい子

★★★★☆

 

あらすじ

 つい子供に手をあげてしまう母親と学校教師、身寄りのない老女、それぞれの物語。

 

感想

 夫は単身赴任していて、マンションの一室で一人、娘の面倒を見る母親。言うことを聞かない娘につい手をあげてしまう。この密室で二人きりというシチュエーションがつらいなと思ってしまった。思うようにならない子供が一人いて、それをどうにかするのは自分しかいないという閉塞感。ワンオペ育児のしんどさを実感する。本当にきついときは誰かに託すことができないと。

 

 そんな息苦しさから逃れるために外に出れば、今度はママ友たちと顔を合わせることになる。表面上は仲の良い集団だが、よく見れば互いにいい母親ぶりを見せつけ合っているような気味の悪さがある。しかしふとした出来事で取り繕っていない素の姿が出てきてしまう。

 

 

 子供の粗相に突然火のついたように怒り狂う母親とそれを見て見ぬふりをする他の母親たちの姿が印象的だった。きっと皆がそこに普段の自分の姿を見ているのだろう。彼女たちも他人といることで、子供に強くあたってしまう嫌な自分から逃れているのかもしれない。

 

 そして、子供たちやその親に翻弄され気味な新米教師の男。まず、今の小学校はこんなことになっているのかと驚くことが多かった。それにしてもやっぱり教師に色々な事を求めすぎだ。教科を教えるのはもちろん、子供のしつけや人間関係の面倒を見たり、家庭のことにまで気を配らないといけない。ある程度のことはやるが許容範囲を超えるのなら専門家に任せるという仕組みが必要だろう。

 

 それから、夫を亡くし身寄りもなく一人で暮らす老婆。彼女ら多くの登場人物に感じられるのは孤独感だ。皆が心細さを感じながら、だけどどうしていいのか分からずそのまま過ごしている。周囲はそのことに気づいても、おっかなびっくりでなかなか救いの手は出せず、基本的には見て見ぬふりをするしかない。

 

 そんな彼らへの答えとして、新米教師の提案した宿題が挙げられる。ちょっと直接的過ぎるし、その後生徒達に感想を聞いて回るシーンもちょっと正視できないような気恥しさを感じるのだが、そんな些細な事で人の気の持ちようは変わってしまうのだ。そんな人が増えれば、人との接し方もまた変わっていくだろう。

 

 教師の宿題の件もそうだが、手をあげてしまう母親を救うようなママ友の行動などストレートな表現が割合多くて、気まずさを感じるシーンも多いのだが、照れず、恥ずかしがらずにそういう事をやっていく必要もあるのかもしれないなと思った。見て見ぬふりではなく。

 

 まだ何も解決はしていないが少なくとも良い方向に変わっていきそうだと思えるラストは、いい終わり方だった。

 

スタッフ/キャスト

監督 呉美保

 

原作 ([な]9-1)きみはいい子 (ポプラ文庫)


出演 高良健吾/尾野真千子/池脇千鶴/高橋和也/喜多道枝/黒川芽以/内田慈/松嶋亮太/加部亜門/富田靖子

 

きみはいい子

きみはいい子

  • 発売日: 2016/01/13
  • メディア: Prime Video
 

きみはいい子 - Wikipedia

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