★★★☆☆
あらすじ
ある女性と出会い結婚した裕福な男。しかし、妻が重い病気にかかってしまう。別の邦題は「日々の泡」。
感想
幻想的な表現が多用された小説。正直、書かれている内容がうまくイメージできない部分が多くて少々つらかった。
映画を見て、原作を読んでみる気になったのだが、映画のファンタジー感ある演出はおおむね原作に忠実だったということが良く分かった。映画を観ていたおかげで、小説の内容をイメージしやすかったという部分もある。いい出来の映画だったのだなと、映画の方を再評価したくなった。
幸せな時と比べて不幸な時は部屋が小さく見えるとか、暗く見えるとか、そんな比喩的表現を使ったりするが、この小説はそこで終わらず、その比喩に乗っかって実際に部屋を小さくしたり、暗くしてしまう。それによって独特の雰囲気が生まれ、さらにそこから新たなイメージが生れていく。
そんな中で一貫しているのは主人公の愚直なまでの妻への想い。莫大な資産が底をつき、大事な家財を売り払ったり、働いた経験がなかったのに仕事をしたり、友人たちと疎遠になったりと、苦しい状況にいるはずなのに一切苦にせず、ただただ妻の病気が治ることを信じている。
だけども訪れる悲しい結末。意気消沈した主人公の姿が切ない。
著者
ボリス・ヴィアン
登場する作品
「山の誓い」 バロネス・オルツィ
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