★★★☆☆
あらすじ
幼い頃に京都の呉服問屋に拾われ育てられた女は、自分に双子の妹がいることを知る。
感想
京都の呉服問屋といういかにも京都らしい舞台を中心に物語は進行する。彼らの着物姿や古都の風景は見どころの一つ。そして、登場人物たちが話す京都弁が映画に独特のリズムを生んでいる。
捨て子の主人公が存在を知らなかった双子の妹と出会うという話だが、ちょっと捨て子、捨て子と言い過ぎじゃない?と思うくらい、捨て子を強調してくる。主人公としては自分を偽りたくないという誠実さやルーツやアイデンティティを知りたいという願望の表れなのかもしれないし、育ての親にしてみれば娘の結婚を意識すれば最初から正直に言っておいた方がいいだろうということなのかもしれない。わざわざ蒸し返さなくても、と思わなくもないが、20歳ぐらいの時は蒸し返さざるを得ない時期なのかもしれない。
そしてそんな主人公に対する周囲の温かさが印象的。両親は子供がいなかったこともあるが愛情を注いで大切に育てて、常に気をかけている事が良く分かるし、周りの人間もそれがどうしたといった感じでまるで意に介さない。そんな姿を見ていたら京都には特殊な社交術があると恐れられるが、そんなに悪いものではないのかもという気がしてきた。
要はエクセレント!とかワンダフル!とかすぐ言う欧米の人たちと一緒で、体面上は相手を傷つけないということなのだろう。さすが長い間日本の首都だった場所だけはある。蓄積された伝統の技といった趣だ。その裏にある悪意や皮肉が強調されがちだが、相手を不快にさせない会話術はもっと評価していいのでは。
たった一人の血のつながった妹に対する主人公の想いが、その妹の姉に対する想いが強すぎる故に叶わないという物悲しさはよく伝わってきた。ただ、全体としては長すぎて、だいぶダレてしまった感は否めない。時おり妙にじっとりとするのは悪くなかったが。
一人二役を演じた山口百恵だが、メイクのおかげもあってうまく演じ分けられている。そして、ある年代の人にとっては特別の存在らしい岸恵子の良さが少しわかったような気がする映画だった。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 市川崑
原作 古都
出演 山口百恵
岸惠子/沖雅也/浜村純/加藤武/小林昭二