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「わたしは、ダニエル・ブレイク」 2016

わたしは、ダニエル・ブレイク (字幕版)

★★★★☆

 

あらすじ

 心臓病のために医者に仕事をすることを止められた男は、国から援助を受けるために奔走する。

 

感想

 失業保険や休業補償を受け取るために役所をたらいまわしにされ、やたら待たされ、良く分からない手続きを何度もさせられる。どこの国でも一緒だなと思いながら見ていたが、本来は、なるべく多くの困っている人たちを助けるために効率よく運用できるよう作られたシステムのはずだ。それなのに、それのせいで支援を受けられず自尊心まで傷つけられる人がたくさんいるというのは皮肉な話だ。

 

 主人公の状況や行動を知れば一目瞭然なのに、誰もそれを見ようとも彼の話に耳を貸そうともしないで、マニュアルに則って無意味な質問や理不尽な手続きを要求する。その結果病気で働けないのに、基準を満たすためだけの無意味な求職活動をする羽目になったりもする。しかも、書類などで求職活動の実績を示すことが出来なければ、何もしてないのと同じ扱いだ。

 

 

 イラつきながらそれらを何とかこなそうとする主人公。最初は頑固なおじいさんかと思ったのだが、隣に住む若者たちとうまく付き合い、困っている人がいれば手を差し伸べ、誰とでも気軽に話す気さくなおじさんだった。いかにも善良なとても好感の持てる人物で、素直に彼を応援したくなる。

 

 気分が滅入るような日々ではあるが、彼が見知らぬ母子家族に声をかけたように、彼にも温かな声をかける人々がいることが救いだ。冷たい対応ばかりの役所の中にも善い人はいて、彼らのような存在が際どいところにいる人々を何とか支えている。結局は人だということなのだが、仕組みではなくそれに頼らざるを得ない所に社会の危うさが潜んでいるように思える。人々の心から他者を助ける余裕がなくなったらどうなってしまうのだろう。

 

 なかなか援助が受けられず、どんどんと苦境に陥っていく描写が見ていて辛い。特に二人の息子を抱えた母親が苦しんでいる姿は、見ていてかなりきつかった。フードバンクでのシーンや娘がいじめられたと告げるシーン。

 

 心が折れそうになるもなんとか再び立ち上がった主人公。最後の彼の言葉に胸が熱くなり、そしてやるせない憤りも感じた。彼の言葉に耳を傾け、すんなりと彼の当然の権利である補償を受け取れる処理がされていれば、きっと彼は今頃元気に働けていたはずなのに。こんなことに無駄な労力を注ぎ込まなければならないのはつらい。

 

スタッフ/キャスト

監督 ケン・ローチ

 

出演 デイヴ・ジョーンズ/ヘイリー・スクワイアーズ/ディラン・マキアナン/ブリアナ・シャン

 

わたしは、ダニエル・ブレイク (字幕版)

わたしは、ダニエル・ブレイク (字幕版)

  • 発売日: 2017/09/06
  • メディア: Prime Video
 

わたしは、ダニエル・ブレイク - Wikipedia

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