★★★★☆
あらすじ
東京で昼は看護婦、夜はガールズバーで働く女と、工事現場で働く男が出会う。キネマ旬報ベスト・ワン作品。
感想
震災や原発事故、不況など暗い出来事で覆いつくされた日本・東京で生きる若者たち。石橋静河演じる女が、恋愛だの人生だの放射能だの、何かにつけて突っかかってきて、かなり面倒くさい感じになっているが、多くの日本人が漠然と抱いている不安を言語化しているだけだろう。
多くの人はそんな不安に気付かないふりで、居酒屋で騒いだり、誰かの悪口を言ったり、過剰なリアクションをしたりして紛らわし、何とか平穏を保っている。もしかしたら、それが不安から来ていることにすら気づいていないのかもしれない。そんな人たちの中で、鈍感なふりが出来ず、しっかりとそれを受け止めてしまう一部の感受性の高い人間にとっては、きっと生きづらい場所だろう。
多くの登場人物が登場するが、主演の二人を含めて美男美女は登場せず、それが妙にリアリティがあって、等身大の今の東京が描かれているように感じられる。そして、彼らの表情は皆どこか冷めていて、誰も屈託なく笑う者がいない。こうやって客観的に見てみると日本は陰気なムードに包まれているのだなということが実感できる。
明るい話題のはずの東京オリンピックですら、そこまでは何とかもつ、でもそれで終わりだろう、というような悟った雰囲気。終盤、工事現場で働くフィリピン人実習生が「ここで働くのは馬鹿馬鹿しい」と帰国することを告げるシーンは、妙に日本はヤバいのだなということが強く感じられて印象的だった。
世界では毎日、理不尽な理由で人が死んだり苦しんだりしている。そして、それを自分ではどうすることも出来ない。だから無力感に苛まれて何もしないのではなく、それでも自分が出来る事を、少なくとも当たり前にするべきことはしていくべきだ、ということだろう。当然のことだが、切羽詰まると忘れてしまいがちのことでもある。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 石井裕也
出演 石橋静河/池松壮亮/佐藤玲/三浦貴大/ポール・マグサリン/市川実日子/松田龍平/田中哲司/野嵜好美/正名僕蔵/伊佐山ひろ子
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