★★★☆☆
あらすじ
リムジンをオフィスに過ごす若き投資家。
感想
リムジンの中に部下や医者などが次々とやって来て、主人公と会話を交わす。内容はとても観念的で、すっとは頭の中に入ってこないセリフばかりで、正直、かなりしんどかった。しかし、最新設備を備えたリムジンなのだから会話なんて電話や通信で事足りそうなのに、それはわざわざ車内に招いて対面でするのか、と思ったりもした。
映画の内容も良く分からなくて、強いて言うなら、富や権力の集中やグローバリズム、行き過ぎた資本主義、増大する有名人の影響力など、現代社会で表面化する諸問題を詰め込んでみた、というところだろうか。
そして投資家の主人公は、そんな混沌とした世界でも本当はパターンがあり、一定の法則に従って動いているはずだと考えている。そしてそれを見抜くことで実際に富を築いてきた。しかし、通貨は不可解な値動きをし、婚約者は思い通りにならず、全ては見通せると万能感を感じていた彼の中で、疑念が生じてしまう。世界は美しい公式に従って動いているのではないのかと。
その疑念を決定づけるのが、健康診断によって発覚した自身の前立腺が非対称な事だったのが面白い。世界にはパターンや法則があると思っていたのに、自分の体ですら美しいシンメトリーではなかった。それを知って彼は、不安になるのではなく、何もかもがどうでもよくなってしまった。もう死んだってかまわないというような投げやりな気持ち。
結局世界にはイレギュラーな出来事がたくさん起きていて、それが標準ともいえる。そんな中でそれでも時機を見極め、この資本主義社会を生き延びていかないといけない。そして、そんなランダムな状況に耐えられない者は退場するしかない。というようなメッセージが込められているのかと無理やり考えたが、全然違うかもしれない。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 デヴィッド・クローネンバーグ
出演 ロバート・パティンソン/ポール・ジアマッティ/サマンサ・モートン/サラ・ガドン/マチュー・アマルリック/ジュリエット・ビノシュ