★★★☆☆
あらすじ
頼朝に追われる源義経・武蔵坊弁慶の一行は奥州へ逃れるため、変装して加賀の関所を通り抜けようとする。歌舞伎「勧進帳」を題材にした物語。
感想
1945年の製作という事で、戦後すぐに作り上げたのかと思ったら戦中から製作していたとの事。その頃はかつかつな生活を皆が送っていたのかと思ったが、映画を作る余裕はあったという事か。ただし上映時間は1時間未満と短くなっている。
主役は大河内傳次郎演じる弁慶なのだが、彼ら一行を道案内する強力(ごうりき)が終始ストーリーを引っ張っている。状況説明といったセリフ回しや賑やかしだけでなく、ほとんど心理描写をしない義経一行の心理状態まで表情や動きで代弁している。演じる榎本健一の芸達者ぶりが見事。
そして皆が気になる義経の素顔をなかなか見せない演出も上手い。おかげで武蔵坊弁慶が主役として目立ち、さらに後半に義経が素顔を見せるシーンを劇的なものにしている。舞台は関所とその前後のシーンのみで、動きの激しい派手なアクションシーンはないが、素早いカットの切り替えといった編集技法や強力(ごうりき)の存在で緊迫した状況を演出していて、見ごたえがある内容となっている。
映画の元となった「勧進帳」は筋を知っているだけで観たことはないので、歌舞伎と比較するとどうなのかはよく分からない。関所を抜けた後の酒盛りのシーンは必要か?とか思わなくもなかったが、「勧進帳」を知っている人にはなくてはならない見せ場のシーンなのだろう。歌舞伎を知っていると、この映画がどんな脚色をしているか分かって、より楽しめそうだ。
スタッフ/キャスト
監督/脚本
出演 大河内傳次郎/藤田進/榎本健一/志村喬