★★★☆☆
あらすじ
交通事故で入院していた男は、目覚めると誰もおらず、人を凶暴化させるウィルスの蔓延によって、世界が荒廃してしまっていることに愕然とする。
キリアン・マーフィー主演、ダニー・ボイル監督。アレックス・ガーランド脚本。シリーズ第1作。イギリス映画。114分。
感想
冒頭は、ウィルス蔓延のきっかけとなった事件が描かれる。動物愛護の活動家が、危険なウィルスに感染させられた実験用のチンパンジーたちを開放するのだが、檻から出した途端に、真っ先に活動家自身が襲われたのは皮肉が効いていた。ここからイギリス中にウィルスが拡散していく。
それから28日後に、病院で交通事故の昏睡状態から目覚めた男が主人公だ。何が起きたのかはよく分かっておらず、誰もいない荒廃した街を一人彷徨う。パンデミック発生時のパニックの様子は敢えて描かず、その後の殺伐とした風景からその惨状を想像させる演出は巧い。ざらざらした質感の映像も効果的だ。
主人公は、わずかに残っていた生存者たちと出会い、行動を共にするようになる。主人公の素性もわからないのに、咄嗟に無条件で助け、仲間に招き入れる彼らの様子は、世の中捨てたものではないと思わせてくれる。
寝ていただけの主人公とは違い、パンデミック後の騒乱を生き抜いてきた彼らは、ニューノーマルな生活様式を身に着けている。しかし、助けてくれたカップルの男が感染した途端、女が彼をためらうことなく無慈悲に殺してしまったのは怖かった。もはやそんな修羅場に何度も遭遇し、覚悟は出来ていたのだろう。非日常に戸惑う時期はとっくに過ぎて、それが日常と化している。そういう意味でも、「28日後」という設定は絶妙だ。
主人公らは、ラジオで繰り返されるメッセージを頼りに、軍隊が保護してくれるという場所を目指す。ここからはロードムービーのような趣も出てきて、ゾンビ的な感染者たちの時おりの急襲をアクセントにしながら、進行していく。
目的地に到着するも、そこにいたのは生き残りの軍人の、単なる小集団でしかなかったことに、主人公らは失望を隠せない。その場所を覆っていたのは、未来に希望を持てないことに対する虚無感だった。確かに、とりあえずは生きていけるが、この先はじり貧になるだけで好転する見込みは全くないとなれば、気力は失われていくだろう。主人公らをそこまで運んで来させたのも希望だったわけで、それがなくなると人の精神は蝕まれていく。
心を病んだ軍人たちの視線は、主人公と行動を共にしていた二人の女性に注がれるようになる。クライマックスは、彼女たちを狙う軍人たちとの対決となる。劇中でも言及されていたが、凶暴な感染者たちがいようとも結局、最終的には人間同士の争いになるのかと、切なく悲しい気持ちになる。前半に、見知らぬ者同士の助け合いに心を動かされたが、あれは咄嗟の行動だった。じっくりと考える時間があると、人は良からぬことを思いつき、それを実行してしまうのかもしれない。
クライマックスで突如、主人公が覚醒し、軍人らと互角に戦えるほど強くなる展開は、不可解さが残った。そして、ラストで主人公らは新たな希望を見出していたが、もし何の希望も見つけられなかったらどうなるのだろうと、そのことばかりが気になってしまった。現実は物語のように都合よく、生きる希望を与えてはくれない。
スタッフ/キャスト
監督 ダニー・ボイル
脚本 アレックス・ガーランド
出演 キリアン・マーフィ/ナオミ・ハリス/クリストファー・エクルストン/ブレンダン・グリーソン/レオ・ビル
音楽 ジョン・マーフィ
撮影 アンソニー・ドッド・マントル
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