★★★☆☆
あらすじ
町で助けた女の家に居候するようになった男は、奇妙な提案を受ける。東京、京都、沖縄で撮られた作品を詰め合わせた中短編集。
村上淳、蒼井そら、渡辺大知ら出演。117分。
感想
京都ではヒップホップにまつわるショートストーリー、沖縄ではドキュメンタリー、東京では中編ドラマと、三つのポイントで撮影された異なるテイストの作品が収められている。
序盤は京都と沖縄の作品が交互に展開する。ここでは沖縄の人や場所を映し出すドキュメンタリーが面白かった。登場する人たちがみないいキャラクターで、彼らの話につい聞き入ってしまう。
中でも移住して、蟹取りを披露する男性の存在感は強烈だった。沖縄に移り住んだ人たちのほとんどは数年で帰ってしまうそうだが、彼のような人ばかりが残っていくなら、沖縄はいろんな意味で濃い場所になっていきそうだ。そういう人たちを惹きつける何かがあるような気もする。
ヤバそうな街や基地の街にもカメラは向けられる。悪そうな少年たちが、ヤンキー車風にカスタムしたラジコンカーでドリフトさせて遊んでいたシーンは、そのギャップが妙に印象に残った。暴走族もこれで満足してくれれば誰にも迷惑をかけないのに、と思ってしまった。公道でやっているのでなんらかの違反はありそうだが。
そして別にそんなつもりがなくても、結局沖縄では米軍基地の問題に行きつくのだなと痛感した。本土の人間は出来るだけそれに気付かないふりをして、すべてを沖縄に押し付けている。この問題をどうにかしない限りは、どんなに勇ましいことを言ったところで外国に舐められ続けるのは必然だろう。どの国もアメリカみたいな立場になってしまえば、日本人はどうせ黙り込むとタカを括っている。
最後は東京を舞台にした中編ドラマで締めくくられる。勝手に居候を初めて女を翻弄していた男が、あることをきっかけに逆に女に翻弄されていく。怖くはあるが必ずしも悪いことではなく、この間の二人はそれなりに幸せだったような気もする。問題を抱えている男女だったが、それでもめぐり合わせによっては良い関係を築けることもある。それが持続するかどうかはまた別の話だが。
一本で色々楽しめる幕の内弁当のような映画だ。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/製作 山本政志
出演 村上淳/蒼井そら/渡辺大知/青山真治

