★★★★☆
あらすじ
FBIを騙って逮捕された黒人男性は、見逃す代わりに政府が警戒していたブラックパンサー党に潜入するよう持ちかけられる。
事実を基にした作品。アカデミー賞助演男優賞、歌曲賞。原題は「Judas and the Black Messiah」。126分。
感想
ブラックパンサー党に潜入した男が主人公だ。FBIを騙って悪さをしていた男をFBIが起用するのは冗談みたいな話で面白い。主人公は党支部のリーダーの信頼を勝ち得て、行動を共にするようになる。
主人公を通して見るブラックパンサー党の活動は、想像していたよりもずいぶんとまともだった。貧しい地域で医療を提供したり、子供たちに食事を配る。各地で連帯を訴える演説を行い、実際に各団体と次々と連携していく。
特に他団体との連帯は、プエルトルコ人や白人貧困層の団体など、黒人団体に限定していないことに感心した。マイノリティはマイノリティゆえに社会的弱者なのだから、マイノリティ同士で連帯して対抗しようとするのは理に適っている。だから政府やFBIは警戒したのだろうし、今現在、各国の支配層が必死に大衆を分断するような言説を用いているのもそれを恐れているからだ。
彼らは武装していて、いかついイメージだが、話し合いの場には武器を置いていくのも印象的だった。
子供たちに無料の食事を提供するのも、プロパガンダの意味合いはあるのだろうが、それで子供が救われるのは事実だ。話は変わるが、日本政府が何もしないせいで全国に増え続ける民間のこども食堂も、政治色を色濃くするといいのかもしれない。きっと政府がビビって、こども食堂がなくなるような貧困対策を真剣に考えるようになるはずだ。
貧困児童は7人に1人、こども食堂6千カ所に「公助」不足の現実 | 女性自身
そしてその一方で、政府・FBIがやっていることは酷い。別団体と対立するように仕向けるのはまだましで、団体の建物を取り囲み、挑発したりする。しかも党員たちを逮捕した後、建物を焼き払うって何?ありなの?と驚いてしまった。やっていることが西部劇の悪党たちみたいだ。
主人公はそんな両者の間を行き来してどう感じていたのだろうか。熱心に党の活動に打ち込むのはカモフラージュのためでもあったのだろうが、シンパシーを感じていたようでもあった。だが心の底では、いざとなれば逃げればいいやと甘い気持ちがあったのだろう。どこか子供のごっこ遊びのような軽薄さがあった。
主人公の協力により、ついに支部は壊滅状態になる。相変わらずのFBIの極悪非道ぶりにはドン引きしてしまった。支部のリーダーは、自分が死ぬという自覚のないままに死んでしまった。こんな死に方は嫌だ。こういうのが幽霊となるのかもしれない。
最後は主人公のその後が、実際の映像と共に伝えられる。これもまたなかなかの衝撃だった。だが彼は自責の念に駆られたのか、それとも世間の反応を恐れたのか、どっちだったのだろう。それによって印象は変わりそうだ。インタビューを自ら受けたわけだから前者なのだろうが、潜入する時のように後先を考えず、軽い気持ちで受けただけのような気もしないでもない。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/原案/製作 シャカ・キング
製作 ライアン・クーグラー/チャールズ・D・キング
出演 ダニエル・カルーヤ/ラキース・スタンフィールド/ジェシー・プレモンス/ドミニク・フィッシュバック/アシュトン・サンダース/ダレル・ブリット=ギブソン/リル・レル・ハウリー/マーティン・シーン
音楽 マーク・アイシャム/クレイグ・ハリス
ユダ&ブラック・メシア 裏切りの代償 - Wikipedia
登場する人物
ウィリアム・オニール/フレッド・ハンプトン/ジョン・エドガー・フーヴァー
