★★★★☆
あらすじ
近未来。地球外生命体を探索して消息を絶った英雄の父親に憧れ、宇宙飛行士になった男は、父親が海王星付近で生きているかもしれないことを知らされ、現地に向かう。123分。
感想
宇宙の果てで消息を絶った父親が生きているかもしれないと知った男が主人公だ。消息を探るために現地に向かう。
主人公は先ず父親との交信を試みるために火星の基地を目指す。前半はこの火星へ向かう旅の様子が描かれていく。出発前に宇宙服のフィッティングを試していたので、てっきり狭いコクピットに乗り込んで操縦して行くのかと思ったら、飛行機のように普通に乗客として宇宙船に乗り込むスタイルだった。火星やその先まで行ける技術力があるのだから当然か。
この宇宙旅行は、主人公がブランケットと枕を頼んだらお金を請求されたりと、描写が細かいのが面白い。火星の基地への入場検査場にいた受付の女性も、鄙びた田舎にいそうな垢抜けない若い女だった。
火星での交信が不調に終わった主人公は、強引に海王星に向かってついに父親と再会する。それまでの雰囲気から、父親がカーツ大佐みたいになっている「地獄の黙示録」的な展開なのかと予想していたのだが、全然そんなことはなかった。だが父親は別の形で狂気を帯びている。何十年も宇宙の果てにいたのだから当然だ。
ドラマチックな展開にも関わらず、主人公がずっと物静かなままなのが印象的だ。父親は不在だが英雄の息子として育ち、心の傷やプレッシャーを抱えたまま生きてきたのだろう。常に冷静で心拍数が上がらないのは、心を閉ざし、感情を殺してるからだ。
だが、海王星への旅と父親との再会を通じて、主人公の心境には変化が訪れた。孤独を求めているつもりでもどこかで誰かを求めている。それにどんなに逃げたところで俗世間は追っかけてくる。宇宙にも資本主義は進出して来るし、地球と同じように人々は争ってもいる。どうせ逃げても無駄なのだから、ちゃんと向き合うべきだと気付いた。
とても物静かで、派手さのない地味な物語だ。テーマも分かりやす過ぎるきらいがある。だがひとり苦悩する主人公の姿には、じわじわと心に沁みるものがあった。心が静かになる。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/製作 ジェームズ・グレイ
製作/出演
出演 トミー・リー・ジョーンズ/ルース・ネッガ/リヴ・タイラー/ドナルド・サザーランド/キンバリー・エリス/ローレン・ディーン/リサ・ゲイ・ハミルトン/ジョン・フィン/ジョン・オーティス/グレッグ・ブリック/ナターシャ・リオン