★★★☆☆
あらすじ
人類から派生した死んでもすぐに蘇る「亜人」であることが判明した主人公は、政府に拘束され人体実験を繰り返されていた。
感想
亜人対人類と主人公の戦いが描かれる。物語は、亜人であることが判明して政府に拘束され、人体実験を繰り返されていた主人公が、綾野剛演じる亜人のリーダーに救出される場面から始まる。主人公は人類の非人道的な行いの被害者であり、リーダーが助けなければずっと捕らえられたままだった。そう考えると、どうしても亜人側に感情移入したくなるのは当然だ。
だが、映画はなぜか人類側の視点で描かれていく。それが終始、腑に落ちなかった。主人公が、組織の末端の人間を彼らは悪くないと庇うのは理解できるとして、悪逆非道のすべてを不問にして、あっさりと人類側に付いてしまったのは納得できなかった。普通に考えたら、亜人側に賛同できなかったとしても、人類側に付くこともないだろう。
そのため、どうして残虐な人類側の応援をしなければならないのだ?と納得できない感情を抱えたまま、映画を見続けることになった。主人公が共闘することになった玉山鉄二演じる冷酷な現場責任者も、実はいい奴だった、となるような描写もなく、最後まで人類側の悪事は放置されたままで処理されることはなかった。一応、現場責任者が組織で板挟みになったり、悪事の張本人たちが死んだりはしているが、偶発的な出来事でしかなく、そこにカタルシスはない。お前らは人類なんだから、なんにしたって結局人類を応援するんだろ?と小馬鹿にされているような気分だ。
ただ、映画の雰囲気やアクションなどはなかなか良くて、それ以外のストーリーも駆け足気味ではあるが悪くない。脇役に新鮮味のあるキャストを使っているのもいい。若干、「幽霊」の設定が物語から浮いて、その存在意義がよく分からなかったが、原作の漫画にあるもののようだし、そういう「設定」として見れば許容範囲だ。
それなりの映画になり得たはずなのに、物語の基本中の基本である主人公や人類に共感して感情移入できる状況を作れなかったかったことが、すべてを台無しにしてしまっている。かなり残念な映画だ。
スタッフ/キャスト
監督 本広克行
脚本 瀬古浩司/山浦雅大
出演 佐藤健/綾野剛/玉山鉄二/城田優/千葉雄大/川栄李奈/浜辺美波/山田裕貴/品川祐/吉行和子/中村育二/升毅/今野浩喜/オラキオ/森岡龍/北山雅康/HIKAKIN/大森一樹/志賀廣太郎/(声)宮野真守
音楽 菅野祐悟