★★☆☆☆
あらすじ
アンドラ公国で日本人が殺され、駆け付けた外交官とインターポールの捜査官は、第一発見者である日本人女性の不審な動きに気付く。映画「アマルフィ 女神の報酬」、テレビドラマ「外交官 黒田康作」に続くシリーズ完結編。
感想
フランスとスペインの間の小国「アンドラ公国」で日本人が殺されたことから物語は始まる。駆け付けた織田裕二演じる主人公の外交官と、インターポール(国際刑事機構)の捜査官、そして第一発見者の女性の三人が中心となってストーリーは展開していく、と思ったのだが、皆が何をしたいのだかよく分からない。
そもそも殺人事件とされているのだから、本来なら犯人を逮捕するのが最大の目的になるはずなのに、伊藤英明演じる捜査官は全く調査しようとしない。まずこの時点であれ?となる。あとで、実はこの事件をもみ消すよう日本政府側から要請があったことが分かるのだが、だからと言って積極的にもみ消しにいくわけではなく、何かマズそうなことが出てきたら対処しようとする消極的な姿勢を見せるだけだ。
黒木メイサ演じる第一発見者の女は明らかに何か裏がありそうな不審人物だが、何が目的なのかは明らかにされない。だから彼女が何かをやってもなぜそうするのかは分からず、本当にただの挙動不審なだけの人物に見えてしまう。
そして主人公はそこに存在するだけだ。女が日本人だから一応、邦人保護の観点から気にかけておくか程度の関心しかない。テロ対策室外交官という肩書らしいので確かに何もすることはないのだろう。要するに主要な三人全員が様子見の状態で、ただ何かが起きるのを待っているだけだ。観客は何を期待して見ればいいのかが分からない。もたもたとした時間が流れていく。
主人公がテロ組織の全容解明のカギを女が握っていると睨んで秘密を聞き出そうとしているとか、捜査官が事件を揉みつぶすために積極的に関係者を消そうとしているとか、女が嘘でもいいので何らかの目的を持っていることを示して行動に意味を持たすとか、何か物語の推進力となるようなものが欲しかった。もっと言えば、推進力どころかどこに向かおうとしているのかさえ分からない状態だ。
終盤、国際テロ組織の大規模な摘発を行なう流れになるのだが、え、それがしたかったの?と鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をしてしまった。それならそれで最初からそのように描いて欲しかった。しかしそれは主人公の仕事なのか?と疑問を感じるが。
スペインを舞台に闘牛やフラメンコが登場し、異国情緒で誤魔化すサスペンスもどきの映画だ。異国情緒の一環か、主人公と女がホテルの一室でポーカーをやるシーンまであったが、見ていて寒かった。別にありえないシチュエーションではないのだが、今どき旅先でそんなことをするだろうか。
最後には驚きの展開が用意されていたが、ありきたり過ぎて、でしょうね、と驚けなかった。そしてよくよく考えてみると、こんなに主人公のカッコいい見せ場がない映画も珍しいかもしれない。表面的に見れば、ただ女に騙され、男に撃たれただけだ。カッコいいことはすべてスクリーンの外で行われていて、観客にすらそれを見せてくれない。
ラストはいかにも日本的な、情緒たっぷりのウェットすぎるエンディングで、何も共感できずただただ呆れるしかなかった。
スタッフ/キャスト
監督 西谷弘
製作 堀口壽一/島谷能成/高田佳夫/尾越浩文/杉田成道/永田芳男
出演 織田裕二/黒木メイサ/戸田恵梨香/福山雅治/伊藤英明/谷原章介/夏八木勲/Iñigo Aramburu/Pilar Fernandez Herboso/鹿賀丈史/品川徹/三浦誠己/大杉漣
音楽 菅野祐悟
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