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「青い山脈」 1949

青い山脈

★★★☆☆

 

あらすじ

 保守的な田舎町の女学校にやってきた東京の英語教師は、生徒がいたずらで書いたラブレターを注意したところ、反発されて騒動となる。

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 原節子、池部良、木暮実千代ら出演、今井正監督。何度も映画化された石坂洋次郎の小説が原作で、最初の映画化作品。正続二編の正編。93分。

 

感想

 保守的な田舎町が舞台の物語だ。女学生が金物屋に玉子を売りにやってくるシーンから始まるが、演じる杉葉子と池部良が今っぽい佇まいで驚いた。そして池部良は男前だ。どうやら初対面らしい男の家に上がり込んで、女学生が料理を始めるのもなかなかすごい。

 

 この女学生が、嫌がらせで同級生から偽の恋文を貰い、若い女教師に相談したことから騒動が始まる。女学生の行動を批判し、学校の名誉を汚したからだと主張する同級生らに対して、「もっともらしいことを言っているが、そういう同調圧力が一番問題だ」と一蹴する女教師は頼もしかった。

 

 その後、結束した生徒たちが教師への要求を板書した際も、一つ一つに反論し、しかも誤字脱字まで指摘してみせるのだから強い。ただ、この強さが保守的な人々の自尊心を傷つけ、嫌悪感を抱かせるのだろうなという気がしないでもない。前例を踏襲する人は、新しい考えや独自の考えを述べる人を恐れる。

 

 

 敗戦で戦争が終わり、時代は変わったのだと希望に胸を膨らませている女教師たちの気分が伝わってくる。だが、それを敏感に感じ取っているのはまだ少数派で、古い考えに縛られた人たちとの間に軋轢を生んでしまう。前半の、田舎の保守的な生徒たちに立ち向かう様子は、夏目漱石の「坊っちゃん」を思い起こさせた。

 

 だが、保守派の強みは同調者が多いことだ。先進的な人以外がそうなのだから当たり前だ。生徒だけでなく、教師や地元の有力者などが結託することで、よそ者の女教師は追いつめられていく。それでも数少ない味方を得て、さあ反撃が始まると思っていたら、イヤな感じでそのまま終わってしまった。こんな暗い終わり方でいいの?と思っていたら続編があると知って安心した。

 

 朗らかな主題歌で有名な映画で、内容も明るく朗らかなのかと思っていたら、かなり政治的というか、ドロドロとした内容だったのは意外だった。だが、古い体制に抗うのが若者で、それが健全で希望に満ちたことだというのなら、そうなるのも当然かもしれない。ねちねちとした攻撃に負けず、堂々と戦う姿は颯爽としているといえばしている。そういえば、昔の青春映画はこんな感じのものが多いような気がする。

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 まだ戦後間もない時代なので、観客は戦時中の閉鎖的な社会を思い出しながら見ていたのかもしれない。「女が強くなった」と嘆く有力者に、「私はずっと前からこの調子でやってますけどね。でも、男たちはあっち(天皇)にペコペコしていたと思ったら、今度はこっち(アメリカ)にペコペコしていて大変ですね」と芸者が返すのは強烈な皮肉だった。だがそんなことを言うのも、昔の映画なら普通のことだったのかもしれない。

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 旧弊と戦うのはいつの時代もあることだが、なんとなく現代の似たような事案とも重ねてしまう物語だった。明白な違いは、人々が未来に明るいものを感じられているかどうかだろう。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 今井正

 

脚本 井手俊郎

 

原作 青い山脈 (P+D BOOKS)

 

出演 原節子/池部良/若山セツ子/杉葉子/伊豆肇/木暮実千代/龍崎一郎/藤原釜足/堺左千夫/花澤徳衛

 

音楽 服部良一

 

青い山脈

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青い山脈 (映画) - Wikipedia

 

 

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