★★★☆☆
あらすじ
天文学を学ぶ女子学生は、頻繁に連絡を取っていた年の離れた恋人の教授が、数日前に死んでいたことを知り驚く。
ジェレミー・アイアンズ、オルガ・キュリレンコ出演、ジュゼッペ・トルナトーレ監督。イタリア映画。英題は「CORRESPONDENCE」122分。
感想
有名な天文学者と付き合う教え子が主人公だ。序盤はメールや電話を頻繁にやり取りしてイチャつく様子が描かれて、何を見せられているのだ?という気になるが、ついさっきも連絡を取ったはずの天文学者が数日前に死んでいたことが判明し、話が変わってくる。歳の差カップルには何か裏があるのではと穿った見方をしがちだが、まさかこんなことになるとは思っていなかった。
信じられない主人公は、彼の死を確かめようとする。だがその間にも彼からのメッセージや贈り物は届き続ける。どうやら彼の死は本当で、それを見込んで死後も連絡が行くように色々と手配をしていたらしい。そのために多くの人の手を煩わせていることも分かってくる。なかなかの独りよがりぶりだが、彼が皆にリスペクトされていたということでもある。
主人公は次第に彼の死を受け入れ、もうこの世にはいない彼からのメッセージを楽しむようになる。死んだ星の光が何万年経っても届き続けるようなものだ。彼の存在をいつも感じながら日々を過ごし始める。
しかし、まるでその場で主人公のことを見ていたかのようだった彼からのメッセージにも、現実とのズレが生じ始める。また彼女が隠していた誰にも知られたくない心の傷にも言及するようになった。彼からすれば今後の彼女の人生を考えて、良かれと思ってしたことではある。
だが主人公は、一時的な感情で彼からの今後のコンタクトをすべて止めてしまった。そもそもよく考えてみれば気味が悪い行為だとの自覚もあったのだろう。そうなることも予想して、連絡を断てる手続きを用意してた天文学者もさすがではある。
彼からの連絡が来ない日々にすぐさま後悔した主人公は、連絡システムを元に戻す方法を探して関係者を訪ねまわる。だがここから物語は失速してしまった印象だ。彼女のことなら何でも分かっているかのように自信満々に振る舞っていた天文学者の、病気に苦しんだり彼女を思って泣いたりしていた本当の顔が見えてくる。そこまでして彼女に良いところを見せたかった、つまりはそれほど愛していたということだが、どうせなら最後まで彼女を手の平で踊らせて欲しかった。本当の姿は匂わせる程度で良かった。
物語のポイントとなる連絡手段を復活させるための方法も、最後の彼のメッセージもあまりピンと来なかった。ロマンチックな話ではあるが、男のナルシストぶりばかりが鼻についてしまう。彼は満足だろうが、彼女にとってはどうだったのだろうと疑念がわく。やはり最善はちゃんと病状を伝え、その死をちゃんと見せることだったような気がする。死者がするべきは、死後も影響を与えようとすることではなく、残された者が自分の死を受け入れて生きていけるようにすることだ。葬式もそのためにある。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 ジュゼッペ・トルナトーレ
出演 ジェレミー・アイアンズ/オルガ・キュリレンコ/シャウナ・マクドナルド/パオロ・カラブレージ/アンナ・サバ/イリーナ・カラ
音楽 エンニオ・モリコーネ

