★★★☆☆
あらすじ
友人に絵の才能を見込まれ、一緒に漫画家を目指そうと誘われた男子高生は、少年ジャンプでの連載を目標に掲げて邁進する。
佐藤健、神木隆之介、小松菜奈ら出演、大根仁監督。漫画原作。120分。
感想
原作と作画を分担して漫画家を目指す高校生二人組の物語だ。片方の叔父さんが漫画家だったという設定のおかげで、漫画の描き方から業界の仕組み、そしてその厳しさまでをすんなりと紹介できて、すっと本題に入っていけるようになっている。また、作画担当の男の絵の上手さにそれなりの説得力も与えていて、よく出来た導入部分だ。
主人公らは、日本で最も売れている漫画雑誌「少年ジャンプ」で連載を勝ち取ることを目標に定める。彼らが、マンガを描いてみたくなったから描き、それで評価されたら嬉しいなと応募してみるのではなく、プロになるという明確な目標を定め、そのために何をすべきか逆算して動いていることに感心する。初めて描いた漫画を編集部に持ち込んだ後は、どうしたら連載を勝ち取れるかと戦略を練っている。
連載が始まった後は、天才と称される同じ高校生漫画家とのアンケート一位を目指す戦いが始まる。ここでも、アンケート至上主義ゆえに内容よりも人気を優先していると批判されることもある「ジャンプ」のシステムに反発するのではなく、その土俵に乗ってちゃんと戦っている。
必死で漫画を描く様子をプロジェクションマッピングで表現したり、ライバルとの対決をペンを剣に見立てた疑似的な戦いにしたりと、単調になりがちなシーンの演出に工夫を凝らしていて見ごたえがある。しかし、熾烈な順位争いも所詮はアンケート結果の順位変動でしかなく、彼らの漫画が実際にどれくらい面白いのか、その本質は分からないままなので、終盤はやや飽きてしまった。
毎週漫画を描き上げなければならない、肉体的にも精神的にもキツい生活を続ける中で、ついに作画担当が倒れしまい、編集長がしばらくの休載を決める。しかし、二人がそれを無視して、満身創痍な体で漫画を描き続けようとするのがよく分からなかった。巻頭カラーだし、アンケート一位が見えてきたし、幼なじみとのこともあったしで、ここで流れを止めたくなかったということなのだろうが、いい感じのところで休載できるのはむしろ漫画家としての延命措置となり得る。しっかりと休養も取れるし、じっくりと作品の今後についても考えられるしでラッキーだ、とさえ思っていたので、彼らの必死さに戸惑ってしまった。
結局、彼らは漫画家になるという目的を果たした後、今度はジャンプで一位を獲得するという競技に熱中していたということなのだろう。戦略通りに漫画家になれたのだから、あとはほどほどの結果を残しながら漫画を描き続ければいいのに、これではゲームの虜になっているだけではないかと冷めてしまった。
漫画家になるためのレースをハックして勝とうとするのは賢いが、漫画そのものをハックしようとしてはダメだろう。漫画は競技ではない。漫才のM-1もそうだが、最近は何でも競技と捉えて分析し、アスリートのように無駄なく効率的に勝とうとする人が多いように感じる。
彼らと同じく連載を目指す個性的で魅力的な漫画家の卵たちが、二人を助けようとしたのは感動的だったが、やろうとしていることに全く共感できなくて、せっかくのクライマックスに盛り上がれなかった。また、幼なじみの女子との関係や、叔父さんを担当していた編集長に対する複雑な思いが、中途半端にしか描かれていないのも気になった。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 大根仁
原作 バクマン。 カラー版 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)
出演 佐藤健/神木隆之介/染谷将太/小松菜奈/桐谷健太/新井浩文/皆川猿時/宮藤官九郎/リリー・フランキー/岡部たかし/勝矢/土佐和成
音楽 サカナクション
