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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「博徒一家」 1970

博徒一家

★★☆☆☆

 

あらすじ

 服役中に親分が引退し、兄弟分が跡目を継いだ組に戻った男は、次第に居場所を失っていく。

 

感想

 親分の引退をきっかけに敵の策略にハマり、弱体化していく一家の物語だ。主人公は分家するはずだったがシマを失い、兄弟分だった本家の親分に仕えることになる。主人公らが口にしていた「一門下がる」の言葉の意味がよく分からなかったが、兄弟分から子分になるみたいな格を下げるという意味だろうか。

 

 敵の策略により主人公、親分、若山富三郎演じる男と、三人の仲の良かった兄弟分に亀裂が生じていく様子が丹念に描かれていく。展開的には、敵の卑劣さに鬱憤を溜め込んでいく段階のはずだが、それほど敵に存在感はない。

 

 

 確かに彼らは罠を仕掛けているが、それよりも跡目を継いだ重圧に負けそうな親分の強情、状況を理解しない兄弟分の暴走、そして元親分の余計な口出しと、一家の自業自得感のほうが強い。そもそも敵に簡単に騙され、ガタガタになってしまうような組織ではお先真っ暗だろう。

 

 ただ彼らも彼らなりに組のことを思い、その立場でできることをやろうとしているだけなので、組織に生きる人間の悲哀はある。だからせめて、それぞれの思いが交錯する組織内の人間ドラマをじっくりと描いてくれたら良かったのだが、それらがうまく絡み合うことなく、ただダラダラと単体のエピソードが垂れ流されるだけだ。別の意味で鬱憤が溜まってしまう。

 

 クライマックスは、主人公が敵の本拠に乗り込み、溜まりに溜まった鬱憤を晴らす決闘シーンだ。種類は違えども鬱憤は溜まっているのでカタルシスを得られるかと思ったが、やはりそんなことはなく、ほんのりと八つ当たり感が漂っていてイマイチ気分が乗らなかった。

 

 高倉健と鶴田浩二の男二人が抱き合って迎えるエンディングは、なかなか斬新だ。どんな映画?と笑ってしまった。ここからさらに一歩踏み込んだら同性愛的世界が広がっていそうだ。きっと男臭さと同性愛世界の距離はそんなに離れていない。

 

 スターが競演する映画なのでそれぞれに見せ場を与えようとしたのだろうが、さすがに中盤のグダグダが長すぎた。そこはテンポよく処理してほしかった。

 

スタッフ/キャスト

監督 小沢茂弘

 

出演

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大木実/若山富三郎/富司純子/志村喬/八名信夫/内田朝雄/野口貴史/志賀勝/川谷拓三/鶴田浩二

 

博徒一家

博徒一家

  • 若山富三郎
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