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「万能鑑定士Q -モナ・リザの瞳-」 2014

映画「万能鑑定士Q -モナ・リザの瞳-」【TBSオンデマンド】

★☆☆☆☆

 

あらすじ

 どんなものでも鑑定してみせる主人公は、その能力を見込まれてルーブル美術館の臨時学芸員に推薦されるが、そこで事件が起きる。

 

感想

 主人公の万能鑑定士としての能力を見せつける冒頭は悪くなかった。だがここで主人公はすごい人なのだと示したのに、次はルーブル美術館の臨時学芸員の採用試験を受験する流れにはあれ?となってしまった。主人公はてっきりシャーロック・ホームズ的な立ち位置なのかと思っていたので、他の人たちと同様に普通にテストされるのかと意外だった。その後は、普通に研修を受けちゃっているし、そこでそこそこ優秀程度の扱いしかされていないしで、結局この人はすごいの?すごくないの?どっちなの?と混乱してしまう。

 

 それに彼女がなぜルーブル美術館の臨時学芸員を目指すのかも分からなかった。そもそも彼女は万能鑑定士として独立して仕事をしているわけで、受験を勧めてきた男から多額のギャラを別にもらうのなら分かるが、おそらくは採用されたらただ学芸員としての給料を貰うだけ。他の公務員を目指す人と同じように、そこそこの給料で安定した職にジョブチェンジしたかったという凡庸な動機なのだろうか。

 

 彼女は一応、絵画が好きとは言っていたが、本当にそんな仕事をしたかったのなら能力もあるのでとっくにその世界に入っているはずだ。だから個人的な興味から、というわけでもないだろう。金でもなく夢でもない。そう考えていくと、やれと言われたから、くらいしか理由が思いつかない。もっと言えば、そういう映画のストーリーだから、か。彼女のモチベーションが感じられないので、こちらもその後に起きる事件に対してなんの感情移入も出来なかった。

 

 

 それから、劇中では名画の真贋を当てるゲームが何度も行われる。映画の重要な要素になっているのだが、これがまたつまらない。そもそもこんな事を学芸員たちがやるわけない、とリアリティが感じられないし、見た目ほぼ一緒の絵画を並べてそこから本物を選ぶというのは映像的に何の面白みもない。しかも撮影に本物など使っていないだろうから何なら全部偽物なわけで、観客も一緒に考えてドキドキすることも出来ず、緊迫感のあるもったいぶった演出をされたところで困惑するだけだった。いったい今は何の時間なのだと虚無的な気分になる。

 

 このゲームのルール自体も何でそんな回りくどいやり方なのだろうと不審に思っていたのだが、これには理由があったことが後で分かる。でもきっと多くの観客が疑問に思っただろうことを、万能鑑定士がすぐに気づかないのはおかしい。この他にも普通に観客が気づきそうなことを主人公がスルーしてしまう事が多く、お前は本当に万能鑑定士なのか、と後で別室に呼んで問い詰めたくなった。

 

 そして他の登場人物たちもおかしい。松坂桃李演じる記者が主人公に興味を持ったのは分かるが、拒絶されていたのになぜかなし崩し的に仲良くなっていたのがよく分からないし、なぜ彼が中盤で不調になった彼女のために苦悩するのかも謎だった。それになぜか彼が彼女を上回る能力を見せて救ったりもする。

 

 主人公のライバルの女は、贋作であることを知らしめたいのなら盗む必要はなく、ただ世間に公表すればいいだけなのだから計画がおかしいことに気づくはずだよねと思ってしまうし、犯人の男がバレる前提で行動していたのも不可解だ。終盤に警察が無駄に大勢で動き回る姿も馬鹿っぽくて「ブルース・ブラザーズ」か、とツッコみたくなった。全員しょうもない。

 

 コミカルなシーンも全然笑えず、演出も色々おかしすぎてずっとイライラしていたのだが、中でも犯人が屋内なのにわざわざ木の端材を集めて焚火のようにし、その上にある絵を燃やそうとしたシーンには驚愕した。いやいやそこは普通絵画に直接火を放つでしょうと。なんでそんな面倒くさい手法を取ったのかが意味不明で震えた。すぐに燃えないよう時間を稼ぐためということなのかもしれないが、どっちにしても結果は変わらないのだから意味がない。

 

 原作は推理小説の人気シリーズなので、愛読者だったら事前の情報も多いだろうから感想はまた違うのかもしれないが、自分にはただただ腹立たしさが募るだけの映画だった。そもそも題材の「モナ・リザ」も超メジャーすぎて新鮮味がなさ過ぎだし、今さら新しい謎なんてないだろうと思ってしまう。少し調べたら、自分はこの監督の映画を見た後にだいたい怒り狂っているので、相性が悪いのかもしれない。

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スタッフ/キャスト

監督 佐藤信介

 

脚本 宇田学

 

原作 万能鑑定士Qの事件簿 IX 「万能鑑定士Q」シリーズ (角川文庫)


出演

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松坂桃李/初音映莉子/橋本じゅん/村杉蝉之介/児嶋一哉/角替和枝/村上弘明/榮倉奈々

 

Qシリーズ (小説) - Wikipedia

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