★★★★☆
あらすじ
密輸のために飛行機から投下された麻薬を大量に摂取したクマは、次々と人間に襲い掛かる。
実話を基にした作品。95分。
感想
麻薬を大量に摂取したクマが次々と人間を襲う物語だ。普通に考えたら「ジョーズ」のようなシリアスな動物ホラーになるはずで、それでじゅうぶん面白くなりそうなのに、そうはなっておらずに意表をつかれる。冒頭で重々しく表示されたクマの対処法がウイキペディアからの引用だと分かって思わずズッコケてしまったが、笑いを前面に押し出したスリラー・コメディだ。
クマに襲われる人々の間の抜けたシチュエーションには思わず笑ってしまう。ただ、無残に殺されていくのは事実なので、そんな状況で笑ってしまっていいのか?と心のどこかに居心地の悪さはある。不謹慎で趣味の悪い露悪的な笑いだ。ちなみに実話を題材にしているが、クマがコカインを摂取したところだけが事実で、あとは創作のようなので実在する被害者はいない(ようだ)という点では安心だ。
このコメディのにじみ出る滑稽さの根本には、登場人物たちがしっかりとクマと向き合っていないというのがあるだろう。「ジョーズ」やゾンビ映画の登場人物たちのように、ちゃんと敵と対峙し、しっかり恐れて必死に戦うということをしていない。誰もがそれは本題ではない、みたいな態度を取っている。
これは彼らのクマに対する認識に問題があるような気がする。日本だとクマは恐ろしい動物で、とにかく警戒しなければならない、みたいな認識があると思うが、彼らはこちらが危害を加えなければ無害な動物、くらいに思っている節がある。最初の犠牲者となったカップルの態度もそんな感じだったし、あちらの映画や本でのクマの描写にもそんな雰囲気が漂っている。
もしかしたら日本に生息するクマとは性格が全く違うのかもしれないが、どうしてクマを目の前にしてそんなに平然としていられるの?と、こっちがドキドキとしてしまうくらいだ。「クマのプーさん」のイメージがあるからなのか?と思ったりもしたが、だとしたら罪な作品だ。クマ側のプロパガンダの可能性すらある。
だが考えてみれば、彼らだってクマに襲われるために生きてきたわけでも、クマに殺されようと思って今朝家を出てきたわけでもない。綺麗な滝の絵を描こうとか、気になる異性と会えるからウキウキするとか、だるい仕事をさっさと片付けようとか思いながらやってきたのであって、まさかこんな目に遭うなんて思ってもいなかった。だから心の準備ができているわけはなく、オロオロしてしまうのも当然だろう。
きっと現実に見聞きするニュースの被害者たちもそうだったんだよな、としばし思いを馳せてしまった。まさか今日が人生最後の日になるとは思っていなかっただろうし、そんな終わり方だとも思っていなかっただろう。
最後は、あんなに怖かったクマを応援したくなるような展開となるのも奇妙で面白い。終始、笑っちゃいけない場所で笑わせてくるような、場違いな場所で行われているコメディ感がある。嫌悪感を抱く人も多そうだが、良心がチクチクと痛みながらもつい笑ってしまう。
スタッフ/キャスト
監督/製作 エリザベス・バンクス
製作 フィル・ロード/クリス・ミラー/マックス・ハンデルマン/ブライアン・ダッフィールド
出演 ケリー・ラッセル/オシェア・ジャクソン・Jr/オールデン・エアエンライク/レイ・リオッタ/マシュー・リース/イザイア・ウィットロック・Jr/マーゴ・マーティンデイル/ジェシー・タイラー・ファーガソン/クリストファー・ヒヴュ
音楽 マーク・マザーズボー

